コラム
公開 2021.06.22 更新 2021.10.08

IPO市場はDXで活況。2021年のIPO動向をどう見る?

IPO市場はDXで活況。2021年のIPO動向をどう見る?

DX企業によるIPO市場が盛り上がりを見せています。
IPOの多かった2020年に引き続き2021年も好調となる見込みである上、2021年は大型のIPOも増えると予想されています。
既に上場したDX企業にも注目企業が多く、2021年にIPOを果たしたDX企業についても紹介します。

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2021年最新のIPO市場動向

近年、IPO市場の動きが活発です。※1
中でも、DX(デジタルトランスフォーメーション)を手がける企業のIPOが増えています。

日本取引所によると、2020年のIPOは前年比8社増の102社となり、07年以来13年ぶりの高水準となりました。
また、IPO規模が小さい企業の上場が目立った2020年と比べ、今年は大型案件が増える可能性が高いと言われています。
これは、昨年上場手続きを延期したキオクシア株式会社(旧東芝メモリ株式会社)など大型案件の再チャレンジなどが見込まれるためです。

IPOと法務

IPOにあたっては、会社法に沿った規制をはじめとした、社内管理体制の強化や規定の整備、運用、内部監査制度の確立を避けて通ることはできません。
これらが確立できていないことには、上場審査が通らないことがあるためです。

企業運営に関連する法令は、その事業内容や業態により無数に存在しています。
これらをすべて確認し遵守することは容易ではありませんが、IPOにあたっては、高い精度での法令やコンプライアンスの遵守が必要となります。

また、株主構成や従業員持株会の存在などによっては、IPOに支障が生じるケースもあります。
これらも含め、事前に十分に調査し、問題を洗い出し、対策を講じていかなければなりません。

もちろん、IPOをしないとしても法令を遵守すべきことはお伝えするまでもありませんが、IPOを進めるにあたっては高いレベルでの法令順守が求められることも知っておきましょう。
https://komon.authense.jp/venture/ipo/

2021年にIPOを果たしたDX企業

2021年に入り、既にIPOを果たした企業も存在します。
その中でも、DX企業を紹介しましょう。

建設DXのスパイダープラス株式会社

スパイダープラス株式会社は、2021年3月に東京証券取引所マザーズ市場への上場を果たしました。※2
初値は1,722円、終値は1,685円でした。

スパイダープラス株式会社は、建設現場の仕事を効率化するアプリである「SPIDERPLUS」を手がけています。
旧社名は「レゴリス」でしたが、アプリ名に合わせて2020年11月に社名を変更しました。

2020年12月末時点で、このアプリの2020年の導入社数は約800社で、2017~2020年の直近3年間で導入社数は7倍へと伸びています。
約1.2兆円と見られる国内の建設DX市場に向けて、さらなる浸透を図る方針です。

課題解決ソリューションの株式会社WACUL

株式会社WACULは、2021年1月15日に東京証券取引所に上場承認され、2021年2月19日にマザーズへ上場しました。※3、4
株式会社WACULは、デジタルマーケティングのPDCAプラットフォームである「AIアナリスト・シリーズ」の提供や、企業のデジタルトランスフォーメーションを推進する「DXコンサルティング」の提供、AIを用いた企業のサイトのアクセス分析や検索エンジン対策、広告出稿などの自動化などを行っています。

社名は「わかる」と発音し、社名の由来は、「何をすれば良いかわかるというunderstandの『わかる』と、「和(WA)のカルチャー(CULTURE)」とを掛け合わせている」とのことです。

注目のDX銘柄

2020年以前に、既にIPOを果たしたDX企業も好調です。
ここでは、注目のDX銘柄を、「電子契約関連企業」「総務効率化関連企業」「会計ソフト関連企業」の3つに分類し、それぞれ紹介します。

電子契約関連企業

DXの中でも、法務とITを掛け合わせた分野のことを、「リーガルテック」と呼びます。
まずは、リーガルテック推進のベースとなる電子契約や電子署名を手掛ける企業として、弁護士ドットコム株式会社とGMOインターネット株式会社の2社を紹介します。

弁護士ドットコム株式会社

弁護士ドットコムは、2014年12月11日に、東証マザーズへの上場を果たしました。※5
同社は、弁護士向け営業支援のWebサービスや一般会員向けの法律・税務相談サイトを運営していますが、電子署名の技術などを提供する「クラウドサイン」が、脱ハンコの流れの中で改めて注目されています。

クラウドサインの導入社数は1年で2倍となっており、弁護士ドットコム株式会社は、東洋経済が「会社四季報」2021年2集春号のデータから算出した「優良企業50」にも選定されました。※6

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社

GMOインターネット株式会社のグループ企業であるGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社も、2005年にマザーズへ、その後2014年に東京証券取引所市場第一部へ上場しました。※7
GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社は、企業や自治体向けに電子認証「電子印鑑GMOサイン」を提供しており、シェア日本一となっています。

総務効率化関連企業

続いて、総務の効率化へつながる技術の提供などをしているDX企業として、Sansan株式会社とChatwork株式会社の2社を紹介します。

Sansan株式会社

Sansan株式会社は、2019年6月19日、東証マザーズへ上場しています。
上場初日の初値4,760円、終値と最高値はいずれも5,460円でした。※8、9

Sansan株式会社は、法人向けクラウド名刺管理サービスである「Sansan」や、個人向け名刺管理アプリの「Eight」、クラウド請求書受領サービスの「Bill One」などを手掛けています。
https://jp.corp-sansan.com/service/

Chatwork株式会社

Chatwork株式会社は、2019年9月24日、東証マザーズ市場へ上場しました。※10
公開初日の初値は公開価格を下回ったものの、2020年5月には、上場来高値を更新しています。※11

Chatwork株式会社は企業内などで情報をやり取りするビジネスチャットツールである「Chatwork」を提供しており、2021年4月の導入企業数は317,000社を突破しました。

コロナ禍で在宅ワークやリモートワークが進んだことが、利用者数の増加を後押ししたものと思われます。
https://go.chatwork.com/ja/

会計ソフト関連企業

クラウド系会計ソフトを手掛けるDX企業としては、主にfreee株式会社と株式会社マネーフォワードの2社があります。

freee株式会社

freee株式会社は、2019年12月17日、東証マザーズ市場へ上場しています。
初日は公開価格2,000円を上回る2,700円となり、株式時価総額は1,259億円をつけました。※12

freee株式会社は、クラウド会計ソフト「freee」や、フリーランスの外注管理の手間を軽減する「freeeスマート受発注」など、フリーランスや小規模事業者向けのクラウドサービスを多く展開しています。

中でも、会計ソフトである「freee」は、ネットバンキングやクレジットカードの明細を自動で転記するなど仕訳の自動化が特徴で、登録事業者数は100万社を突破しました。※13

最近では、freee株式会社の労務管理ソフト「人事労務freee」で作成した賞与明細のデータを、後述する株式会社SmartHRの提供する「SmartHR」に取り込むことができるデータ連携を開始したことでも話題となっています。※14
https://www.freee.co.jp/houjin/bookkeeping/?referral=aw_brand

株式会社マネーフォワード

株式会社マネーフォワードは、2017年9月29日に東証マザーズ市場へ上場しています。
1,550円の公開価格に対し、初値が3,000円と滑り出しから好調となりました。※15

株式会社マネーフォワードは、家計や資産などお金に関する現状や課題をリアルタイムに可視化する個人向けアプリ「マネーフォワード ME」や、会社の経営に直結する現状や課題をリアルタイムに可視化する個人事業主・法人向け会計ソフト「マネーフォワード クラウド」などを手掛けています。
中でも、「マネーフォワード ME」の利用者数は、2021年1月時点で、1150万人を突破しました。※16
https://corp.moneyforward.com/news/release/corp/20170928-mf-press/

経済産業省がDX銘柄を選定

IPOを目指すDX企業が増える中、経済産業省もDX企業の躍進をサポートする取り組みを行っています。※17、18
そのうちの一つに経済産業省及び東京証券取引所主催の「DXグランプリ」があります。

DXグランプリとは、経済産業省が東京証券取引所と共同で、デジタル技術を前提としてビジネスモデルなどを抜本的に変革し、新たな成長・競争力強化につなげていく「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に取り組む企業を、東京証券取引所に上場している企業の中から「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」として選定、公表をし、選定企業から、デジタル時代を先導する企業を発表する取り組みです。

従来は「攻めのIT経営銘柄」として選定してきましたが、2020年からは、これに代わってDX銘柄を選定することとなりました。

「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2020」には、株式会社ディー・エヌ・エーやZホールディングス株式会社、セコム株式会社など、35社が選出されています。

その他、「DX銘柄2020」に選定されていない企業の中から、総合評価が高かった企業や注目されるべき取り組みを実施している企業である「DX注目企業2020」として、サッポロホールディングス株式会社や株式会社三菱ケミカルホールディングスなど21社が選定、公表されました。

経産省がDXグランプリを開催する理由

では、なぜ経済産業省がDXグランプリを開催しているのでしょうか?※17
経済産業省の公表資料によれば、「我が国企業の戦略的IT利活用の促進に向けた取組の一環」としています。

また、同資料によれば、「あらゆる要素がデジタル化されていくSociety5.0に向けて、既存のビジネスモデルや産業構造を根底から覆し、破壊する事例(デジタルディスラプション)も現れてきているなど、DXは中長期的な企業価値向上において、一層重要な要素となりつつある」としており、経済産業省としてDX企業を重視している様子が伺えます。
このように、DXはある意味で、国が認めた成長分野の産業です。
今後も当面は、DX企業の躍進やIPOの増加が期待されることでしょう。

まとめ

DX企業によるIPO市場が盛り上がりを見せているほか、DX企業が市場において不可欠な存在となりつつあります。
新型コロナウイルスのパンデミックにより人々の行動や働き方が変革を迎えている昨今、DX分野は、今後ますます発展を見せていくことでしょう。

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