学生時代からサッカーに打ち込み、弁護士として大学スポーツのガバナンス改革に挑む上田 裕介弁護士。
ガバナンスが整備された先にはアメリカのように大学スポーツを大きなビジネスにしたいと語る。上田弁護士にスポーツ法務における取組を聞いた。
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自由を求めて志した弁護士
先生が弁護士を志したきっかけを教えてください。
明確なきっかけはないのですが、自分は文系だったので、文系で一番難しい資格である弁護士になろうと高校3年生くらいの時には決めていましたね。親戚に弁護士がいた事も少しは影響しているかもしれません。
大学ではサッカー部に所属していて、周りには良い会社に就職する人も多かったですが、自分は自由でいたかったんですよね。
弁護士になられてから最初はどのような案件に取り組まれていたのでしょうか?
最初はいわゆるノキ弁でした。
ただ、久保利 英明先生からも支援されていた事務所だったので、ノキ弁ではありましたが事務所からも仕事をもらっていました。
多くやっていたのは生命保険関係の案件ですね。また、東日本大震災における原発被災者の弁護団にも入っていました。
原発被災者の弁護団とはどのような活動をされるのでしょうか?
福島で被災された方たち、故郷を奪われた方たちの、東京電力と国に対する賠償の支援です。東京弁護士会で組んでいる弁護団だったので、かなり大所帯でしたね。
長く経験を積まれている、他の事務所の先生方ともお仕事をさせていただき勉強になりました。
圧倒的な案件数と向き合うAuthenseの日々
2013年にAuthense法律事務所に移られています。どのようなきっかけがあったのでしょうか?
久保利先生がロースクールで講義をされていて、そこに元榮がゲストスピーカーとして登壇したことがありました。
元榮と私は同じ大学のサッカー部出身で知り合いだったこともあり、久保利先生から声をかけていただいて授業に参加し、懇親会で元榮と話した流れでAuthenseに誘われました。
特に移籍は考えていなかったのですが、取り扱い業務を拡大したい思いもあり決めました。
どういった案件を拡大したいと思われていましたか?
一般民事分野、離婚、相続などはAuthenseの方が圧倒的に案件数が多かったので、修行になると思っていました。
入所されてからは具体的にどういった案件に注力されてきましたか?
不動産が多かったですが、他の分野も幅広くやっています。前の事務所だと法律相談はそんなにありませんでしたが、移ってからはほぼ毎日相談を受けてきました。
多くの案件に関わることができたのは良い経験になりました。特に、建物明渡に関してはマニュアル化されていたので、すごく参考になりました。
スポーツ業界のガバナンス改革に挑む
現在は全日本大学サッカー連盟の理事を含め、スポーツ関係の案件も幅広く取り扱われています。
事務所での取り組みというより、自分の仕事としてやっています。
以前は大学スポーツに弁護士が入る例は少なかったのですが、先輩から声をかけられて大学サッカー連盟に加入しました。
大学スポーツの世界でも様々な問題が顕在化し、専門的な知見が求められるようになってきたのです。
スポーツ法務の特徴や業界全体の課題などがあれば教えてください。
自分が関与しているサッカー界は他のスポーツに比べると整備されていると思います。
サッカーにはFIFAが決めたルールがあって、JFAが翻訳、アレンジし、地域連盟や下部団体に展開しているので、ルール自体は整っています。
一方、実行については課題があります。例えば、ルールの中に「三権分立しなさい」と書いてあるのですが、全ての団体で実行できてはいません。JFAでは実行できていても、下部団体ではできていないようなケースです。
まずはそういったガバナンスを整えるところから始まって、組織の内側の人間としてドキュメントの整備や運用を定めています。小さな会社を正しい方向に導いていくようなイメージですね。
地域連盟や下部団体は、どれくらいの数があるのでしょうか?
地域のサッカー連盟、Jリーグ、WEリーグ、なでしこリーグ、大学サッカー、アマチュアリーグ、社会人のトップリーグなど様々な団体があり、全部合わせると60〜70くらいはあります。
これだけ多様な組織の統一を図っていくのは非常に困難かと思います。現状はどのくらいまで整備されているのでしょうか?
メインで携わっている全日本大学サッカー連盟、関東大学サッカー連盟はかなり整ってきました。外部の顧問弁護士を起用し、三権分立に求められる司法機能も有しています。
社会人のトップリーグでもそこまで備えられてはいません。
三権分立や司法機能が整備されていない事で、どういう不都合が生じるのでしょうか?
各団体の中には、問題が生じた時に対応する規律委員というものを設置しているのですが、法的な素養のある方が役割を担っているわけではないので、判断が定まりません。
JFLが中心となって年数回は各地域の規律委員長向けの研修をやってはいますが、それでも追いつかない状況です。
解決策としては、スポーツ法務に携わる弁護士の方が増えていくことなのでしょうか?
そう思います。協会の方でも課題と認識していて、賛同いただける方を増やそうと試みた事もあります。ただ、各団体には弁護士に依頼する資金が潤沢にあるわけではありません。
ボランティアを募る形になるので、志がある人、自分のようにスポーツに携わってきた人でなければ難しい状況です。
今の自分は各団体のガバナンスを整えることに注力していますが、その先にスポンサーも付いて、スポーツ分野でお金が回るようになっていく。結果的にいい方向に行くような、大きな流れにしていきたいですね。
アメリカの大学スポーツビジネスはとても規模が大きいです。これは、NCAA(全米大学体育協会)が大学スポーツを一元的に管理し、ビジネス市場を形成し、収益を加盟大学に分配することで成立しています。
国内でも日本版NCAAを目指し、UNIVAS(一般社団法人 大学スポーツ協会)という団体が2019年に設立されました。
スポーツごとに設置されている団体の垣根を越えていくにはまだまだ向き合わないといけない点も多いのですが、ガバナンスの視点、取り組みは役立つと考えています。
Professional Voice
上田 裕介
(第二東京弁護士会)慶應義塾大学法学部政治学科卒業、桐蔭法科大学院法務研究科修了。交通事故分野を数多く取り扱うほか、相続、不動産、離婚問題など幅広い分野にも積極的に取り組んでいる。ご依頼者様の心に寄り添い、お一人おひとりのご要望に応えるべく、日々最良のサービスを追求している。
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