コラム
公開 2024.12.17

単体5326_新規_民事再生法とは?民事再生の流れ、メリット・デメリットを弁護士がわかりやすく解説

会社が経営の危機に瀕した場合、選択肢の一つとなるのが民事再生法の適用です。

では、民事再生法とは、どのような法律なのでしょうか?
また、民事再生の主なメリットは、どのような点にあるのでしょうか?

今回は、民事再生法の概要や民事再生の流れ、民事再生を選択する主なメリットなどを弁護士がわかりやすく解説します。

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民事再生法とは

民事再生法とは、民事再生について定めた法律です。
経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得て裁判所の認可を受けた再生計画を定めることなどにより、その債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、債務者の事業や経済生活の再生を図ることを目的としています。

なお、法律用語で何らかの債務(借金など)を負っている人を「債務者」、反対にお金を貸している人や売上代金を払ってもらっていない人などのことを「債権者」といいます。
ここでは、民事再生を検討している事業者を「債務者」、その事業者に借金の返済を求める金融機関や売掛金の支払いを求める事業者などを「債権者」と呼ぶとイメージしておくと理解しやすいでしょう。

民事再生法による「民事再生」とは

民事再生法で定められている「民事再生」とは、どのようなものを指すのでしょうか?
ここでは、民事再生の概要や破産・会社更生法との違いを解説します。

民事再生の概要

民事再生とは、再建型の倒産手続きの一つです。

倒産というと「会社がつぶれる」とイメージする人も多いようですが、民事再生の場合には会社がなくなるわけではありません。
民事再生では、裁判所や監督委員の監督のもとで事業を継続しながら可能な範囲で債務の返済を続け、再建をはかります。

ただし、無条件で民事再生が選択できるわけではありません。
民事再生をするには、債権者の合意を得たうえで、裁判所の認可を受ける必要があります。
再生計画では、債務(借金など)の減額がされたり返済期間が伸長されたりすることが一般的です。

なお、これは債権者にとっては「損」であり、このような再生計画に債権者は合意しないのではと考えるかもしれません。

確かに、債権者の合意が得られず、民事再生を選択できない場合もあります。
しかし、民事再生を検討しているということは、そもそも債務者は債務超過となっているのであり、そのまま破産してしまうと債権がほとんど回収できいかもしれません。

それよりは、多少債権が減額となっても民事再生計画に合意したほうが「マシ」であると債権者が判断することは、十分にあり得ることです。

なお、ここでは債務者が「会社」である前提で解説をしたものの、民事再生の対象者は法人に限られるものではありません。
個人であっても、民事再生手続きの対象となります。

破産との違い

破産とは、債務者が借金などの返済が難しくなった場合において、破産管財人の関与の下で会社を清算する「清算型」の倒産手続きです。
会社を清算したうえで、会社の資産を「切り売り」して債務を返済します。
そのため、民事再生とは異なり、原則として事業を継続することはできません。

会社更生法との違い

会社更生とは、株式会社に限定された再生手続きです。
民事再生が株式会社などあらゆる法人や個人が利用できることに対し、会社更生は株式会社しか活用できません。

会社更生も民事再生と同じく、事業を継続しながら会社の再建をはかる倒産手続きです。
ただし、民事再生では現経営陣が続投できるのに対し、会社更生では原則として現経営陣は退任したうえで、更生管財人が更正手続きを進めることとなります。

民事再生法による民事再生の3パターン

民事再生には、主に3つのパターンがあります。
ここでは、それぞれの手法について概要を解説します。

自力再生型

自力再生型とは、文字どおり「自力」で再建をはかるパターンです。
他者の力を借りず、自力での債務返済や再建を目指します。

民事再生でもっとも基本となるのは、この自力再生型です。

スポンサー型

スポンサー型とは、外部からの資金援助を受けるパターンです。
他社や金融機関、投資ファンド、投資家などから出資や貸付けを受け、債権をはかります。

スポンサー型の民事再生には、主に次の2つが存在します。

  1. 入札による方法:入札によってスポンサーを選定する方法
  2. あらかじめスポンサーを決めておく方法(プレパッケージ型):あらかじめスポンサーを決め、支援が決まった状態で民事再生を申し立てる方法

なお、プレパッケージ型の場合には、選定の経緯などによっては公平性を書くと判断され、裁判所から再生計画が認可されないおそれがあります。
より慎重に進める必要があるため、あらかじめ弁護士へご相談ください。

清算型

清算型とは、民事再生を申し立てる会社の一部の事業を他社に譲渡などしたうえで、残った事業と会社を清算するパターンです。
すべてを清算するのではなく、一部の事業は事業譲渡やM&A、会社分割などによって存続させる点が破産とは異なります。

一般的には、収益性が高く価値のある事業のみを切り出して存続させることとなります。

民事再生の主なメリット

経済的に窮境となった場合において、民事再生を選択することにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、民事再生の主なメリットを解説します。

債務を大幅に圧縮できる

1つ目は、債務を大幅に圧縮できることです。

民亊再生では大幅な債務免除や弁済期間の延長が前提となることが一般的です。
借金がすべて免除となるわけではないものの、無理のない範囲で返済を続けることが可能となります。

事業の継続が可能である

2つ目は、事業の継続が可能であることです。

先ほど解説したように、破産手続きの場合には原則として事業を続けることができません。
一方で、民事再生では可能な範囲で債務を弁済しつつ、事業を継続することが可能となります。

経営陣の続投が可能である

3つ目は、経営陣の続投が可能であることです。

先ほど解説したとおり、会社更生手続きでは原則として現経営陣は続投することができません。
一方で、民事再生の場合には経営陣として残留することが可能です。

従業員の雇用を継続できる

4つ目は、従業員の雇用を継続できることです。
民亊再生は事業を継続しながら再建をはかる手続きであるため、従業員の雇用継続がしやすくなります。

短期間で再生できる可能性がある

5つ目は、短期間で再生できる可能性があることです。

同じ再生手続きであっても会社更生はより厳格であり、再生までに年単位での時間がかかることが少なくありません。
一方で、民事再生は比較的スピーディーな再生が可能であり、利害関係者の少ない中小企業であれば数か月程度で再生できる場合もあります。

民事再生の主なデメリット・注意点

民亊再生には、デメリットや注意点も存在します。
ここでは、主なデメリットと注意点を4つ紹介します。

実際に民事再生手続きを選択しようとする際は、あらかじめ弁護士へ相談し、自社にとってのデメリットをよく理解したうえで行ってください。

債権者の同意が必要である

民亊再生は、再生を希望する企業だけの決断でできるものではなく、債権者の頭数の過半数かつ債権総額の2分の1以上の者による同意を得なければ進めることができません。

再生計画が認可されれば、債権者側に何ら過失がなかったにもかかわらず、債権額(つまり、回収できる借金の額)が減らされたり返済期間が長期化されたりすることとなるため当然といえるでしょう。

そのため、民事再生を検討する際は、自社にとっての都合だけを考えるのではなく、債権者に同意をしてもらえそうな再生計画を立てることが必要となります。

担保権が実行される可能性がある

民亊再生を申し立てるとその旨が債権者に通知されます。
これにより、担保(抵当権など)がついている債権について債権者が担保権を行使することが可能となります。

銀行などの金融機関から借り入れをする際は、社屋や工場などの不動産に抵当権を設定することが多いでしょう。
つまり、民事再生を申し立てると銀行がその抵当権を実行して社屋などを売却し、そこから債務が弁済される可能性があるということです。

しかし、これから再起を図るためには、社屋や工場などの事業用資産は手放したくないことでしょう。
主要な製品を製造する工場などが売却されてしまえば、事業の再建は事実上不可能となります。

そのため、担保のついた資産がある場合には民事再生を申し立てる前に銀行などの担保権者と個別に交渉するなど、担保の実行を防ぐ対策を講じなければなりません。

債務免除益は課税対象となる

民事再生で債務の圧縮が認められた場合、これにより減額された債務は課税の対象となります。
単純化して解説すると、1億円の借金が6,000万円に減額された場合、免除された4,000万円分が利益として扱われ、法人税などの課税対象になるということです。

民亊再生に伴う債務免除益は高額となる可能性があり、これにかかる税金も高くなりやすいでしょう。
税金の支払いを考慮していないと、今度は税金の支払いができず会社を畳む事態となるかもしれません。

そのような事態を避けるため、民事再生を進めるにあたっては、これに伴って発生する税額についてもあらかじめ試算をしたうえで納税手段も検討しておくことが必要です。

企業の信用が低下する

民亊再生をした場合、その旨は官報や民間企業の倒産情報にも掲載されます。
そのため、企業の信用が低下する事態は避けられません。

当面は資金が借りづらくなることや、物件を借りる契約がしづらくなることなどは覚悟する必要があるでしょう。
また、仕入れなど取引の際に影響が及ぶ可能性もあります。

さらに、他社と締結している契約の解除条項として、「民事再生の申立て」が含まれていることは少なくありません。
現在締結している契約にも影響が及ぶ可能性があるため、あらかじめ弁護士へ相談したうえで影響を洗い出しておくことをおすすめします。

民事再生の基本の流れ

民亊再生は、どのような流れで進行するのでしょうか?
最後に、民亊再生の一般的な流れを解説します。

専門家に相談する

民事再生を申し立てるには、再建手法を検討したうえで、申立代理人となる弁護士を選任しなければなりません。
そのため、まずは民事再生手続きにくわしい専門家へ相談するとよいでしょう。

この段階で、本当に民事再生を選択するのか他の手続きを選択するのかなど慎重に検討します。

民事再生手続開始を申し立てる

代理人である弁護士が、民事再生手続きの開始を申し立てます。
申立先は、自社の本店所在地を管轄する地方裁判所です。

監督委員が選任される

民事再生手続開始を申し立てると、裁判所から監督委員が選任されます。
その後は、債務者が自由に財産処分や借入をすることはできなくなり、これらの行為は監督委員の監督下となります。

債権者へ説明する

監督委員が選任されたら、この時点で債権者説明会を開催することが一般的です。

この段階での債権者説明は、民事再生の要件ではありません。
しかし、先ほど解説したように、民事再生を進めるには債権者の協力が不可欠であるため、この段階から状況を伝えて理解を得ておくべきでしょう。

民事再生手続開始が決定する

所定の要件を満たしていることが裁判所に確認されると、民事再生手続きの開始が決定されます。
申立てから民事再生手続開始決定までにかかる期間は1~2週間程度であることが多いでしょう。

債権調査をする

次に、債権調査を行います。

債権者は、所定の債権届出期間内に、債権の額などを債権届に記載して裁判所に提出します。
そのうえで、民事再生を申し立てた会社がその債権の認否確認などを行います。

財産評定の結果などを報告する

民事再生を申し立てた会社が裁判所に財産評定の結果などを報告します。
報告すべき内容は、貸借対照表や財産目録などです。

民事再生計画案を作成する

民事再生計画案を作成します。

民事再生計画案とは、借金をどのように返済しどのように会社を再建するのかを示した計画です。
計画が決議されるとこの計画どおりに借金を返済していく必要が生じるため、弁護士へ相談したうえで実現可能な計画を練りましょう。

民事再生計画案の決議がされる

作成した民亊再生計画案について、債権者の決議をとります。

先ほど解説したように、再生計画の決議には、出席債権者の過半数かつ債権総額の2分の1以上の債権者による同意が必要です。
債権者により民事再生計画案が決議されると、計画が裁判所から認可されます。

民事再生計画を遂行する

民亊再生計画の認可が得られたら、その計画に従って債務の弁済などを進めます。
また、最大2年間は監督委員の管理下に置かれます。

まとめ

民事再生法の概要や民事再生のメリット・デメリット、民事再生の流れなどについて解説しました。

民亊再生とは、事業を継続しつつ会社の再建を図る倒産手続きです。
経営陣が続投できるなどメリットが多い一方で、一定の債権者に同意を得なければなりません。
また、担保が実行される可能性がある点などへの注意が必要です。

民亊再生にはメリットも多い一方で、債権者による同意が得られなければ進めることはできません。
会社の財務状況が逼迫している場合には、適切な手続きを選択するため、弁護士に早めにご相談ください。

Authense法律事務所では、企業法務に特化したチームを設けており、民事再生手続きについてもサポートが可能です。
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