コラム
公開 2021.03.16 更新 2021.10.08

多様化する人事・HR領域の「DX進展」の波

多様化する人事・HR領域の「DX進展」の波

近頃「HR(Human Resource)」の領域が広がりを見せており、人事・HRに関連するサービスの広告を見る機会も増えてきました。
HR領域もDXの影響を受け、さまざまなサービスが展開されています。
DXの流れを受けて益々広がりを見せるHRについて検討してみましょう。

記事を監修した弁護士
authense
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HR(組織人事)領域が広がりを見せている

まずは、領域が広がりを見せているHRについて、「勤怠管理」と「人事評価」の2つの分野に分けて、具体的に見ていきましょう。
いずれもHRに不可欠な分野です。

勤怠管理における広がり

勤怠管理とは、使用者(企業や事業主)が従業員の就労時間・就労状況を把握することです。
従業員の就労状況を把握することで適正な賃金の支払いを行うことができ、また労働関連法規遵守も図れるため、使用者にとって不可欠な業務の一つと言えるでしょう。

これまでは、この勤怠管理はタイムカードやICカード等を利用して就労時間を記録する形で行われることが一般的でした。
しかし、働き方改革が推進され、従業員の働き方はこれまでにない新たな形態が生まれ多様化しています。

さらに、新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワークが爆発的に浸透したことで、働き方の多様性はさらに広がりました。
働く場所や時間を選ばず柔軟な働き方が実現されるに至り、従業員は使用者からは見えない場所で仕事をする機会も増えています。

そのため、従来の働き方であればタイムカードの打刻でできていた勤怠管理が、現代では通用しなくなってしまったのです。
アナログな方法で従業員の残業時間を正確に把握することは難しく、労働関連法規で定められている労働時間をオーバーしてしまうリスクもあります。

このように働き方が多様化して広がりを見せている以上、それと密接に関連している「勤怠管理」が新たな領域を見せるのは必然と言えるのかもしれません。
最近では、勤怠管理に特化したクラウド型勤怠管理システムも登場しており、これまでにない新しい勤怠管理システムが提供されています。

働き方の変化に対応し、管理する側の管理業務も効率化することで生産性向上を図るため、勤怠管理は新たなステージに移行したと言えるでしょう。

人事評価システムにおける広がり

前述の通り、働き方改革や新型コロナウイルス感染拡大により、働き方が多様化しました。
どの働き方にも共通するのは、非対面で業務に取り組むテレワークという部分ではないでしょうか?

テレワークにおいては、対面していないため、従業員の働きぶりを直接確認することができません。
また、コロナ感染リスク低減のため、出勤スタイルも変化しています。
従業員全員が同じオフィス・同じ始業時間で働くスタイルから、テレワーク・時差出勤といった、従業員個人やその時点での状況にマッチした働き方が求められる時代です。

そのため、既存の評価方法や評価基準では、適正な人事評価ができない可能性が非常に高いと言えます。
適正な人事評価ができない結果として、従業員が不公平感を持ってしまうこともあるでしょう。
したがって、ウィズコロナ・アフターコロナ時代においては、働き方の多様化に合わせた人事評価が求められるのです。

そこで、「評価基準を明確にする」「Webミーティングを活用してプロセスも評価する」「評価制度をオンライン上で共有する」といった対応が必要となります。
このような背景から、人事評価システムの分野においてもクラウド型のサービスが登場するに至っています。

人事評価も新たな広がりを見せ、効率化が図られています。
今や、人事評価にもDXの波が押し寄せているのです。

現代で求められるHRDXとは

新型コロナウイルスの影響でDX(デジタル・トランスフォーメーション)導入の流れが一気に加速し、あらゆる産業のあらゆる業務において、デジタル技術を用いて競争優位性を確保するための取り組みが盛んになっています。

そして、このDXの波はHRの領域にも波及しています。
現代では、働き方の多様化に伴い、HRの領域においても多様化・進化を求められていることは前述した通りです。

この多様化した働き方に対応し企業全体としての生産性を高めるためには、「管理」「視認」「分析」「創出」という4つのステージで進めるHRDXが求められます。

管理

「管理」とは、従業員の「勤怠情報」「賃金台帳」「福利厚生」などに関する情報の管理のことを言います。
HRには採用も含まれるため、求職者の情報や履歴書などの管理が求められます。
フォーマットやシステムを統一し、管理体制が不明瞭であるがゆえの問題の発生を未然に防ぐ仕組みづくりが必要です。

視認

「視認」とは、取得した情報の“見える化”を指します。
例えば、タレントマネジメントツールを用いてHRテックを導入する、ダッシュボードを作って労働時間を可視化する、といった取り組みです。

一見して情報の整理がしやすくなり、業務の効率化につながります。
従業員側からしても、自分の労働時間を視認できることはライフワークバランスを確保しやすくなるためメリットがあります。

とはいえ、情報の入力の負担が大きくなりかえって生産性が低下しては本末転倒なので、バランス感覚が求められます。

分析

「分析」とは、複数の情報の相関関係を精査し、コスト削減や効率良い組織展開に役立てるステップです。
収集した情報を電子化しただけではDXには至らず、単なるデジタル化で終わってしまいます。
情報を分析することで、課題や改善点が明らかになってきます。

創出

「創出」とは、これまでの3段階を踏まえて事業革新を促進する、DXの要とも言えるステージです。
DXとは「デジタル技術を用いて事業に革新をもたらすこと」なので、この創出のステージで革新をもたらすこととなります。
このステージは未だどの企業も模索段階かと思われますが、可及的速やかな革新が求められていると言えるでしょう。

このように、他の業務と同様、HR領域においてもDXは不可欠となっています。

もっとも、HRの領域においては、この領域特有の問題点があります。
それは、取り扱うデータに個人のプライバシーに関わるデリケートな情報が多いということです。
この点について詳しくは後述しますが、HR領域におけるDXは特に慎重に進めなければならないのです。

HRDX推進に当たり取り組むべき視点・注意すべきポイント

それでは、HRDXを推進するに当たって気をつけなければならない点について紹介しましょう。

情報セキュリティを強化する

どの分野のDXにも共通しますが、DXを推進すると、必然的にデータでのやり取り・保管が行われることになるため、情報面でのセキュリティ強化は必須です。
人事や勤怠管理に関する情報は企業の機密情報ですから、外部に情報が漏洩しないよう、厳格な管理・運用が求められます。

システム上のセキュリティを強化することはもちろんですが、従業員一人ひとりの意識改革が必要な場合もあります。
人事や勤怠管理に関する情報が機密情報であることを認識させ、従業員全員が自覚を持って情報を管理すれば、機密情報が漏洩するリスクを下げられるでしょう。

個人情報の管理を厳格にする

HR領域では、従業員の氏名・住所・人事評価といった個人情報を扱うこととなります。
個人情報は個人情報保護法で手厚く保護されているため、企業は個人情報を厳格に管理し絶対に外部に漏洩しないよう万全の体制を構築しなければなりません。

前述の情報セキュリティを強化する、という内容と重複しますが、HRの特徴は取り扱う情報が個人情報である点が他の分野と大きく異なる点です。
個人情報が外部に漏洩してしまった場合のリスクは計り知れないため、厳格・厳重な管理が必要です。

そのためにも、社内で個人情報の取り扱いに関するルールを作成し、従業員に周知させておくと良いでしょう。

一度セキュリティやルールを構築して安心するのではなく、適宜に保守・運用・更新などを行い万全のセキュリティ体制を整えましょう。

まとめ

HR領域とDXについて、HR領域で求められるDXや推進するに当たっての注意点、クラウドサービスを活用したHRサービスの例について紹介しました。
HRは企業の組織体としての根幹を成す分野であり、HRの効率化により企業全体の生産性が向上することは明白です。

働き方が多様化した現代において、DXの波はHR領域にまで押し寄せています。
それに伴い、クラウドサービスを利用した新しいHRサービスも登場しており、社会全体で見てもDXの流れが加速していると言えるでしょう。

HRDXを推進するに当たっては、HRが個人情報を取り扱うという特性から、情報セキュリティ、特に個人情報に関する厳格な管理が求められます。
そのためには、個人情報保護法をはじめとする情報やデータに関する法令の専門知識が不可欠です。
HRDXを導入するためにも、専門家のサポートを受けることを検討してみてはいかがでしょうか?

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