コラム
公開 2022.08.24 更新 2022.08.31

事業承継とは?4つの方法と失敗しない対策を弁護士がわかりやすく解説

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事業承継とは、事業を後継者や他者へと承継させることを指します。
今回は、事業承継の主な種類を紹介するとともに、事業承継を失敗しないコツや注意点、進め方などについて、事業承継に詳しい弁護士が解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(大阪弁護士会)
大阪弁護士会所属。一橋大学法学部法律学科卒業、一橋大学法科大学院修了。大学卒業後、一般企業に就職。業務を通して種々の法的トラブルに触れる中で、法的問題を解決することで社会に貢献したいという強い思いから弁護士を志す。離婚や相続といった家事事件のほか、労働問題、不動産法務、企業法務など、様々な案件を取り扱う。
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事業承継とは

事業承継とは、これまでの経営者が経営の第一線から退き、次世代などへ事業を引き継ぐことを指します。
親族へ承継するケースの他、従業員へ承継するケースなどさまざまな手法が存在します。

事業継承との違い

事業「承継」と似た言葉に、事業「継承」があります。

事業承継と事業継承とに、明確な区別はありません。
ただし、「承継」は一般的に事業や理念などを包括的に引き継ぐときに使われることが多い一方で、「継承」は権利や財産などを引き継ぐ意味合いで使われることが多いようです。

事業譲渡との違い

事業譲渡とは、事業承継の中でも特に、他社へ事業を売り渡すことです。
会社全体を売却する場合もあれば、一部の事業のみを切り出して譲渡する場合もあります。

「事業譲渡」と対比して「事業承継」の言葉を使う場合には、事業承継は親族内承継や従業員への承継などに限定して使われることが多いでしょう。

合併との違い

合併とは、2つ以上の会社が1つの会社となることを指します。

合併にはさまざまな形態がありますが、事業承継に際して「合併」という言葉が使われる場合には、自社が他社に吸収合併されることが前提となっていることが多いでしょう。

事業承継の検討に至るよくある理由

一般的に、経営者には定年がありません。
また、長年最前線で働いてきたことから、自己の判断能力や体力に自信がある人も少なくないでしょう。
そのため、事業承継について検討を始める時期が遅くなってしまいがちです。

経営者が事業承継を考え始めるきっかけとしては、自身の病気などで体力の衰えを感じた際や、周囲の同年代の経営者から承継についての話を聞いた場合などが多いといえます。

事業承継の対象になる3つの資産

事業承継の対象になる主な資産には、次の3つが存在します。
漏れなく承継を行うためには、これらそれぞれについて次世代へと引き継ぐ方法を検討していかなければなりません。

自社株式

自社株式は、事業承継においてもっとも重要となる資産です。

「さほど儲かっていないのだから、自社株に価値などない」と考えている経営者は少なくありません。
しかし、儲かっていないからといって株式の評価額が低いとは限りません。
自社株の評価は、利益額のみをベースに算定されるわけではないためです。

そのため、たとえ近年は儲かっていなかったとしても、会社が遠い昔に買った土地を保有している場合などには、自社株に思わぬ高額な評価が付くこともあります。

会社に貸している土地や建物

経営者は、自己名義の土地や建物を会社に賃貸していることが少なくありません。
この土地や建物がないと事業が立ち行かなくなる可能性がありますので、これらの不動産も、適切に次世代へ承継することが必要です。

会社への貸付金

特に中小企業では、経営者自身のお金を会社に貸しているケースが散見されます。
また、特に返済を求めるつもりはなく、単なる「帳簿上の数字」だと認識していることも少なくありません。

実際に、本人が唯一の株主であり代表取締役である限り、これが問題となるケースはほとんどありません。

しかし、いざ事業承継をしようとすると、これが障害となる場合があります。
なぜなら、会社への貸付金は個人の資産に該当するため、この貸付金を次世代に引き継げば、相続税の対象となるからです。

また、相続で貸付金が相続人間に分散すれば、後継者である相続人以外の相続人から、早期の返済を求められるかもしれません。

事業承継の方法4パターンを紹介

事業承継には、さまざまなパターンが存在します。
中でも、主なものとしては次の4つが挙げられます。

親族内承継

親族内承継とは、事業を子や兄弟など親族へと引き継ぐ方法です。
親族内承継は、もっとも代表的な事業承継のパターンであるといえるでしょう。

メリット

親族内承継の最大のメリットは、早期からの後継者教育に取り組みやすい点です。
また、社内や取引先からの理解も得やすい方法であるといえるでしょう。

さらに、特に子などの法定相続人が後継者となる場合には、相続税を活用した税制上の優遇を受けられる点もメリットの一つです。

親族内承継がおすすめのケース

親族内に有力な後継者候補がいる場合には、この方法を第一に検討すべきでしょう。
また、会社を外部に渡さず親族内で永続させたいと考えている場合にも、この方法が第一候補となります。

従業員への承継

従業員への承継とは、事業を親族ではない従業員へと引き継ぐ方法です。

メリット

従業員への承継の最大のメリットは、長年一緒に働いて手腕や気心の知れた人の中から後継者候補を選ぶことができる点です。
また、後継者候補が他の従業員から見ても優秀な人であれば、社内の理解や安心感も得やすいでしょう。

従業員への承継がおすすめのケース

この方法を取るためには、後継者として信頼できる従業員が存在することが大前提となります。
このような従業員がおり、かつ承継に同意してくれる場合には、従業員承継を検討するとよいでしょう。

ただし、従業員への承継の場合には、従業員に株式を渡す方法がハードルとなる場合が少なくありません。
無償で株式を渡せば高額な贈与税の対象となる他、株式を買い取ってもらおうにも、承継する従業員に買い取るだけの資金がないことが少なくないためです。

M&A

事業承継におけるM&Aとは、事業を他社に買い取ってもらうことです。
M&Aによる事業承継は、近年増加傾向にあります。

メリット

M&Aによる承継のメリットは、社内や親族に適切な候補者がいない場合であっても、会社や従業員の雇用を継続できる点にあります。

また、売却の対価としてまとまった資金を得ることができることや、借入金の連帯保証からも外れることができることなどから、資金面でもメリットを享受しやすいでしょう。

M&Aがおすすめのケース

事業や従業員の雇用を継続させたいにもかかわらず、親族や従業員に適切な後継者候補がいない場合や、親族には経営の苦労を継がせたくないなどと考えている場合には、この方法を選択するとよいでしょう。

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株式上場

株式上場とは、会社の株式を市場に公開し、自由に売買ができる状態にすることです。

メリット

株式上場の最大のメリットは、会社の知名度が上がって優秀な人材が集まりやすくなり、より会社を永続しやすくなる点にあります。

また、上場によりまとまった資金を手にすることが可能である点も大きなメリットです。
そもそも、上場の要件を満たすような規模の企業であれば、自社株の評価も大きいことが多いため、まとまった資金を得ることで相続税の納税がしやすくなるでしょう。

株式上場がおすすめのケース

上場の審査要件を満たす規模の会社を経営している場合であり、かつ、自分の退任後もより会社を成長させていきたいと考える場合には、この方法を検討するとよいでしょう。

また、上場企業が生まれることで地域の活性化にもつながるため、その地域に貢献したいと考える場合にもおすすめです。

事業承継に関する中小企業の現状・問題

中小企業における、事業承継の現状と問題は、次のとおりです。

中小企業の数

少し古いデータではあるものの、中小企業庁の調査によれば、2016年時点での中小企業と小規模事業者の数は357.8万者であるとされています。※1
また、このうち小規模事業者が304.8万者を占めています。

経営者の平均年齢

東京商工リサーチの調査によれば、2020年12月時点における経営者の平均年齢全国の社長の平均年齢は62.49歳で、前年調査から0.33歳伸びたとされています。※2

また、社長の年齢分布は70代以上の構成比が31.8%で、2年連続で最多レンジとなりました。

後継者が見つかっている企業割合

帝国データバンクの調査によれば、2021年の調査時点で、調査対象となった全国・全業種約26万6000社のうち後継者が「いない」または「未定」と回答した企業が約16万社(調査対象の61.5%)にのぼったとされています。※3

後継者が見つかっていない企業は少なくなく、後継者難にある現状を示す結果となっています。

事業承継の一般的な進め方

続いては、事業承継の一般的な進め方の例を紹介します。

実際の事業承継の進め方は企業によってさまざまです。
なぜなら、企業ごとに状況や事業承継へのハードルなどが大きく異なるからです。

STEP1:自社に合った事業承継の方法を検討する

はじめに、経営者が中心となり、自社に合った事業承継の方法を検討するところからスタートします。
なぜなら、子など特定の親族へ承継させたいのか、M&Aなど外部企業へ承継させたいのかなどにより、その後の進め方が大きく異なってくるためです。

迷いがある場合にはそれぞれのメリットデメリットをよく検討し、方向性を定めていくとよいでしょう。

自社のみで検討していては、検討すべき項目に漏れが生じたり、承継へのハードルの洗い出しが困難であったりするため、事業承継に強い弁護士などの専門家とともに検討していくことをおすすめします。

STEP2:関係者と相談やすり合わせする

方向性が決まったら、次に、関係者との相談やすり合わせを行います。
反対意見が出たり議論が紛糾したりする可能性がありますので、関係者へ話す前に、方向性に関して意見をしっかりと確立しておきましょう。

また、弁護士立ち合いのもとで話し合いを進めることも選択肢の一つとなります。

STEP3:計画を実行する

関係者との相談やすり合わせが済んだら、最後に、事業承継の計画を実行します。
実行に際しては、あらかじめ専門家とともにスキームを組み立て、時間をかけて実行していくことが多いでしょう。

たとえば、株式の場合、株価が高いにもかかわらず、後継者たる親族や従業員にそのまま株式を贈与してしまえば、高額な税負担が生じるおそれがあります。
持ち株会社の設立や種類株式の活用など、企業に合ったスキームを構築し、慎重に実行していくことが必要です。

事業承継の「失敗」とは?よくある原因

事業承継を失敗に終わらせないために、失敗のよくある原因を知っておきましょう。

失敗の定義

事業承継の失敗は、主に「後継者選びの失敗」と、税金など「金銭面での失敗」に大別されます。

後継者選びの失敗とは、たとえば子を後継者として指名したものの、経営者としての能力が足らずに企業を経営危機に陥れてしまったり、社内を混乱させてしまったりする場合などです。

また、金銭面の失敗としては、安易に後継者候補に株式を渡したところ、高額な税金が課されてしまう場合などが考えられます。

よくある原因

事業承継が失敗する最大の原因は、事業承継に十分な時間が取れないことです。
特に、高齢になってから事業承継を検討し始めた場合には、十分な時間が取れないことが少なくありません。

そのため、後継者候補の能力を見極めたり、承継に必要な経営ノウハウを伝達したりする時間が足りなくなる可能性があります。
途中で能力不足に気がついても、時間的猶予のなさから引き返せない場合もあるでしょう。

また、コツコツと株式を移転したり、株価を下げる対策を取ったりする時間がないために、高額な税金を支払わざるを得なくなるリスクもあります。

正しい事業承継対策。成功させるコツ

事業承継を成功させるためのコツは、次のとおりです。

時間に余裕を持って行う

事業承継を成功に導く最大のコツは、時間的な余裕をもって事業承継に取り組むことです。
早くから事業承継に取り掛かることで、さまざまな方法をじっくり比較検討することができる他、税務上の対策もしやすくなります。

また、後継者候補について、時間をかけて育てていくことや、少しずつ権限を委譲していくこともできます。

さまざまな方法を多角的に検討する

事業承継を成功させるためには、一つの方法に固執するのではなく、さまざまな方法を多角的に検討することをおすすめします。

たとえば、M&Aになんとなく良くないイメージを持っていたとしても、よく検討してみた結果、自社にとって最適な手法である可能性も否定できません。

事業承継に詳しい専門家と共に進める

事業承継にはさまざまな注意点があり、自社のみで問題なく進めることは容易ではありません。
専門家であっても、1人で事業承継にまつわるすべてをカバーできることは稀であり、チームを組んで解決にあたるほどです。

安易に進めてしまうリスクの代表的なものが、思わぬ高額な税金が課されることです。
また、許認可を取得している場合には、許認可要件を満たさなくなり許可が取り消されてしまう可能性もあります。
さらに、法的なスキームの構築が甘ければ、企業を乗っ取られてしまうリスクもあるでしょう。

事業承継は決して簡単なものではないこと知ったうえで、適切な専門家にサポートを受けることをおすすめします。

Authenseの弁護士に相談するメリット

弁護士や法律事務所にはそれぞれの専門性があり、すべての弁護士が事業承継に詳しいわけではありません。
そのため、事業承継の相談をする際には、その事務所が事業承継に力を入れているかどうかをよく見極める必要があります。

Authense法律事務所には事業承継を専門とした弁護士チームが存在しますので、安心してご相談いただけます。

また、事業承継では、税理士や社会保険労務士などさまざまな専門家が連携して解決にあたるべき場面が少なくありません。
Authense法律事務所では、他の資格者もタッグを組んでおりますので、総合力で事業承継をサポートすることが可能です。

事業承継にかかる税金は?

事業承継をする際には、税金面にも注意を払わなければなりません。
たとえば、後継者へ株式を移転する際には、高額な贈与税がかかる可能性があります。

また、株式を後継者候補が買い取る場合やM&Aで他社に売却する際などには、経営者に対して譲渡所得税が課税される可能性が高いでしょう。

他にも、スキームによっては会社自体や他の株主に税金が課される可能性がありますので、株式の安易な移転は禁物です。

対象になる公的支援制度について

事業承継には、さまざまな公的支援制度が存在します。

中でも、事業承継税制を活用することで、株式の譲渡などにかかる贈与税や相続税を100%猶予してもらうことが可能です。※4
活用にはさまざまな要件や注意点がありますので、事業承継のサポートを受ける専門家とよく相談をしたうえで、活用を検討するとよいでしょう。

まとめ

事業承継の準備を早くから始めることで、とることのできる手法の選択肢が広がります。
また、後継者候補の育成にも時間をかけられることでしょう。
事業承継は、ぜひ早めからのご検討をおすすめします。

Authense法律事務所では、企業の事業承継支援に力を入れています。
事業承継でお悩みの際や、これから事業承継について考えていこうという場合には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

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