コラム
公開 2021.06.01 更新 2021.10.08

2021年のeスポーツの市場規模と賞金規模はどうなる?

2021年のeスポーツの市場規模と賞金規模はどうなる?

eスポーツの大会開催例を交えながら、賞金規模や今後の展望、eスポーツ大会の賞金と景表法との関係などについて解説します。近年、eスポーツ市場が活況となっています。中には数億円以上の賞金規模となる大会もあり、市場規模も拡大していることから、ますます注目が集まっています。

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eスポーツとは

一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)によれば、「eスポーツとは『エレクトロニック・スポーツ』の略であり、広義には電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称」であるとされています。※1

通常のスポーツの対戦では、対戦相手と実際に対面し、電子機器などを用いず、自分の身体や道具を使って行うことが一般的です。
これに対して、eスポーツはコンピュータなどを操作することにより、相手との対戦を行う点が大きな特徴だと言えます。
また、相手と別々の場にいながらにして、オンラインで対戦をすることができる点も特徴だと言えるでしょう。

eスポーツの歴史

eスポーツという言葉が使われはじめたのは、2000年頃からだとされています。※1
しかし、実はそれ以前、コンピューターゲームが誕生した1980年代から、ゲームの大会自体は多く開催されていました。
1990年代にはインターネットが普及したこともあり、ゲームのスポーツ化が加速したと言われています。

その後、ESWC(Electronic Sports World Cup)がフランスで開催されたり、OCA(アジアオリンピック評議会)主催第2回アジア室内競技大会における正式種目への採用を経て、2011年には第1回eスポーツJAPAN CUPが開催されました。

さらに、いずれも一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)の前身となる一般社団法人日本eスポーツ協会と一般社団法人e-sports促進機構が2015年に、一般社団法人日本プロeスポーツ連盟(2017年に、一般社団法人日本eスポーツ連盟に名称変更)が2016年に、それぞれ設立されています。

また、結果的には見送られたものの、2024年にパリで開催予定のオリンピック・パラリンピックの新種目としてeスポーツの採用が検討されたことも、記憶に新しいのではないでしょうか。※2
この頃から、新聞の見出しなどでもたびたびeスポーツが話題に上るようになり、より身近なものとなってきました。

近年のeスポ―ツの大会開催例

では、実際に開催されているeスポーツの大会には、どのようなものがあるのでしょうか?
日本と世界とでの開催に分けて紹介します。

日本のeスポーツ大会

日本のeスポーツ大会には、次のようなものがあります。

全国高校eスポーツ選手権

全国高校eスポーツ選手権は、「eスポーツを新たな文化に」という想いから誕生した大会です。
2018年に開催された第1回大会では153チーム、第2回は222チームが参加しています。

第3回大会の決勝は、2021年3月13日・14日に開催されました。
大会種目は、オンライン対戦ゲームである「リーグ・オブ・レジェンド」と「ロケットリーグ」です。

リーグ・オブ・レジェンドは、チームの仲間と協力して敵チームの本拠地に攻め込むゲームで競技性が高く、eスポーツタイトルとして世界中で認められています。
ロケットリーグは、ジャンプや飛行が可能な「バトルカー」を操作してサッカーを行うゲームです。

第4回大会の開催も決定しており、予選は2021年の秋、決勝は2021年12月に予定されています。

全国高校eスポーツ選手権の主催は、一般社団法人全国高等学校eスポーツ連盟と毎日新聞ですが、文部科学省が後援しています。
https://www.ajhs-esports.jp/

RAGE

RAGEは、株式会社CyberZ、エイベックス・エンタテインメント株式会社、株式会社テレビ朝日の3社が協業し運営する、eスポーツイベント及びeスポーツリーグの総称です。※3、4、5
2015年に誕生し、日本最大級のeスポーツ大会へと成長しました。
RAGEは1つの大会の名称ではなく、計20を超えるゲームタイトルのイベントを実施してきたeスポーツの総合イベントブランドです。

これまで国内大会を多く開催してきましたが、2020年8月29日・30日には、初の国際大会となる「RAGE ASIA 2020」を完全オンラインで開催しています。
RAGE ASIA 2020では、バーチャル空間「V-RAGE」での動画配信など、新たな試みをしたことでも話題となりました。
RAGE ASIA 2020での大会種目は、中国ネットイースの「荒野行動」や米エレクトロニック・アーツの「APEX Legends」などバトルロイヤル系ゲームです。
https://rage-esports.jp/

STAGE:0

STAGE:0は、eスポーツ競技の発展と世界で活躍する日本人選手の輩出を目指し、全国のさまざまなパートナーと協力して立ち上げられた国内最大級の高校対抗eスポーツ大会です。
2020年は1,779校、2,158チーム、5,555名の高校生が参加しており、これまでに2度開催されています。

2021年大会のエントリーも始まっており、大会タイトルは2020年大会に引き続き、「クラッシュ・ロワイヤル」、「フォートナイト」及び「リーグ・オブ・レジェンド」の3タイトルです。

「クラッシュ・ロワイヤル」とは、最大8枚で構成されるキャラクターのカードデッキを駆使し、3分間の戦闘中、自分のタワーを守りつつ敵のタワーを攻める、戦略性の高いリアルタイム対戦型ゲームです。
また、「フォートナイト」とは、100人の中から最後の一人やチームまで生き残って「ビクトリーロイヤル(「ビクロイ」との略称で呼ばれています。)」を勝ち取る、バトルロイヤルシューティングゲームです。
いずれのタイトルも、多くの大会が開催されています。

STAGE:0のトップスポンサーは日本コカ・コーラ株式会社で、文部科学省などが後援しています。
https://stage0.jp/

世界のeスポーツ大会

一方、世界のeスポーツ大会には、次のようなものがあります。

World Cyber Games

World Cyber Gamesは韓国の企業が開催しているeスポーツ代表的な世界大会で、「eスポーツのオリンピック」とも呼ばれています。
2013年の開催で一度は閉鎖されましたが、2019年より復活しています。
賞金総額は60万ドルを超え、世界中が注目するイベントです。※6
https://www.wcg.com/wcg2020

World Electronic Sports Games(WESG)

World Electronic Sports Gamesは、中国のITカンパニー、アリババの子会社であるアリススポーツが2016年よりスタートさせ、以後毎年開催しているeスポーツ大会です。※7
125ヶ国から6.8万人以上が参加しており、2018年大会の賞金総額が550万ドル(約5.8億円)、視聴者数4億人以上を記録したことでも話題となりました。

Evolution Championship Series(EVO)

Evolution Championship Seriesは、格闘ゲームに特化したトーナメント大会です。※8
その歴史はeスポーツ大会としてはかなり古く1996年より開催されおり、日本からも数多くの有名選手が参加しています。

元の運営会社の幹部に対する告発などの諸事情により2021年大会の開催が危ぶまれたものの、2021年3月に株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントが買収したことで、開催が可能となりました。
2021年は、完全オンラインにて「Evo Online」の開催が、8月頃に予定されています。

eスポ―ツの市場規模はどれくらい?

株式会社 KADOKAWA Game Linkageが2020年2月13日に公表した資料によれば、日本のeスポーツ市場規模は2019年に60億円を突破しており、2022年には倍増、2023年には150億円超に拡大すると予測されています。※9

また、中国では国を挙げてeスポーツの普及に力を入れており、そのベースとなるゲーム市場は、中国全体の売上高は2014年には1.9兆円でしたが、2020年は約4.6兆円となり、今なお急成長中です。※10

eスポーツには、日本でも大手企業などが数多く参入しており、今後ますます市場拡大していくことが見込まれると言えるでしょう。

eスポーツの賞金規模と賞金についての法令

eスポーツがニュースとなる際、その賞金についても話題となるケースが少なくありません。
ここでは、eスポーツの賞金規模や、注意すべき法令について解説します。

eスポーツの賞金規模はどの程度?

eスポーツの賞金はその大会によってさまざまですが、高額な賞金を出す大会もあります。
中でも、先ほど紹介したWorld Electronic Sports Gamesは賞金総額が550万ドル(約5.8億円)にものぼり、話題となりました。

また、ゲーム製作会社などが主催するゲームごとの大会も開催されており、「Dota2(ドータ・ツー)」などは賞金もかなり高額です。※11
Dota2の世界大会「The International 2019」の賞金総額は約3,430万ドル(約37億円)であり、優勝チームの賞金は約1,560万ドル(約16億8,000万円)にものぼります。

その他、フォートナイトでも賞金総額約20億円の大会が開催されるなど、高額な賞金を出す大会は数知れません。※12
これほどの賞金を出して大会を開催するのは、主催者側もそれだけの効果を見込んでいるということでしょう。

eスポーツの賞金と景表法

さて、ここで、賞金に関連する日本の法律である景表法について解説しましょう。

景表法とは

景表法は、正式名称は、「不当景品類及び不当表示防止法」であり、「商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的」(景表法1条)とした法律です。※13

つまり、高額景品が当たるかもしれないという懸賞につられて、消費者が必要のないものを購入してしまうような事態を防ぐことなどを目的として制定されています。

eスポーツと景表法

前述のとおり、eスポーツでは高額な賞金が出される大会も多々存在します。
この大会の主催者がゲーム制作会社などである場合には、この賞金が景表法の対象となる可能性があるため注意が必要となります。

なぜなら、大会に参加をするためには、そもそもそのゲームを購入してプレーをする必要がある場合もあるので、この賞金は、ゲーム購入の結果として得られる景品だと考えうるためです。

まず、公正取引委員会告示によれば、「懸賞」とは、「特定の行為の優劣又は正誤によつて定める方法」などにより、景品類を提供する相手方や、その価額を決めることをいうとされています。※14
つまり、eスポーツで対戦相手に勝利することが、「特定の行為の優劣又は正誤によつて定める方法」に該当するのであれば、eスポーツで得られる賞金は懸賞に該当するということです。
懸賞に該当するとすれば、取引価額の20倍(取引価額が5000円未満の場合)又は10万円(取引価額が5000円以上の場合)を超えてはならないという景表法の規制の対象となります。

以上からすると、ゲーム制作会社などが主催する販売するゲームを対象とするeスポーツ大会の賞金は、その販売するゲームソフトの価格の20倍又は10万円を超えられないことになります。
そのため、ゲーム制作会社が、数億円の賞金を出すような大会を適法に開催することは日本では困難であり、これが日本のeスポーツ発展の妨げとなっていました。

JeSUのこれまでの対応

これにつき、JeSUは、公認タイトルによるプロライセンス取得者であれば、賞金を仕事の報酬として受け取ることができるとしてきました。
仕事の報酬である以上は、「景品類の提供」ではなく、「懸賞」に該当しないことから、景表法の規制の対象外となるためです。

2019年消費者庁の回答

しかし、2019年に大きな進展がありました。
JeSUが消費者庁に対して、ノーアクションレター(企業などの事業活動に関し、具体的な行為が特定の法令の規制対象となるかについて、その規定を所管する行政機関に確認し、その行政機関が回答をする手続き。)を提出した結果、景表法における景品類の制限の潜脱と認められるような事実関係が別途存在しない限りにおいては、仕事の報酬などと認められる金品の提供に該当し、景品類の提供にあたらないことから、景表法の規制の対象とならないと考えられるとの回答を得ることができたのです。※15

これにより、「景表法における景品類の制限の潜脱と認められるような事実関係が別途存在しない限りにおいて」、eスポーツの賞金は、そのイベントに興行性がある場合には、仕事の報酬であり景表法の対象とはならず、商品の20倍又は10万円までという景表法の規制の対象とならないということになります。
この点について、JeSUは、配信・観戦が行われないなど、興行と認められないイベントや大会において、参加者の実力などにふさわしくない高額な賞金を提供して、専らゲームの販促のために賞金を提供するような場合には、個別判断によるものの、賞金提供が仕事の報酬の提供にあたらない可能性がある点に留意する必要があるとして、注意喚起をしています。

eスポーツの今後の展望

eスポーツは、今後ますます発展を遂げていくことでしょう。
2021年の冬には、東京タワーフットタウン内にeスポーツスタジアムが開業されることも、その一翼を担いそうです。※16

さらに、高速大容量・低遅延・多接続という特長を持つ5G回線の普及拡大も、eスポーツの発展に多大な影響をもたらすと予想されます。※17
これに関連して、5Gの認知度向上などを目的として、NTTドコモが2021年1月からリーグブランド「X-MOMENT(エックスモーメント)」を立ち上げたことも話題となりました。

また、前述のとおり、賞金への景表法適用について2019年に消費者庁からの回答を得られたことも、今後のeスポーツ大会開催の追い風となることでしょう。

まとめ

eスポーツはまだまだ新しい分野であり、法整備も済んでいるとは言えないのが現状です。
しかし、eスポーツの市場規模は年々拡大しており、今や決して一部のマニアが酔狂しているだけという状況ではありません。

新型コロナのパンデミックを受け、非接触非対面で参加や観戦ができるeスポ―ツ市場は、ますます加速していくものと思われます。
拡大していくeスポーツ市場から日本が取り残されてしまわないためにも、景表法をはじめ、関連しうる法令の早急な整備に期待したいところです。

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