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著作権とは
著作権とは、著作物を保護するための権利です。
著作権は一つの権利ではなく、さまざまな権利が束になっています。
まず、広義の著作権は、狭義の著作権(財産権)と、著作者人格権とに分類できます。
狭義の著作権(財産権)
狭義の著作権(財産権)とは、※1その著作物を利用したりコピーを販売したりする財産的な権利です。
これには、たとえばコピーなどで有形的に複製する権利である「複製権」や、インターネットなどで著作物を送信する「公衆送信権」など多数の権利が含まれています。
狭義の著作権(財産権)は、全部または一部を譲渡することも可能です。
著作者人格権
一方、著作者人格権とは、著作物を創作した人(「著作者」といいます)に固有の権利です。
これには、たとえば著作物を勝手に改変されない権利である「同一性保持権」や、著作物に著作者の氏名を表示するかどうかなどを決める「氏名表示権」などが含まれます。
著作者人格権は、譲渡することができません。
一般的に「著作権」というと狭義の著作権(財産権)全般を指すことが多いものの、このようにさまざまな権利の束であることを押さえておきましょう。
著作権が発生しないもの
著作物の引用について考える前に、そもそも著作物に該当しないもの(10条2項)や著作権の対象とならないもの(13条)を確認しておきましょう。
そもそも著作物に該当しないものは、次のとおりです。
事実の雑報および時事の報道
事実の伝達にすぎない雑報や時事の報道は、※2そもそも著作物に該当せず、著作権が発生しません。
ただし、「事実の伝達にすぎない」新聞記事や雑誌記事はさほど多くありません。
事実の伝達にすぎない報道とは、たとえば「10月31日に元〇〇の〇田一郎氏が死去、75歳」程度の記事くらいでしょう。
その他の大半の記事は「事実の伝達にすぎない」ものには該当せず、著作権の対象となるため、注意が必要です。
著作権の対象とならないものは、次のとおりです。
法令の条文
法令の条文や告示、訓令、通達などは、著作物ではあるものの、著作権の対象とはなりません。
たとえば、日本国憲法や民法、刑法、会社法などの法律のほか、東京都迷惑防止条例、財産評価基本通達などがこれに該当します。
裁判
裁判所の判決、決定、命令及び審判などは、著作物ではあるものの、著作権の対象とはなりません。
そのため、判例などは自由に利用することが可能です。
無断転載厳禁!著作権が発生しているものの例
著作権が発生している著作物は、原則として無断で利用することはできません。
著作権の対象となる著作物は、非常に幅広く設定されています。
有名な小説や絵画などはもちろんのこと、以下のものも、思想または感情を創作的に表現したものであれば著作物に該当し、著作権が発生します。
新聞や雑誌の記事
新聞や雑誌の記事は、原則として著作物に該当し、著作権が発生しています。
先ほど解説した「事実の伝達にすぎない」ものは著作物ではなく著作権の対象とされないものの、大半の記事はこれには該当しません。
また、新聞や雑誌に掲載されている写真も、著作物に該当し、著作権が発生し得ます。
個人や企業のブログ記事
著作権の対象は、いわゆる「芸術作品」などに限定されているわけではありません。
そのため、企業や個人が執筆したブログ記事なども、著作物に該当し、著作権が発生し得ます。
SNSに個人が投稿した絵や写真
著作権の対象となるかどうかに、著作者が著名であるかどうかは関係ありません。
そのため、一般個人がSNS上に投稿した写真やイラストなども、著作物に該当し、著作権が発生し得ます。
なお、「上手い・下手」も関係がなく、たとえ幼児が描いた絵であっても、著作物に該当し、著作権が発生し得ます。
地図
原則として、地図は、著作物に該当し、著作権が発生します。
そのため、たとえばGoogle マップを無断で会社の広告物に印刷して利用することは、著作権侵害となります。※1
なお、Google マップなどはリンクを設置してホームページに埋め込むことができ、この方法であれば、原則として著作権の侵害とはなりません。
判例の解説
先ほど解説したように、判例自体は著作権の対象となりません。
そのため、判例集などは自由に作成したり販売したりすることが可能です。
一方、たとえば弁護士が判例を解説した記事などは、著作権の対象となります。
著作権が発生している著作物を利用する方法
著作権が発生している著作物を利用する方法は、次のとおりです。
許諾を得る
もっとも基本となる方法は、著作権者から許諾を得ることです。
許諾を得て所定の利用料を支払うことで、著作権者と取り決めた範囲において著作物を利用することが可能となります。
私的利用にとどめる
著作物の利用が私的利用にとどまる場合には、著作物を自由に複製し、利用することが可能です。
たとえば、自分の文章力向上のために小説をすべて書き写したり、気に入った書籍を兄弟にも読んでもらうために全文のコピーをしたりすることは、著作権侵害とはなりません。
ただし、たとえば会社の部署内に新聞のコピーを配布することや、個人で運営する趣味のブログに著作物を掲載することは私的利用の範囲を超えており、著作権侵害となる可能性が高いでしょう。
私的利用を理由に著作物を無断で利用しようとする際には、その行為が本当に私的利用といえるのかどうか、あらかじめ確認することをおすすめします。
適正に引用する
著作物を適法に利用する3つ目の方法は、適正に引用をすることです。
適正な引用を行えば、著作権者の許諾や利用料の支払いをすることなく著作物を利用することができます。
適正な引用方法は、次でくわしく解説します。
著作権が発生している著作物の引用ルール
著作権が発生している著作物を引用する際のルール(32条)は、次のとおりです。
これらのルールから外れてしまうと引用が成立せず、著作権侵害となる可能性がありますので、注意しましょう。
著作物が公表されていること
1つ目のルールは、引用元となる著作物が公表されていることです。
引用元となる著作物が非公開である場合には、たとえ他の引用ルールを守っていたとしても、著作権侵害となります。
また、この場合には著作権侵害に加え、著作者が公表するかどうかや公表する方法などを決める権利である「公表権」を侵害する可能性も高いでしょう。
公正な慣行に合致すること
2つ目のルールは、引用の公正な慣行に合致することです。
公正な慣行としては、主に次のものが挙げられます。
引用部分を区別する
引用する際には、どこが引用部分であるのかがわかるよう、区別して表記しましょう。
たとえば、引用部分を「“ ”」マークで区切ったり、その部分のフォントを変更したりすることなどが挙げられます。
引用元を明示する
引用の際には、引用元を明示しましょう。
引用元として表記すべき内容は、次のとおりです。
- 引用元が書籍の場合:タイトル、著者名、発行年、該当ページ
- 引用元がウェブサイトの場合:ウェブサイト名、URL
改変しないこと
引用をする際には、元の文章を改変してはなりません。
改変をした場合には引用のルールから外れ、著作権侵害となってしまいます。
引用元の文章などに修正を加えることなく、そのまま記載しましょう。
引用の目的上正当な範囲内で行われること
引用の3つ目のルールは、引用がその目的に照らして正当な範囲内で行われることです。
本来、引用とはその引用元の文章を自分の意見を補足するために利用したり、その引用元の文章に適切な批判を加えたりするために行うものです。
そのため、次の2点がポイントとなります。
不正な目的でないこと
引用が不正な目的で行われている場合には、著作権侵害となり得ます。
たとえば、ウェブサイト上での広告収入(いわゆる「アフェリエイト」収入)を得る目的で多数の引用を行う場合などには、引用の目的上正当な範囲内であるとはいいづらく、著作権侵害となる可能性があるでしょう。
自社コンテンツが主であること
先ほどもお伝えしたように、引用は本来、その引用元に記載されている内容を自分の意見を補足するために利用したり、その引用元の文章に適切な批判を加えたりするために行うものです。
この点を踏まえれば、当然ながら自社コンテンツが「主」であり、引用元の文章は「従」であるはずです。
そのため、たとえばある弁護士事務所のお役立ち記事などをそのまま何千文字分もコピペして、最後に「このような情報がありますので、皆さんも知っておきましょう」と補足する程度では、「主」と「従」が逆転しているため適切ではありません。
引用元を記載したり引用部分を区別したりといった形式面のみさえ守ればよいわけではありませんので、この点はよく理解しておきましょう。
著作権を侵害されたら
自社や自分のコンテンツが引用のルールに則らずに転載されるなど著作権を侵害されている場合には、どのような対応を取ればよいのでしょうか?
著作権を侵害された場合に取り得る主な法的対応は、次のとおりです。
弁護士へ相談する
著作権の侵害について法的対応を検討している場合には、まず著作権にくわしい弁護士へご相談いただくことをおすすめします。
ご自身のみで著作権侵害の事実を法的に整理し、相手に対して適切な法的制裁を科すことは容易ではないためです。
差止請求をする
著作権を侵害された場合には、著作権を侵害しているコンテンツの差し止め請求が最優先となることが多いでしょう。
たとえば、著作物である文章が適切な引用の体によらず盗用されているのであれば、そのウェブサイトの公開を停止したり該当部分の削除をしたりすることを求めるなどが挙げられます。
損害賠償をする
著作権の侵害に対しては、損害賠償請求をすることも一つの選択肢となります。
損害賠償請求とは、著作権の侵害によって被った損害を相手に金銭で賠償してもらう民事の請求です。
認められる損害賠償額は著作権の侵害の態様などによってさまざまですので、あらかじめ弁護士へご相談のうえ、そのケースで想定される適正額を把握したうえで請求するとよいでしょう。
刑事告訴をする
著作権を侵害された場合、相手を刑事告訴することも法的対応の一つとなります。
刑事告訴とは、相手が罪を犯していることを警察や検察に申告し、処罰を求める意思表示のことです。
著作権の侵害は、刑事罰の対象となります。
著作権の侵害で有罪となった場合、法定刑は10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金です(119条)。
また、侵害者が法人である場合には、※3法人の代表者を罰するほか、法人に対して3億円以下の罰金が科される可能性があります(124条)。
著作権の侵害のうち、一部は告訴がなくても起訴できる非親告罪となりました。
しかし、たとえばファンの間で著作権の侵害が大きく問題視されるような有名作品についての著作権の侵害などでない限り、検察側が告訴なしに積極的に著作権の侵害を取り締まることは期待できません。
そもそも、検察側からすればどれがオリジナルであり、どれが盗用であるのかわからないケースも少なくないでしょう。
そのため、実際にはほとんどのケースで、相手を著作権法上の罪に問うためには被害者側からの告訴が必要になるといえます。
まとめ
原則として、他人の著作物を無断で使用することはできません。
ただし、適切な引用のルールに従うことで、必要な範囲に限り他者のコンテンツを使用することが可能となります。
引用のルールを誤れば単なる無断使用として著作権の侵害に該当する可能性がありますので、引用ルールについてしっかりと理解し、適切な引用をするよう注意しましょう。
また、自社のコンテンツが引用の範囲を超えて他者に無断盗用されている場合には、法的手段をとることが検討できます。
この場合には、弁護士へ早期にご相談いただくことがおすすめです。
Authense法律事務所には、著作権法などにくわしい弁護士が多数在籍しており、著作権侵害などの問題を数多く解決しております。
著作物の利用やコンテンツの盗用などでお困りの際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。