コラム
公開 2024.08.17

単体5280_新規_LPOサービス(法務BPO)とは?ALSPとの違いを弁護士がわかりやすく解説

LPO(リーガルプロセスアウトソーシング)サービスの活用が広がっています。

LPOサービスでは、どのような業務の委託が可能なのでしょうか?
また、企業がLPOサービスを活用することには、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

今回は、LPOサービスの最新動向を紹介するとともに、サービスの概要や活用する企業にとってのメリット・デメリットなどについて弁護士がくわしく解説します。

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LPO(リーガルプロセスアウトソーシング)サービスとは

LPOサービスとは、「リーガルプロセスアウトソーシングサービス(Legal Process Outsourcing Service)」の略称です。
つまり、企業の法務部門の全部または一部を、アウトソーシング(外部委託)することを指します。
委託先は、原則として弁護士事務所や弁護士法人となります。

ALSPとの違い

LPOと混同されやすいものに、「ALSP」があります。

ALSPは、代替法律サービスプロバイダー(Alternative Legal Solution Provider)」の略称です。
ALSPとは法務コンプライアンス関連サービスを提供する法律事務所ではない事業者全般を指し、欧米などで広がっています。
つまり、LPOは弁護士事務所などが提供するアウトソーシングサービスであるのに対し、ALSPの提供者は弁護士ではないということです。

なお、日本では弁護士法の規定により、弁護士ではない者が法律相談に乗ったり法律事件の代理をしたりすることはできません。
そのため、ALSPの可能性は、欧米と比較して限定的だといえるでしょう。

BPOとの違い

LPOと似たものに、「BPO」があります。

BPOは、「ビジネスプロセスアウトソーシング(Business Process Outsourcing)」の略称です。
LPOがリーガルプロセスを中心としたアウトソーシングであることに対し、BPOでアウトソーシングの対象となるのはコールセンター業務や経理事務、受付業務、人材採用などさまざまなビジネスプロセスです。
つまり、BPOのうち、アウトソーシング対象が法務業務であるものがLPOということです。

一般的な顧問契約との違い

弁護士との一般的な顧問契約では、弁護士が主体的に企業の業務に関わることはありません。
あくまでも受動的に、企業からの相談やトラブルに対応するのが顧問弁護士の役割です。

また、弁護士への相談範囲も、法的課題に限られることが一般的でしょう。
一方、LPOでは弁護士が企業内部のフローに関わり、能動的に意思決定に関わることもあります。

また、顧問契約では個別の相談やトラブル、契約書ごとの対応となることに対し、LPOでは依頼した範囲でのパッケージでの対応となることも大きな違いです。

LPOサービスの最新動向

Grand View Research, Inc.の最新レポートによると、世界のLPOの市場規模は2023年から2030年にかけて年平均成長率31.4%、2030年には1,178億9,000万米ドルに達すると推定されています。※1
一方、日本ではLPOの認知度はまだ高いとはいえません。

しかし、働き方改革が推進され就労人口がますます減少する中、企業による法務担当者の需要は高く、法務経験者の求人倍率は1倍を超えている状況です。
このような状況下では、今後も多くの企業がさらなる業務効率化に取り組まざるを得ず、LPOサービスを活用する企業は今後一層増加していくことと予想されます。

LPOサービスの主なサービス内容

LPOを活用した場合、どのような業務の委託が可能なのでしょうか?
ここでは、LPOサービスの一般的な内容を紹介します。

  • 法務相談
  • 契約書作成・レビュー
  • 広告審査
  • コーポレート業務対応
  • ビジネスの適法性診断

ただし、LPOサービスの具体的な内容は、サービスを展開している弁護士事務所によって異なる可能性があります。
実際にLPOの活用をご検討の際は、アウトソーシング先の候補である弁護士事務所に具体的なサービス内容をご確認ください。

法務相談

LPOサービスでは、法律相談が可能です。
自社の法務部門に相談するように、アウトソーシング先の弁護士に相談ができます。

契約書作成・レビュー

LPOサービスでは、契約書の作成や契約書レビューが可能です。

契約書に不備があると、トラブルの原因となったりトラブル発生時に対応が困難となったりするおそれがあります。
契約書関連の業務は多くの企業の法務部門において比重の高い業務の一つであり、アウトソーシングの需要が特に高いところでしょう。

広告審査

LPOサービスでは、広告審査が可能です。

広告を出稿する際は消費者契約法や薬機法などさまざまな法令違反がないことを確認しなければなりません。
法務部門にとって負担の重い業務の一つであり、契約書レビューと並んでアウトソーシングの需要が高いと考えられます。

コーポレート業務対応

LPOサービスでは、コーポレート業務(機関法務)への対応が可能です。

コーポレート業務としては、株主総会の開催やステークホルダーに対する窓口対応、登記手続きなどが挙げられます。
また、上場企業では開示業務などへの対応も生じます。

会社の規模が大きく株主などのステークホルダーが多いほど、重要性を増す業務の一つです。

ビジネスの適法性診断

LPOサービスでは、ビジネスの適法性診断が可能です。

新たに展開したビジネスが何らかの法令に抵触していると、後に大きな方向転換を迫られる事態となったり罰則の対象となったりするおそれがあります。
そのため、特に前例の少ないビジネスを展開する際は、ビジネスモデルの検討段階における適法性診断が必須です。

新規ビジネスを展開するスタートアップなどを中心に、非常に重要な業務の一つといえるでしょう。

企業がLPOサービスを活用するメリット

企業がLPOサービスを活用することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、主なメリットを5つ紹介します。

法務業務の質が向上する

1つ目は、法務業務の質が向上することです。

法務業務は法務部員の能力に左右されることが少なくありません。
また、トラブルが生じるまで不備などに気付きにくい点が、法務業務の恐ろしいところでもあります。

一方、LPOサービスは弁護士が企業法務を熟知した弁護士が法務業務を担うため、法務業務の質を向上させることが可能です。

自社の本業に注力しやすくなる

2つ目は、自社の本業に注力しやすくなることです。

急速に成長した企業やスタートアップなどでは明確な法務担当者がおらず、経営陣や経理担当者などが事実上兼務しているケースもあるでしょう。
しかし、法務業務は決して片手間でできるものではなく、法務業務のボリュームが増えれば本業を圧迫する事態となりかねません。

LPOサービスを活用することで、法務業務を安心して任せることが可能となり、自社の本業の注力しやすくなります。

人材の雇用や育成負担が減る

3つ目は、人材の雇用や育成の負担が減ることです。

人手不足が叫ばれる昨今、優秀な法務部員を採用することは容易ではありません。
また、よい人材を採用できても、法令は適宜改正されるとの性質上、法務業務の質を維持するには定期的に研修などに参加させる必要もあるでしょう。

LPOサービスを活用する場合、自社で法務担当者を新たに雇用する必要がなくなります。
また、企業が研修などにかかるコストを自社で負担する必要もありません。

法務業務の質が安定する

4つ目は、法務業務の質が安定することです。

せっかく優秀な法務部員を採用できても、その者が退職したり長期休暇に入ったりすれば、法務業務が立ち行かなくなるおそれがあります。
また、法務部員が複数いても優秀な者の能力に依存していた場合、その者の退職などによって質が低下するおそれもあるでしょう。

一方、LPOサービスはその弁護士事務所に属する複数人がチームを組んで企業の法務業務を担うことが一般的です。
そのため、ある者の退職などによって法務業務の質が変動する事態を避けやすくなります。

弁護士に優先的な対応を受けやすい

5つ目は、トラブル発生時などに、弁護士に優先的な対応を受けやすいことです。

優秀な弁護士は多忙であることが多く、トラブル発生時にはじめて相談しようにも、優先順位が遅くなる可能性が低くありません。
一方で、顧問契約を締結している場合やLPOサービスを活用している場合には、弁護士に優先的な対応が受けやすくなるでしょう。

中でも、LPOサービスでは企業の法務担当者として弁護士がトラブル発生に早期に気付くことができるため、より早期の対応が可能となります。

LPOサービスを活用する主なデメリット

企業がLPOサービスを活用することには、どのようなデメリットがあるのでしょうか?
ここでは、主なデメリットを2つ解説します。

顧問契約よりもコストがかさむことがある

1つ目は、顧問契約と比較してコストがかさみやすいことです。

LPOサービスでは、顧問契約よりも弁護士が密接に企業にコミットします。
そのため、個々の案件や相談について対応する顧問契約と比較して、月額料金が高くなる傾向にあります。

ただし、優秀な法務部員を複数雇用することと比較すれば、安価であることが一般的でしょう。
費用負担を抑えたい場合は、外注するサービスの内容を限定することも一つの方法です。

社内に法務ノウハウが蓄積しにくい

2つ目は、社内に法務ノウハウが蓄積しにくいことです。

LPOサービスを活用して法務部門をすべて外注した場合、社内に法務機能が不要となります。
その結果、社内にノウハウが蓄積しづらいことはデメリットといえるでしょう。

LPOサービスを活用する流れ

LPOサービスの活用を検討している場合、どのような手順で活用を進めればよいのでしょうか?
最後に、企業がLPOサービスを活用する流れを紹介します。

依頼を検討している事務所を探す

はじめに、LPOサービスを依頼する弁護士事務所の候補を探します。

なお、すべての弁護士がLPOサービスを展開しているわけではありません。
また、事務所によって対応できる地域やサポート体制などはまちまちです。

そのため、まずはLPOサービスを展開している事務所を複数探し、その中から問い合わせる事務所を絞るとよいでしょう。

サービスについて問い合わせる

LPOサービスを展開している事務所を見つけたら、その事務所にサービスの概要について問い合わせます。
はじめは電話やコンタクトフォームなどで問い合わせることが多いでしょう。

なお、Authense法律事務所では「ALS(企業法務弁護士の法務アウトソースサービス)」との名称でLPOサービスを展開しています。
LPOサービスの活用に関するお問い合わせやお見積もりは無料であるため、お気軽にご相談ください。

サービス内容や料金プランの提案を受ける

LPOサービスの内容や料金は、企業の規模や希望する外注業務の量、内容などに応じて変動することが一般的です。
問い合わせの後は、企業の状況などがヒアリングされ、その内容に応じてサービスメニューや料金プランが提案されます。

契約を締結する

弁護士事務所側からの提案を受け、サービス内容や料金などに納得ができたら契約を締結します。
契約を締結する際は、1か月単位や1年単位など、契約期間を確認しておきましょう。

まとめ

LPO(リーガルプロセスアウトソーシング)サービスの概要や近年の動向、BPOやALSPとの違いなどについて解説しました。

人手不足の問題が顕在化する中、LPOサービスの活用を検討する企業が増えています。
法務部門の機能をアウトソーシングすることで自社の本業に注力しやすくなるほか、法務業務の質が安定的に高まることなどがメリットです。

一方で、法務業務に関するノウハウが自社に蓄積しない点がデメリットであり、活用するか否か長期的な視点で検討するとよいでしょう。

Authense法律事務所では「ALS(企業法務弁護士の法務アウトソースサービス)」との名称でLPOサービスを展開しており、企業のニーズに応じて複数のプランを設けています。
LPOサービスの活用に関心がある際や、LPOサービスについて見積もりをご希望の際などには、Authense法律事務所までまずはお気軽にお問い合わせください。
予算や状況、外注を予定している業務内容などに応じて、最適なサポートプランをご提案いたします。

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