株主総会が終了したら、議事を株主総会議事録にまとめなければなりません。
では、株主総会議事録は、なぜ作成が必要なのでしょうか?
また、株主総会議事録は、どのように作成すればよいのでしょうか?
今回は、株主総会議事録の書き方や記載事項、押印の要否などを解説するとともに、株主総会議事録のひな型も紹介します。
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株主総会議事録とは
株主総会議事録とは、株主総会の概要や議事の経過などを記載した書類(または電磁的記録)です。
後ほど解説しますが、株主総会の開催日時や場所のほか、決議された事項などを記載します。
法律で厳格に様式が決まっているものではないものの、記載すべき事項は決まっています。
そのため、必要な項目などに漏れが生じないよう、ひな形などを参考に作成するとよいでしょう。
株主総会は少なくとも毎年1回は開催されるものであるため、自社用にカスタマイズしたテンプレートを作成しておくとスムーズです。
株主総会議事録を作成すべき理由
株主総会議事録は、なぜ作成すべきなのでしょうか?
ここでは、株主総会議事録の作成が必要である主な理由を3つ解説します。
会社法で作成が義務付けられているから
最大の理由は、株主総会議事録の作成が会社法上の義務であることです。
会社法の規定により、「株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない」と定められています(会社法318条1項)。
また、作成した株主総会議事録は、株主総会の日から10年間、本店に備え置かなければなりません(同2項)。
併せて、支店にも株主総会議事録の写しを5年間備え置くことが必要です(同3項)。
これらの規定に違反した場合は、100万円以下の過料の対象となります(同318条2項)。
株主や債権者からの求めに応じて閲覧させる必要があるから
2つ目の理由は、株主や債権者から求められた場合に、株主総会議事録を閲覧などさせる必要があることです。
会社法の規定により、株主と債権者は、株式会社の営業時間内はいつでも、株主総会議事録の写しの閲覧や謄写の請求ができるとされています(同318条4項)。
本来、作成の義務があるものであるため、閲覧などを求められたにもかかわらず株主総会議事録が作成されていないとなれば、不信感を抱かれトラブルとなるおそれがあります。
登記手続きなどで提出が必要となるから
3つ目の理由は、登記手続きなどで株主総会議事録の添付が求められることです。
株主総会議事録は、登記手続きや許認可申請など、さまざまな場面で原本の提示や写しの提出が求められます。
そのため、株主と取締役がイコールであるなど比較的規模の小さな会社では、登記に使うために議事録を作成するケースも少なくないでしょう。
ただし、先ほど解説したように、本来は登記申請を伴わない株主総会であっても議事録は作成しなければなりません。
登記のためだけに作成するものではないため、誤解のないよう注意してください。
株主総会議事録のひな形
株主総会議事録のひな形を紹介します。
これは、法務局のホームページに掲載されているひな形のうち、役員全員が重任することが決議された場合における株主総会議事録の一例です。※1
記載すべき事項がコンパクトにまとまっているため、参考にするとよいでしょう。
株主総会議事録への主な記載事項と書き方のポイントは、次で解説します。
株主総会議事録への記載事項
株主総会議事録の記載事項は、会社法施行規則で定められています。
ここでは、株主総会議事録の主な記載事項について、先ほど紹介したひな形をもとに解説します。
タイトル
はじめに、書類のタイトルを記載します。
タイトルに厳格な決まりはないものの、定時株主総会の場合は例のように「第〇回定時株主総会議事録」、臨時株主総会議事録の場合は「臨時株主総会議事録」とすることが一般的です。
なお、「定時株主総会」とは、毎事業年度の終了後一定の時期に招集される株主総会です。
上場会社は3月決算であることが多く、その後6月頃に定時株主総会が開催されることが多いでしょう。
一方、定時株主総会以外の株主総会を「臨時株主総会」といいます。
開催日時・場所
冒頭に、株主総会の開催日時と場所を明記します。
自社で開催した場合は、例のように「令和〇年〇月〇日午前〇時〇分から、当会社の本店において定時株主総会を開催した」などと記載します。
一方、定款に定めがない限り株主総会の開催場所には制限はないため、たとえば「〇〇ホテルのA会議室」で開催する場合もあるでしょう。
その際は、次のように記載します。
- 令和〇年〇月〇日午前〇時〇分から、〇〇ホテルA会議室(所在地:東京都〇〇区〇〇1丁目1番地)において定時株主総会を開催した
株主総会議事録の記載事項は会社法施行規則に定められており、「株主総会が開催された日時及び場所」は必須の事項です(会社法施行規則72条3項1号)。
そのため、ホテルなど社外で開催する場合は単にホテル名だけを書くのではなく、所在地などまで正確に記すことが望ましいでしょう。
また、近年では株主や取締役などがオンラインで株主総会に出席するケースも増えています。
これについて、会社法施行規則では、オンラインで出席した取締役や執行役、会計参与、監査役、会計監査人、株主がいる場合は、その出席方法を記載すべきとしています。
バーチャルを併用した場合の株主総会議事録は他にも多くの注意点があることから、必要な記載事項を漏らさないために、あらかじめ弁護士へご相談ください。
議事の経過要領・決議内容
株主総会議事録には、議事の経過要領と決議内容を記載します。
会社法施行規則では「株主総会の議事の経過の要領及びその結果」が記載事項とされています。
あくまでも「経過の要領」と「結果」が必要であるため、個々の発言などをすべて記載する必要まではありません。
議事の経過要領と結果は、議案ごとに明確に記載してください。
会社法施行規則に定められた特定の意見・発言内容
先ほど紹介したひな形には該当がないものの、会社法施行規則の規定により、一定の事項について述べられた意見や発言があった場合は、株主総会議事録に記載しなければなりません(同72条3項3号)。
意見や発言について記載義務が生じるのは次の事項です。
- 監査等委員である取締役の選任・解任・辞任に関する意見(会社法342条の2 1項 )
- 監査等委員である取締役の辞任後最初の株主総会で辞任理由を述べることができる旨(同342条の2 2項)
- 監査等委員である取締役以外の選任・解任・辞任に関する意見(同342条の2 4項)
- 会計参与の選任・解任・辞任に関する意見(同345条1項)
- 会計参与を辞任した人が辞任後最初の株主総会で辞任理由を述べることができる旨(同345条2項)
- 監査等委員である取締役などの報酬(同361条5項、6項)
- 一定の書類の作成に関する事項について会計参与と取締役の意見が異なる場合に、会計参与が述べる意見(同377条1項)
- 会計参与が株主総会で述べた会計参与の報酬等に関する意見(同379条3項)
- 株主総会の議案や書類などに法令や定款違反がある場合において、監査役が株主総会で報告した調査結果(同384条)
- 監査役の報酬について監査役が株主総会で述べた意見(同387条3項)
- 一定の監査役による、議案や書類などに関する調査結果の報告(同389条3項)
- 会計監査人が株主総会に出席して述べた意見(同398条2項)
- 監査等委員による株主総会への報告(同399条の5 )
該当する項目がある場合は、株主総会議事録に意見や発言の内容の概要を明記しなければなりません。
これらの意見や発言があったにもかかわらず株主総会議事録に記載しなかった場合、トラブルに発展するおそれがあります。
出席取締役等の氏名または名称
株主総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人の氏名または名称を記載します。
なお、株主については氏名を記載する必要はありません。
ただし、決議要件を満たしていることを確認するため、議決権を行使することができる株主の数や実際に出席した株主の数、それぞれが有する議決権数などは記すことが一般的です。
議長の氏名
株主総会に議長がいる場合は、議長の氏名を記載します。
誰を議長とするかについて法令の決まりはないものの、定款で代表取締役を議長とする旨が定めていることが多いでしょう。
作成に関わる取締役の氏名
株主総会議事録には、議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名を記載しなければなりません。
株主総会議事録の作成を担えるのは株主総会の開催時点において取締役である者に限定されています。
そのため、それ以外の者としないようご注意ください。
株主総会議事録に押印は必要?
昨今では、さまざまな書類で押印の省略が進んでいます。
では、株主総会議事録に押印は必要なのでしょうか?
最後に、株主総会議事録への押印の要否について解説します。
原則として押印は義務ではない
旧商法から会社法へ移行して以来、株主総会議事録への押印は義務ではありません。
ただし、実際には、少なくとも作成に係る職務を行った取締役は押印するケースが多いでしょう。
押印によって、作成に係る責任を担保するためです。
なお、その場合であっても実印での押印などまでは不要であり、認印で押印することが一般的です。
例外的に押印が必要な場合
株主総会議事録への押印は原則として義務ではないものの、例外的に押印が必要な場合があります。
例外的に押印が必要となるケースを2つ紹介します。
- 定款に定めがあるとき
- 株主総会で代表取締役を選定したとき
定款に定めがあるとき
1つ目は、自社の定款に、株主総会議事録に押印すべき旨の定めがある場合です。
定款で「株主総会議事録を作成し、これに議長及び出席した取締役が記名押印する」など、押印すべき旨を定めているケースは少なくありません。
このような規定がある場合は、定款の規定に従って、株主総会議事録への押印が必要となります。
原則として、会社法の規定よりも定款の定めが優先されるためです。
また、株主総会議事録への押印が必要な者についても「議長が記名押印する」「議長及び出席取締役が記名押印する」などさまざまなバリエーションがあります。
そのため、自社の定款を確認しておきましょう。
今後定款を変更して押印義務を廃止したい場合や電子署名に対応できる内容へと改訂したい場合は、弁護士へご相談ください。
株主総会で代表取締役を選定したとき
2つ目は、その株主総会で代表取締役を選定した場合です。
取締役会設置会社である場合、代表取締役は取締役会で選任します。
一方、取締役会非設置会社である場合は、複数の取締役の中から、株主総会において代表取締役を選任することとなります。
定款の規定に関わらず、登記手続き上、この場合は株主総会議事録に次の者が実印で押印しなければなりません。
- 議長
- 出席取締役全員
一方で、株主総会で代表取締役を選任する場合であっても、従前の代表取締役が届出印を押印した場合など一定の場合には、出席取締役などの押印は不要となります。
このあたりの手続きは混乱しやすく、誤りも生じやすいところです。
お困りの際は、弁護士などの専門家へご相談ください。
まとめ
株主総会議事録の概要と書き方、記載事項、押印の要否などについて解説しました。
株主総会議事録は、会社法によって作成が義務付けられているものです。
また、記載すべき事項についても、会社法施行規則で規定されています。
株主総会後に登記などが必要ない場合であっても、株主総会議事録は作成が必要です。
また、特にイレギュラーな事項について決議をする場合は、記載すべき事項を漏らさないようあらかじめ弁護士へご相談ください。
Authense法律事務所では企業法務を専門的に取り扱うチームを設けており、株主総会の準備や運営、株主総会議事録の作成などのサポートも行っています。
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