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単体6886_新規_「ガバナンス」と「コンプライアンス」の違いは?弁護士がわかりやすく解説

「ガバナンスを強化しよう」「コンプライアンスを重視しよう」などと、耳にする機会も多いことでしょう。
しかし、両者の違いがよくわからないケースも少なくないようです。

ガバナンスとコンプライアンスの違いは、どのような点にあるのでしょうか?
また、企業がガバナンスやコンプライアンスを強化するには、どのような対策を講じればよいのでしょうか?

今回は、ガバナンスとコンプライアンスの違いやそれぞれの概要、強化する方法などについて、弁護士がくわしく解説します。

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ガバナンスとコンプライアンスの概要

はじめに、ガバナンスとコンプライアンスの概要を解説します。

ガバナンスとは

ガバナンスとは、「統治」や「統制」を意味することばです。
企業経営について言及するときは、「企業統治」を意味する「コーポレートガバナンス」との用語で使われることが少なくありません。

コーポレートガバナンスとは、株主や顧客、従業員、地域社会などステークホルダーの立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行う仕組みです。
コーポレートガバナンスの目的は企業の長期的な価値向上や株主などステークホルダーの価値最大化、経営の透明化などのほか、企業不祥事の抑止が挙げられます。

企業の所有者は株主であるものの、実際に業務執行や日常の経営判断は取締役に委ねられています。
その取締役が暴走すれば企業不祥事が生じ得るほか、取締役に怠慢や能力不足があれば企業資産の有効活用が阻害されかねません。

そのため、コーポレートガバナンスを強化し、社外取締役や社外監査役などが経営陣を監視・統治して、企業経営の透明化や経営の効率化、企業不祥事の抑止をはかることが求められます。

コンプライアンスとは

コンプライアンスとは、法令遵守を意味することばです。
実際には、法令のほか、企業倫理や社会規範の遵守などまでを意味することが多いでしょう。

法令や社会規範などへの違反が是正されなければ従業員が定着しないおそれがあるほか、企業イメージが低下して顧客が離れてしまいかねません。
また、法令に違反した場合には、罰則が適用されたり企業名が公表されたりするおそれもあります。

このような事態を避けるため、経営陣がコンプライアンスを徹底するほか、従業員に対して定期的にコンプライアンス研修を実施するなどの対策が求められます。

ガバナンスとコンプライアンスの違い

ガバナンスとコンプライアンスの最大の違いは、次の点にあります。

  • ガバナンス:企業が自らを律する仕組み
  • コンプライアンス:企業が法令や社会規範など外部のルールに従うこと

これらはまったく別次元の概念ではなく、密接に関連しています。
企業がガバナンス強化することで、横領や粉飾決算、データ改ざんなどの不祥事が起きづらくなるほか、万が一不祥事が生じた際にも早期発見によって是正しやすくなります。
つまり、ガバナンスを強化することは、コンプライアンスの強化につながるということです。

ガバナンスやコンプライアンスが注目される背景

ガバナンスやコンプライアンスは、近年ますます注目されています。
その背景には、たびたび問題となる企業不祥事があります。

横領やデータ改ざん、不正会計、ハラスメントなど多くの企業不祥事が頻繁に報道されています。
また、SNSなどで長期に渡って不祥事報道が拡散されることも少なくありません。

このような事態を受けて企業が自らを律する必要性を感じたり、株主などのステークホルダーから不祥事の抑止策を講じることを求められたりして、コーポレートガバナンスやコンプライアンスの徹底に取り組む企業が増えていると考えられます。

企業がガバナンスとコンプライアンスを強化するメリット

企業がガバナンスやコンプライアンスを強化することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、主なメリットを3つ解説します。

不祥事を防ぎやすくなる

1つ目は、企業不祥事を防ぎやすくなることです。

企業がガバナンスを強化すると、不祥事が問題視されやすい企業風土が構築されます。
また、コンプライアンス研修などの実施により、従業員の意識も高くなります。

その結果、企業不祥事の抑止につながります。
また、万が一不祥事が発覚した際も厳正に対処され、是正や再発防止がしやすくなるでしょう。

信用力やブランド力が向上する

2つ目は、信用力やブランド力が向上することです。

企業がガバナンスやコンプライアンスを強化することで不祥事の抑止効果が働き、組織の透明性が向上します。
その結果、企業の信用力やブランド力が向上する効果が期待できます。

企業の持続的な成長力や競争力が向上する

3つ目は、企業の持続的な成長力や競争力が向上することです。

ガバナンスやコンプライアンスを強化することで、企業の信用力やブランド力が向上します。
また、社外取締役などから適正な経営について監視されることで、企業が効率的に「稼ぐ力」も強くなります。

その結果、株主や顧客、求職者、金融機関、取引先などから選ばれやすくなり、持続的な成長力や競争力の向上につながる効果が期待できます。

企業がガバナンスを強化する方法

企業がガバナンスを強化するには、どのような方策を講じればよいのでしょうか?
ここでは、ガバナンスを強化する主な方法を3つ紹介します。

内部統制を整備する

ガバナンスを強化させるには、内部統制の整備が必須といえます。

内部統制とは、企業が事業活動を健全かつ効率的に運用するための仕組みです。
ガバナンスは株主などが主に経営陣を監視する仕組みであることに対し、内部統制は主に経営陣が従業員などを監視する点で異なります。

経営陣がいくら真摯に業務を遂行していても、内部の統制がとれず不正が横行している状態の企業は健全とはいえないでしょう。
また、内部の統制がとれていない時点で、経営陣の能力が疑問視されます。
そのため、ガバナンスを強化するにはその土台として、内部統制を強化しなければなりません。

内部統制を徹底するには、内部統制システムの構築が必要です。
たとえば、リスクの評価や企業内の情報伝達プロセスの構築などが挙げられます。

内部統制を強化するには必要に応じて社内規程の策定や改訂などが必要であり、自社だけで行うことは容易ではありません。
そのため、企業法務に強い弁護士のサポートを受けて進めることをおすすめします。

従業員の意識を向上させる

ガバナンスを強化するには、従業員の意識向上が必要です。
経営陣がいくらガバナンス強化や不正の撤廃を叫んでも、従業員の意識が低ければガバナンスの強化は困難であるためです。

ガバナンスの強化は、従業員へのメリットも少なくありません。
ガバナンスを強化させ企業価値が向上すれば、従業員の待遇を手厚くしやすくなるためです。

反対に、ガバナンスが効かず大きな不祥事が発覚すれば、企業価値が毀損して職場環境が悪化するおそれがあります。
ガバナンス強化を単なるスローガンに終わらせず重要性を繰り返し伝え、従業員の意識を向上させることが必要です。

なお、従業員のガバナンス意識向上のためには、従業員が安心して働ける環境が不可欠です。
そのため、万が一現状として残業代の未払いや休日をとらせないなど労働基準法違反が横行しているのであれば、これを是正する対応が先決となるでしょう。
お困りの際は、あらかじめ弁護士へご相談ください。

社外取締役や社外監査役を設置する

ガバナンスを強化するには、社外取締役や社外監査役を設置することが有効です。
社外取締役とは社外から選任された取締役であり、他の経営陣から独立して他の取締役や経営の意思決定を監督する役割を担います。

また、社外監査役とは社外から選任された監査役であり、取締役などの業務や会計の適法性を監督します。
社外取締役や社外監査役を設置することで業務や会計の監視が強化され、不祥事を防ぎやすくなります。

なお、社外取締役や社外監査役となるには、就任前10年以内にその会社の役員や従業員でなかったことなどさまざまな要件を満たさなければなりません。
社外取締役や社外監査役の要件でお悩みの際は、弁護士へご相談ください。

企業がコンプライアンスを強化する方法

企業がコンプライアンスを強化するには、どのような対策を講じればよいのでしょうか?
ガバナンスの強化策と重なる部分もあるものの、ここではコンプライアンスの強化策を4つ解説します。

規程を整備する

1つ目は、社内規程を適切に整備することです。

規程を整備することで、従業員などが「何をしてはならないのか」が明確となります。
また、必要な業務対応などを規程として整備することで業務の属人化を避けられて不正を抑止できるほか、不正を見つけやすくなるでしょう。

併せて、懲戒規程についても整備しておくことをおすすめします。
従業員に対して懲戒処分をするには、原則として懲戒規程の存在が必要です。
懲戒規程を整備しておくことで、社内で不祥事が生じた際に厳正な対処がしやすくなります。

ただし、懲戒規程で定めたからといって、不正に対して重過ぎる処分を下せば、処分の無効や損害賠償請求などがなされる可能性があります。
適正なバランスを確保し無用なトラブルを避けるため、規定の整備をする際や実際に懲戒処分を下そうとする際は、あらかじめ弁護士へご相談ください。

定期的に研修を実施する

2つ目は、定期的に社内研修を実施することです。

従業員のコンプライアンス意識は、一朝一夕に強化できるものではありません。
研修などで繰り返し伝え、重要性を認識してもらうことが必要です。

特に、ハラスメントについては「昔はこれくらい普通だった」など、以前の常識がアップデートできていないケースも見受けられます。
その結果、悪気がないままハラスメントを繰り返し、大きなトラブルに発展するおそれがあるでしょう。
そのような事態を避けるため、定期的にコンプライアンス研修を実施し、従業員の意識を向上させることが必要です。

研修の講師は社内で担うほか、弁護士など外部の専門家に依頼することも一つの方法です。
弁護士などへ講師を依頼することで最新の法令や事例を踏まえた研修を受けやすくなります。

内部通報窓口を設置する

3つ目は、内部通報窓口を設けることです。

内部通報窓口とは、社内で不正を見つけた従業員が不正について通報・相談するための窓口です。
公益通報者保護法により、常時使用する労働者の数が300人を超える事業者には、内部通報窓口の設置など内部公益通報対応体制の整備が義務付けられています。

企業の規模が大きくなると、現場で起きている不祥事に経営陣が気付きにくくなります。
不祥事に気付くのが遅れると、社内で不祥事が繰り返され横行する事態となり得るほか、不祥事が拡大し取り返しのつかない事態となるおそれが生じます。
不祥事を早期に発見するために、内部通報窓口を設けることが効果的です。

なお、内部通報窓口は通報者の情報を守らなければならず、通報を理由に通報者が不利益を被る事態は避けなければなりません。
内部通報窓口の設置には注意点も少なくないため、設置する際は弁護士のサポートを受けるようにしてください。

違反が生じたら厳正に対処する

4つ目は、コンプライアンス違反や不祥事が生じたら、厳正に対処することです。

小さな違反や不祥事の種を放置すれば、違反や不祥事が横行してしまいかねません。
不正に厳正に対処することで不正が繰り返される事態を避けられるほか、不祥事の抑止力ともなります。

ただし、先ほど解説したように、不正に対する処分が重過ぎれば、損害賠償請求をされるなどさらなるトラブルの原因となるおそれがあります。
そのため、社内で違反が生じた際は弁護士へ相談したうえで、適正に対処することをおすすめします。

まとめ

ガバナンスとコンプライアンスの違いや、両者を強化する方法などについて解説しました。

ガバナンスとは企業内に統制を働かせる仕組みであり、コンプライアンスとは法令や規範を遵守することです。
ガバナンスを強化することでコンプライアンスにつながるなど、両者は密接に関連しています。

ガバナンスやコンプライアンスを強化するには内部統制を整備したり、研修を実施したりするなどの対応が有効です。
これらの強化は、弁護士のサポートを受けて必要な対応を検討することからはじめるとよいでしょう。

Authense法律事務所では企業法務に強いチームを設けており、ガバナンスやコンプライアンスを強化するサポートも可能です。
ガバナンスやコンプライアンスの強化、内部統制システムの構築などでお困りの際は、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。

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