コラム

単体5279_新規_契約審査を弁護士に外注するには?流れとメリット・デメリットを弁護士がわかりやすく解説

企業は活動をする中で、さまざまな契約を締結します。

契約を締結する際、自社の身を守るためには、押印前に契約審査をしなければなりません。
この契約審査は自社で行う場合もある一方で、弁護士に外注することも可能です。

では、契約審査を外注することには、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
また、契約審査を外注した場合、どのような流れとなるのでしょうか?

今回は、契約審査の外注について、弁護士がくわしく解説します。

記事を監修した弁護士
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契約審査とは

契約審査とは、契約締結前に、契約書の内容をチェックすることです。

契約書は相手方との取り決めや権利義務関係を書面化したものであり、当事者間の合意によって法律の規定を変更したり、法律に書かれていない事項を定めたりします。
契約相手とトラブルとなった経験がない場合、テンプレートをそのまま流用したり、相手方から提示された契約書にそのまま押印したりすることもあるかもしれません。

しかし、契約書はトラブルが発生した際にこそ真価を発揮するものです。
契約書をよく確認していなければ、いざトラブルが生じた際に不利益を被る可能性が高くなります。

そのような事態を避けるため、相手方から差し出された契約書に押印をしたり相手方に契約書案を提示したりする前には、契約審査が必要です。
契約審査は自社の法務部で行う場合もあるものの、より確実な審査をするため弁護士への外注も検討するとよいでしょう。

契約審査に不備があるとどうなる?

契約審査に不備がある場合、どのような事態が生じる可能性があるのでしょうか?
ここでは、契約審査の不備によって生じ得る主なリスクを紹介します。

契約書の内容が実態と相違しトラブルに発展するおそれが生じる

契約審査に不備があると、契約書の内容と実態が相違し、トラブルとなるおそれがあります。

たとえば、実際には納入までを行う予定であったものの、契約書には料金内で据付けまで行う旨が書かれていた場合、相手方から据付けまでを求められる可能性があります。
また、これを行わなかった場合には債務不履行となり、解除や損害賠償請求などの原因となるおそれがあるでしょう。

このようなトラブルは、テンプレートを流用した場合などに発生しやすいといえます。
トラブルとなった際は、「形式上書いてあるだけ」などの主張は通用しない可能性が高いです。
そのため、実際の業務内容と契約書に書かれた義務の内容が一致していることを確認しなければなりません。

トラブル発生時に対応が難しくなるおそれが生じる

契約審査に不備があると、トラブル発生時にスムーズな対応が難しくなるおそれがあります。
たとえば、相手方が望ましくない行為をしたことで契約を解除したい場合であっても、契約書の禁止事項に不備があれば解除が困難となる可能性があります。
また、損害額の立証が難しいにもかかわらず契約書で何ら対処がされていなければ、損害賠償請求が難しくなるおそれもあります。

自社が不利益を被るおそれが生じる

契約書の正解は一つではなく、立場によって最適な条項は異なります。
つまり、相手方にとって有利な条項は、自社にとって不利となるおそれがあるということです。

企業間で契約を締結する場合、相手方から提示された契約書案は、相手方にとって有利な内容となっていることが少なくありません。
これを見落としてそのまま押印してしまうと、トラブル発生時に自社が不利益を被る可能性が高くなります。

契約が無効となるおそれが生じる

契約の種類によっては、契約書で定めるべき内容が法定されていることがあります。
また、契約書の規定によって修正できない法令の規定(「強行規定」といいます)も存在します。

これらに反し、必要な条項が漏れていたり強行規定に反する条項が設けられていたりする場合は、契約や条項が無効となるおそれがあるほか、違法状態となるおそれもあります。

契約審査のポイント

契約審査は、どのような点に注意して行う必要があるのでしょうか?
ここでは、契約審査の主なポイントを5つ解説します。

なお、ここで紹介するのは一例であり、実際には契約内容や自社の立場、自社が最も避けたい事態などによって確認すべきポイントは異なります。
契約リスクを最小限に抑えるため、契約審査は弁護士への外注をおすすめします。

必要な条項に漏れがないか

契約審査では、必要な条項に漏れがないか確認します。
必要な条項の漏れは、複数のテンプレートと照らし合わせて確認するとよいでしょう。

契約書に記載すべき内容が定められている契約である場合は、法令やガイドラインを確認し、必要な条項に漏れがないことを確認してください。

あいまいな表現がないか

契約審査では、あいまいな表現がないか確認します。
あいまいな条項があると、解釈などに齟齬が生じてトラブルとなるおそれがあるためです。

契約書は誰が読んでも同様の結論が導かれるよう、明確に記載しましょう。
特に、業務範囲や納品物の仕様についてはトラブルが生じやすいため注意が必要です。

法令等への違反がないか

契約審査では、法令等への違反がないか確認します。
先ほど解説したように、強行規定に反する条項は無効となります。
法令の強行規定を理解したうえで、これに反しない内容となっているか確認しましょう。

最新の法令を踏まえた内容か

契約審査では、最新の法令を踏まえた内容となっているか確認します。
特に、納品物が契約内容に適合しない場合の「契約不適合責任」については、2020年4月1日に施行された改正民法によって大きく見直されています。

名称が「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」となっただけではなく、請求できる内容や期限などが大きく変更されました。
古い契約書をそのまま流用している場合などには、このような改正に対応できていない可能性があるためご注意ください。

トラブル発生時にスムーズかつ有利な解決が可能か

契約審査は、トラブル発生時の対応を想定して行うことをおすすめします。
たとえば、次の視点などです。

  • 相手への禁止事項(自社として、相手方にしてほしくないこと)が明記されているか
  • 相手方が禁止事項に違反した際、自社が望む対応(契約解除や損害賠償請求)はスムーズにできるのか
  • 訴訟を提起する裁判所は、どこになるか

反対に、自社が契約を解除されて困る立場にある場合、どのような場合に解除され得るのか、またその場合に報酬はどうなるのかなどを確認しておく必要があります。

契約審査を弁護士に外注するメリット

契約審査を弁護士に外注することには、多くのメリットがあります。
ここでは、契約審査を外注する主なメリットを3つ解説します。

契約審査のレベルが一定以上に担保される

1つ目は、契約審査のレベルが一定以上に担保されることです。

自社で契約審査を行う場合、契約審査のレベルは担当する法務部員の能力によって左右されやすくなります。
また、優秀な法務部員は引く手も数多であり、そのような人材を自社で雇用するハードルも低くないでしょう。

一方、契約審査を外注する場合は弁護士がプロとして審査を行うため、審査レベルの担保が可能となります。
弁護士は紛争への知識や経験も豊富であるため、予見されるトラブルから「逆算」をした契約審査が得意である点もメリットです。

業務を効率化できる

2つ目は、業務を効率化できることです。

契約審査を漏れなく確実に行うには、相当の時間と労力がかかります。
特に、自社にとって先例のない種類の契約の場合は、法務部員の負担が重くなりがちでしょう。

一方、契約審査を外注する場合は自社の負担を最小限に抑えることができ、他の業務に注力しやすくなります。

トラブル発生時の対応まで依頼できる

3つ目は、トラブル発生時の対応までを依頼できることです。

多くのトラブルでは、初期の対応が解決のカギとなります。
契約審査を弁護士に外注することで、契約の背景を熟知した弁護士とのつながりができるため、トラブル発生時の相談や対応がスムーズとなります。

なお、継続的に契約審査を依頼したり相談したりしたい場合は、顧問契約の締結も検討するとよいでしょう。

契約審査を弁護士に外注するデメリット

契約審査を弁護士に外注することには、デメリットもあります。
ここでは、主なデメリットを2つ紹介します。

費用が掛かる

1つ目は、弁護士報酬がかかることです。
弁護士報酬については依頼する事務所によって異なるため、あらかじめ確認するとよいでしょう。

なお、顧問契約を締結している場合、プランによっては顧問料の範囲内で契約審査が受けられたり、契約審査の料金が割り引かれたりする場合もあります。

レビューまでに時間がかかることがある

2つ目は、弁護士が多忙である場合、契約書の提示からレビューまでに時間がかかる可能性があることです。
契約審査に要する時間は事務所や弁護士によってまちまちであるため、あらかじめ目安となる期間を確認しておくことをおすすめします。

なお、一般的には弁護士が多忙である場合、顧問契約先からの依頼が優先される傾向にあります。
そのため、継続して依頼したい弁護士がいる場合は、顧問契約の締結も検討するとよいでしょう。

契約審査を弁護士に外注する流れ

弁護士に契約審査を外注する場合、審査はどのような流れとなるのでしょうか?
最後に、契約審査を弁護士に外注する一般的な流れを解説します。

契約審査の外注先を選定する

契約審査の外注を検討したら、まずは外注先の弁護士を選定します。
契約審査までにかかる期間や報酬のほか、弁護士がどこまでアドバイスしてくれるかなどは、事務所によって異なります。
また、事務所の規模も、弁護士が一人である個人事務所から複数の弁護士を擁する弁護士法人までさまざまです。

そのため、外注先の弁護士は物理的な距離の近さなどだけではなく、その弁護士の特徴や事務所としての実績などを考慮のうえ選ぶとよいでしょう。

外注先の弁護士に契約書を提示する

契約審査を外注する弁護士を決め、契約審査を引き受けてもらえることとなったら、弁護士に契約書の案を提示します。
契約書案の提示方法は、書面や電子メール、クラウドの利用など事務所や状況によって異なるため、あらかじめ依頼先の弁護士に確認してください。

弁護士から必要なヒアリングがなされる

契約審査をより有用なものとするためには、その企業の立場や契約の背景、契約において特に重視する事項などを踏まえなければなりません。
特に、双方が負う義務の内容については、契約書の内容と実態とに齟齬がないか否か確認する必要があります。
そこで、これらについて、弁護士からヒアリングがされることがあります。

弁護士が契約書をレビューする

弁護士が契約審査をして、その結果がレビューされます。
レビュー結果はメールなどで行われることもあれば、電話などで補足がされたり対面でなされたりする場合もあります。

契約書の提示からレビューまでにかかる期間は、弁護士の状況や契約内容の複雑さなどによって異なります。
そのため、依頼する段階で確認しておくと良いでしょう。

レビューを受けて契約書を修正する

弁護士からのレビューを受けて、契約書に必要な修正を加えます。
その後、これをそのまま契約の相手方に提示する場合もあれば、相手方への提示前に弁護士が修正版を再審査する場合もあります。

なお、相手方が作成した契約書である場合は、自社の独断では修正することができません。
この場合は、自社として修正を希望する事項を取りまとめたうえで、相手方と交渉するステップが必要です。

弁護士に別途依頼することで、この契約交渉や修正交渉に同席してもらったり、代理してもらったりすることが可能となります。

まとめ

契約審査を外注するメリット・デメリットや、契約審査を外注する流れなどを解説しました。

契約審査を弁護士に外注するには費用が掛かります。
しかし、契約審査のレベルが一定以上に担保されるほか、自社の業務負担が減るなどメリットは少なくありません。

弁護士は、トラブル発生時にスムーズな解決が可能か否かとの観点からも契約審査を行うため、より自社の身を守る契約審査が可能となります。
契約審査の外注をご検討の際は、弁護士に問い合わせてみることをおすすめします。

Authense法律事務所の企業法務部門では、契約審査など企業のリーガルサポートを専門的に担っています。
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