コラム
公開 2023.06.29

複数5140_新規_コンプライアンスとは?遵守するための対策や主な違反事例を弁護士がわかりやすく解説

コンプライアンスは、一般的に「法令遵守」などと訳されます。
しかし、実際には「法令」のみならず、社会規範や社会道徳などに沿うことも含まれているといえるでしょう。

企業がコンプライアンス遵守を徹底できていなければ、企業イメージの低下や退職者の増加などにつながるリスクがあります。
そこで今回は、コンプライアンスが遵守できていない主な例を紹介すると共に、コンプライアンス違反が起きてしまう主な理由や企業がコンプライアンス遵守のために行うべき取り組みなどについて、弁護士がくわしく解説します。

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コンプライアンスとは

「コンプライアンス」はたびたび目や耳にする用語であり、今やほとんどの人が知る言葉かと思います。
しかし、コンプライアンスの定義はあいまいだという人も少なくないでしょう。

はじめに、コンプライアンスの定義や似た用語との違いを解説します。

コンプライアンスの定義

コンプライアンスとは、法令遵守のことです。
しかし、「コンプライアンス」は法令のみを遵守すればよいということではなく、法令のほかに社会規範や企業倫理を守ることも含まれているといえるでしょう。

広辞苑でも、「要求や命令に従うこと。特に、企業が法令や社会規範・企業倫理を守ること。法令遵守。」とされています。

コーポレートガバナンスとの違い

コンプライアンスと似た用語に、「コーポレートガバナンス」が存在します。

コーポレートガバナンスとは、企業の違法行為などを監視して、企業の健全な運営体制を実現する仕組みを指します。
元々は上場企業を念頭に置いた概念であるものの、非上場企業や中小企業であっても企業不祥事を防止するため、コーポレートガバナンスの考え方が非常に参考となります。

コーポレートガバナンスを強化することで、コンプライアンスの遵守が実現しやすくなるといえるでしょう。

CSRとの違い

CSRとは、「企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)」を意味する用語です。
企業が利益のみを重視するのではなく、社会全体に対する責任を果たすべきとする考え方を指します。

コンプライアンスの遵守はCSRの前提であり、コンプライアンスを遵守するのみではCSRを十分に果たしているとは言えません。
CSRでは、コンプライアンスを遵守したうえでさらなる社会貢献を実現することが求められています。

コンプライアンスが遵守できていない違反の主な例

コンプライアンスが遵守できていないとされる主な例には、どのようなものがあるのでしょうか?
主な例には次のものが挙げられます。

製品や商品の偽装

製品や商品の表示を偽ったり、必要とされる検査をクリアしていなかったりするものです。
また、食品であれば賞味期限の偽装などもこれに含まれるでしょう。

近年では、自動車メーカーによる検査不正が記憶に新しいかもしれません。
このような行為は消費者の信頼を大きく損ねる可能性があり、一度偽装が発覚するとその後信頼を取り戻すことは容易ではありません。

不正受給

ある要件を満たすことで受け取れる補助金や助成金は数多く存在します。
実際には要件を満たしていないにも関わらず、嘘の申請をするなどしてこれらのお金を受け取ることを「不正受給」といいます。

不正受給は犯罪行為であり、道義的責任のみならず刑罰の対象となる可能性も否定できません。
実際に、新型コロナウイルス関連の給付金の不正受給では多くの逮捕者が出ています。

個人情報漏洩

個人情報の管理が甘かったり、従業員が個人情報を不正に持ち出したりして個人情報が漏洩する場合があります。
ある市から個人情報を取り扱う事務の委託を受けていた事業者が個人情報の入ったUSBメモリを紛失して大きな騒動になったことを記憶している人も少なくないでしょう。

個人情報の漏洩に関する社会の目は厳しく、信頼関係を大きく損なう可能性があります。

粉飾決算

実際よりも利益が出ているように見せかける「粉飾決算」などの不正会計も、コンプライアンス違反の代表例です。
粉飾決算が発覚すると、企業イメージが大きく低下してしまいかねません。

また、粉飾決算に一度手を染めるとその後も不正会計を続けなければ辻褄があわなくなることが多く、容易には抜け出せなくなります。

ハラスメントの横行

コンプライアンスの遵守体制が整っていないことで、パワハラやセクハラなどのハラスメントが横行する場合があります。
ハラスメントの横行は加害者のみの問題ではなく、企業の問題でもあります。
企業はハラスメントを防止する体制を整えるほか、仮にハラスメントが発生したら速やかに対処するなどの対応が求められるでしょう。

残業代不払い

従業員に時間外労働をさせた場合には、残業代を支払わなければなりません。
残業代の支払いは企業の義務であり、適切に残業代を支払わない場合には早期に是正しなければなりません。

著作権侵害

人が創作したものは、原則としてすべて著作権の対象です。
著作権が発生するかどうかに、著作者が著名であるかどうかなどは関係ありません。

著作権に関するコンプライアンスが徹底されておらず、一般個人がSNSに投稿したイラストを企業が無断で使用してしまった場合などには、大きなトラブルの原因となる可能性があります。

企業がコンプライアンス遵守をしない場合のデメリット

企業がコンプライアンスを遵守しない場合、どのようなデメリットが生じる可能性があるのでしょうか?
生じる可能性のある主なデメリットは次のとおりです。

法令違反で罰則や損害賠償などの対象となる可能性がある

コンプライアンスが遵守できておらず、法令違反をしてしまうと罰則の対象となる可能性があります。
また、これにより損害をこうむった人がいれば、損害賠償請求がなされる可能性もあるでしょう。

許認可が取り消される可能性がある

建設業や産業廃棄物処理業など許認可を取得している事業者がコンプライアンスを遵守できておらず、法令に違反をした場合には、その許認可が取り消される可能性があります。
主要な許認可が取り消されてしまうと、事実上事業の継続が困難となり、廃業せざるを得ない事態にもなりかねないでしょう。

インターネット上などで「炎上」する可能性がある

特に近年、企業のコンプライアンス違反に対して厳しい目が向けられているといえます。
そのため、法令違反である場合のみならず社会規範から逸脱していると一般ユーザーなどからみなされた場合などには、SNSなどで情報が拡散され、「炎上」状態となってしまうリスクが否定できません。

コンプライアンス違反の内容や拡散された情報の内容などによっては、情報を見た人がいたずら半分で企業に電話をかけたり企業を訪問したりして、通常業務に支障が及ぶケースもあります。

企業イメージが低下する可能性がある

企業のコンプライアンス違反が大々的に報じられたりSNSで拡散されたりすると、企業のコンプライアンス違反が多くの人に知られることとなります。
そのような事態となれば、企業イメージの低下は避けられないでしょう。

顧客やユーザーが離れて業績に影響する可能性があるほか、上場企業であれば株価に影響する可能性もあります。

退職者が増加する可能性がある

コンプライアンス違反が常態化している企業では、風通しが悪く働きづらさを感じる人が少なくないでしょう。
そのため、従業員のモチベーションが低下したり退職者が増加したりする可能性があります。

コンプライアンス違反が起きる主な理由

企業内でのコンプライアンス違反はなぜ起きてしまうのでしょうか?
考えられる主な理由は次のとおりです。

知識や理解が不足しているから

企業や担当者の知識や理解が不足していることから、コンプライアンス違反に陥っているケースです。
違反であるとの認識さえない場合もあり、ある日突然違反を指摘され、対応に右往左往してしまうかもしれません。

自社に関連する法令は法務部などが目を通して遵守状況を確認するか、弁護士に法令の遵守状況を確認してもらう仕組みを構築する必要があるでしょう。

違反が起きやすい環境が存在しているから

コンプライアンス違反は従業員個人の素養などで起きるものではなく、企業風土や人員配置などと密接に関連しています。

たとえば企業内に厳しいノルマがあり、何としてでもこれを達成すべきとの空気が蔓延していれば、コンプライアンスを後回しにした無理な営業活動を行うなど、コンプライアンス違反が起きやすいでしょう。
また、重要な業務について相互チェック体制がなく属人化しているなどの事情があれば、コンプライアンス違反が生じてしまいかねません。

社内でコンプライアンス違反が生じた際には、違反した従業員に責任を問うのみならず、社内の体制を見直す必要があるといえます。

違反を指摘しづらい環境があるから

コンプライアンス違反が常態化している場合には、違反を指摘しづらい空気が蔓延してしまっているかもしれません。
コンプライアンス違反を指摘したら、パワハラ行為の標的とされたり望まない配置転換をされたりするような状況であれば、コンプライアンス遵守を望む従業員は退職し、自浄作用が望めない状態となる可能性があるでしょう。

コンプライアンス違反を常態化させないためには、社内の風通しをよくする取り組みが重要です。

コンプライアンス遵守のために企業がすべき取り組み

コンプライアンス遵守のために、企業はどのような取り組みをすべきなのでしょうか?
企業が行うべき主な取り組みは次のとおりです。

なお、社内ですでにコンプライアンス違反が生じてしまっている場合は、これを解決しないことには次に進むことはできません。
そのため、まずは現状をしっかりと把握して、膿を出し切る必要があるでしょう。

社内規定や行動規範を整備する

コンプライアンスを遵守する体制を整えるためには、まず社内規定や行動規範などを整備する必要があるでしょう。
特に基本となる業務については、その都度個々の従業員が根拠法令を参照することは現実的ではありません。

そのため、マニュアルや作業手順書などの規定を整備することで、コンプライアンス違反が起きづらい仕組みを構築することが重要です。
また、日々の業務の中には、マニュアル化できないイレギュラーなものも少なくないでしょう。

そのような際に拠りどころとなるのが行動規範です。
行動規範とは、その企業で大切にすべき価値観や望ましい行動を示した規定であり、「クレド」と呼ばれることもあります。

ただし、社内規定も行動規範も、作成すること自体が目的となってしまっては意味がありません。
実際にコンプライアンス遵守体制を整える目的でこれらの規定を整備するのであれば、他社のコピペなどで作成するのではなく、専門家とともに一つずつしっかりと検討を重ねたうえで作成する必要があるでしょう。

弁護士に相談できる体制を整える

コンプライアンスを遵守する企業体制を構築するためには、弁護士と顧問契約を締結するなど、弁護士にすぐに相談できる体制を整えておくことも重要です。

実際に業務を進行していくにあたっては、法令上問題がないかどうか判断に迷うことも少なくないでしょう。
そのような際にすぐに弁護士へ相談できれば、思わぬ法令違反を防ぎやすくなります。

コンプライアンス研修を実施する

社内でコンプライアンス研修を実施することも、コンプライアンスの遵守体制を構築するうえで重要です。
コンプライアンスの遵守体制を社内に浸透させるためには、一度のみ研修を行うのではなく、定期的に行う必要があるといえます。
研修講師は社内から募ることのほか、外部の弁護士などに依頼することも一つの手です。

相談窓口を設置する

社内でコンプライアンスの遵守体制を構築するためには、仮に社内でコンプライアンス違反が疑われる事象が発生した際に早期に発見し、改善する仕組みの構築が重要です。
そのためには、相談窓口の設置が不可欠でしょう。
そのうえで、相談したことによって不利益を被ることのないよう周知徹底する必要があります。

定期的に社内調査を行う

コンプライアンス違反を見逃さないため、定期的に従業員へヒアリングをしたり、アンケートをとったりすることも一つの手です。
これにより不祥事の芽が発見できれば、早期に対応できる可能性が高くなります。

なお、アンケートを匿名とすべきか記名とすべきかはケースバイケースですが、匿名回答の方がより踏み込んだ意見を得やすいといえるでしょう。

まとめ

企業がコンプライアンスを遵守することは、今や社会的な要請となっています。
企業が存続し続けるためには、コンプライアンスの遵守は避けられないといえるでしょう。

しかし、コンプライアンスを遵守する体制は一朝一夕に構築できるものではありません。
現時点で何か問題が生じていればまずはその膿を出し切ったうえで、社内規定を見直したり相談窓口を設置したりするなど抜本的な対策が必要となります。
これらをすべて自社のみで行うことは容易ではないでしょう。

そのため、コンプライアンス体制の構築は、弁護士など外部専門家のサポートを受けて行うことをおすすめします。

Authense法律事務所では、企業のコンプライアンス体制の構築支援に力を入れています。
コンプライアンス体制の構築でお困りの際には、ぜひAuthense法律事務所までお気軽にお問い合わせください。

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