景品表示法は、企業の広告や商品パッケージ、プレゼントキャンペーンなどについて一定の規制をする法律です。
うっかり違反する事態を避けるため、すべての企業は景品表示法について理解しておかなければなりません。
では、景品表示法違反となるのは、どのような場合なのでしょうか?
また、景品表示法に違反すると、どのような事態が生じるのでしょうか?
今回は、景品表示法違反について、弁護士がくわしく解説します。
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景品表示法とは
景品表示法は、正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といいます。
「景表法」と略されることも少なくありません。
景品表示法の目的は、一般消費者の利益を保護することです。
たとえば、広告やパッケージに虚偽や誇大な表現があると、消費者は合理的に商品を選ぶことができません。
また、過大な景品(おまけ)が付されていれば、おまけ欲しさに欲しくもない商品を買ってしまうおそれがあります。
このような事態を避けるため、景品表示法では、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限と禁止について定めています。
景品表示法の2つのルール
景品表示法では、大きく分けて2つの禁止事項が定められています。
ここでは、それぞれの概要を解説します。
不当表示の禁止
1つ目は、不当表示の禁止です。
不当表示とは、虚偽や誇大な内容で消費者を誤認させるような表示です。
表示とは、次のものなどを指します。
- チラシ、パンフレット、カタログ
- 容器、パッケージ、ラベル
- ダイレクトメール、ファクシミリ広告
- ディスプレイ(陳列)、実演広告
- 新聞、雑誌、出版物、テレビ・ラジオCM
- ポスター、看板
- セールストーク (訪問・電話)
- インターネット上の広告、メール
その商品やサービスについて購入前に消費者が接する場面は、すべて「表示」に該当すると考えるとよいでしょう。
不当表示としては、主に次の3つの表示が禁止されています。
- 優良誤認表示
- 有利誤認表示
- その他誤認されるおそれがある表示
優良誤認表示
優良誤認表示とは、商品やサービスの品質、規格その他の内容について、実際のものや競合他社のものより著しく優良であると一般消費者に誤認される表示です。
品質や規格、その他の内容とは、それぞれ次のものを指します。
- 品質:原材料、純度、添加物、性能、効果、鮮度など
- 規格:国などが定めた一定の要件を満たすことで表示できる等級など
- その他の内容:原産地、製造方法、受賞の有無、有効期限など
有利誤認表示
有利誤認表示とは、価格を著しく安く見せかけるなど、取引条件が著しく有利であると消費者に誤認させる表示です。
取引条件には、商品の数量やアフターサービスの内容、保証期間、支払い条件などが該当します。
その他誤認されるおそれがある表示
その他誤認される恐れがある表示とは、景品表示法に基づいて制定されている告示に反する表示です。
2024年8月現在、次の表示について特に規制が設けられています。
- 無果汁の清涼飲料水等についての表示
- 商品の原産国に関する不当な表示
- 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
- 不動産のおとり広告に関する表示
- おとり広告に関する表示
- 有料老人ホームに関する不当な表示
景品類の制限と禁止
2つ目は、景品類の制限と禁止です。
主に3つの景品類について、それぞれ規制がなされています。
一般懸賞
一般懸賞とは、くじなどの偶然性や特定行為の優劣等によって景品類を提供することです。
たとえば、次のものなどがこれに該当します。
- 商品購入者を対象としたくじ引き
- 一部の商品にのみ景品類を添付していて、どの商品に景品類が添付されているか外観上判断できないもの
- パズル、クイズなどの回答の正誤により提供するもの
- 競技、遊技などの優劣により提供するもの
一般懸賞の場合における景品の限度額は、次のとおりです。
取引の価額 | 景品類限度額 | |
最高額 | 総額 | |
5,000円未満 | 取引の価額の20倍 | 懸賞に係る売り上げ予定額の2% |
5,000円以上 | 10万円 |
共同懸賞
共同懸賞とは、商品やサービスの利用者に対して、一定の地域や業界の事業者が共同して景品類を提供することです。
たとえば、商店街やショッピングモールで開催されるくじ引きなどがこれに該当します。
共同懸賞の場合、提供できる景品類の最高額は取引価額にかかわらず30万円、景品類の総額は懸賞に係る売上予定総額の3%です。
総付景品
送付景品とは、商品やサービスを利用したり来店したりした者に対し、もれなく景品類を提供することです。
応募者全員に提供するものや申込みの先着順に提供するものも、これに該当します。
総付景品の限度額は、次のとおりです。
取引の価額 | 景品類の最高額 |
1,000円未満 | 200円 |
1,000円以上 | 取引の価額の10分の2 |
景品表示法違反の具体的な事例
景品表示法違反となるのは、どのような場合なのでしょうか?
ここでは、消費者庁が公表しているリーフレットを参考に、景表法違反にあたる主な事例をケースごとに紹介します。※1
優良誤認表示
優良誤認表示にあたるのは、次の場合などです。
- 牛肉のブランドについて、実際には国産有名ブランド牛ではない国産牛肉であるにもかかわらず、あたかも「国産有名ブランド牛の肉」であるかのように表示した場合
- 中古自動車の走行距離について、実際には10万kmを走行した中古車であるにもかかわらず、あたかも「走行距離3万km」であるかのように表示した場合
- 予備校の合格実績広告において、実際には他校と異なる方法で数値化して適正な比較をしていないにもかかわらず、あたかも「大学合格実績No.1」であるかのように表示をした場合
- LED電球の明るさについて、実際には全光束が日本工業規格に定められた白熱電球60ワット形の全光束を大きく下回っているにもかかわらず、あたかも「白熱電球60ワット相当」の明るさであるかのように表示した場合
- コピー用紙の古紙配合率について、実際にはコピー用紙の原材料に用いられた古紙パルプの割合が50%程度であるにもかかわらず、あたかも「古紙100%」であるかのように表示した場合
このように、品質などについて実際よりも優良であるように誤認させる表示をした場合は、景品表示法違反の優良誤認表示に該当します。
不実証広告規制
不実証広告規制は、優良誤認表示のうち、合理的な根拠がない効果や性能の表示を指します。
次の場合などには、不実証広告規制違反となります。
- ある施術を受けることで直ちに小顔になり、かつそれが持続するような表示をしていたものの、実際にはこれを裏付ける合理的な根拠を示す資料がなかった場合
- ある機器を継続して使用することで頭痛など特定の疾病が治癒するかのうように表示していたものの、実際にはこれを裏付ける合理的な根拠を示す資料がなかった場合
- ダイエット食品について、あたかも食事制限をすることなく痩せられるように表示していたものの、実際にはこれを裏付ける合理的な根拠を示す資料がなかった場合
- 商品に含まれる化学物質の効果により身の回りのウィルスを除去するなど、あたかも周辺の空間を除菌等するかのように表示をしていたものの、実際にはこれを裏付ける合理的な根拠を示す資料がなかった場合
このように、実際には効果の裏付けがないにもかかわらず特定の効用があるかのように表示した場合は、不実証広告規制違反に該当します。
有利誤認表示
有利誤認表示にあたるのは、次の場合などです。
- 携帯電話通信の料金について、実際には自社に不利となる他社の割引サービスを除外した料金比較であるにもかかわらず、あたかも「自社が最も安い」かのように表示した場合
- 商品の内容量について、実際には他社と同程度の内容量しかないにもかかわらず、あたかも「他社商品の2倍の内容量」であるかのように表示した場合
- 家電量販店の店頭価格について、競合店の平均価格から値引きすると表示しながら、その平均価格を実際の平均価格よりも高い価格に設定し、そこから値引きしていた場合
- 太陽光発電の余剰電力買取制度を利用した余剰電力の売却益について、実際には電力会社による電力の買取価格が電力会社に余剰電力の買取の申込みを行う時期によって異なり、発電電力量も季節や天候などの条件によって変動するにもかかわらず、あたかも「月々〇〇円」の売却益を毎月安定的に得られるかのように表示した場合
- 実際には、別途矯正装置の費用が必要であるにもかかわらず、あたかも初診料や検査診断料などとして記載された「〇〇円」だけを支払えば歯列矯正のサービスを利用できるかのように表示した場合
このように、取引条件ついて実際よりも有利であるように誤認させる表示をした場合は、景品表示法違反の有利誤認表示に該当します。
その他誤認されるおそれのある表示
その他誤認されるおそれのある表示にあたるのは、次の場合などです。
- 無果汁・無果肉、もしくは果汁や果肉の量が5%未満の清涼飲料水、乳飲料、アイスクリームなどについて、「無果汁・無果肉」であることまたは果汁若しくは果肉の割合を明瞭に記載しない場合において、次の表示をした場合
- 果実名を用いた商品名、説明文などの表示
- 果実の絵、写真、図案の表示
- 果汁・果肉と似た色、香り、味
- 一般消費者が原産国を判別することが困難な場合において、次の表示をした場合
- 原産国以外の国名、地名、国旗などの表示
- 原産国以外の国の事業者名、デザイナー名、商標などの表示
- 国内産の商品について文字表示の全部または主要部分が外国の文字で示されている表示
- 外国産の商品について文字表示の全部または主要部分が和文で示されている表示
- 一般消費者を誘引する手段として、次の表示(いわゆる「おとり広告」)をした場合
- 取引を行うための準備がなされていないなど取引に応じることができない場合の、その商品またはサービスについての表示
- 商品またはサービスの供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その旨を明示していない表示
- 商品またはサービスの供給期間、供給の相手方、顧客1人あたりの供給量が限定されているにもかかわらず、その旨を明示していない表示
- 取引の成立を妨げる行為が行われるなど、実際には取引する意思がない商品またはサービスについての表示
このような表示は誤認され得るおそれのある表示に該当し、景品表示法違反となります。
過大な景品類の提供
先ほど解説したように、商品やサービスにつけることができる景品などは、懸賞の種類などに応じて上限額が定められています。
これに反して高額な景品類を提供した場合は、過大な景品類の提供に該当し、景品表示法違反となります。
景品表示法に違反するとどうなる?
企業が景品表示法に違反した場合、どのような事態が生じるのでしょうか?
ここでは、景品表示法による罰則適用までの基本的な流れを解説します。
消費者庁などから調査がなされる
景品表示法違反の疑いがある場合は、調査がなされます。
調査は消費者庁のほか、道府県知事や公正取引委員会が行う場合もあります。
措置命令がなされる
調査の結果違反が発覚すると、措置命令が出されます。
措置命令とは、不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除や再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずることです。
課徴金納付が命じられる
違反が一定の要件を満たす場合、課徴金の納付が命じられます。
原則として、課徴金の額は違反行為によって得た売上額の3%です(景品表示法8条)。
ただし、今後2024年10月に施行される改正景品表示法では、10年以内に違反を繰り返した事業者の課徴金が4.5%まで引き上げられることとなっています。
事業者名などが公表される
景品表示法に違反した場合、事業者名や違反事項などが公表されることがあります。
違反事例は、消費者庁のホームページから確認できます。
刑事罰の対象となる
景品表示法に違反して措置命令が出されたにもかかわらずこれに従わない場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金刑の対象となります(同36条)。
また、法人の業務に関して違反が行われた場合には、行為者のほか、法人にも3億円以下の罰金刑が課される可能性があります(同38条1項)。
景品表示法に違反した場合のその他のリスク
景品表示法に違反した場合、課徴金の納付や罰則の適用の他にも生じ得るリスクがあります。
最後に、罰則の適用など以外の主なリスクを2つ紹介します。
損害賠償請求がなされる
景品表示法に違反して、これにより消費者などが損害を被った場合、損害賠償請求がなされる可能性があります。
誤解も少なくありませんが、課徴金と損害賠償はまったく別の制度です。
課徴金を納付したからといって、消費者などからの損害賠償請求を免れられるわけではありません。
企業の信頼が低下する
景品表示法に違反したことが公表されたりニュースになったりして多くの者が知るところとなれば、企業の信頼が低下するおそれがあります。
消費者からの信頼が失墜すれば売上が低迷し、影響が長期化するおそれがあるでしょう。
まとめ
景品表示法の概要や違反の例、違反した場合に生じ得る事態などについて解説しました。
景品表示法は、すべての企業が知っておくべき法律の一つです。
知らず知らずに違反してしまうことのないよう、規制内容や違反事例を理解しておくとよいでしょう。
自社が行おうとする表示が景品表示法違反であるか否かの判断に迷う場合には、弁護士にご相談ください。
Authense法律事務所では企業法務に特化したチームを設けており、景品表示法違反など広告審査についても豊富な実績があります。
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