自社の商品やサービスを紹介する広告において、競合事業者の商品やサービスと比べて優良であることを示すために、「No.1」、「第1位」といった表示をすることがあります。
このようなNo.1表示を適切に行うためには、どのような点に注意が必要なのでしょうか。
また、景品表示法に違反するNo1表示を行った場合、どのような罰則が適用されるのでしょうか。
今回は、No.1表示の概要や広告における表現の注意点などについて弁護士がくわしく解説します。
目次
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No.1表示とは
商品やサービスを提供する事業者は、各種の調査を行い、商品やサービスの売上実績、効果効能及び顧客満足度等を各種指標に基づきランク付けをしています。
そして、自社の商品やサービスが他の競合事業者の商品やサービスよりも優良であることを示すために、商品やサービスの広告において、上記のランク付けを示し「No.1」、「第1位」、「トップ」、「日本一」などと表示することがあります。
このような表示を「No.1表示」といいます。
昨今では、多くの事業者が、広告により自社の商品やサービスを宣伝する場合にこのNo.1表示を用いています。
しかし、令和5年度には13事業者に措置命令が出されるなど、このNo.1表示をすることにより不当景品及び不当表示防止法(以下「景品表示法」といいます。)に反することになってしまうケースが多くなっています。
そのため、公正取引委員会は、「No.1表示に関する実態調査報告書」を平成20年6月13日に公表しており、こちらの報告書においてNo.1表示に関する景品表示法上の考え方をまとめています。
今回は、No.1表示調査報告書にまとめられた整理を確認していきましょう。
景品表示法上問題となるNo.1表示
まず、No.1表示をすることは、直ちに景品表示法上、違法となるわけではありません。
なぜなら、消費者はNo.1表示によってそれぞれの商品やサービスの内容・取引条件などを比較することができ、その結果として有益な情報を得ることができるためです。
しかし、No.1表示がそもそも事実と異なる場合や、合理的な根拠に基づかないでされた場合には、「実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示」(景品表示法5条1号)または「実際のもの又は当該事業者との同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」(景品表示法5条2号)に該当し、不当表示となる可能性が大きいです。
適正なNo.1表示のための要件
それでは、No.1表示をする際に、どのような広告表示をすれば、適正なNo.1表示といえるでしょうか。
No.1表示が不当表示とならないようにするためには、①No.1表示の内容が客観的な調査に基づいていること、②調査結果を正確かつ適正に引用していること の両方を満たす必要があります。
まず、どのような方法で調査を行えば、「No.1表示の内容が客観的な調査に基づいている」と認められるのでしょうか。
「客観的な調査に基づいている」といえるためには、「当該調査が関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施されていること」又は「当該調査が社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施されていること」が必要です。
これを満たさなければ、No.1表示の根拠の客観性や信頼性を欠き、景品表示法上の問題となってしまうため、要注意です。
さらに、「当該調査が社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施されている」かの判断にあたっては、表示の内容、商品等の特性、関連分野の専門家が妥当と判断するか否かなどを総合的に考慮することになります。
また、適正なNo.1表示のために、「調査結果を正確かつ適正に引用」することが求められています。
引用が正確かつ適正なものといえるために、次の4つの事項に注意をしましょう。
①商品等の範囲
広告の表示から一般消費者が認識する商品やサービスの範囲と、No.1表示の根拠となる調査の対象となる商品やサービスの範囲とが異なる場合には、景品表示法上の問題が生じてしまいます。
たとえば、実際に行った調査の結果が「中高年向けの美容液で〇〇年連続売上実績No.1」であるにもかかわらず、広告で「美容液〇〇年連続売上実績No.1」と表示されていれば、それを見た一般消費者は、美容液全体で売上実績がNo.1であると認識してしまいます。
この場合、消費者が認識する商品やサービスの範囲と調査の対象となる商品やサービスの範囲が異なることとなります。
②地理的範囲
広告の表示から一般消費者が認識する地理的範囲と、No.1表示の根拠となる調査の対象となる地理的範囲とが異なる場合には、景品表示法上の問題が生じてしまいます。
具体的には、「地域No.1」とだけ広告において表示した場合、景品表示法上の問題となるおそれがあります。
一般消費者が認識する地域の広さは様々であり、このような表示だけでは、当該地理的範囲と実際のNo.1表示の根拠となる調査の対象となった地理的範囲に差異が生じる可能性があるためです。
③調査期間
過去の調査の結果でNo.1であったものについて、いつの時点でNo.1であったかを表示しない場合、一般消費者は、現在においてもNo.1であると誤認するおそれがあるため、景品表示法上の問題となってしまいます。
そのため、過去の調査を用いてNo.1表示をする場合には、いつ時点の調査であるかを明記するようにしましょう。
④調査の出典
No.1表示の根拠となる調査の出典は、具体的かつ明瞭に表示する方が望ましいといえます。
調査の出典を表示しない場合には、一般消費者が調査の客観性に疑問を持つ可能性があるからです。
具体的には、⑴調査会社を用いた場合には、当該調査会社及び調査の名称を表示すること、⑵別媒体に掲載されていた調査結果に基づくNo.1表示であるならば、当該媒体の名称、当該媒体の発行日及び調査の名称を表示することなどが望ましいです。
No.1表示が問題となった具体的な事例
No.1表示は、たびたび問題となっています。
近年だと、株式会社PMKメディカルラボが、No.1表示により令和4年6月15日に措置命令を受けています。
株式会社PMKメディカルラボは、豊胸手術を行うサービスや痩身施術を行うサービスを提供していたところ、自社のウェブサイトにそれらのサービスについて、「バストアップ第1位 施術満足度」、「ボディ瘦身第1位 施術満足度」、「楽天リサーチで2冠達成 バスト豊胸&痩身部門で第1位」などと表示をしていました。
このような表記をすることにより、一般消費者は、株式会社PMKメディカルラボが提供する豊胸手術や痩身施術が楽天において満足度が第1位であるかのように認識することになります。
しかし実際に行われた調査は、株式会社PMKメディカルラボが提供する施術と他の事業者が提供する類似の施術を利用した消費者に対する調査ではなく、また、当該調査において株式会社PMKメディカルラボが提供する施術の施術満足度は第1位ではありませんでした。
このようなNo.1表示は、「No.1表示の内容が客観的な調査に基づいて」おらず、また、「調査結果を正確かつ適正に引用」したとはいえません。
主観的評価についてのNo.1表示
ここまでは客観的な情報についてのNo.1表示について触れてきました。
しかし、近年では、「顧客満足度」、「コスパが良いと思う」や「医師の〇%が推奨する」などの第三者の主観的評価を指標としたNo.1表示が多く見られるようになっています。
そのようなNo.1表示に対して、消費者庁表示対策課は、「No.1表示に関する実態調査報告書」を令和6年9月26日に公表しており、適正な主観的評価についてのNo.1表示の基準を示しています。
上記のような表示をする際は、当該調査の結果に合理的な根拠が認められることが必要であるとしています。
具体的には、「医師の〇%が推奨する」のような表示は、①調査回答者が本当に医師であるかの客観的に担保ができていない場合、②調査対象者の医師が対象商品を専門分野としていない場合、③調査回答者である医師が、回答に際して、調査会社から合理的根拠のない情報提供を受けている場合には、合理的根拠がないとして景品表示法上の問題が生じることになります。
措置命令について企業が気をつけるべきポイント
適正なNo.1表示をする際には、様々な観点を注意する必要があり、それを細かく把握することはとても重要なことですが、その一方でとても大変なことです。
しかし、適正なNo.1表示をしなかった結果、措置命令が出されてから弁護士にご相談をいただくケースもしばしばありますが、措置命令は報道発表されるため、企業信頼を失うことにもなり得ます。
そればかりか、措置命令に従わない場合には2年以下の懲役または300万円の罰金が、事業者自体には最大3億円の罰金が科せられることになります。
そのため、広告表示の法的問題にお悩みの場合には、速やかに弁護士等専門家のサポートを受けるようにしてください。
まとめ
広告におけるNo.1表示の注意点や、景品表示法の罰則などについて解説しました。
No.1表示においては、客観的な調査に基づく表示を行うとともに、調査結果を正確かつ適正に引用することが求められます。
企業イメージの低下や罰則の対象となる事態を避けるため、必要に応じて弁護士に相談したり、弁護士に広告審査を委託したりすることも検討するのがよいでしょう。
Authense法律事務所には、広告審査についての豊富な経験と実績を有する弁護士が在籍しています。
「広告内でこのような表現をしてよいのか分からない」といったお悩みがある場合や、広告審査の委託をご検討の場合は、Authense法律事務所までお気軽にお問い合わせください。