コラム
公開 2019.02.27 更新 2021.10.08

リファラル採用(社員紹介制度)

リファラル採用(社員紹介制度)

「(優秀な)人材は欲しい、でもコストはかけられない・・・」

7割以上の中小企業が「人手不足」を感じていますが、一方で、人手不足対応の実施にあたって、資金面が課題だと考える企業は全体の5割弱に上っており、新たな人材を確保するための取組みを実施している企業の割合は、企業規模が小さくなるほど低くなっています(中小企業では69.5%、小規模企業では59.7%)(中小企業基盤整備機構広報統括室「中小企業アンケート調査報告『人手不足に関する中小企業への影響と対応状況』」(平成29年5月8日)、株式会社帝国データバンク「特別企画:人材確保に関する企業の意識調査」(平成29年4月20日)参照)。

このように、多くの企業(特に規模の小さな企業)において、人手不足に悩まされつつも、十分な方策をなかなか打てていないことがうかがわれます。

人材確保の問題が切実であればあるほど、(気持ちとしては)手段を選んでいられなくなるとも思います。

しかし、やり方に気を付けないと、思わぬ落とし穴にはまってしまうこともあります。

そこで、今回と次回の2回にわたって、いわゆるリファラル採用を題材に、人材確保をめぐって生じ得る法律上の問題点を考えていきます。

文責
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
中央大学法学部法律学科卒業、大阪市立大学法科大学院修了。法律事務所オーセンス入所から、ベンチャー法務を担当し、現在では、HRTech(HRテック)ベンチャー法務、芸能・エンタメ・インフルエンサー法務、スポーツ団体法務等を中心に担当。上場企業をはじめとした日本国内外に成長を求める企業のM&A支援にも積極的に取り組む。
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Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
一橋大学法学部卒業、一橋大学法科大学院修了。約2年半にわたり上場企業にて法務業務を常駐して遂行し、契約書の作成・レビュー(投資関連案件ほか)から、社内規程や株主総会・取締役会関連書類の整備、新規プロジェクト関連や社内フロー構築のサポートに至るまで、法務面で日々生じる多種多様な課題に取り組み、都度改善・解決へ貢献した経験・実績を有する。当該経験を活かした現場目線で有用なアドバイスを心掛け、主に予防法務に取り組む。
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1 リファラル採用(社員紹介制度)とは?

「リファラル採用」や「社員紹介制度」と呼ばれる採用方法が、最近ベンチャー企業などを中心に注目されています。
これは、自社の社員に、新しい人材を推薦・紹介してもらう、というものです。

似たような採用方法として、いわゆる「縁故採用」や「コネ採用」があります。
これらは、推薦・紹介元がその企業に対して一定以上の影響力を有していて、採用選考等が形式的なものになりがちであるともいわれています。

これに対し、「リファラル採用」や「社員紹介制度」では、社員の人脈を利用しつつも、基本的には、採用選考等は通常どおりに行うものと考えられています。

なお、海外では、リファラル採用はメジャーな採用方法として利用されており、(大手企業に関してではありますが)新規採用の約4分の1がリファラル採用だったとの調査結果もあります(Gerry Crispin & Chris Hoyt, Referrals 2016 CareerXroads referral review,参照)。

2 どんなメリットがあるのか?

リファラル採用(社員紹介制度)は、採用コストが削減できる点や、会社とのミスマッチを防止できる点に、メリットがあるといわれています。
採用コストについては、たとえば求人広告の掲載には数万円から数十万円の費用がかかりますが、社員から推薦・紹介を受けるのであれば、これをカットして採用機会が得られます。
また、企業の規模が小さくなるほど、求める人材像として「素直さ」を挙げる割合が高くなる傾向にあり、経営者との親和性が重要なものになると考えられます(株式会社帝国データバンク「特別企画:人材確保に関する企業の意識調査」(平成29年4月20日)参照)。
そのような小規模企業にとって、企業風土等をよく知る社員から推薦・紹介を受けた人物を採用することにより、ミスマッチを少しでも防止できるメリットは大きいといえます。
日本では、まださほど定着しているとはいえませんが、中小企業の半数以上が人手不足を深刻だと感じている中、スタートアップ企業をはじめとして、今後リファラル採用(社員紹介制度)が広がっていくことは十分に考えられます(中小企業基盤整備機構広報統括室「中小企業アンケート調査報告『人手不足に関する中小企業への影響と対応状況』」(平成29年5月8日)参照)。

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