コラム

単体5148_新規_広告審査のやり方は?関連する法律・流れ・注意点を弁護士がわかりやすく解説

企業が広告を出稿しようとする際は、あらかじめ広告内容を審査しなければなりません。
法令に違反した内容の広告を出して罰則の対象となる可能性があるほか、企業の信頼が失墜するおそれがあるためです。

では、広告審査では、主にどのような法律を確認する必要があるのでしょうか?
また、広告審査はどのような流れで進めればよいのでしょうか?

今回は、広告審査の概要について、弁護士がくわしく解説します。

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広告審査とは

広告審査とは、企業が広告を出稿する前に、その広告内容を自社でチェックすることです。
広告内容に問題があれば法令違反となったり、SNSなどで「炎上」したりするおそれがあります。

このような事態を避けるため、広告出稿前には審査が必要です。
この広告審査は、自社の法務部などが行うこともあれば、弁護士に依頼して行うこともあります。

広告審査の主な目的

広告審査は、どのような目的で行うのでしょうか?
ここでは、主な目的を2つ解説します。

法令違反を避けるため

1つ目は、法令違反を避けるためです。

後ほど解説しますが、広告での表現はさまざまな法令で規制されています。
たとえば、何ら根拠がないにもかかわらず「業界ナンバーワン」などと記載すれば、景品表示法に違反します。
また、「〇〇が治る」などの表現が薬機法違反となり得ることは、広く知られていることでしょう。

法令に違反すると行政庁からの指導対象となる可能性があるほか、違反した法令によっては刑事罰の対象となる可能性があります。
そのような事態を避けるため、広告審査においては、法令違反を見逃さないよう注意しなければなりません。

企業の評判を守るため

2つ目は、企業の評判を守るためです。

法令には違反していなくても、広告表現によっては見た人に不快感を与え、SNSなどで「炎上」する可能性があります。
あえて炎上させて知名度を向上させるマーケティング手法もあるものの、予期せぬ炎上は企業にとってマイナスの効果の方が大きいでしょう。

近年では特に、 ジェンダーに関する表現で炎上するケースが散見されます。
たとえば、「女性らしさ」や「男性らしさ」の押し付けと感じられる表現や、性的な部位を過度に強調したキャラクターを起用した広告などは炎上リスクが高いといえます。

予期せぬ炎上を避けるため、「広告を見た人がどう感じるか」などの視点から、複数人での広告審査をおすすめします。

広告審査でチェックすべき主な法律

広告審査では、どのような法律を確認すべきなのでしょうか?
ここでは、広告審査の際に確認すべき主な法律を6つ紹介します。

なお、これらとは別途、不動産業であれば宅建業法やそのガイドラインなど、自社の事業に関連する業法の確認も必要です。

景品表示法

景品表示法とは、 不当な表示や不当な景品から一般消費者の利益を守るための法律です。

多くの消費者は、広告やパッケージに記載された内容が正しい前提で購入する製品やサービスを選びます。
しかし、広告やパッケージの記載に虚偽や誇大表現があると、消費者が正しい購入判断ができず不利益を被りかねません。
そのため、景品表示法では広告やパッケージなどへの不当表示を制限しています。

広告審査では、広告に次の表現がないか注意しなければなりません。

  • 優良誤認表示:商品・サービスの品質、規格、その他の内容についての不当表示
  • 有利誤認表示:商品・サービスの価格、その他の取引条件についての不当表示
  • その他誤認されるおそれのある表示:一般消費者に誤認されるおそれがあるとして、内閣総理大臣が指定する不当表示

優良誤認表示とは、たとえば実際にはカシミヤが50%しか含まれていないセーターを「カシミヤ100%」として広告することなどです。
このように、商品やサービスそのものの表示が不当である場合は、優良誤認表示に該当します。

一方、有利誤認表示とは、たとえば実際には他社と同程度の価格であるにもかかわらず、「自社が最も安い」として広告することなどです。
このように、価格や取引条件の表示が不当な場合は、有利誤認表示に該当します。

景品表示法には、業種や販売する製品ごとにガイドライン(運用基準)が公開されているため、関連するものを一読しておくとよいでしょう。※1

消費者契約法

消費者契約法とは、消費者契約について消費者の利益を守るための法律です。

事業者と消費者との間には、保有する情報の質や量や、交渉力に差があることが一般的です。
そこで、消費者契約について、不当な勧誘によって締結された契約の取り消しや不当な契約条項の無効が定められています。

広告審査においては、次のような表現がないか注意しなければなりません。

  • 重要事実の不実告知:重要な事実について嘘の事実を告げること(例:実際にはそのような効果がないにも関わらず、「この装置を付けると電気代が安くなる」と広告する)
  • 将来における変動が不確実な事項に係る断定的判断の提供:将来の変動が不確実である事項について、確実であるかのように告げること(例:「この金融商品は確実に値上がりする」と広告する)
  • 不利益事実の不告知:重要事項について不利益となる事実を、故意または重過失によって告げないこと(例:眺望を妨げる隣接マンションの計画を知りつつ、マンションを「眺望良好」と広告する)

こちらも、リーフレットや逐条解説などが公表されているため、一読をおすすめします。

薬機法

薬機法(旧:薬事法)とは、医薬品や医薬部外品、化粧品などの品質や有効性、安全性を確保することなどを目的とした法律です。
薬機法では広告についても規定がなされており、医薬品や医薬部外品、化粧品などに関する虚偽広告と誇大広告が禁止されています(薬機法66条)。

この規定の対象は「何人も」とされており、医薬品などを販売しない会社であっても無関係ではありません。

たとえば、サプリメントについて「必ず痩せる」や「スキンケアに効果あり」などと記載すると、薬機法違反となる可能性があります。
また、医薬品でないものについて、さも医薬品であるかのような表現をしてしまうと、承認前の医薬品広告の禁止規定に違反するおそれもあります。

特に、人の身体の変化に言及する広告や人の口に入るものの広告をしようとする際は、薬機法違反とならないか十分に確認してください。

なお、インターネット上には、薬機法に違反すると思われる広告が散見されます。
そのため、「他社が使っている表現だから大丈夫」などと安易に判断することは避けましょう。

健康増進法

健康増進法とは、国民の健康増進を目的とする法律です。

健康増進法では、食品の広告に関する次の事項について、著しく事実と異なる表示と、著しく人を誤認させるような表示が禁止されています(健康増進法65条1項、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令19条)。

  • 健康の保持増進の効果
  • 含有する食品または成分の量
  • 特定の食品または成分を含有する旨
  • 熱量
  • 人の身体を美化し、魅力を増し、容ぼうを変え、または皮膚もしくは毛髪を健やかに保つことに資する効果

そのため、食品に関する広告審査では、この規定に違反しないことを確認しなければなりません。

金融商品取引法

金融商品取引法とは、経済の健全な発展と投資家の保護を目的とした法律です。

証券会社などの金融商品取引業者等が広告をしようとする際は、原則として登録番号など一定の事項を表示しなければなりません(金融商品取引法37条1項)。
また、誇大広告についても規定があり、利益の見込みなど一定の事項について、著しく事実に相違する表示や著しく人を誤認させるような表示が禁止されています(同2項)。

広告をしようとする者が金融商品取引業者等である場合は、金融商品取引法やガイドラインも確認しておきましょう。

商標法・不正競争防止法

広告審査では、商標法などの知的財産に関する法令のほか、不正競争防止法違反も確認しなければなりません。
たとえば、広告する商品のネーミングやロゴマークが他社の登録商標と類似している場合は、商標権侵害や不正競争防止法違反となるおそれがあります。

また、不正競争防止法では、広告などで次の内容について誤認させるような表示をすることや、実際にその商品の販売などをすることを「不正競争」と定義しています(不正競争防止法2条1項20号)。

  • 商品に係る次の事項
    • 原産地
    • 品質、内容
    • 製造方法
    • 用途
    • 数量
  • 役務(サービス)に係る次の事項
    • 質、内容
    • 用途
    • 数量

そのため、広告審査においてはこれらの法令も確認しておく必要があるでしょう。

広告審査の基本的な流れ

広告審査は、どのような流れで行えばよいのでしょうか?
ここでは、広告審査の一般的な流れを紹介します。

公告審査を受け付ける

はじめに、広告審査を行う部署(法務部など)が、審査対象の広告案を受け付けます。

広告審査が頻繁に生じる企業の場合は、広告審査の依頼フォーマットを作成するなど、広告審査の受付方法を定めておくとスムーズでしょう。
その際は、掲載の〇日前までに提出するなどと期限を定めておくと、余裕を持った提出をしてもらいやすくなります。

広告内容をチェックする

次に、法務部などが広告内容をチェックします。
広告対象の商品やサービスの性質に応じ、先ほど紹介した法令を確認しながら審査を進めます。

法令違反でなくとも炎上リスクがあると考える場合は、これについても補足するとよいでしょう。

レビューをする

広告審査の結果を、担当部署へレビューします。
レビューは書類上で行うこともあれば、対面や社内メールなどで行うこともあります。

必要に応じて修正案を再チェックする

レビューを受けて、広告出稿の担当部署が適宜必要な修正を加えます。
修正後にそのまま出稿する場合もあれば、修正後のものについて再度レビューが依頼されることもあります。

修正漏れや修正後の問題点の有無を確認するため、修正点が多い場合や重大な修正点がある場合は、再度審査を経ることをおすすめします。

広告審査をする際の注意点

広告審査は、どのような点に注意して行う必要があるのでしょうか?
最後に、広告審査の主な注意点を4つ解説します。

関連する法令を漏れなく把握する

1つ目は、関連する法令を漏れなく把握したうえで広告審査をすることです。

広告審査に関連する法令は、先ほど紹介した代表的なものだけでも数多く存在します。
広告の内容や業種によっては、これら以外の業法なども確認しなければなりません。

広告審査をする際は、確認すべき法令に漏れが生じないよう、関連する法令をあらかじめ洗い出す必要があるでしょう。

ガイドラインを確認する

2つ目は、法令のみならず、その法令に関連するガイドラインも確認することです。

法令だけを見ても、その広告が違反であるか否か判断に迷うことは少なくありません。
そのような際は、ガイドラインを参照してください。

ガイドラインを参照することで、法令の考え方がより明確となり、適切な広告審査をしやすくなります。

保守的に審査する

3つ目は、保守的に審査をすることです。

広告審査をする中では、違法か否かの判断に迷うケースも少なくないでしょう。
その際は、できるだけ保守的に審査することをおすすめします。

なぜなら、仮に違法と判断された場合に指導や罰則の対象となる可能性があるほか、企業イメージが低下するおそれがあるためです。

相談先の弁護士を確保しておく

4つ目は、相談先の弁護士を確保しておくことです。

自社だけで、確実な広告審査をすることは容易ではありません。
仮に見落としが生じて違法な広告を出稿してしまうと、大きなリスクを背負うこととなります。

微妙な表現がある場合、審査の判断に迷うことも少なくないでしょう。
そのような事態に備え、広告審査についての相談先を確保しておくことをおすすめします。

迷った際に弁護士に相談することで広告審査における見落としリスクを最小限に抑えることが可能となるほか、弁護士からフィードバックを受けることで広告審査精度の向上にもつながります。

まとめ

広告審査に関連する法律や広告審査の流れ、注意点などについて解説しました。

広告審査にあたっては、景品表示法や消費者契約法、薬機法、不正競争防止法などさまざまな法律を参照しなければなりません。
また、必要に応じて各法令のガイドラインの確認も必要です。

広告審査にミスがあれば違法な広告を出稿してしまい、罰則の対象となったり企業イメージが低下したりするおそれがあります。
そのような事態を避けるため、必要に応じて弁護士に相談したり、弁護士に広告審査を委託したりすることも検討するとよいでしょう。

Authense法律事務所では企業法務の専門部門を設けており、広告審査のノウハウを積み上げています。
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