コラム
公開 2024.03.24

複数12_新規_就業規則の意見書とは?異議ありの場合はどうする?書き方や注意点を社労士が解説

就業規則を作成したり変更したりした際は、労働基準監督署へ届出が必要です。
この届出には、従業員代表者による意見書を添付しなければなりません。

では、従業員代表者による意見書は、どのように作成すればよいのでしょうか?
また、従業員代表者が意見書に反対意見を記載したらどうなるのでしょうか?

今回は、就業規則の意見書について、社労士がくわしく解説します。

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就業規則の意見書とは

就業規則の意見書とは、就業規則の作成や変更を労働基準監督署へ届け出る際に、添付が必要となる書面です。

労働基準法(以下、「労基法」といいます)の規定により、就業規則を作成したり変更したりした際は、従業員代表者の意見を聴かなければなりません(労基法90条)。
従業員代表者とは、それぞれ次の者です。

  • その事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合:その労働組合
  • その事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がない場合:労働者の過半数を代表する者

そのうえで、その意見を記した意見書を作成します。
この意見書は、就業規則の作成や変更を労働基準監督署に届け出る際に、添付しなければなりません。

従業員代表者が就業規則の内容に反対する内容の意見書を書いたらどうする?

従業員代表者が、就業規則の意見書に反対意見を記すこともあります。
では、就業規則の意見書に反対意見が書かれた場合、そのまま届出をしてもよいのでしょうか?
ここでは、就業規則の内容について従業員代表者が反対意見を示した場合の対応について解説します。

反対意見の意見書であっても就業規則の届出は可能

労基法で求められているのは、就業規則の作成や変更にあたって「従業員代表者による意見を聴くこと」であり、従業員の同意を得ることではありません。
そのため、従業員代表者が意見書に反対意見を書いた場合であっても、就業規則の作成や変更の届出をすることは可能です。
意見書に反対意見が書いてあるからといって、届出ができないわけではありません。

トラブル防止のためにはできるだけ理解を求めるよう努めるべき

先ほど解説したように、意見書に反対意見が書かれた場合であっても、法律上は届出が可能です。

しかし、実務上は、従業員による反対意見を無視して届出を強行することはおすすめできません。
なぜなら、従業員が強い反対意見を示しているにもかかわらず就業規則の作成や変更を強行すれば、従業員との関係性が悪化する可能性があるためです。
そのような事態となると、労使トラブルが頻発したり退職者が増加したりするおそれがあります。

そのため、就業規則の作成や変更について従業員側に丁寧に説明を行い、理解を求めるよう努めることをおすすめします。
何らかの誤解によって反対している場合や「会社が勝手に決めた」との印象から反対意見が生じる可能性もあるため、社労士などのサポートを受けて従業員説明会を開くことも方法の一つの手です。

なお、就業規則を新たに策定する場合とは異なり、従業員にとって不利益となる内容へと就業規則を変更する「不利益変更」を有効に行うには、原則として個々の従業員から合意を得なければなりません。
不利益変更とは、たとえば賃金を減らす内容の変更や手当を廃止する内容、休日を減らす内容の変更などです。

ある日突然、会社の一方的な都合によって賃金を減らされる可能性などがあるとなれば、従業員は安心して働くことができないでしょう。
そのため、就業規則の不利益変更は、原則として行うことができません。

ただし、合理的な理由があれば、例外的に不利益変更が可能であると解されています。
この「合理的な理由」の有無の判断材料の一つに、個々の従業員による合意があります。

そのため、就業規則の不利益変更をしようとする際は、意見書があればよいということではなく、個々の従業員による同意が必要であると理解しておきましょう。
従業員から反対意見が出されてお困りの際や、就業規則の不利益変更をしようとする場合は、社労士や弁護士などの専門家へご相談ください。

就業規則の意見書の書き方

就業規則の意見書は、どのように作成すればよいのでしょうか?
ここでは、意見書を作成するポイントについて解説します。

就業規則の意見書の様式の入手方法

就業規則の意見書の様式は、厚生労働省のホームページから入手できます。※1
まずは、ここから様式を入手しましょう。
意見書の様式は、「就業規則(変更)届」ファイルの2ページ目に掲載されています。

就業規則の意見書の書き方

前提として、就業規則の意見書は会社が書くものではなく、従業員代表者に書いてもらうべき書類です。
次の点に注意して作成してもらいましょう。

  • 日付
  • 意見の内容
  • 労働者の過半数を代表する者の選出方法
  • 職名・氏名

日付

様式の右上の日付欄には、従業員代表者が意見書を作成した日を記載します。
そのため、会社が就業規則を届け出る日と意見書の日付は、必ずしも同一であるとは限りません。

中央部にある「平成〇年〇月〇日付をもって意見を求められた就業規則案について、下記のとおり意見を提出します」との欄の日付は、会社から意見を求められた日を記載します。
なお、厚生労働省の様式は「平成」のままとなっているため、適宜「令和」へと変更してください。

意見の内容

意見書には、就業規則の作成や変更に関する従業員代表者の意見を記載します。
意見書に記載する意見は従業員代表者が自由に記載すればよく、形式が決まっているわけではありません。

参考として、就業規則の内容に異議がある場合は、「下記の事項についてご検討をお願い申し上げます。その他の事項については異存ありません」などと記載したうえで、具体的な異議について次のように記載します。

  • 第〇条について、始業時刻は7時30分ではなく、8時00分としていただきたい
  • 第〇条について、時間単位での年次有給休暇制度を導入していただきたい
  • 第〇条について、フレックスタイム制を導入していただきたい
  • 第〇条について、定年年齢が65歳とあるところ、これを70歳としていただきたい

このように、就業規則のどの条文をどのように修正してほしいのか、具体的に記載することが一般的です。

一方、異議がない場合であっても、意見欄を空欄のままとすることは避けましょう。
異議がない場合は、「異議ありません」や「特に意見はありません」などと記載します。

労働者の過半数を代表する者の選出方法

「労働者の過半数を代表する者の選出方法」欄には、意見書を記載した従業員代表者を選出した方法を簡潔に記載します。
たとえば、「投票による選挙」などです。

なお、後ほど改めて解説しますが、従業員代表者を会社が指名することはできません。
そのため、この欄に「会社による指名」などと記載することとは不適切です。

職名・氏名

職名と氏名欄には、意見書を記載した従業員代表者の職名と氏名を記載します。
たとえば、「一般職 会社太郎」などです。

なお、押印は廃止されているため、従業員代表者による押印は必要ありません。
また、署名ではなく記名(パソコンでの印字)でもよいとされています。

就業規則の意見書の提出先と期限

就業規則の意見書は、どこに、いつまでに提出すればよいのでしょうか?
それぞれ、解説します。

提出先

就業規則の意見書は単独で提出するのではなく、「就業規則(変更)届」とともに提出します。
原則として、提出先はその就業規則の適用対象である事業場の所在地を管轄する労働基準監督署です。

例外的に、一括して届け出る本社の就業規則と本社以外の事業場の就業規則が同じ内容であるなど一定の要件を満たした場合は、本社の所在地を管轄する労働基準監督署に一括して届け出ることもできます。※2
これを「就業規則一括届出制度」といいます。

就業規則の変更の場合に一括届出をするには、変更前と変更後の就業規則がともに同じ内容であることが必要です。
ただし、就業規則の一括届出制度はあくまでも提出先の特例であり、一括届出をする場合であっても、意見書は原則どおり事業所ごとに作成しなければなりません。

期限

就業規則の意見書の提出期限について、労基法で明確な規定はありません。
ただし、就業規則を新たに策定する場合には、その就業規則の施行日までに届け出る必要があります。
また、就業規則の変更の場合は、遅滞なく届け出を行いましょう。

就業規則意見書の注意点

最後に、就業規則意見書の注意点を3つ解説します。

従業員代表者は会社から指名できない

就業規則の意見書を書いてもらう従業員代表者を、会社が指定することはできません。
なぜなら、会社が自由に従業員代表者を指名できる場合、就業規則の内容に異議を述べない可能性が高い人を恣意的に選ぶことができてしまうためです。
そのような事態となれば、従業員代表者の意見書を求めている制度自体が形骸化してしまうでしょう。

従業員代表者は、投票や挙手など民主的な方法によって選任することが必要です。
また、労働条件の決定など労務管理について経営者と一体的な立場にある人(部長や工場長など)は、原則として従業員代表者とはなれません。
なお、従業員代表者は「正社員の代表者」ではなく、パートタイム労働者やアルバイト従業員も含めたすべての従業員の代表者であることにもご注意ください。

会社が無断で作成しない

就業規則の意見書は、従業員代表者が作成すべきものです。
通常は労働基準監督署から従業員代表者に対して直接コンタクトが取られることなどはないことから、会社が無断で作成してしまおうと考えることもあるかもしれません。
しかし、会社が従業員の名を騙って意見書を無断で作成することは避けるべきです。

まず、就業規則の届出にあたって従業員代表者の意見を聴かなかった場合は、30万円以下の罰金の対象となる可能性があります(労基法120条)。
さらに、会社が従業員になりすまして意見書を作成することは、刑法上の文書偽造の罪に該当する可能性があります。

意見書を偽造したいと考える場合、その理由は「面倒を避けたいから」ということが多いと考えられます。
しかし、会社が従業員代表者の名を騙って意見書を無断で作成すれば、より面倒な事態となる可能性が高いでしょう。
そのため、就業規則の意見書を無断で作成することは絶対に避けてください。

異議がなくても提出は必要

従業員代表者に就業規則についての意見を聴いたところ、特に異議はないとされることも少なくないでしょう。
しかし、その場合であっても、就業規則の届出にあたって意見書の添付は不可欠です。
異議がない場合には、「異議はありません」などと記載してもらい、意見書を提出してください。

なお、従業員側が就業規則の内容に強く反発したことなどから、従業員代表者が意見書の提出を拒否することもあり得ます。
そのような場合には、「会社が従業員代表者に意見を聴取したものの意見書を提出してもらえない」旨の報告書を会社が作成して添付することで、就業規則の作成や変更の届出を受理してもらうことが可能です。

ただし、意見書ではなくこのような報告書で就業規則を届け出た場合、会社に労働基準監督署から電話が入り、状況の確認がなされることが一般的です。
また、報告書の添付で届け出ができるからといって、従業員代表者に意見を聴くことなく虚偽の内容を報告書に記載して届け出ることは避けてください。

まとめ

就業規則の意見書について解説しました。

就業規則の意見書は、就業規則を作成したり変更したりした際に労働基準監督署へ届け出るにあたって、添付が求められる書類です。
意見書は会社が作成するのではなく、労働組合や従業員の過半数を代表する従業員に記載してもらわなければなりません。

従業員が意見書に就業規則への反対意見を書いたとしても、届出をすること自体は可能です。
しかし、その後の労使トラブルを避け円満な関係を維持するには、就業規則について従業員に説明する場を設けるなどして、歩み寄りの姿勢を見せることも重要です。

就業規則の作成や変更にあたって従業員との意見が折り合わずお困りの際は、社労士や弁護士などの専門家へご相談ください。

Authense社会保険労務士法人では、就業規則の作成や変更のサポートに力を入れており、さまざまな規模や業種でのサポート実績があります。
就業規則の意見書の作成や従業員との折り合いがつかずお困りの際は、Authense社会保険労務士法人までまずはお気軽にご相談ください。

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