コラム
公開 2023.02.15

単体404_新規_M&Aにおける弁護士の主な役割は?弁護士がわかりやすく解説

M&Aには、税理士や公認会計士などさまざまな専門家が登場します。
また、弁護士もM&Aにおいて、非常に重要な役割を担うことが少なくありません。

では、M&Aの場面で、弁護士は具体的にどのようなサポートを行うのでしょうか?
今回は、M&Aにおける弁護士の重要性や弁護士が行うサポート内容などについてくわしく解説します。

記事を監修した弁護士
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M&Aとは

M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略称であり、企業の合併と買収を意味します。
M&Aにはさまざまな形態がありますが、主なものは次のとおりです。

買収

買収とは、ある会社が他社自体や、他社の事業を購入する形態でのM&Aです。
たとえば、A社がB社を買収した場合、原則として買収されたB社はA社の子会社となります。

合併

合併とは、2社以上の会社を1つの会社に統合する形態でのM&Aです。
合併には、ある会社が他の会社を飲み込む形で行う「吸収合併」と、新たな会社を設立して行う「新設合併」が存在します。

提携

提携とは、複数社が協力して共通した目的の達成を目指すものです。
お互いに出資する形で行う「資本提携」と、独立した会社同士が協力しながら事業に取り組む「業務提携」とが存在します。

M&Aを広く捉えた場合には、これらもM&Aの一つの形態として挙げられます。

M&Aで弁護士が果たす主な役割

M&Aで弁護士が担う主な役割は、次のとおりです。
なお、具体的にどのようなサポートを行うのかは依頼先の弁護士や弁護士との契約内容などによって異なりますので、依頼先の弁護士によく確認しておきましょう。

M&A全体のプランニング

弁護士が、M&Aのプランニング全体に携わる場合もあります。
この場合には、全体の設計から相手先企業の選定、契約の締結に至るまで、弁護士がトータルで指揮をとりつつM&Aが進行します。

M&A交渉の代理

M&A交渉の代理を、弁護士に依頼することが可能です。
このようは法律事務にかかわる交渉代理や仲裁は弁護士の独占業務であり、弁護士以外の者が報酬を受けて行うことはできません。

相手先企業との交渉のほか、債権者など外部のステークホルダーとの交渉を代理する場合もあります。

法務手続きの支援や代行

M&Aにあたっては、非常に多くの法務手続きが発生します。
弁護士へ依頼することで、必要な法務手続きを適切なタイミングで、漏れなく行うことが可能となります。

法務デューデリジェンス

デューデリジェンスとは、M&Aの候補先となっている会社をさまざまな視点から調査・分析することです。

「会社を買う」ということは、その会社が保有するさまざまなリスクや権利義務を、一手に引き受けるということです。
また、モノを買うのとは異なり、外部から問題点をうかがい知ることは困難でしょう。

そのため、M&Aにあたっては最終契約の締結前に相手先企業を徹底的に調べ上げ、買収に値するかどうかや、買収対価はどの程度が相当であるのかといったことを調査することが一般的です。

デューデリジェンスにはさまざまな種類が存在し、次のものなどが挙げられます。

  • 財務デューデリジェンス:決算書や証憑類などから、簿外資産の有無や正しい財務状況、キャッシュフローの状況などを分析します
  • 税務デューデリジェンス:過去の税務申告書などから、税務リスクを分析します
  • 事業デューデリジェンス:事業の強みや将来性、リスクなどを分析します
  • 法務デューデリジェンス:契約書や過去の訴訟、株主の状況などを調べ、法務リスクを分析します
  • 人事デューデリジェンス:就業規則や雇用契約書などを調べ、人事面でのリスクを分析します

このうち、法務デューデリジェンスは弁護士が担うことが一般的です。
仮に多額の損害賠償請求を受けるリスクが潜んでいることがわかれば、M&A自体を見送ることも一つの選択肢となるため、M&Aにおいては法務デューデリジェンスを徹底するべきでしょう。

契約書の作成やレビュー

M&Aにおいては、最終契約やNDAなど、多数の契約が発生します。
また、その契約は非常に重要なものであり、仮に不備があったり自社に不利な内容となっていたりすれば、取り返しのつかない事態ともなりかねません。

そのため、M&Aにまつわる契約書の作成や契約書レビューは、弁護士へ依頼することが一般的でしょう。

M&Aに関わる弁護士以外の主な専門家

M&Aには、さまざまな専門家が関与します。
弁護士以外にM&Aにかかわる主な専門家は、次のとおりです。

M&A仲介会社

M&A仲介会社とは、M&Aの相手方を探す役割を担うM&Aの専門家です。
相手先企業を探すのみならず、M&Aにおいて企業とともに帆走するアドバイザリー業務までを提供することが多いでしょう。

ただし、会社や担当者によって、サポートの質に大きな差があります。
そのため、M&A仲介会社を選ぶ際には、経験や質をよく見極めて選定することが必要です。

公認会計士・税理士

M&Aにおいては、専門の公認会計士や税理士が登場することが多いでしょう。
公認会計士や税理士はM&Aにともなう会計面や税務面からのアドバイスを行うほか、財務デューデリジェンスなどを行います。

また、税理士自身が相談からM&A成約までサポートするM&Aアドバイザリー業務を担う場合もあります。

金融機関

M&Aにおいては、金融機関が関与するケースが少なくありません。
なぜなら、多くのM&Aにおいて、対価の支払いにあたって融資を受ける必要が生じるためです。
融資の実行をスムーズにするため、初期の段階から金融機関へ相談をしながら交渉を進めることも多いでしょう。

また、金融機関自身がM&Aアドバイザリー業務を行う場合もあります。
ただし、金融機関がアドバイザリー業務を行うのは、比較的大型の案件に限られる傾向にあります。

M&Aの基本の流れ

M&Aは、一般的にどのような流れで進行するのでしょうか?
基本的な流れは次のとおりです。

M&Aについて弁護士などの専門家に相談する

M&Aを自社のみで進めることは、おすすめできません。
相手企業が見つかっていない場合はもちろん、元々取引関係にあった会社とM&Aをする方向性で話がまとまったなど、すでに相手企業が決まっている場合であっても、具体的な条件交渉に入る前に、弁護士などの専門家へ相談するとよいでしょう。

なぜなら、専門家のサポートを受けることなく契約の締結まで進んでしまうと、自社にとって不利な条件となっていたことに後から気が付くなど、後悔してしまう可能性があるためです。
そのため、M&Aを検討している段階で、M&Aに関して知見のある弁護士などの専門家へまずご相談ください。

M&Aの方向性や基本方針を定める

次に、専門家とともにM&Aの方向性や自社としての基本方針を定めましょう。
たとえば、相手先企業に最低限望む条件や、対価についてなどです。

自社としての条件を明確にしないまま相手先の選定を行ってしまうと、相手企業との交渉ポイントを探ることが困難となりかねないためです。

相手先を募る

次に、M&Aの相手先企業を募ります。
相手先企業を募る方法としては、次のものなどが挙げられます。

  • 取引先などに直接打診する
  • 金融機関などに紹介を依頼する
  • M&A仲介会社を利用する
  • マッチングサイトを利用する

それぞれの方法に一長一短や状況への向き不向きがあるため、どの方法を活用するのかについても、専門家と相談のうえ検討するとよいでしょう。

相手先の選定や交渉を行う

相手先の候補が見つかったら、選定と初期段階での交渉を行います。
相手先企業との交渉にあたっては、弁護士同席のもとで行うとよいでしょう。

NDAを締結する

相手先企業がある程度絞れたら、より具体的な交渉に入る前に、NDAを締結しましょう。
NDAとは秘密保持契約のことで、開示した情報を外部に漏らしたり他の用途で利用したりすることを禁じる契約です。

M&Aをするかどうかを決めたりM&Aの対価を決めたりするにあたっては、企業(特に、売り手企業)の情報を、相手先企業にさらけ出さざるを得ないでしょう。
しかし、提示した機密情報が漏洩されたり、M&Aが不成立となったにもかかわらず、提示した営業機密を相手の営業活動に利用されたりするような事態は阻止しなければなりません。

そのため、より詳細な交渉やデューデリジェンスを行う前に、NDAを締結することが不可欠です。

デューデリジェンスを実施する

NDAの締結後、デューデリジェンスを実施します。

デューデリジェンスをどこまで詳細に実施するのかはM&Aの目的や状況によって異なりますが、少なくとも事業デューデリジェンスや財務デューデリジェンスは行うことが一般的です。

また、M&A後に思わぬトラブルを抱えてしまわないためには、法務面のリスクを調べる法務デューデリジェンスや人事面の運用を調べる人事デューデリジェンスも実施すべきでしょう。

最終条件の交渉をする

デューデリジェンスの結果、M&Aを進める方向に決まったら、最終条件の交渉をします。
この時点では、デューデリジェンスの結果を踏まえてM&Aの対価についてもより具体的に検討することとなります。

こちらも、弁護士同席のうえ交渉を行うとよいでしょう。

最終契約を締結する

最終条件の交渉がまとまったら、最終契約を締結します。
その後は、登記申請や許認可の引き継ぎなど、M&Aに伴うさまざまな手続きを行います。
また、状況によっては社内規程の改訂なども必要となるでしょう。

M&Aを弁護士に依頼する主なメリット

M&Aを弁護士に相談することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
挙げられる主なメリットには、次のものがあります。

法務リスクが回避しやすくなる

弁護士へM&Aを相談する最大のメリットは、法務リスクを回避しやすくなる点です。

M&Aはどちらの当事者にとっても、会社の根幹に関わる非常に重要な出来事です。
ここに何らかの問題があり、その問題を見落としたままM&Aを進めてしまうと、会社の根底を揺るがす事態ともなりかねません。
また、M&A自体に慣れていない企業が大半であるため、自社のみで問題に気が付くことは容易ではないでしょう。

M&Aを検討する段階から弁護士へ依頼することで、デューデリジェンスの際や契約締結の際などM&Aの各局面でサポートが受けられ、法務リスクを大きく低下させることが可能となります。

交渉力を強化しやすくなる

弁護士は法律のプロであるとともに、交渉のプロフェッショナルでもあります。
そのため、弁護士へM&Aのサポートを依頼することで、自社の交渉力を強化することが可能となります。

特に、自社の立場が相手企業よりも弱い場合には、相手企業にとって都合のよい内容で交渉が進んでしまうリスクが低くありません。
そのような際には、弁護士と共にあらかじめ交渉の作戦を練ったり、交渉を弁護士に代行してもらったりすることで、自社の望む条件でM&Aがまとめられる可能性を高められるでしょう。

トラブル発生時に対応しやすくなる

M&Aに際しては、相手企業との間でトラブルになる可能性もあります。
たとえば、最終契約を締結してしまった後で相手企業の不正が発覚したり、相手企業が契約違反をしたりすることなどが考えられるでしょう。

M&Aに際して弁護士のサポートを受けることで、万が一トラブルに発展した際の対応がスムーズとなります。

まとめ

M&Aは、企業の根幹にかかわる重大事業です。
仮に大きなリスクを見落としたまま契約を締結するなどしてしまうと、大きな損失が生じる可能性があるほか、後悔してもしきれない事態となる可能性もあります。

そのため、M&Aに際しては、M&Aに強い弁護士のサポートが不可欠であるといえるでしょう。

Authense法律事務所では、M&Aにあたっての法務リスクの洗い出しや法務デューデリジェンスなど、M&Aにまつわるリーガルサポートに力を入れています。
M&Aのサポートに詳しい弁護士をお探しの際には、ぜひAuthense法律事務所までお問い合わせください。

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