コラム

養育費を受け取るための取り決め方法とは?金額の変更方法も解説

養育費を受け取るための取り決め方法とは?金額の変更方法も解説

離婚後、親権者になった場合、子どもが成人するまでの「養育費」を請求することができます。

きちんと最後まで支払ってもらうために、離婚時に「約束」をして公正証書を作成しておきましょう。

子どもの養育費の決め方や金額の変更方法について解説します。

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1.養育費が支払われている割合

養育費は、親が親である以上子どもに対して支払わなくてはならないお金です。とはいえ現実には支払われていないケースも多々あります。実際、養育費を支払ってもらっている世帯の割合はどのくらいなのでしょうか?
平成28年度における厚生労働省の「全国ひとり親世帯等調査報告結果」によると、母子家庭で「現在も養育費を受け取っている」世帯は24.3%にすぎません。「過去に養育費を受けたことがある」が15.5%、「養育費を受けたことがない」が56.0%です。
父子世帯の場合、「現在も養育費を受け取っている」が3.2%、「過去に養育費を受けたことがある」が4.9%、「養育費を受けたことがない」が86.0%となっています。

厚生労働省:①(クレジットなし)平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果

2.養育費が支払われていない理由

養育費は親の義務であるにもかかわらず、なぜきちんと支払われていないのでしょうか?
いくつか理由が考えられますが、中でも大きいのは「養育費の取り決めをしていないから」です。
約束をしていなければ、支払義務者が自ら支払う可能性は低くなるのも当然です。また口約束の場合でも、簡単にうやむやにされてしまうでしょう。

現に、先ほど紹介した厚生労働省の調査においても、母子世帯で「養育費の取り決めをしていない」割合が54.2%、父子世帯で「養育費の取り決めをしていない」割合が74.4%となっており「養育費を受け取っていない」割合に近くなっています。

養育費をきちんと支払ってもらうには、文書によって養育費の約束をしておくことが重要であることがわかります。

3.養育費の取り決め方

養育費の取り決め方

養育費はどうやって取り決めれば良いのでしょうか?手順を以下で示していきます。

3-1.話し合って金額を決める

まずは相手と話し合い、養育費の金額を決めましょう。養育費は「毎月定額」を支払うのが原則です。「一括払い」などは基本的にできないと考えてください。

養育費の金額は、夫婦間の年収を基準として決まります。
基準としては、家庭裁判所の養育費算定表が参考になります。こちらの表に父母の収入をあてはめれば相場の金額を算定できるので、その範囲で取り決めるのがよいでしょう。

裁判所:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について

表に当てはまらないケースや特殊な事情があるケースもありますので、その場合は個別の取り決めが必要になりますので、弁護士に相談するのがよいでしょう。

3-2.公正証書で養育費の合意書を作成する

養育費の約束をしたら、必ず「公正証書」で合意書を作成しましょう。口約束では支払われない可能性が高くなるので、必ず書面化すべきです。
また、当事者同士で作成した書面があっても、相手が不払いを起こしたときに、支払いを強制するには改めて調停や訴訟をしなければなりません。手間も時間もかかり、逃げられてしまう可能性もあります。公正証書にしておけば、不払い時にすぐに差押えができるメリットがあるので、必ず公正証書化しましょう。公正証書を作成したいときには、お近くの公証役場に申し込んで必要書類を揃え、指定された日に2人で公証役場に行きましょう。それで公証人に合意書を作成してもらえます。

3-3.調停を申し立てる

2人で話し合っても養育費について合意できない場合、家庭裁判所のサポートを利用しましょう。
離婚前であれば「離婚調停」を申し立てれば調停委員の仲介のもとで離婚条件を定められます。調停委員は上記で紹介した養育費算定表をもとに相場を計算し、適切な金額を提示してくれます。
離婚後であれば「養育費請求調停」を申し立ててください。調停委員の関与のもと、養育費の取り決めができます。相手が支払いに応じない場合には「審判」に移行して審判官が相手に養育費の支払い命令を出してくれるので、最終的に支払ってもらえるようになるでしょう。

4.養育費の金額を変更できるケース

離婚時にいったん取り決めた養育費の金額を、変更できるケースがあります。

4-1.増額できるケース

相手の収入が上がった

養育費の金額は父母それぞれの収入状況によって変わるので、相手の収入が大きく上がると増額される可能性があります。

こちらの収入が下がった

支払いを受ける側の収入が下がると、増額請求できる可能性があります。

子どもの成長による変更

子どもの年齢や成長に応じて、養育費の増額が認められるケースもあります。

具体的には、上記の養育費算定表においては、子どもが成長して15歳以上になった場合、基準となる養育費が増額されます。また、子どもが大学などに進学し、離婚時点で想定していなかった費用の負担が生じた場合などには、事情変更として養育費が増額となる余地があります。

4-2.減額できるケース

やむを得ない事由による減収が発生した

支払う側の収入が減ったり失われたりすると、養育費は減額される可能性があります。

再婚した

支払う側が再婚すると再婚相手を扶養しなければならないので、その分養育費が減額される場合があります。

子どもができた

支払う側が再婚相手との間に新しい子どもができたら、その子を養育しなければならないので前婚の子どもへの養育費が減額される場合があります。

支払いを受ける側が養子縁組した

支払いを受ける側が再婚して、再婚相手と子どもが養子縁組すると、新たな養親となった再婚相手がまず養育義務を負います。血のつながった元配偶者については基本的には養育支払い義務がなくなります。

5.養育費の金額を変更する方法

養育費の金額を変更する方法

養育費の金額を増減額するには、以下の手順で進めましょう。

5-1.相手と話し合う

まずは相手と話し合いをします。特に支払う側から減額を求めたいときに、連絡なしに勝手に減額するとトラブルになるので注意しましょう。

お互いに納得できれば「合意書」を作り直し、公正証書化してください。手間がかかっても、合意書は再度作成しておくべきです。そうでないと以前の書面が有効であることを前提に請求が行われてトラブルになる可能性があります。

5-2.調停を利用する

話し合っても合意できなければ、家庭裁判所における調停手続を利用しましょう。
増額を求めたいなら「養育費増額調停」、減額を求めたいなら「養育費減額調停」を申し立てます。
調停では、調停委員の関与のもとに、養育費の金額変更について話し合いを進めます。合意ができたら調停が成立し、新たな金額の設定が可能となります。

5-3.審判で新たな養育費を決定してもらう

話し合っても合意できない場合、審判官が新たな養育費の金額を指定します。なお必ずしも養育費の金額が変更されるとは限りません。変更すべき理由がある場合のみ変更の決定が行われます。

5-4.養育費の変更が認められるのはいつから?

調停や審判で養育費の金額が変更される場合、通常は「調停申し立て時」からの分となります。養育費が高すぎる、低すぎるなど不満を感じているなら、早めに家庭裁判所で養育費に関する調停を申し立てましょう。

まとめ

養育費をきちんと受け取るためには、離婚時に取り決めをしておくべきです。離婚時に決められなかった場合、離婚後でも約束できるので今からでも相手と話し合いをするか調停を申し立てましょう。
養育費の話し合いを自分たちでうまく進められない場合でも、弁護士が代理人として交渉するとスムーズに解決できるケースが多数です。養育費を受け取れていなくてお悩みの方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
中央大学法学部法律学科卒業、中央大学大学院法務研究科修了。離婚、交通事故、相続問題などの一般民事事件を中心に、幅広い分野に積極的に取り組む。
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