コラム
公開 2019.07.09 更新 2022.07.05

養育費はいつまで支払う義務がある?子どもが何歳になるまでなのか弁護士が解説

養育費はいつまで支払う義務がある?子どもが何歳になるまでなのか弁護士が解説

養育費をいつまで払わねばならないのかは、ケースによって異なります。
基本的には子どもが20歳になるまでですが、子どもが大学などへ進学する場合、結婚した場合などには終期が変わってくる可能性もあります。
養育費を受け取る側も支払う側も、いつまで支払われるべきか正しく把握しておきましょう。

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そもそもの養育費の支払義務について

そもそも親はなぜ子どもの養育費を払わねばならないのでしょうか?
法的根拠がどこにあるのか、具体的にはどういった義務内容となっているのか確認しましょう。

養育費は、親が子どもを「扶養すべき義務」の一種です。民法877条1項は、親子や兄弟姉妹が互いに扶養し合う義務を定めています。

(扶養義務者)
第877条1項 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

親である以上、離れて暮らしていても子どもの養育費を負担しなければなりません。

養育費の支払義務は、親が自分の生活レベルを落としてでも子どもの生活を維持しなければならない「生活保持義務」です。
親は子どもに自分と同等の生活をさせなければなりません。

養育費はいつまで支払う必要がある?

養育費はいつまで支払わねばならないのでしょうか?
基本的には「子どもが成人するまで」と考えられています。
ただし子どもの事情や親同士の話し合いにより、養育費の支払い終期を先に延ばしてもかまいません。
特に子どもが大学に行く場合などには大学卒業時まで養育費を払う取り決めを行う方が、子どものためになるでしょう。
子どもが成人になったからといって、養育費を打ち切らねばならないわけではありません。

成人年齢引き下げの影響

養育費の基本的な支払い終期は「子どもが成人するまで」です。
従来、成人年齢は20歳とされていたので、子どもが20歳になる月まで支払いが行われるのが原則でした。
ただし2022年4月1日に改正民法が施行され、成人年齢が18歳へと引き下げられました。
これにより、子どもの成人年齢は18歳となり、養育費を支払う年数が短くなる可能性が懸念されました。

この点について、平成30年度司法研究(「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」)によると、「基本的には養育費の支払いは20歳までで、18歳にすべきではない」と記載されています。

裁判実務としても、現在のところ、成人年齢が引き下げられても養育費の支払いは従来とおり20歳までとしているケースが多く、基本的に2022年4月以降も従来通り、養育費の支払いは20歳までとなりそうです。

養育費の計算方法、いくら払うのか

養育費の計算方法、いくら払うのか
養育費の金額は、どのように計算するのでしょうか?

一般的には「養育費の算定表」を用いて計算します。
養育費の算定表とは、裁判所が公開している養育費の相場を示す表です。
算定表にあてはめると、子どもの人数や年齢、親の年収に応じた相当な養育費の金額を求めることができます。
基本的な考え方としては、支払う親の年収が上がれば養育費の金額が上がり、受け取る親の年収が上がれば養育費の金額が下がる仕組みです。

養育費の計算方法や算定表について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。

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養育費の支払期間を延長・短縮できるか

養育費の支払い終期は、基本的に子どもが20歳になるまでです。
ただし親同士が事前に別途の取り決めをした場合や、子どもや親を取り巻く事情に大きな変更があった場合、養育費の支払い終期を変更できる可能性があります。
以下ではどういったケースで養育費の支払期間を延長、あるいは短縮できるのかみてみましょう。

成人後の子どもの事情

大学に進学した場合

子どもが20歳の誕生日を迎えても、養育費を受け取れるケースはよくあります。
1つめは子どもが大学や大学院、専門学校などの高等教育機関へ進学した場合です。
進学すると子どもは自活するだけの収入を得られませんし、学費もかかるでしょう。
親として養育費を負担すべきケースが多いと考えられます。
具体的な養育費の支払期間は、子どもが学校を卒業するまであるいは学校を卒業するはずの月までと定めるケースが多数です。

たとえば「子どもが22歳になった次の3月まで」などと定めておけば、子どもが浪人、留年した場合に支払期間が延びるリスクも低減できるので、支払う側も納得しやすいでしょう。

未成熟子の場合

養育費を計算するとき「未成熟子」という考え方があります。
未成熟子とは、独立して生きていくことのできない子どもです。

必ずしも「未成年」とは一致しません。
たとえば大学や専門学校へ通って自活できていない場合、病弱で働けない場合などには「未成熟子」とみなされるケースが多数です。

未成熟子の場合、成熟するまで養育費が必要なので、子どもが独立するまで別居親が養育費を負担しなければならない可能性があります。

障がいをお持ちの場合

子どもに障がいがあって働けない場合にも、養育費の支払い終期が変わるケースが多いです。
重度の障がいがあり働けない場合には、年齢に関わらず自活は難しく、養育費が打ち切られてしまうと生活の見通しが立ちません。
よって親が子どものために養育費を負担すべきと考えられます。

いつまでも支払うことが難しい場合には、親同士で話し合って、お互いが可能な範囲で子どもの生活費を負担する方法を取り決めましょう。

未成年の子どもの事情

結婚した場合

子どもの事情により、養育費の支払い終期が変わるケースもあります。
1つは、子どもが結婚した場合です。
結婚すると、子どもは「成人擬制」して、18歳以下であっても「成人した」とみなされます。
よって、基本的には親が養育費を支払う義務はなくなります。
たとえば子どもが18歳で結婚したら、親同士が「20歳まで払う」とする取り決めをしていたとしても、養育費支払義務が消滅する可能性があります。

仕事に就いている場合

子どもが20歳になるまでに就職して働き始めるケースもあります。
たとえば高卒で就業したら、子どもは自身の収入で生活できるので親が扶養する必要はなくなる可能性があります。
この場合、子どもは未成熟子ではなくなるため、親による養育費支払義務はなくなると考えられます。
また子どもがプロスポーツ選手や芸能人などであり、十分な収入を得ている場合でも親による養育費支払義務が認められない可能性があります。

監護者の事情

年収が上がった場合

養育費の金額や支払義務には、支払義務者や監護者(子どもを養育している人)の収入も影響します。
たとえば監護者が十分な収入を得ているなら、別居親が養育費を支払う必要性は低くなるでしょう。
そこであまりに監護者の収入が高額な場合、養育費を支払う必要がなくなる可能性があります。

ただし監護者の年収が上がったとしても養育費が「減額」される事例が多く、完全に義務が免除されることは稀です。

監護者の年収が上がったら、親同士がしっかり話し合って養育費の算定表を基準に金額を決め直しましょう。

年収が下がった場合

監護者の年収が下がると、養育費の金額は増額される可能性があります。
同居親の年収が低いと、子どもにはより高額な支援が必要となるためです。

監護者の年収が下がって子どもの学費や生活費に困ったら、親同士がしっかり対応を話し合いましょう。

再婚した場合

監護親が再婚すると、別居親による養育費の支払義務が消滅する可能性があります。
ただし、単に再婚しただけで養育費支払い義務がなくなるわけではありません。
養育費支払いが終了するのは、子どもと再婚相手が養子縁組した場合です。
養子縁組すると、養親が一次的な扶養義務者となるので、別居親は養育費を払わなくてよくなるケースが多数です。

ただし養子縁組が解消されると、また養育費を払わなければならない状態に戻ります。
また、養子縁組したとしても、養親に十分な養育能力がない場合、別居親の養育費支払義務が残る可能性もあります。

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支払者の事情

年収が上がった場合

養育費の支払義務者側の事情が支払い終期に影響を与える可能性もあります。

まずは支払義務者の年収が上がった場合です。
年収が上がったからといって、養育費の支払い期間が延びるわけではありません。
ただし収入が多ければ、その分子どもへの支援もしやすくなるでしょう。
たとえば子どもに高等教育を受けさせる余裕ができて、結果的に養育費の支払い終期が延びる状況も考えられます。
また収入が上がると養育費の金額は増額される可能性があります。

支払義務者の収入が上がったら、親同士で養育費の金額や支払い終期について、取り決めをやり直すのがよいでしょう。

年収が下がった場合

養育費の支払義務者の年収が下がると、養育費を払わなくてよくなる可能性があります。
養育費は、あくまで「子どもに自分と同等の生活をさせるべき義務」であり、自分が生活できないのに援助すべき義務ではないためです。
たとえば親がケガや障がいではたらけなくなって生活保護を受けるようになったら、養育費の支払義務はなくなる可能性が高いです。

ただし、単に年収が減っただけで養育費の支払いが終わるわけではありません。
具体的には養育費算定表にあてはめて妥当な養育費の金額を設定しましょう。

養育費は一括で払うことも可能か

養育費は、基本的に毎月継続して払っていくものです。
子どもや親の状況は年数の経過によって変わっていくため、その都度の対応が必要だからです。

ただし親同士の取り決めで、離婚時にまとめて養育費を払ってもらうことはできます。
その場合、監護者が養育費を途中で使い果たしてしまったときは、更に養育費の請求することは困難ですが、子どもから扶養料の請求ができる可能性はあります。
支払義務者にとってリスクの高い方法といえるでしょう。

受け取る側にとっては、養育費がまとめて先に払われるので確実に受け取れるメリットがあります。ただし定期的に受け取るより総額が減る可能性や、事情の変更があっても追加請求できない可能性があり、リスクがあります。

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養育費を減額したい方へ

養育費を減額したい方へ
養育費の適正金額は、子どもや親の事情によって変わります。
たとえば支払義務者の年収が下がったら養育費の減額を求められる可能性があります。
支払義務者が再婚し、再婚相手との間に子どもが生まれた場合などにも減額が認められるケースが多数です。
監護者の収入が上がった場合にも、養育費を少ない金額として決め直すべき状況があるでしょう。

ただ支払義務者が自分で同居親に養育費の減額を持ちかけても受け入れられないケースが少なくありません。
相手との交渉が決裂したら、家庭裁判所で養育費減額調停を申し立てる必要があります。

効果的に養育費の減額を実現したいなら、なぜ養育費を減額すべきなのか、法律的な観点から根拠を伝えて同居親と交渉を進めましょう。
自分では交渉をうまく進められない、お互いに感情的になってしまいがちなケースなどでは弁護士に交渉を任せることをおすすめします。

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養育費を増額したい方へ

反対に、養育費を増額できるケースもあります。
たとえば別居親の年収が上がった場合、同居親の年収が下がった場合などです。

こういった状況になったら、養育費の増額に応じてもらうよう相手と交渉しましょう。
増額交渉を持ちかける際には、なぜ養育費を増額すべきなのか、増額の法的根拠を提示して相手を説得しましょう。

相手が無視する場合や自分たちで話し合っても合意できない場合には、弁護士へ増額交渉を依頼するようおすすめします。
弁護士であれば法律の観点から相手を説得できる可能性が高くなりますし、合意ができたときには増額に関する合意書の作成まで行います。
相手がどうしても養育費の増額に応じない場合、家庭裁判所での養育費増額調停も任せられて安心でしょう。

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養育費取り決め時の「公正証書」の大切さ

協議により養育費の取り決めをする際には、必ず公正証書を作成しましょう。
公正証書があれば、支払義務者が約束した支払いをしないときに、権利者が義務者の資産や給料等を差し押さえられるからです。
もしも公正証書がなかったら、あらためて養育費調停を申し立てて調停や審判が確定しないと差し押さえができません。

養育費の公正証書は、公証役場へ申込みをすると作成してもらえます。
自分でも対応できますが、手続きにも手間がかかりますし、文面を自分で考えなければならないなど負担も大きくなるものです。

弁護士に依頼すると、公証人とのやり取りや必要な段取りをすべて整えてくれるので、手間がかかりませんし、自分で公証役場へ行く必要もありません。
相手と顔を合わせずに公正証書を作成できるメリットもあります。

養育費の公正証書作成は弁護士に依頼するのが得策です。

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支払者が養育費を支払ってくれない場合

支払者が養育費を支払ってくれない場合
養育費の取り決めをしても相手が払ってくれない場合、以下の手順で請求を進めましょう。

公正証書や調停調書がある場合

養育費について取り決めた公正証書や調停調書があれば、それらの書類を使って相手の給料や預貯金等を差し押さえましょう。
相手の勤務先や財産に関する情報がわからないときには、裁判所の手続きを利用して調べられる可能性もあります。
自分で情報取得や差し押さえの手続きをするのが難しければ、弁護士へご相談ください。

公正証書や調停調書がない場合

公正証書や調停調書などの書類がない場合には、先に養育費調停を申し立てなければなりません。
調停や審判が確定したら、差押えの手続きを進めましょう。

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まとめ

養育費をいつまで支払うべきかは、子どもや親の状況によって異なります。
事案の内容に応じて適切な時期を、お互いに話し合って決められるのがよいでしょう。

養育費の金額や支払期間について、自分たちで協議してもうまくいかない場合は、弁護士へ依頼することをおすすめします。
弁護士が対応すれば公正証書作成もスムーズに進められて安心です。

養育費について悩んだときには離婚や子どもの問題に熱心に取り組んでいる弁護士に相談してみましょう。

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記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。早稲田大学法学部法律学科卒業、慶應義塾大学法科大学院法学研究科修了。一般民事、特に離婚事件に関する解決実績を数多く有する。離婚カウンセラーの資格を取得しており、法律的な問題を解決するのみならず、常に依頼者の方の心情に配慮し、不安や悩みに寄り添う対応を心掛けている。
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