コラム
公開 2022.10.20 更新 2023.07.21

養育費を支払えない場合はどうする?減額できる?弁護士がわかりやすく解説

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取り決めた養育費が支払えない場合、減額をすることはできるのでしょうか?
今回は、養育費の減額を求める手順や養育費の減額が認められるケースと認められにくいケースなどに関して、弁護士がくわしく解説します。

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養育費とは

養育費とは、子の監護や教育のために必要となる費用のことです。

子の親である夫婦の関係が円満であれば養育費は家計から支出することが多く、養育費が問題となることはほとんどありません。
一方、子の親である夫婦が離婚した場合には、養育費がしばしば問題となります。

夫婦が離婚した後も、子は引き続き双方の子であることに変わりありません。
そのため、双方が養育費を負担する義務を負います。

しかし、婚姻期間中のように共通の財布から養育費を捻出することは難しいため、子の親権を持たなかった側の親が、子の親権を持った側の親に対して養育費を支払うよう取り決めることが多いでしょう。

養育費の金額については、離婚に際して行う夫婦間での話し合いや、離婚調停などで決めることが一般的です。

養育費を支払わなかったらどうなる?

養育費について離婚時に取り決めたにもかかわらず、その後養育費を支払わなかったらどうなるのでしょうか?
起こる可能性のある主な事態は次のとおりです。

財産開示請求がされる可能性がある

養育費を約束どおりに支払わなければ、次で解説する差し押さえ手続きの準備として、相手方から財産開示請求がなされる可能性があります。
財産開示請求とは、養育費の支払い義務者を裁判所に呼び出して、預貯金や不動産などその人の所有する財産を開示させる手続きのことです。

従来は、仮に財産開示請求に応じなかったり虚偽の申告をしたりしても、30万円以下の過料に処される可能性があるのみでした。
そのため、制度の実効性が疑問視されていました。

しかし、2020年4月1日の民事執行法改正により、正当な理由なく出頭しなかったり虚偽の陳述をしたりした場合には、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金の対象とされることとなっています。

財産や給与が差し押さえられる

養育費を約束どおりに支払わなければ、差押えがなされる可能性があります。
差押えとは、滞納している養育費を、裁判所を介して強制的に回収するための手続きです。

差押えは、預貯金などの資産に対してなされる場合もあれば、給与などの定期収入に対してなされる場合もあります。
そのため、差押えにまで発展すれば、勤務先に養育費の滞納が知られてしまう可能性が高いでしょう。

遅延損害金を上乗せして請求される可能性がある

養育費を滞納した場合には、滞納した額のみならず、遅延損害金が上乗せされた額を請求される可能性があります。
遅延損害金とは、約束した期限までに約束した金銭を支払わなかったことに対する損害賠償金です。

養育費についてあらかじめ遅延損害金を取り決めていなかった場合の遅延損害金の割合は、年3%(2020年3月31日以前分は年5%)とされています。

取り決めた養育費が支払えない場合の対処法

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離婚の際などにあらかじめ取り決めた養育費が、その後の状況の変化などによって支払えなくなる場合もあることでしょう。
そのような場合であっても、勝手に養育費を減額したり滞納したりすることはおすすめできません。
一方的に減額や滞納を行えば、相手が態度を硬化させてしまい、差押えなどへと発展する可能性が高いためです。

取り決めどおりに養育費を支払うことが難しい場合には、次の方法を検討しましょう。

相手と誠実に交渉する

取り決めた養育費の支払いが難しい場合には、まず相手方と誠実に交渉をしましょう。
交渉の際には、なぜ養育費の支払いが難しくなったのか状況を丁寧に説明したうえで、今後も可能な範囲で支払っていく姿勢を示すことがポイントです。

相手との交渉が成立したら、必ず書面に残しておきましょう。
特に、当初の取り決めが調停など裁判所を介したものである場合や公正証書である場合には、変更内容を公正証書にしておくと安心です。

弁護士へ交渉を依頼する

相手と直接交渉できない場合や、直接の交渉を避けたい理由がある場合、相手が交渉に応じてくれない場合などには、弁護士へ交渉を依頼しましょう。

離婚問題や養育費の問題に強い弁護士は、蓄積した過去の事例などを踏まえながら相手との交渉を行います。
そのため、ご自身で交渉する場合よりも、有利な内容で交渉をまとめてくれる可能性が高くなります。

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養育費減額調停を申し立てる

弁護士が間に入っても交渉がまとまらない場合には、養育費減額調停を申し立てます。
養育費減額調停とは、養育費の減額について家庭裁判所で行う話し合いのことです。

話し合いとはいっても当事者同士が直接顔を合わせて行うわけではなく、通常は家庭裁判所の調停委員が双方に交互に話を聞く形で、交渉の仲裁を行います。
養育費減額調停には、弁護士に同席してもらうことや、都合がつかないときは弁護士のみが出頭して話を進めることが可能です。

ただし、調停はあくまでも話し合いの場ですので、双方が合意しなければ成立させることはできません。
相手が納得していないにもかかわらず、強制的に養育費を減額することなどはできませんので、誤解のないように注意しましょう。

関連記事

養育費減額審判に移行させる

養育費減額調停でも決着がつかない場合には、調停は不成立となり終了し、養育費減額審判に移行します。
養育費減額審判では、裁判所が双方の主張を加味したうえで、養育費の減額が妥当かどうかや、減額後の養育費などについて決断を下す手続きです。

なお、養育費を減額してほしい理由によっては、養育費減額審判で減額が認められる可能性が非常に低い場合も存在します。
そもそも減額が認められる可能性がほとんどない場合には、あらかじめ弁護士とよく打ち合わせをしたうえで、調停で解決できるよう、主張を慎重に検討すべきでしょう。

減額が認められやすいケース

次のような場合には、養育費の減額が認められる可能性が高いでしょう。

収入が大きく減った場合

養育費の取り決めをした後に生じた大きな状況の変化によって、収入が大きく減少した場合には、養育費の減額が認められる可能性が高いでしょう。

大きな状況の変化とは、たとえば勤務先の倒産により失業してしまった場合や、病気を発症して収入が途絶えてしまった場合などです。

相手が再婚し子が再婚相手の養子となった場合

仮に親権を持った側の親が再婚をし、子が再婚相手の養子となった場合には、養育費の減額または免除が認められる可能性が高いでしょう。

なぜなら、再婚相手と親権を持った側の親との負担によって、子の養育費が十分に確保されると考えられるためです。

養育費を受け取る側の収入が増えた場合

養育費は、一方の親のみが負担するのではなく、両親が収入に応じて負担するものです。したがって、親権を持った側の親(=養育費を受け取っている側の親)の収入が増えた場合には、親権を持っていない側の親が負担する養育費の減額が認められる可能性があります。

養育費を支払っている側が再婚するなどして扶養家族が増えた場合には、養育費の減額が認められる可能性が高いでしょう。
養育費を負担する側の収入という1つのパイを、扶養するべき家族で分け合うことになるからです。

分け合う家族が増えれば、それだけ1人にかけられる養育費は少なくなります。

減額が認められにくいケース

次の場合には、養育費の減額が認められにくいといえます。

取り決めた後で相場より高かったと気づいた場合

養育費の金額は、裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」を参考にして決められることが多いです。

裁判所:養育費・婚姻費用算定表

しかし、たとえ養育費の金額がこの算定表から外れていたとしても、当事者同士が合意したのであれば、その取り決めは有効です。

後になってから一般的な金額よりも高いと気づいたからといって、それのみを理由に減額が認められる可能性は低いでしょう。

収入などの変化が自己都合である場合

仮に収入が大きく減った場合であっても、その収入の変化が、養育費を受け取る側へ配慮することなく、自己都合によるものである場合には、養育費の減額が認められる可能性は低いでしょう。

たとえば、企業の経営者が養育費を引き下げることを目的として、自己の役員報酬を減額した場合などがこれに該当します。

面会交流を拒否されたことが理由である場合

面会交流を拒否されるなど、希望どおりに子と会えないことを理由に養育費を減額することは、原則として認められません。

養育費の支払いは、面会交流の対価や面会交流を条件とすべき性質のものではありません。
面会交流が実現していないのであれば、面会交流調停を申し立てるなど、養育費とは別の問題として請求をする必要があります。

養育費を支払えない場合に弁護士へ依頼するメリット

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養育費を約束どおり支払うことが難しい場合には、弁護士へ相談することをおすすめします。

依頼するメリット

養育費の減額について弁護士へ依頼する主なメリットとしては、次のものが挙げられます。

相手と直接交渉しなくて済む

すでに離婚した相手と、養育費の減額について交渉をすることに抵抗を感じる場合もあることでしょう。
中には、感情的になってしまうなど、建設的な話し合いが難しい場合もあるかと思います。
弁護士へ依頼することで、相手方との直接交渉を避けることが可能です。

有利な条件で交渉がまとまる可能性が高い

離婚問題や養育費にくわしい弁護士は、ケースごとに過去の事例などを踏まえて相手方と交渉します。
また、弁護士へ依頼することで交渉への本気度が相手へ伝わることも相まって、有利な条件で交渉がまとまる可能性が高くなります。

審判への移行を見越して交渉できる

弁護士は、交渉がまとまらず最終的に裁判(審判)となる可能性も踏まえて相手方と交渉をします。

そのため、審判で不利となるような証拠を不用意に残すことを避けられるほか、合意による場合の条件と、仮に審判となった場合の見通しを比較検討するなどして、慎重に交渉を進めることが可能となります。

養育費の減額を弁護士に相談する場合の費用

養育費の減額を弁護士へ依頼した場合には、着手金と成功報酬がかかる場合が一般的です。
ここでは、Authense法律事務所における料金プランをご紹介します。

関連する料金ページ

一時的に費用はかかるものの、養育費減額の効果は長期に及びますので、お早めに相談することをおすすめします。

まとめ

いったん取り決めた養育費が支払えなくなった場合でも、一方的に額を減らしたり滞納したりすることはおすすめできません。
このようなことをすれば差押えをされる可能性があり、より大きな問題へ発展する可能性が高いためです。

養育費が支払えない場合には、相手方と真摯に交渉することから始めましょう。
そして、相手との交渉が難しい場合や、相手が交渉に応じてくれない場合などには、早期に弁護士へ相談することをおすすめします。

Authense法律事務所には、養育費の交渉に詳しい弁護士が多数在籍しております。
養育費が支払えずにお困りの際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。早稲田大学法学部法律学科卒業、慶應義塾大学法科大学院法学研究科修了。一般民事、特に離婚事件に関する解決実績を数多く有する。離婚カウンセラーの資格を取得しており、法律的な問題を解決するのみならず、常に依頼者の方の心情に配慮し、不安や悩みに寄り添う対応を心掛けている。
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