コラム
公開 2019.11.05 更新 2021.10.04

不妊離婚~夫から「不妊」を理由に離婚を突きつけられたときの対処方法~

子どもをほしいと望んでいても、授かりづらい体質の方がいます。
夫から不妊を理由に離婚を迫られたときは、応じなければならないのでしょうか?
離婚するとして慰謝料や財産分与がどうなるのかも押さえておきましょう。

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1.不妊は離婚理由になるのか

夫が不妊を理由に離婚を迫ってきたとき、離婚に応じなければ夫は離婚調停や訴訟を起こしてくる可能性があります。
では「不妊」は法律上の離婚理由になるのでしょうか?

民法が定める離婚理由は以下の5つです。

  • ①不貞
  • ②悪意の遺棄
  • ③3年以上の生死不明
  • ④回復しがたい精神病
  • ⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由

この場合、⑤の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかが問題となります。

「その他婚姻を継続し難い重大な事由」とは、①~④に準じるような重大な事情であると考えられており、具体的にはDVやモラハラなどが該当します。
単に「不妊体質である」だけでは、夫婦関係を継続していけないほどの事情とは言えないので、離婚理由になりません。

2.夫の体質が原因で不妊になるケースも多い

世間一般で、夫婦の間に子どもができないときには「女性側の責任」と思われることが多いものです。しかし実際には「男性不妊」のケースも非常に多いです。だいたい半数近くの不妊は男性側に原因があるとも言われます。

そのようなとき、いくら女性側だけの不妊治療を行っても子どもはできません。

男性側の不妊治療を行えば妊娠できるケースもあるので、もし男性側の不妊検査をしていないなら早急に検査してみることをお勧めします。男性の不妊検査は泌尿器科などで実施されています。

3.協議離婚なら不妊が理由でも離婚できる

不妊は法律上の離婚理由にはなっていませんが、長引く不妊治療や夫の態度に疲れて、妻としても「離婚してもかまわない」と考え始めることがあるでしょう。

その場合には、夫と協議して離婚できます。

法律上の離婚理由が必要なのは、訴訟で判決離婚するケースのみです。協議や調停で離婚する場合には、どのような理由であっても「夫婦が離婚に納得していたら」離婚できます。

「子どもができない」「夫に不信感を抱いた」「お互いに新しい人生を歩みたい」など、どういった原因でも夫婦が離婚届にサインをして役所に提出したら、離婚が有効になります。

4.不妊で離婚する場合、慰謝料は発生するのか

離婚時に発生する「お金」と言えば、多くの方が「慰謝料」を思い浮かべるでしょう。
不妊を理由として離婚するとき、慰謝料を請求できるのでしょうか?

離婚の際に慰謝料が発生するのは、夫婦のどちらかに「有責性」がある場合です。
有責性とは、婚姻関係を破綻させたことに対する責任です。
「妻の不妊が気に入らないから離婚を求める」のは、婚姻継続に非協力的で、婚姻関係を破綻させる行為のようにも思えますが、「有責性」とは認められません。
不妊を理由に離婚を求められたからとしても、夫に慰謝料を請求することは難しいでしょう。

ただし、夫に対して「解決金」を求めることは可能です。解決金とは、離婚トラブルを解決するために支払うお金です。
夫が不妊を理由に離婚を求めるとき、妻が応じなければ夫は離婚調停や離婚訴訟をしなければなりません。しかも法律上の離婚理由がない以上、訴訟をしても離婚は不可能です。離婚するには「妻が離婚に同意する」しかありません。

解決金には決まった金額・相場はありません。夫婦で協議して金額を決めることが一般的です。
夫から不妊を理由に離婚を求められ、妻がそれに応じる場合、慰謝料の請求は難しいですが、解決金を求めるという方法があります。

5.不妊と財産分与

離婚するとき、重要なのが「財産分与」です。財産分与とは、婚姻中に夫婦が形成した「共有財産」を離婚時に分け合うことです。
法的には、夫婦が2分の1ずつ財産を受けとる権利が認められます。
ただ、話し合いによってその割合を変更することは可能です。

たとえば「本来不妊は離婚理由にならないけれど、あえて離婚に応じるのだから財産分与を多めに支払ってほしい」という交渉も考えられます。
財産分与を有利に進めたいと望むなら、弁護士に相談するのも有効な手段となります。

6.財産分与と解決金の関係

財産分与については、先ほど説明した解決金とセットで考えることもできます。
たとえば、以下のような解決方法が考えられます。

  • ・財産分与2分の1に、解決金を追加して払ってもらう
  • ・解決金込みで妻の財産分与を7割とする
  • ・解決金込みで自宅は妻がもらい、他の預貯金等の財産を半分ずつにする

このように、話し合いによって、財産分与の割合や解決金の金額を決めることができます。

7.夫が不倫している場合

夫が突然「子どもができないから離婚したい」と言い出す場合、実は夫が不倫しているケースもあるかもしれません。そのような場合には夫が有責配偶者になりますので、妻側から離婚を求められますし、高額な慰謝料請求もできます。

また有責配偶者からの離婚請求はできないので、妻が離婚に納得しなければ今後もずっと離婚できない状態が続き、夫は妻に生活費を払い続けなければなりません。
夫が不倫している場合には、離婚や慰謝料についての条件も大きく変わります。気になることがあれば、しっかり調査を行いましょう。

まとめ

最近では「子どもを作らない」選択をする夫婦も増えていますが、不妊を理由とした離婚はなくなりません。

夫から不妊を理由に離婚を要求されたときは、焦らずに自分の権利をしっかり主張していくことが大切です。お一人で対応に困られたときには、弁護士までご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
京都大学総合人間学部卒業、立教大学大学院法務研究科修了。一般民事(主に離婚事件)に関する解決実績を数多く有する。また、企業法務についても幅広い業務実績を持つ。
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