コラム
公開 2019.08.08 更新 2021.10.04

配偶者のモラハラで離婚したい!成立の近道とは?

裁判所の司法統計のデータによると、平成29年度の離婚調停申立て件数のうち、「精神的に虐待する」というモラハラが理由の件数は、夫側から3,626件(全体の約20.2%)、妻側から12,093件(全体の約25.3%)となっています。
離婚を考える男女のうち、共に2割を超える人たちが、モラハラで苦しんでいる実態が浮き彫りになっています。
そこで、今回は、「モラハラ」につき、どうすれば離婚を成立させられるか、その近道の方法をご紹介します。

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モラハラ配偶者に交渉!協議離婚を狙う方法

離婚する方法は一つではありません。いくつかの方法がある中で、最もシンプルな方法が協議離婚です。離婚する理由など一切関係なく、相手の合意さえ得られれば、あとは離婚届を提出するだけです。
ここでは、どのようにしてモラハラ配偶者に交渉し、離婚の合意を得るかというポイントをご紹介します。

・モラハラとは精神的暴力、虐待のこと

モラハラとは、「言葉や態度、身振りなどで、個人の人格や尊厳を傷つけ、精神的に追いつめること」を意味します。一般的に、精神的暴力や精神的虐待ともいわれています。そのバリエーションは多様で、内閣府男女共同参画局のホームページでは、以下のような特徴が挙げられています。

  • ・大声でどなる
  • ・「誰のおかげで生活できるんだ」「かいしょうなし」などと言う
  • ・実家や友人とつきあうのを制限したり、電話や手紙を細かくチェックしたりする
  • ・何を言っても無視して口をきかない
  • ・人の前でバカにしたり、命令するような口調でものを言ったりする
  • ・大切にしているものを壊したり、捨てたりする
  • ・生活費を渡さない
  • ・外で働くなと言ったり、仕事を辞めさせたりする
  • ・子どもに危害を加えると言っておどす
  • ・なぐるそぶりや、ものをなげつけるふりをして、おどかす

出典:内閣府男女共同参画局 暴力の形態 精神的なもの
http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/dv/02.html

・モラハラ配偶者には毅然とした態度を

モラハラ配偶者の共通項としては、自己愛が強く、相手をコントロールしたいなどの言動が見受けられます。相手を見下すことで、自分が他者よりも優れていることを実感したい欲求もあります。
一方で、モラハラ被害者の性格は、人の気持ちを察することができ、感受性が強く、相手に同情を抱くと分析されています。相手に対して、自分がいなければと思い込むこともあるようです。そのため、共依存の関係に陥っている場合もあり、自分がモラハラを受けていることに気付かないケースも指摘されます。

よって、離婚を成立させるためには、まずはモラハラ配偶者との共依存の関係から抜け出し、毅然とした態度で向き合うことが前提となります。相手の言いなりにならず、冷静に対応することがポイントです。その上で、モラハラの確実な証拠を揃えてから、揺るがない決意を持って、離婚を申し出ましょう。
1回の話し合いで、相手にすんなりと受け入れられることは少ないでしょう。ただ、相手側にも、「本気だということ」、「絶対引き下がらないこと」を理解してもらえれば、最終的に合意がなされる可能性もあるといえます。

配偶者のモラハラを証明することが離婚成立のポイント

次に、相手が協議離婚に応じない場合は、調停を経て、裁判という流れになります。この段階では、当事者以外に第三者が登場します。調停でいえば調停委員、裁判でいえば裁判官などです。ポイントは、いかに配偶者のモラハラを証明して、調停委員や裁判官に理解してもらうかです。実際に具体的な事例をご紹介しながら、解説します。

毎日の妻の暴言にノイローゼ気味のAさんの場合

Aさんは55歳のときに同僚の勧めでお見合いをして結婚、相手は離婚歴のある4つ下の女性でした。大人しい性格が気に入っていましたが、結婚して半年で、段々と本性が現れはじめ、気分にムラがあることがわかりました。突如、些細なことで暴言を吐くようになり、1年後には、何か気に入らないたびに、毎日暴言を吐きます。
怒りの対象は自分の場合や、テレビに向かってなど色々ですが、Aさんは気が滅入り、夜も眠れなくなり、ノイローゼ気味となっています。この場合、Aさんはどうすれば離婚することができるのでしょうか。

さて、協議、調停でも当事者が離婚に合意しない場合は、裁判による離婚の成立を目指します。
裁判による離婚の場合は、民法に定められた離婚原因に当たると、裁判官に認められれば、離婚が成立します。5つの原因のうち、モラハラが該当する可能性があるのは、「その他結婚を継続しがたい重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)でしょう。

具体的には、「夫婦関係が既に破綻していて、回復の見込みがない」つまり、修復不可能といえる場合であれば、判決で離婚を命じられる可能性があります。

Aさんのケースで非常に難しいのは、配偶者が中年の女性ということです。というのも、女性には更年期障害という症状が40代以降で出てくる場合があるからです。精神的に浮き沈みがあり、イライラした感情が暴言に繋がるケースもあります。
ただ、更年期障害であれば、病院で診察を受け、ホルモン療法により改善される可能性が高いといわれています。一方でモラハラの場合は、自己愛が強い、相手をコントロールしたいなどの人格上の問題であるため、薬での治療は期待できません。

よって、このようなケースでは、日頃からの暴言をその都度、音声データに残して、客観的証拠を確保することからお勧めします。どのようなタイミングで暴言が行われるのか、どれくらいの頻度なのかを記録するのです。
ある程度、音声データが確保できれば、配偶者を病院に連れていき、更年期障害として治療ができるか診察を受けてもらいましょう。併せて、自分の精神的なダメージも証明できるように、病院での診察と診断書を出してもらうことをお勧めします。

裁判では、このように、客観的な証拠を積み重ねて、モラハラを理解してもらうことが重要です。また、病院などを利用して、治そうと努力をしたが無理だったこともアピールポイントといえるでしょう。モラハラに対応するために手を尽くした、こちらは努力をしたという事実が重要なのです。しかしそれでも改善されないとなれば、修復の余地はないと判断される可能性が高いといえます。

モラハラ配偶者との離婚には、カウンセリングや別居も効果的

さて、ほかにも裁判でモラハラと認めてもらうためには、客観的な証拠のほかにも効果的な方法があります。

気に入らないことがあれば無視をし続ける夫に困り果てるBさんの場合

Bさんは、結婚して5年が経ちます。結婚当初から、喧嘩すれば相手は黙るようなところがありましたが、ここ2年は、何もなくても自分が気に入らないことがあれば、Bさんの大切なものを壊して、こちらが怒ったり責めたりすると、一切話をせず、意図的に無視するようになりました。
ここ1年は、Bさんも疲れ果て、自分のものを捨てられたり壊されたりしても、相手に文句も言わなくなりました。今度は、実家に帰ることを制限され、それに反論すると、また無視が始まる状況です。Bさんは離婚を考えていますが、成立させる近道はあるのでしょうか。

さて、Bさんのケースも、同様に配偶者がモラハラ行為をしているといえるでしょう。ただ、夫が無視するというケースであるため、音声データで記録しても、夫の声が入っていないだけで、その場に夫が本当にいたのか、わからないと反論される余地があります。
そのため、このようなケースの客観的証拠としては、動画などで、無視の様子を記録するなどの方法が考えられます。壊されたり、捨てられたりしたものは、写真で記録し、日記にもつけておきましょう。

また、修復しようと努力したという事実として、夫婦カウンセリングを受けるなどもお勧めします。相手がカウンセリングを拒否して受けない場合でも、予約などを取り、前向きに努力をしていた事実を残しておくことがよいでしょう。さらに、別居という事実も、修復不可能と判断される要素の一つです。ただ、短期間では認められず、大体5年が目安といわれていますので、離婚まで長期戦になる可能性があるといえます。

まとめ

配偶者のモラハラによる離婚の成立は、モラハラであるとわかる客観的な証拠と、それを判断する裁判官次第といえます。そのため、モラハラによる離婚案件の経験が多い弁護士などであれば、判断の分かれ目である微妙なラインについてアドバイスがもらえるかもしれません。まずは、自身で行動を起こす前に、弁護士への相談をお勧めします。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
京都大学総合人間学部卒業、立教大学大学院法務研究科修了。一般民事(主に離婚事件)に関する解決実績を数多く有する。また、企業法務についても幅広い業務実績を持つ。
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