ようやく離婚を決意したものの、「裁判ではなく調停?」と戸惑う方もいらっしゃるのではないでしょうか。じつは、日本では調停前置主義が採用され、調停を経てからでないと離婚訴訟には進めないのです。
調停に初めて臨む場合、手続きの流れ、調停委員がどのような人なのかなど、知らないことが多いでしょう。しかし、これらの必要な知識が備われば、調停の進め方、意見の伝え方、証拠の内容など、自ずと調停での闘い方も変わってきます。
ここでは、離婚調停の流れを軽く触れつつ、特にモラハラ(言葉や態度で相手に精神的ダメージを与えて追い詰める行為)を理由とする場合の離婚調停での注意点、さらには調停全般での心構えも含めて解説します。
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モラハラでの離婚調停の進め方とは?
まず、モラハラでの離婚調停の流れを簡単にご説明します。
・モラハラは「その他結婚を継続しがたい重大な事由があるとき」に該当する
夫婦の一方が離婚することに同意していない場合、民法上明記された「離婚原因」があると、家庭裁判所が判断すれば、判決によって離婚が成立します。
離婚原因については、民法上5つの内容が明記されており(民法770条)、モラハラは、通常「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(5号)に当たると解されます。具体的にいえば、モラハラにより「夫婦関係が破綻していて回復の見込みがない」と判断されれば、離婚が判決によって成立することを意味します。
ただ、裁判は最終的な手段であり、裁判に至る前に必ず「夫婦関係調整調停」を経なければなりません。そのため、モラハラで離婚を決意した場合は、先に調停での話し合いが進められます。
・離婚調停(夫婦関係調整調停)の流れ
調停とは、裁判官と一般市民から選ばれた調停委員が仲介となり、法律的な評価に基づいて、助言、譲歩を促し、双方が納得のいく解決を目指す話し合いの場です。
調停の申し立てから約1ヶ月前後で、第1回調停期日の呼び出しが行われます。
調停が開始されると、まずは調停委員が、当事者に具体的な事実の確認を行い、双方の意向や事情を聴取します。両者の意見がまとまらなければ、次回の期日を調整して持ち越しとなります。
その後、調停委員の助言や説得を受け、調停委員が提示した調停案に応じるか、それぞれが結論を出します。
合意となれば、その内容を盛り込んだ調停調書が作成され、確定判決と同様の効果となります。
モラハラで離婚調停を成立させるためのポイント
「離婚したい」という意向で離婚調停に臨む場合は、何としても調停委員に、相手が離婚に応じるように誘導、説得をしてもらわなければなりません。
そのためには、以下の2つの視点が重要となります。
- ・調停委員に、モラハラに該当し、「その他結婚を継続しがたい重大な事由があるとき」といえると理解してもらうこと
- ・調停委員が相手を説得できる材料(「意見の正当性」「客観的証拠」)を用意すること
・具体的な事実を詳細に説明する
Aさんは、モラハラを理由に離婚をしたいと考えています。しかし、調停委員に「夫がモラハラだ」と何度説明しても、全く理解してもらえません。
さて、モラハラとは、モラルハラスメントという言葉の略語です。しかし、どのような行為がモラハラなのか、画一的な定義はありません。
調停委員に対して、「モラハラされた」と説明しただけでは、漠然としたイメージしか抱けない可能性があります。
また、モラハラが「その他結婚を継続しがたい重大な事由があるとき」として理解されなければなりません。調停委員が、相手の言動について「それは度を越えている」「そこまでの状況であれば結婚生活が続けていけない」と納得できることが重要です。
そのため、具体的な事実を説明することが必要となります。
例えば、以下の項目があれば分かりやすいといえるでしょう。
- ・離婚したい理由として、問題なのは相手の態度なのか発言なのか
- ・実際の相手の言動の様子(発言内容など)
- ・それまでの経緯(相手がどうしてそのような態度や発言に至ったか)
- ・1回限りか、複数回か(頻度はどれくらいか)
このように、具体的な状況が想像できるように、詳細に調停委員に伝えることがポイントです。
微妙なニュアンスなど説明が難しければ、相手の言葉を録音して、音声データで証明する方法もあります。
・モラハラと夫婦喧嘩の境界線とは?
Bさんは、調停でモラハラを理由に離婚したいことを調停委員に伝えました。具体的な場面が想像できるように詳細に相手の言動を伝えたのです。ところが、調停委員は夫婦喧嘩の範疇であるとして、逆に調停委員からは、離婚ではなく仲直りをするようにと説得され、話し合いが一向に進みません。
このように、モラハラは夫婦喧嘩の延長と思われる場合があります。これは、モラハラの言動の中には、夫婦喧嘩の最中に行われる言動と似ている部分があるからです。
例えば、夫婦喧嘩の場合、互いが言い合いをしている中で、「売り言葉に買い言葉」といった具合に、言葉がヒートアップする状況があります。
単なる夫婦喧嘩であると誤解されないように、説明の際には、以下のことを強調した方が、より理解されるでしょう。
- ・相手の人格を傷つけるような発言
- ・相手の弱い立場につけ込む発言
- ・威圧的な言動・態度
- ・些細なことに対する非難の仕方
このように、相手の言動について説明する際は、強調するポイントを意識して行った方がよいでしょう。相手の言動も、出来る限り、日常的な些細な場面などを選んで、相手の異常さが浮き彫りとなる状況の説明をお勧めします。
・調停委員の年齢も考慮すべき重要なポイント
モラハラを主張する上で、調停委員の年齢も考慮すべきです。
平成29年4月1日現在の調停委員の年齢別構成割合は、多い順に60歳代が70.3%、50歳代が20.8%、40歳代が8.2%となります。60歳代が圧倒的に多く、7割となっています。
特にモラハラは、ここ最近、出てきた言葉です。女性の社会的地位の向上と共に、結婚しても家庭に入らず働き続ける共働き世帯が多くなりました。それに伴って、若い世代だけでなく、世の中の風潮として、男女間の役割についての考え方も変わってきたという背景があります。
ただ、60歳代は亭主関白が当然という中で育った世代ですから、考え方や価値観が異なることを前提に、話すことをお勧めします。
モラハラだけではない!離婚調停共通の心構え
離婚の理由を問わず、離婚調停全般に共通する事項となります。ここでは、調停に対する心構えを中心にご説明します。
・調停委員は「中立の立場」と理解すべき
調停は、裁判ではありません。直接相手と交渉するのではなく、中立の立場である調停委員を通じて話し合いが行われます。調停委員に意見を伝え、調停委員から相手に対して説明、説得が行われます。
あくまで調停委員は、問題解決の仲介者であることを、常に念頭におくことが重要です。
そのため、調停委員が納得しても、相手に説得をして調停成立の合意を引き出さなければ、結果的には調停不成立となります。重要なのは、調停委員の誰しもが相手に説得できるような「意見の正当性」と「客観的な証拠」といえます。
・調停委員にも感情はある
調停委員は、調停に一般市民の良識を反映させるため、社会の各分野から選出されています。
実際に、平成29年4月1日現在の調停委員の職業別構成割合は、多い順に無職が37.5%、公認会計士・税理士・不動産鑑定士・土地家屋調査士等が18.9%、弁護士が12.1%、会社・団体の役員・理事が9.0%となっています。
調停委員といえども、同じ人間で感情もあります。社会的に地位のある方も多いようですので、呼び方にしても「先生」などが無難でしょう。
また、調停委員を騙そうとする考え方も得策ではありません。虚偽の主張、解決案を二転三転させる矛盾な態度など、調停委員に「信頼できない」と思われれば、調停を有利に進めることはできません。
目先のことにとらわれず、自分が導き出したい結論をしっかりと定めて、真摯な態度で調停に臨むことが大切です。
まとめ
離婚調停の時間には限りがあります。調停の中で効率よく、自分の意見を伝えねばなりません。自分の苦労や辛い体験を分かってほしいという気持ちも理解できますが、自分の目指す解決案を的確に伝えることが重要です。
調停が終わってから後悔するよりも、事前にできるだけの準備をして、当日の調停に臨みたいものです。そのため、早期に弁護士などの専門家に相談をして、情報収集から調停期日での主張まで、サポートしてもらうことをお勧めします。
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