コラム
公開 2021.04.13 更新 2021.10.04

ゴールデンウィークに別居準備 離婚を視野に入れた別居で考えるべきこと

まもなく、ゴールデンウィーク。まとまったお休みが取れるゴールデンウィークに、別居の準備を進める人は少なくありません。離婚を考えても、すぐに踏み切ることはなかなかできないものです。お金のことや子どものことなど、考える時間を持つために、しばらく別居するのもひとつの方法です。別居をするにあたり、知っておいたほうがよいことについて解説します。

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1.別居はどんなときに考えればよい?

別居は、その先に待っている夫婦関係の修復か、あるいは離婚に向けての猶予期間です。
民法では、夫婦関係において協力扶助義務があると定めています(752条)。これは、夫婦は同居し、協力し合いながら一方に扶助が必要となった場合には、もう片方が自分と同じ生活ができるように援助することを義務付けるものです。もし、一方的に別居に踏み切ってしまうと、同居義務違反となり離婚の原因を作ってしまった有責配偶者とみなされ、慰謝料を請求されることにもなりかねません。
別居をするときは、まずは配偶者と話し合うことが原則です。別居に至る問題を解決するために必要なことを検討したり、別居する期限を決めたりすることで相手の考えを知る機会にもなるでしょう。
しかし、すべての別居が同居義務違反になるわけではありません。
例えば、浮気、モラハラ、DV、ギャンブル依存、金銭トラブルなどが原因で、婚姻関係を継続しがたい重大な事由があるとき(第770条1項5号)に該当する場合や、既に夫婦関係が破綻してしまっている場合などは、同居義務違反にはなりません。特にモラハラやDVでは心身の安全が最優先されるので、早急に別居先を探すことが先決です。
別居の理由は様々です。
別居についてもう少し冷静に考える方がよいケースもあれば、反対に同居を継続しない方がよいケースもあります。また、命にかかわるときはなるべく早く別居を強行しなければなりません。
迷ったときは弁護士に相談するのも一つの手段です。いずれにしても別居を考えたときには、冷静にそのタイミングを計ることも重要になってくるでしょう。

2.別居する前に準備しておくこと

別居する前に準備しておくこと

・住む場所の確保

家を出た後に身を寄せる場所を探しておく必要があります。実家や友だちに頼むこともできるでしょうし、経済的に余裕があればウィークリーマンションを借りるのもひとつの方法です。深刻なDVなどの被害から身を隠すには、行政や民間企業が運営するシェルターを頼り、所在を明らかにしないことも考える必要があります。

・お金の準備

仕事を持っていればある程度蓄えることもできますが、無職の場合、別居にも迷いが生じます。
行動を起こしたとき必要になるのはお金です。まずは仕事を見つけるところから始めましょう。
法律では婚姻費用を請求することが認められています(760条)。婚姻費用とは日常の生活費、医療費、交際費など必ずかかる生活費のことです。夫婦には婚姻費用を分かち合う義務があり、結婚している限りその義務は発生し続けます。これは別居している間も同じように受け取ることができるので、専業主婦には心強いものになるでしょう。また、子どもを引き取っていて扶養の必要性が高い場合には、その分の養育費も婚姻費用に含むことができます。相手が支払いに応じない場合には、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求の調停申立」を行い、支払いを求めることができます。
婚姻費用の概算については、家庭裁判所のホームページに掲載されている「婚姻費用算定表」を参考にしてみてください。

・持ち出すもの

別居するときには何を持っていけばよいのでしょうか?まずは、自分に必要なリストを作成してみましょう。気持ちの落ち着かない中での荷物整理は大変なものですが、一度家を出てしまうと取りに戻ることはできないかもしれません。

  • ・預金通帳
  • ・印鑑
  • ・キャッシュカード
  • ・身分証明書
  • ・保険証
  • ・マイナンバーカード
  • ・母子手帳

などが挙げられます。常備薬・子どもの教材・写真なども忘れないようにしましょう。
他には、相手方名義の預金通帳・有価証券・源泉徴収票などのコピー・離婚原因の証拠になるもの・別居時にどうしても持っていけない自分の荷物の写真などです。最後のものは、別居後に自分の荷物を配偶者が捨ててしまったときのための証拠になります。

・別居期間中の共有財産の取り扱いについて

別居後に離婚が決定し、財産分与が発生した時には、原則として、別居開始時にあった財産が財産分与の対象となります。しかしながら、別居の後には共有財産の把握が難しく、勝手に捨てられてしまったあげく「共有財産はない」と言われてしまうと泣き寝入りすることになります。
そうならないためにも、別居前に共有財産を把握し、写真などの証拠をとっておくことが大切です。

3.いざ別居して離婚するまでにどうしたらいい?

別居は、気持ちに整理をつける一方で離婚に向けた準備を始める期間にもなります。事務手続きをはじめ、お金や子どものための準備、就職活動など生活の基盤をつくるために必要なことを把握しなければなりません。
例えば、別居に伴う住所の変更です。別居したら住民票を移すべきかどうか悩むところですが、一時的な別居ならば住民登録を異動させなくても問題がない場合もあります。初めから離婚を前提としているならば移すことも考えてみましょう。
その場合のメリットとしては各種手当の振込先を自分の口座に変更することができます。
また、郵便物の受け取りも転送届を出せば、本人確認の必要な書類も受け取ることができます。
公立の学校に通学させている子どもがいる場合は住民票が移っていないと転校させることができない場合もありますので、注意が必要です。ただし、配偶者のDVが原因で転居しているときは、住民票を異動できない状況であることを転校希望先の教育委員会に相談すれば、特別に転校の許可を得ることができる場合があります。
住民票の住所変更届は転入してから14日以内に行わなければなりません。これは住民基本台帳法第22条で定められており、正当な理由がなく届け出をしない場合は5万円以下の過料に処されることがあります。
もし、夫のDVや子どもへの虐待が原因で、一時的に身を隠す別居であれば、警察に相談することも大切です。警察による証明があれば、住民票を異動したとしても、住民票の写しなどの交付を制限できる支援措置をとることが可能な場合があります。
離婚に向けての心配事や、配偶者が話し合ってくれなくて困っている場合は、各都道府県に設置されている、夫婦の問題についての相談窓口となる「婦人相談所」などの公的機関を利用することができます。「女性センター」や「男女共同参画センター」など名称はさまざまですが、問題解決の糸口が見つかるかもしれません。

4.別居と子どもの関係

別居と子どもの関係

離婚を前提にした別居を考えている場合は子どもの親権をどちらが持つかを考えておく必要があります。自分が親権者となることを希望しているならば、現実問題としては、子どもは連れて出たほうが有利な場合が多いといえるでしょう。

・子どもの年齢で変わる注意すべきところ

乳幼児を連れての別居

乳幼児を連れての別居は体力的にも金銭的にも苦しいことです。実家を頼ることが一番負担も少ないですが、難しい場合は保育園に入園させることも考えなくてはなりません。入園には、就労証明書が必要になるので仕事を探さなければなりませんが、もし仕事をしていない場合は職探し→住む場所→保育園という順番で決めていくことになるでしょう。

未就学児童

今まで幼稚園に通園していたら保育園への転園手続きをし、もともと保育園だったのであれば転園手続きをしましょう。
しかし、保育園不足の現状をみると保育園を探すのは難しいことです。前もって準備をし、子どもに不安を与えないようにしなければなりません。

小中学生

この年齢になってくると、子どもにも意思があります。転校を嫌がり家に残ることを選択するかもしれません。その場合には自分ひとりで家を出るという覚悟も必要になるでしょう。
離婚になった場合、問題となってくるのは親権、養育費、戸籍や姓、面会交流などが挙げられます。親の都合ではなく、子どもの人生を見据えた結論であってほしいものです。

5.別居期間と離婚

法律では離婚が認められる別居期間の基準は決められていません。何年別居すれば離婚が認められるというものではないようです。もし裁判になった場合には、別居の期間が婚姻関係の破綻を示すひとつの要素として判断されることはあるでしょう。
法務省の「民法の一部を改正する法律案要網」によると離婚の訴えを提起することができるものとして、「夫婦が5年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしているとき」とあることから、5年以上の別居が離婚を認めるひとつの目安になるかもしれません。

法務省:民法の一部を改正する法律案要網
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi_960226-1.html

まとめ

離婚した夫婦の別居期間をみてみると1年未満の夫婦が80%を超えています。つまり別居をするということは「もう一緒に暮らせない」という意思表示であり、破綻に向けてのカウントダウンになることは事実です。十分に話し合い、関係が修復できるのか、離婚へと一歩踏み出すのか大きな岐路に立つことになります。勇気を出した意思表示だからこそ未来の幸せにつながる選択にしてください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
京都大学総合人間学部卒業、立教大学大学院法務研究科修了。一般民事(主に離婚事件)に関する解決実績を数多く有する。また、企業法務についても幅広い業務実績を持つ。
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