
離婚をすることになったが調停や裁判をするほど話がこじれていない場合に、当事者同士の話し合いで離婚を決める方法が、「協議離婚」です。
ただし、調停や裁判による離婚では、調停調書や判決書が作成されますが、協議離婚をするときは、自分たちで離婚協議書を作らない限り、書面で離婚の条件の内容は残りません。
そのため、いくら口約束をしたところで、そんな約束をした覚えはないと言われれば、泣き寝入りとなる可能性があります。
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離婚協議書とは財産分与や養育費など離婚の条件について決めた書類
離婚協議書とは、「協議離婚」をするにあたって、当事者同士で離婚の条件について定めた契約書のことです。
日本は協議離婚が多いが離婚協議書の重要性が知られていない
夫婦が離婚する方法は、大きく分けて、以下の3種類があります。
- ・話し合いのうえ、離婚届を役所に提出する協議離婚
- ・家庭裁判所での話し合いの手続きを用いて離婚する調停離婚
- ・裁判所の裁判手続きで、夫婦間に離婚原因かあるかどうかを、裁判所が証拠に基づいて判断する裁判離婚
もう1つ審判離婚という方法もありますが、実際にはほとんど利用されていません。
このうち、もっとも一般的な離婚方法は、話し合いで解決する協議離婚です。実際、政府の資料でも2017年に離婚をした夫婦212,262件のうち、184,996組、およそ「87.2%」が協議離婚を選んでいます。[注1]
しかし、協議離婚ではお互いの意思で離婚協議書を作らない限り、離婚時の財産分与や養育費の支払いなどの約束を証拠に残すことができません。
- 「浮気をした相手と一刻も早く別れたいので離婚届を提出した。しかし離婚後、約束していた慰謝料と養育費が振り込まれない」
- 「子どもと月に一度面会させてくれるという条件で離婚届に判を押したが、あれこれと理由をつけて面会を断られている」
といったトラブルが起きた際、離婚協議書がないとトラブルを解決するまでに多大な労力と時間と費用がかかってしまうでしょう。
離婚協議書は、自分や子どもの権利・財産を守るために必要な契約書です。自分からお金のことについて話題にすることを嫌がったり、相手から責められて交渉をするのが嫌になったりする人も多いですが、どれだけ信頼している相手であったとしても、離婚後に考えが変わり、離婚条件が守られない可能性はあります。
離婚時に苦労するかもしれませんが、確実に履行してもらうためにも、協議離婚をする場合は積極的に離婚協議書を作成しましょう。
[注1] e-Stat:人口動態調査 離婚の種類別にみた年次別離婚件数及び百分率
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003214873
離婚協議書を公正証書にすれば養育費などを回収しやすくなる
離婚協議書は、あくまでも当事者同士が内容を確認して署名・捺印をした契約書です。そのため、たとえ離婚協議書で「月3万円の養育費を払う」と決めていても、相手が支払いを滞らせた際に給料を差し押さえるといった対応を取ることができません。
しかし、作成した離婚協議書を最寄りの「公証役場」という機関へ持ち込んで「強制執行認諾付公正証書」という書類にすれば、裁判所の強制力により、給与の差し押さえなどもできます。公正証書を作る際に費用がかかるものの、相手が履行を怠った場合に備える必要がある場合、公正証書にすることも検討するとよいでしょう。
離婚協議書は夫婦どちらの側が作成しても構わない
離婚協議書は、夫婦どちらが作成しても構いません。最初に作った離婚協議書を「相手に対する妥協できない要望」として突きつけることもあれば、サンプルとして作成した離婚協議書をもとに、お互いの意見をすり合わせて適宜内容を変えていく場合もあります。
離婚協議書はなるべくプロに作ってもらったほうがよい
夫婦によって、離婚協議書の作成の進め方はそれぞれです。ただ、インターネットなどで手に入る離婚協議書のひな形をそのまま利用するのはあまりおすすめできません。ひな形はあくまでもひな形です。多くの人に当てはまる可能性の高い必要最低限の体裁を整えているだけなので、各夫婦の実情や希望に合わせるためには、離婚協議書の内容を作り直す必要があります。
しかし、一般的に離婚協議書の文章は難しく、夫婦によって収入や、子どもの有無、人数なども違います。難解な用語を読み解きながら、個別のトラブルを防ぐための項目を追加したり削除したりするのは、簡単なことではありません。
離婚協議書の内容に不備があると、かえってトラブルにつながってしまいます。一度は弁護士といった法律用語の専門家に離婚協議書の内容をチェックしてもらうことをおすすめします。
離婚協議書作成のタイミングは離婚届を提出する前がおすすめ
離婚協議書は、お互いが内容に同意して署名・捺印できるのであれば、いつ作っても構いません。しかし現実的に考えると、離婚後に別れた夫婦が何度も集まって、財産分与などについての話し合いをするのは難しいでしょう。基本的には、離婚届を出す前に離婚協議書を作成してから離婚するのがおすすめです。
離婚後2年から3年で財産分与などを請求できなくなるので要注意
離婚をする際、
- ・夫婦で協力して築いた共有財産の分割(財産分与)
- ・年金分割
- ・相手側が有責配偶者にあたる場合は慰謝料の請求
をすることができます。ただし、財産分与を請求できる期限は、離婚してから2年です。
また、年金分割の請求についても、離婚してから2年と定められています。
夫婦間の離婚慰謝料請求は、基本的には離婚の成立時から3年です。
結婚中の財産を整理してから離婚届を出したほうが将来トラブルになりづらいため、離婚協議書作成は離婚届を出す前に終わらせることをおすすめします。
離婚協議書を作成するメリットは離婚後のトラブルを予防できること
離婚時における口約束も正式な契約です。しかし、離婚協議書や、公正証書としての離婚協議書などを作っていないと、相手が、履行しなかった場合に、対応を求めるのが難しくなってしまうので注意しましょう。
離婚時に離婚協議書を作り込んでおけば、養育費や慰謝料の支払い、子どもとの面会などのトラブルを予防できます。
財産分与や養育費など!離婚協議書に記載する事項を紹介
離婚協議書に記載する事項は夫婦によってそれぞれですが、一般的なものは以下のとおりです。
- ・子どもの親権者は両親のどちらか
- ・養育費は月いくら、何歳まで請求するのか
- ・子どもとの面会交流(面会の回数や条件など)
- ・財産分与の金額と方法
- ・年金分割
- ・相手側に有責事由がある場合は、慰謝料の額、支払い期限
- ・離婚後の連絡などに関する事項
- ・離婚協議書で定めた内容以外、金銭等を請求をしないという合意
などを必要に応じて組み合わせます。
車や不動産など簡単に分割できない財産がある場合は、車や不動産を、夫婦の一方が取得し、もう一方の配偶者に対し、代償金を支払うといった調整も必要です。
どこかで意見が対立すると話し合いの期間が延びるため、求める財産分与や養育費、慰謝料は、裁判所の算定表や相場を調べておくとよいでしょう。
まとめ
離婚する人のおよそ87%が協議離婚で離婚をしています。しかし、財産分与や年金分割、慰謝料や養育費について、後々のトラブルを避けるためには、口約束ではなく離婚協議書の作成をするのがおすすめです。
さらに、養育費の支払いなどの金銭債務を夫婦どちらか一方が履行しなかった場合に備えて、離婚協議書を「公正証書」にしておくことが重要です。
作成するのは大変ですが、離婚時に作っておけば将来のトラブルを予防できます。ただし、離婚協議書といった書面を交わしていても内容が不明確だったりするとこのようなトラブルは起こってしまいます。
内容が明確でかつ法的に効力のある離婚協議書を作成するために、一度は、弁護士などに、離婚協議書の内容をチェックしてもらうことをおすすめします。
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