コラム
公開 2019.11.12 更新 2021.10.04

国際結婚の離婚率が高い理由は?国際離婚の手続きと注意点

国際結婚の夫婦は日本人同士のカップルよりも離婚率が高くなっています。お互いの文化や言葉が違ったり、相手国に移住した側に大きなストレスがかかったりさまざまなことについての考え方が合わなかったりするためです。

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1.国際結婚の離婚率が高い理由

国際結婚の夫婦が日本人の夫婦よりも離婚率が高い理由として、以下のような問題が挙げられます。

1-1.文化や言葉が違う

当然ですが、国にはそれぞれの文化がありますし話されている言葉も異なります。外国人と結婚すると今までの常識を捨てて相手の文化や言葉になじまなければなりません。しかしうまく適応できずに破綻する夫婦があります。

1-2.移住した側に大きなストレスがかかる

国際結婚するために相手の居住国に移住した場合、当初はよくてもだんだんとストレスが蓄積し、耐えられなくなって離婚に至るカップルがあります。

1-3.子育ての方法が違う

国が違うと子育てに対する価値観が全く異なるケースがよくあります。どうしても譲れない部分が出てくると、離婚に至るケースがあります。

1-4.親族付き合いがストレスになる

極めて親密な付き合いであったりお互いに金銭のやりとりを日常的にしていたりなど、日本とはまったく違う親族付き合いをしている国はたくさんあります。日本の常識にとらわれたままでストレスが溜まり、離婚に至るパターンがあります。

1-5.気性が合わない

お互いの気性が合わないケースも多数あります。日本人は比較的穏やかな人が多く、相手の気性の激しさについて行けない場合などもみられます。

2.国際離婚の手続きの方法

以下では、国際離婚の手続きの方法を解説していきます。

2-1.日本の法律が適用されるのか(準拠法)

離婚するとき「どこの法律が適用されるのか」が問題となります。このことを「準拠法」と言います。
国際離婚で日本の法律が適用されるのは、以下の場合です。

  • ・夫婦が2人とも日本に居住している
  • ・日本人が日本に居住し、相手は外国に居住している

この場合には日本の法律に従って、協議離婚、調停離婚、裁判離婚が可能です。

一方夫婦が二人とも外国に居住している場合には、その国の法律に従って離婚手続きを進める必要があります。

2-2.日本の裁判所で離婚できるのか(国際裁判管轄)

日本の法律が適用されるとしても、日本の裁判所で離婚できるのかが次に問題となります。このことを「国際裁判管轄」と言います。

夫婦が2人とも日本に居住している場合には、日本の裁判所で離婚できます。
日本人が日本にいて相手が外国にいる場合には、原則としては外国の裁判所に管轄が認められるのですが、以下のようなケースでは例外的に日本の裁判所で手続き可能です。

  • ・相手から遺棄された場合
  • ・相手が行方不明の場合
  • ・その他上記に準ずる場合

現実には、多くのケースで「上記に準ずる場合」として日本の家庭裁判所における調停や訴訟が認められています。

2-3.日本の法律が適用される場合の離婚の流れ

日本の法律が適用される場合には、通常の日本人同士の離婚と同様に進められます。話し合いで解決できれば協議離婚できますし、合意できなければ離婚調停や離婚訴訟を行って裁判所で離婚することや条件を取り決めることができます。
離婚が決まったら市区町村役場で届出を出せば、戸籍を書き換えてもらえます。財産分与、慰謝料などの取り決めも通常の日本人同士の離婚のケースと同様にできます。

3.国際結婚した場合の注意点

3-1.ビザについて

国際結婚すると、移住した側は相手国における「配偶者ビザ」を取得できるものです。しかし離婚すると配偶者ビザを使えなくなるため、早期に帰国するか他のビザに変更しなければなりません。

国際結婚して日本に居住している場合に離婚を進めようとすると、結婚相手の外国人が日本のビザを失うことをおそれて離婚前に逃げてしまうケースもあり、注意が必要です。
離婚の際にはこういったリスクも意識しながら協議を進めましょう。

3-2.相手国での離婚手続きが必要なケースがある

日本で国際離婚の手続きを終えたとしても、相手国では離婚が成立していないことが通常です。相手国でも離婚扱いにしてもらうには、相手国で届を出す必要があります。
ただ世界標準では「離婚は裁判でないとできない」国が多数です。そういった国では日本で「協議離婚」しても有効にならないので、離婚調停や訴訟などを行ってその報告をしなければなりません。

国際離婚するときには、離婚前に相手の国の在外公館に問い合わせ、協議離婚が有効かどうかも確認しておきましょう。

3-3.親権や監護権について適用される法律

未成年の子どもがいる夫婦の場合、子どもの親権や養育費の問題が重要です。
国際離婚のケースで離婚後の親権や監護権について争いが発生したら、以下のようなルールでトラブルを解決します。

子どもの国籍と一方の親の国籍が同じ場合…子どもの国籍のある場所の法律を適用する

たとえば母親と子どもが日本国籍、父親がアメリカ国籍の場合、日本の法律に従って親権監護権を判断します。

それ以外の場合には、子どもが常時暮らしている場所の法律を適用します。たとえば子どもが日本に住んでいたら日本の法律に従って解決します。

3-4.養育費について

国際離婚後にも子どもの養育費を請求できます。このときに適用される法律がどうなるのかも、みておきましょう。

子どもの常居所地の法律

まずは子どもが常時居住している場所の法律が適用されます。その国が養育費を認めていれば、その法律に従って請求できます。

当事者の共通する本国法

子どもと親に共通する国籍の本国法が養育費を認めていれば、その法律に従って請求できます。

日本法

上記の2つの法律によって養育費が認められない場合でも、日本の法律によって養育費を請求できます。

3-5.子どもを連れ去られた場合

離婚後に元の配偶者に子どもを連れ去られた場合には「ハーグ条約」にもとづいて返還請求できるケースがあります。また相手が引き渡しに応じない場合でも、日本の裁判所で「人身保護請求」を行い、子どもの引き渡しを求められる可能性があります。

子どもの引き渡しを法的な方法で実現するのは簡単なことではないので、お困りなら弁護士に早急に相談してください。

3-6.子どもの国籍について

国際結婚のケースでも、日本で生まれた場合はもちろんのこと、海外で出生した子どもも日本の役所へ出生届を提出すると日本国籍を取得できます。ただし出生国の国籍も認められて二重国籍となる場合があります。その場合、出生届の提出時に「国籍留保」をするか、子供が22歳になるまでに自分で国籍を選択せねばなりません。
このことは両親の離婚後も同じなので離婚によって特別の対応は不要ですが、子どもが大人になるまでに国籍を選択する必要があります。

国際離婚するときには、日本人相手のケースとは異なる複雑な対応が要求されるので、戸惑うことも多いでしょう。迷われた際には弁護士までご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
京都大学総合人間学部卒業、立教大学大学院法務研究科修了。一般民事(主に離婚事件)に関する解決実績を数多く有する。また、企業法務についても幅広い業務実績を持つ。
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