コラム
公開 2016.07.19 更新 2023.07.21

夫婦の約束事「婚前契約」が注目される理由とは

「婚前契約」

字面を見ただけで、なんとなくその意味するところも見えてくる言葉です。

日本ではまだあまり聞き慣れない言葉ですが、海外ではすでにポピュラーなものになってきており、結婚するカップルの4組に1組は、婚前契約の作成を希望しているといわれています。

また、特に海外セレブの結婚や離婚のニュースなどで耳にする機会も増え、日本でも婚前契約を希望するカップルが増えつつあるようです。

今回は、この「婚前契約」についてお話しします。

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婚前契約って何?

婚前契約とは、結婚後の二人のさまざまな事柄について、あらかじめ決めておくことです。

その項目は多岐にわたり、夫婦のあり方や仕事と家事、家計の処理、親族・交友関係、子育てのルールなど、ありとあらゆる範囲に及びます。

「わが家の憲法」といえば、いちばん分かりやすいかもしれません。

このように幅広い内容を持たせることができる婚前契約ですが、そのすべてに法的な拘束力があるかというと、決してそうではありません。契約内容に盛り込んでおいても、法的には無効になってしまう項目も多々あります。

その一方で婚前契約書を作っておくと、いざという時に役立つこともあります。

典型的なのは離婚をする時でしょう。結婚生活がうまくいかず、離婚ということになったときに、財産の分配や子どもの教育費等をどうするか。そうした課題に対しても、あらかじめ婚前契約書を作っておけば、その内容に基づいて解決を図ることができます。

結婚というと、幸福感に包まれたイメージだけで語られることがほとんどです。ですが冷静に考えてみれば、結婚とは元々赤の他人であった二人が、生活と価値観を共有していく行為です。

無理が起こっても当然と言えば当然なのですから、そのダメージをできるだけ回避するために、事前にさまざまな約束事を記した「婚前契約書」を作っておくのは、とても合理的なことでもあるのです。

セレブでは当たり前の婚前契約…広まった理由は?

ハリウッドスターのゴシップ記事などで、この婚前契約について話題に上ることがあります。

彼らにとっては自分の人気は能力のバロメーターのひとつですから、それにも大きく関わる結婚というイベントに対しては、とても真摯に向き合っているように感じます。そのため、多くのセレブたちは結婚に際して婚前契約を交わし、幸福な結婚生活とともに、万一のトラブルに対しても穏便に対処できるよう準備しているのです。

よく知られたケースに、トム・クルーズの例が挙げられます。

彼は3度目の結婚をするにあたり、離婚した場合には、「結婚生活1年につき約300万ドルを支払う」というルールを設け、さらに「11年以上結婚生活が続いたら財産の半分を伴侶に分配する」とした婚前契約書を作成しました。

結果として、3度目の結婚相手であるケイティ・ホームズとの結婚生活は5年で破綻してしまいましたが、婚前契約で取り決めた「1年につき約300万ドル」と娘さんの養育費を支払う、ということで合意に至ったとのことです。さすがにハリウッドのトップスターともなるとスケールが違います。

ですが婚前契約を交わすことのメリットは、ごくごく平凡な私たちでも享受することができます。ことに結婚相手が不貞を働いた場合の慰謝料はどうするのか子どもがいれば養育費の決め方をどうするのか。それら万一の場合に直面しても、婚前契約によって合意ができていれば、それに沿って話し合いを進めていくことができるのです。

婚前契約書はどのように作ればいいのか

婚前契約書には、特に決まった書式があるわけではなく、その内容についても規定があるわけではありません。契約書を取り交わす当事者──これから結婚しようとする二人が、必要だと思う項目を採り入れ、その一つ一つについて約束事として記載していけば良いのです。

ただ、そもそも法的な拘束力を持たない項目もありますし、法的な拘束力を持たせるためには、それなりの書き方をしなくてはならず、公正証書として作成した方が良い場合もあります。これらの点については、専門家である弁護士と相談しながら、契約書作りを進めていくことをおすすめします。

現在の日本では婚前契約そのものがまだまだ一般的ではありません。その言葉を知っている人でも「離婚のときに、財産分与が有利になる」程度の認識しか持っていなかったりします。

ですが婚前契約はそんな「離婚保険」的なものではありません。結婚という未知の世界に漕ぎ出していく二人が、それぞれに向けて交わす約束事なのです。

これから始まる新しい生活を、二人でどうやって創り上げていくか…。そんな前向きな気持ちで捉えてみれば、婚前契約はとても有意義なものに見えてくるのではないでしょうか。

記事を監修した弁護士
authense
Authense法律事務所記事監修チーム
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