コラム
公開 2021.06.01 更新 2021.10.04

離婚慰謝料に関するよくある誤解とは?

離婚するとき、相手に必ずしも慰謝料請求できるとは限りません。離婚慰謝料については、世間一般で誤解されやすい事項がいくつかあります。法律上、慰謝料を請求できるのは不倫や暴力があった場合などに限られています。
慰謝料が発生するかどうかを見極めて相場の金額を知り、正しい手順で請求しましょう。

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1.離婚慰謝料とは

離婚するときには、相手に「離婚慰謝料」を請求できるケースが少なくありません。
離婚慰謝料とは、「離婚によって受ける精神的苦痛に対する損害賠償金」を意味します。

一度は「この人と生涯を共にする」と誓って結婚した以上、誰しも離婚を望まないのが通常です。相手の問題行為によって婚姻関係を破綻させられてしまったら、人は大きく傷つくでしょう。その精神的苦痛を和らげるため、離婚の際には相手に慰謝料請求できるのです。

以上が離婚慰謝料の本質といえます。

2.離婚慰謝料に関するよくある誤解

離婚慰謝料に関するよくある誤解

離婚慰謝料については、世間一般で誤解されやすい事項がいくつかあります。

2-1.「女性は男性に慰謝料請求できる」という誤解

女性、特に専業主婦が離婚するとき、夫へ当然のように慰謝料請求できると思っている方がおられます。しかし下記のような慰謝料発生事由がない限りは、女性が男性に当然に慰謝料請求できるというわけではありません。
専業主婦でも慰謝料請求できないケースは多々ありますし、女性側に離婚原因がある場合には、男性側が女性側へ慰謝料請求するケースもあります。

2-2.「戸籍を汚されたら慰謝料請求できる」という誤解

離婚すると、戸籍に「離婚」と書かれたり「×」がついたりします。このように「戸籍を汚された」ら慰謝料請求できると思っている方がおられます。婿養子に入った男性が離婚するとき、「慰謝料を払ってほしい」と主張するケースが典型です。
しかし離婚によって戸籍に「離婚」や「×」がつくのはお互い様です。どちらが悪いわけでもないので、慰謝料請求できません。

2-3.「借金を隠されていたら慰謝料請求できる」という誤解

「借金問題」が原因で夫婦関係が破綻するケースでは、相手が内緒で借金していたら当然に慰謝料請求できると思っている人がいます。
しかしこれも誤解です。借金しても家計に影響を与えていない場合、借金の理由によっては慰謝料が発生しない可能性もあるので注意しましょう。

2-4.相手の実家とうまくいかなかったら慰謝料請求できる

「相手の実家との不和」で離婚する場合、相手の両親や親族によって苦痛を与えられたので慰謝料請求できると考える方がおられます。しかし実際には、相手本人の態度に問題なければ、慰謝料請求できない可能性が高いです。

相手本人ではなく相手の親に対して慰謝料請求できるケースもあるので、個別の検討が必要となるでしょう。

3.離婚慰謝料が発生するケース

離婚慰謝料が発生するのはどういったケースなのでしょうか?

3-1.相手に「有責性」がある場合に限られる

慰謝料は「相手の不法行為によって被害者が受けた精神的苦痛に対する賠償金」です。発生するには相手の「有責性」が必要と考えましょう。有責性とは、「婚姻関係を破綻させる原因となる行為」です。相手が特に問題行動をしていないなら、有責性がないので慰謝料請求できません。

以下で相手に有責性が認められる典型的なケースをご紹介します。

3-2.不貞

不貞(ふてい)とは一般にいう「不倫」です。既婚者が配偶者以外の人と肉体関係を持ったときに「不貞」が成立します。
不貞は配偶者への重大な裏切り行為ですし、貞操義務に違反する不法行為に当たるので、相手の不貞によって離婚することになったら慰謝料請求できます。
また不貞を理由に離婚する場合、不貞相手に対しても慰謝料請求が可能です。

3-3.生活費不払い

夫婦には、お互いに生活を支え合うべき義務が課されます。これを「生活保持義務」といい「自分と同レベルの生活をさせなければならない」という高いレベルの義務です。
それにもかかわらず、収入のある夫が専業主婦である妻に生活費を渡さないなどの態度をとると、生活保持義務違反となります。
生活費を払ってもらえなかったために離婚を余儀なくされたら、相手に離婚慰謝料を請求できる可能性が高いです。

3-4.家出

夫婦には、同居して支え合わねばならない同居義務が課されます。相手が同居義務に反して家出をしたり同居を拒んだりしたら慰謝料を請求できる可能性があると考えましょう。
ただし家出されたときに必ず慰謝料請求できるとは限りません。こちらが暴力を振るった、夫婦関係が悪化して冷却期間が必要だったなど「正当な理由」があれば、慰謝料は発生しないので注意しましょう。

3-5.DV、モラハラ

暴力やモラハラは、相手の人格を否定する違法行為です。配偶者から暴力を振るわれたりモラハラ行為をされたりしていたら、離婚慰謝料を請求できると考えましょう。
ただし「5年の結婚生活の中で、一度だけ殴られた」「喧嘩になったときに激しい言葉で侮辱されたことがある」といった程度では、慰謝料が発生しない可能性があります。
DVやモラハラといえるためには、一定以上継続して激しい暴力やモラハラ行為が行われたことが必要といえるでしょう。

3-6.セックスレス

健康で、特段性交渉を拒絶する障害事由がないにもかかわらず性交渉を拒絶し、離婚に至った場合には慰謝料が発生する可能性があります。特に一方が不倫していて性交渉を拒絶した場合には慰謝料が高額化する傾向も見られます。

ただしセックスレスの場合に必ず慰謝料が発生するわけではありません。
年齢や体調、お互いの気持ちなどの事情によって結論が変わってきます。自分では判断しにくい場合、弁護士に相談してください。

4.離婚慰謝料の相場

離婚慰謝料の相場

離婚慰謝料は、発生原因や夫婦の婚姻年数などによって相場の金額が変わります。概していうと、50~300万円程度となるケースが多いでしょう。
不倫の場合、慰謝料が比較的高額になりやすい傾向があります。

「自分の場合、どのくらいの慰謝料を請求できるのか?」
個別事案における慰謝料の金額を知りたい場合には、弁護士までご相談ください。

5.離婚慰謝料を請求する手順

5-1.証拠を集める

慰謝料を請求したいなら、まずは証拠を集めましょう。証拠なしに慰謝料を支払うよう求めても、拒絶される可能性が高いからです。不倫、暴力、生活費不払いなど、状況によって必要な証拠は異なります。弁護士に相談しながら集めると良いでしょう。

5-2.離婚の際に相手に慰謝料を請求する

証拠を集めたら、相手に離婚を切り出して、慰謝料を請求します。

5-3.話し合って合意する

次に慰謝料をはじめとした離婚条件について、相手と交渉をしましょう。
合意ができたら「協議離婚合意書」を作成します。なお合意書は「公正証書」にしておくようお勧めします。公正証書にしておくと、相手が慰謝料を支払わないときにすぐに給料や預貯金などを差し押さえられるからです。
公正証書ができたら離婚届を提出し、協議離婚を成立させましょう。

5-4.離婚調停、訴訟を申し立てる

話し合っても合意できない場合には、家庭裁判所で離婚調停を申し立てます。調停でも解決できなければ、離婚訴訟を利用しましょう。訴訟で相手の有責性を立証できれば、裁判所が相手に慰謝料の支払いを命じる判決をします。

まとめ

婚姻中、相手に不倫されたり暴力を振るわれたりしていたなら、離婚慰謝料を請求しましょう。
自分1人では証拠を集める方法がわからなかったり、交渉するのが難しかったりするときには、弁護士が力になります。
相手が支払いに応じなくても弁護士が対応すると、支払わせることができるケースが少なくありません。離婚を検討されているなら、まずは一度弁護士までご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
早稲田大学法学部卒業、一橋大学大学院法務研究科修了。離婚、相続問題等の一般民事事件や刑事事件、少年事件、企業の顧問など、幅広い分野を取り扱う。
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