コラム
公開 2020.07.02 更新 2021.10.04

金銭トラブルは離婚の理由になる?浪費癖や借金の嘘に慰謝料請求したい

金銭トラブルを理由に離婚を希望されるご夫婦は少なくありません。
夫に浪費癖がある場合、離婚理由となるのでしょうか?また、夫が嘘をついて借金や浪費を重ねてきたときに慰謝料は発生するのでしょうか?

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1.借金や浪費癖、嘘があっても当然には離婚理由にならない

夫が高額な借金をしていたり浪費癖があったり、お金に関して大きな嘘をついたりすると、妻は夫に対して不信感を抱きます。金銭的にルーズな夫と離婚できるのでしょうか?

協議離婚や調停離婚なら相手が納得すれば離婚できますが、裁判で離婚を認めてもらうには民法の定める「法定離婚原因」が必要です。
相手の借金や浪費癖、嘘などが「婚姻関係を継続し難い重大な事由」やその他の離婚原因に該当しなければなりません。
状況によっては該当しますし、しない可能性もあります。以下で場合分けをしてみていきましょう。

2.借金や浪費癖が離婚理由になる場合

夫の借金や浪費癖が「婚姻関係を継続し難い重大な事由」やその他の法定離婚原因に該当するのは、以下のようなケースです。

  • ・夫が借金返済や浪費のために家計のお金を使い込み、夫婦の生活が困窮している
  • ・夫が健康で働けるにもかかわらず、浪費を繰り返して働かないので夫婦の生活が困窮している
  • ・夫がギャンブルなどの個人的な理由で高額な借金をして、妻に返済を強要してきたために生活費を充てざるを得なくなった
  • ・浪費やギャンブルをやめるように妻がいさめると、夫が暴れて暴力を振るう
  • ・夫が不倫して不倫相手にお金をつぎこんでいる
  • ・夫の借金問題や浪費癖が原因で夫婦が別居し、長期間が経過している

3.借金や浪費癖が離婚理由にならない場合

以下のようなケースでは夫が借金・浪費していても離婚原因になりません。

  • ・夫には借金や浪費癖があるが、家計には手をつけていない
  • ・夫には借金や浪費癖があるが、きちんと働いて家にお金を入れている
  • ・夫と妻の金銭感覚が合わない

大まかにいうと、夫が「家計に手をつけているか」「夫婦の婚姻生活に悪影響を与えているか」が問題となります。借金や浪費癖があっても婚姻生活に特段の問題が発生していないなら、不倫や暴力、長期間の別居などの別の問題がない限り離婚理由にはなりません。

4.借金や浪費癖、嘘があっても慰謝料が発生するとは限らない

次に夫の借金や浪費癖を理由に離婚するときに「慰謝料」を請求できるのか、みていきましょう。
借金や浪費癖、嘘を理由に離婚をする場合、必ず慰謝料が発生するとは限りません。
離婚慰謝料が発生するには、一方当事者に「有責性」が必要だからです。有責性とは「婚姻関係を破綻させた責任」です。借金や浪費癖によって夫婦関係を破綻させ「不法行為」と評価できるほど悪質な場合に慰謝料が発生します。

以下で慰謝料が発生する場合としない場合に分けて具体例を紹介します。

5.借金や浪費癖、嘘によって慰謝料が発生するケース

次のようなケースでは、夫の借金や浪費を理由に慰謝料が発生する可能性が高くなります。

  • ・夫が借金返済や浪費のために家計に手をつけ妻名義のクレジットカードを勝手に使って借金を繰り返した
  • ・夫が借金返済や浪費のために子どもの貯金にも手をつけ、学資保険等も勝手に解約してギャンブル資金などに充てた
  • ・借金癖のある夫が妻に暴力を振るっていた
  • ・夫が不倫相手にお金を貢いでいた

6.借金や浪費癖、嘘があっても慰謝料が発生しないケース

以下のようなケースでは夫に借金癖、浪費癖があっても基本的に慰謝料が発生しません。

  • ・夫に高額な借金があることが発覚し、生活には影響がなかったが妻が不信感を持ったので離婚した
  • ・夫の借金癖、浪費癖が原因で夫婦が離婚し、長期間の経過によって離婚原因が認められた
  • ・夫が借金や浪費のために多少家計に手をつけたが、夫婦の生活にはほとんど影響していない

7.慰謝料の金額の相場

借金癖のある夫と離婚するとき、慰謝料の相場はどのくらいになるのでしょうか?
ケースにもよりますが、だいたい50~200万円程度です。ただし暴力や不倫などが重なっており悪質な場合には、300万円程度にまで増額される可能性があります。
個別のケースでより正確な慰謝料の金額を把握したい場合には、弁護士までご相談下さい。

8.借金や負債の財産分与について

夫に借金やその他の未払い金などの負債がある場合、財産分与によって妻が負担しなければならないのか不安を感じる方もおられます。借金や負債も財産分与されるのでしょうか?

8-1.夫の借金やその他の負債は基本的に財産分与対象にならない

基本的に借金や負債は財産分与の対象になりません。借金には債権者が存在しますが、借り入れ人が離婚したからといって当然に支払い義務者が変更されると、債権者に予想外の不利益が及ぶためです。債務者を変更するには、基本的に債権者の同意が必要です。
またそもそも夫がギャンブルや個人的な浪費のために負った負債について、妻が返済すべき義務はありません。これらの負債は財産分与の対象にならないので、離婚の際に妻が半額を負担する必要もありません。

8-2.日常家事債務については妻にも責任が及ぶ

ただし夫が日常の食料品や最低限必要な衣類、衣料品などのために負債を負った場合には、妻も連帯して責任を負います。夫婦は日常生活に必要な負債について連帯責任を負うからです。生活費のための借入の場合、妻にも責任が及ぶ可能性があります。

8-3.妻が保証人(連帯保証人)になっていたら支払い義務が及ぶ

妻が夫の借金の「保証人」や「連帯保証人」になっている場合、離婚後に夫がきちんと返済しなければ、債権者から妻に対して請求が来る可能性があります。

妻が夫の借金の保証人になっている可能性があるなら、離婚時に負債の状況をしっかり確認して「保証人を外す」などの対応をとっておく必要があります。保証人を外れるには債権者との交渉が必要で、基本的には「別の担保」や「別の保証人」を要求されます。
交渉しても保証人を外してもらえない場合、夫に別の借金を借りさせて今の負債を完済し、借金の借り換えをすれば妻は保証人から解放されます。

9.夫の借金問題で悩んだら弁護士に相談を

  • ・夫に秘密の借金があったので強い不信感を持ってしまった
  • ・夫が浪費をやめないので困っている
  • ・夫と金銭感覚が合わなくて夫婦を続けていける自信がない

上記のような場合、離婚や慰謝料問題に直結するケースもありますがそうでない場合も多いです。離婚だけが解決手段ではなく、相手に「もう借金や浪費をしない」と約束させたり、場合によっては債務整理をさせたりして解決できるケースもあります。
夫の借金・浪費問題があるとき、実際にどういった手段をとるのが適切かは状況によって異なります。
困ったときには法律の専門家である弁護士がアドバイスとサポートをいたします。悩まれている方は、ぜひ一度ご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
京都大学総合人間学部卒業、立教大学大学院法務研究科修了。一般民事(主に離婚事件)に関する解決実績を数多く有する。また、企業法務についても幅広い業務実績を持つ。
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