コラム
公開 2022.06.29 更新 2022.07.01

離婚の慰謝料の相場はどのくらい?年収は影響する?どう決まるのか弁護士が解説

離婚の慰謝料の相場はどのくらい?年収は影響する?どう決まるのか弁護士が解説

離婚によってもらえる慰謝料の相場はどのくらいなのでしょうか?
離婚に伴って受けられる可能性がある3つの給付を紹介するとともに、離婚による慰謝料の相場や慰謝料請求時の注意点、年収が慰謝料に関係するのかについて弁護士がわかりやすく解説します。

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離婚によって相手方からもらえる給付は3種類

離婚によって相手方からもらえる可能性がある給付には、次の3種類があります。
はじめに、それぞれの給付の特徴を知っておきましょう。

財産分与

財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で築いた財産を清算するものです。
たとえば夫が主に収入を得ており夫名義の財産が比較的多くある一方で、妻は専業主婦やパートなどでほとんど財産がない場合には、夫から妻へ財産分与がなされることとなります。
これは、夫が外で稼ぎを得られたのは、パートナーの内助の功があったことによる、と考えられるためです。

財産分与の対象は金融資産のみではなく、不動産など他の財産も含めて考慮します。
ただし、お互いが婚姻前から持っていた財産や、婚姻期間中であっても親からの相続で得たものなどは、原則として財産分与の対象とはなりません。

また、住宅ローンが残っている不動産を財産分与の対象とする場合には、あらかじめローンを組んでいる金融機関へ相談するようにしましょう。
たとえ離婚に伴う財産分与であったとしても、ローン返済中に金融機関に無断で名義を変えてしまった場合には、ローンの一括返済を迫られる可能性があるためです。

慰謝料とは異なり、財産分与は原則として離婚の原因に関係なく発生する給付であるといえます。
ただし、財産分与は必ずしも女性側がもらえるというものではなく、たとえば妻の方が収入が高く、妻名義の口座に多くの金融資産があるような場合には、妻から夫への財産分与が必要です。

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養育費

養育費とは、夫婦の間に未成年の子などがいる場合に、その子を監護や教育していくのに必要な費用のことです。
養育費も財産分与と同様に、原則として離婚原因を問わず給付が発生します。
養育費は、子を監護していない親から、子を監護している親に対し、定期的に給付する形で支払うことが一般的です。

たとえ親が離婚をしたとしても、父母ともに引き続き子の親であることには変わりありません。
そのため、親権を持たない親も、親として養育費を支払わなければなりません。

養育費の額は離婚をする夫婦がお互い納得をすればいくらであっても構いませんが、家庭裁判所から算定表が公表されていますので、こちらを参考にすると良いでしょう。

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慰謝料

慰謝料とは精神的な苦痛の対価として支払われるものです。
離婚したからといって必ずしも慰謝料の支払いが生じるわけではなく、離婚原因が相手方の不貞にある場合、相手方のDVによる場合など、夫婦の一方に非がある場合にのみ支払いが生じます。

一方で、離婚の原因が単なる性格の不一致である場合などには、慰謝料の請求は困難でしょう。
一般的な慰謝料の金額については、次で詳しく解説します。

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離婚の慰謝料はどう決まる?

離婚に伴う慰謝料の金額は、どのように決まるのでしょうか?
ここでは、相手方に慰謝料を請求する一般的な手順を紹介します。

夫婦間の話し合いで決める

夫婦で話し合いができる状態であれば、慰謝料の額について夫婦間で話し合って決定します。
お互いが合意できるのであれば、必ずしも相場の範囲内の金額でなければならないわけではなく、どの程度の金額であっても構いません。

ただし、慰謝料を請求する側としてはあまり低い金額で合意してしまうことのないよう、あらかじめ相場を調べておくと良いでしょう。

夫婦のみでの話し合いが困難である場合や、相手方からDVやモラハラを受けているなど直接の話し合いを避けるべき事情があれば、弁護士に代理で交渉してもらうことも一つの手です。

調停で決める

当事者同士の話し合いで決着がつかない場合は、調停で慰謝料の額を話し合うことができます。離婚前の場合は、離婚調停を申し立てることで、慰謝料についても話し合うことができます。

調停とは、調停委員を介して、家庭裁判所で行う話し合いです。
弁護士に依頼し、調停へ同行してもらうこともできます。

ただし、調停はあくまでも話し合いの場ですので、調停委員は話し合いの仲裁や進行のサポートをしてくれるものの、慰謝料額についての結論を出し、支払いを命じてくれるわけではありません。
調停の成立には、お互いの合意が必要となります。

裁判で決める

慰謝料の額については、裁判で決めることができます。
裁判では諸般の事情が考慮され、裁判所が、判決で慰謝料の額を決定します。

裁判の判決では、過去の事例などが参照されますので、よほど特別な事情がない限り、相場から大きく外れた金額で決まることはないと考えておくと良いでしょう。

離婚の慰謝料相場はどのくらい?

離婚の慰謝料相場はどのくらい?
離婚に伴って慰謝料が発生する場合、その金額はどのくらいなのでしょうか?
慰謝料の額に関するしっかりとした統計データはありませんが、おおむね次の範囲で落ち着いていることが多いようです。

不貞 100万円~300万円
悪意の遺棄 50万円~300万円
DV(暴力) 50万円~300万円

慰謝料の額は、離婚の原因となった事情により異なります。

実際には次のような変動要因が考慮されるため一律に論じられるものではありませんが、相手方と慰謝料の交渉をする際の参考にすると良いでしょう。

離婚の慰謝料の主な変動要因

慰謝料の金額は、離婚に至った原因などを個別に踏まえて額を検討することとなります。離婚の慰謝料は、さまざまな要因により変動します。主な変動要因は、次のとおりです。

離婚するに至った原因

慰謝料の額に最も大きく影響をするのは、離婚をするに至った原因です。
たとえば同じ不貞行為であっても、一度きりの不貞であるのか、継続的な不貞であるのかなどによって慰謝料の額は変動します。
さらに、病気の妻を子と共に自宅に残したまま不倫相手の家に入り浸り、ほとんど帰宅しなくなったケースなどでは、悪意の遺棄など他の要因も相まって慰謝料の額も高くなる可能性が高いでしょう。

婚姻期間の長さ

慰謝料の額を算定する際には、婚姻期間の長さが考慮されます。

たとえば、婚姻期間1年と婚姻期間20年とでは、一般的に夫婦として積み重ねてきたものの重さは異なるでしょう。
そのため、婚姻期間が長ければ長いほど、婚姻生活を破壊したことによる慰謝料の額は高くなる傾向にあります。

相手の年収

慰謝料の額は、本来相手の年収(収入)によって変動するものではありません。
精神的な苦痛の大きさは、相手の収入によって異なるものではないためです。

もっとも、年収が多ければ支払い能力があるということですから、それに見合う高額な慰謝料を請求した場合、それに応じてくれる可能性が高くなるということはあります。
一方、相手の収入に見合わない高額な慰謝料を請求した場合、支払ってもらえない可能性は高くなります。

そのため、現実的には慰謝料を支払う側の収入を考慮したうえで、慰謝料の額が決定される傾向にあります。

家族構成

一般的に、子どもがいない夫婦よりも未成年の子どもがいる夫婦の方が、慰謝料が高くなる傾向にあります。
未成年の子がいる場合の方が、婚姻関係を破壊された側の精神的な苦痛は大きいと考えられるためです。

離婚で慰謝料請求をする場合の注意点

離婚で慰謝料請求をする場合の注意点
離婚に伴う慰謝料請求などの話し合いには、精神的な負荷がかかってしまう場合も少なくないでしょう。
しかし、相手方から提示された慰謝料額については、十分に検討すべきです。

離婚で慰謝料請求をする場合には、次の点に注意しましょう。

適正な金額かどうかよく確認する

離婚原因を作った配偶者から、慰謝料の額を先に提示される場合があります。
しかし、相手の提示額が、適正な金額かどうかなどをよく確認したうえで、承諾するかどうかを回答するようにしましょう。

特に、相手方が出してきた書面にそのまま署名をしたり印を押したりすることは避けましょう。
いったん合意をしてしまうと、後から覆すことが難しくなるためです。

また、自身では、相手方から提示された金額が慰謝料のみの金額であり、財産分与は別途であると考えていても、相手方としては財産分与や養育費などをすべて含めた金額を提示している場合もあります。

給付の趣旨をよく確認することなく、離婚に伴う給付をまとめて「慰謝料」などと呼んでいる場合も少なくありませんので、話し合いの際には、どのような給付の趣旨の金額なのか、明確に確認をしながら進めるようにしましょう。

提示された慰謝料などの金額が適正かどうかはインターネットで調べる方法もありますが、個別具体的な事案に応じた金額を知りたい場合には、離婚問題に詳しい弁護士へあらかじめ相談することをおすすめします。

金額の折り合いがつかなければ早期に弁護士へ相談する

離婚の条件や慰謝料などの金額について折り合いがつかない場合には、早期に離婚問題に詳しい弁護士へ相談してみましょう。

離婚は、非常に精神力を使うものです。
話し合いが平行線では疲れてしまい、早期に離婚をするために相手方の条件を飲んでしまいたくなることもあるかもしれません。

しかし、慰謝料などは今後の生活を支える大切な資金となります。
そのため、その場の感情のみで合意してしまうのではなく、慎重な判断が必要です。

また、相手方からDVやモラハラの被害を受けている場合には、はじめから弁護士へ相談し、自身のみで話し合いをすることは避けた方が良いでしょう。

このような場合に当時者同士で話し合いをすれば、相手方の言い分を一方的に押し付けられてしまう可能性が高くなるほか、さらなるDVなどの被害に遭ってしまうリスクもあるためです。

公正証書で明記する

裁判所を利用せず、夫婦のみで慰謝料など離婚の条件を取り決める場合には、取り決めた事項を公正証書で残しておきましょう。
単なる口約束では、約束どおりに慰謝料が支払われなかった際に「言った・言わない」の証明が困難となってしまいます。

また、個人的に作成をした書面では漏れがある場合も少なくないうえ、約束どおりに支払われなかった場合の差押え手続きにも時間がかかってしまう点が問題です。
支払いの時期や金額などを明記した公正証書を作成しておくことで、いざ支払いが滞った場合、差押え手続きがスムーズとなります。

なお、弁護士へ交渉を依頼した場合にはその弁護士が公正証書の作成までサポートしてくれることが一般的です。
弁護士を入れずにご自身同士で交渉を成立させた場合でも、弁護士に相談し、公正証書の案文作成と、具体的な文言について、法的観点からアドバイスを受けることをお勧めします。公正証書の内容に不備や漏れがあると、離婚後にトラブルになるためです。

請求には期限があることを知っておく

離婚に伴う慰謝料の請求には、期限があります。
離婚が成立してから3年を過ぎると時効にかかってしまい、原則として相手方に慰謝料請求をすることはできません。

慰謝料の請求は必ずしも離婚と同時ではなく、離婚してからも請求することは可能ですが、時効にかかってしまわないよう請求期限にはよく注意しておきましょう。

まとめ

離婚に伴う慰謝料は、離婚に至った原因や婚姻期間などのさまざまな要因によって変動します。
また、実際得られるはずの金額よりも低い額で合意してしまうことのないよう、一般的な金額を知っておくとともに、ご自身での交渉が難しい場合などには離婚問題に強い弁護士へ早期に相談するようにしましょう。

Authense法律事務所には離婚問題に詳しい弁護士が多数在籍しており、離婚に伴う慰謝料請求などをサポートしております。
離婚や慰謝料でお困りの際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
早稲田大学法学部卒業(3年次卒業)、東京大学大学院法学政治学研究科修了。離婚、相続問題を中心に、一般民事事件や刑事事件など幅広く取り扱う。
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