離婚の際、財産分与を受けても基本的に贈与税などの税金はかかりません。
ただし分与した側には税金が発生する可能性があり、確定申告が必要となるケースもあります。また不動産を登記する際の登録免許税は払わねばなりません。
子どもに贈与するときには贈与税がかかります。この連載では、「オー美」さんの事例から、財産分与と税金について解説します。
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結婚25年目、オー美の場合
私はオー美、50歳。夫とは結婚25周年を迎えます。
実は今、熟年離婚を進めている最中です。
夫は単身赴任先で不倫していました。以前は定期的に単身赴任先へ行っていたのですが、不倫が発覚してからは、顔も見たくないのでほとんど会っていません。
そんな折、人事異動で夫が家に戻ってくることになりました。
夫との共同生活は厳しいので、やむなく熟年離婚を決意。
今は年金分割や財産分与のことなど、いろいろ調べているところです。
熟年離婚では、何より「財産分与」が大切と聞きました。
夫からしっかり財産分与を受けておかないと、これからの生活が心配です。
幸い、私達夫婦は、毎月定額を貯金してきました。住宅ローンつきの家はアンダーローンの状態です。
夫の扶養に入っていても、2分の1の割合で財産分与を受けられると知りました。そこで試算してみると、離婚後しばらく困らない程度にはお金を受け取ることができそうです。
退職金についても、夫は抵抗するかもしれませんが、分与を請求しようと思っています。
また夫は不倫相手と遊ぶのに借金している可能性がありますが、前回「夫の個人的な借金は負担しなくていい」と聞いたので、安心しています。
あとはしっかりと財産調査を行い、夫との交渉を進めていくところまで来ています。
財産分与に税金はかかる?贈与税、確定申告は必要?子どもへ贈与する場合は?
最近気になっているのが「財産分与の税金」。
私の場合、夫からある程度のまとまった財産分与を受けられそうなのですが、財産分与を受けたら、贈与税がかかるのでしょうか?
「贈与税」で検索してみると、贈与税の税率は最高で55%にもなると書いてあり、不安になりました。
また税金がかかるなら、贈与税や所得税などの確定申告が必要になるのでしょうか?
複雑な手続きになるのではと、不安です。
子煩悩な夫は、財産分与で私に渡すくらいなら、子どもに贈与すると言い出しそうです。もしその場合、子どもに贈与したら贈与税がかかるのかも含め、どんなときにどのような税金がかかるのかが知りたいです。
弁護士が解説!財産分与に税金がかかる場合とかからない場合について
財産分与を受けても贈与税は原則としてかからない
オー美さんは「財産分与を受けたら贈与税がかかるのでは?」と心配されています。
実は、財産分与を受けても基本的に贈与税がかかりません。
どんなに高額な資産を受け取っても贈与税を払う必要はなく、申告も不要です。
ただし以下のような場合、例外的に贈与税がかかる可能性があります。
- ・本来は財産分与ではないのに課税逃れのために財産分与を装って、財産の移転を行った場合
- ・財産分与が明らかに過大な場合
通常一般の夫婦関係において、2分の1の財産を受け取って贈与税が発生する可能性はほとんどないでしょう。
また半額以上受け取ったからといって「過大」と評価されるわけでもありません。
「過大」というのは、ほとんど財産形成に貢献していないのに、著しく高額な財産をすべて分与された場合などです。
ましてオー美さんの場合、夫は不倫しているので慰謝料代わりに財産分与を多くしてもらうべき理由もあります。
たとえオー美さんが全額の分与を受けたとしても、基本的には贈与税はかからないと考えてよいでしょう。
不動産取得税も通常はかからない
売買や相続、贈与などによって不動産を取得すると「不動産取得税」という税金がかかるのが原則です。
ただし離婚時財産分与の場合、婚姻中に取得した夫婦の共有財産の清算(清算的財産分与)の範囲内と考えられる場合には不動産取得税の課税対象にもなりません。
一方、財産分与が慰謝料支払目的(慰謝料的財産分与)や離婚後の生活の援助目的(扶養的財産分与)で行われたと認定される場合には不動産取得税の課税対象となり得ます。もっとも、その場合であっても居住用不動産の取得については種々の軽減措置がとられているため、実際に納税が発生するケースは多くありません。
財産分与をする側には税金がかかる可能性がある
実は財産分与を「する側」に税金がかかる可能性があります。
不動産を財産分与すると、分与したときの「時価」で不動産を「譲渡した」とみなされるからです。
不動産の時価が取得費用及び譲渡費用の合計額より高い場合、「譲渡所得税」を払わねばなりません。
その場合、金額に応じて「住民税」もかかってきます。
所得税と住民税の合計税率は以下の通りです。
- ・譲渡した年の1月1日に所有期間が5年を超える…20.315%
- ・譲渡した年の1月1日に所有期間が5年以下…39.63%
- (復興特別所得税を含む)
ただし居住用不動産の場合、譲渡所得税の特別控除を受けられるので、3000万円までであれば譲渡所得税はかかりません。
一般的な家の分与であれば、譲渡所得税はかからないことが多いでしょう。
登録免許税について
不動産の財産分与を受けたら、法務局で「名義変更の登記」をしなければなりません。
このとき「登録免許税」がかかります。
金額は不動産の固定資産評価額の2%です。
どちらが負担してもかまいませんが、通常は分与を受ける側が支払うケースが多いでしょう。
オー美さんの場合にも、もし自宅の分与を受けるなら、最低限登録免許税は払わねばならない可能性があります。
子どもに贈与する場合
オー美さんの夫から「子どもに財産を贈与する」ケースではどうでしょうか。
夫婦間の財産分与とは異なり、子どもに贈与すると「贈与税」がかかるので注意してください。
税率は最低10%、最高で55%にもなります。
子どもに贈与するよりもオー美さんに財産分与した方が確実に節税になるでしょう。
なお親子間の贈与にはさまざまな贈与税の控除制度が認められているので、上手に利用すればある程度までの節税は可能です(それでも財産分与の方が無税になるので有利です)。
- ・暦年贈与
- ・相続時精算課税制度
- ・居住用不動産の購入資金贈与
- ・教育資金贈与
- ・結婚子育て資金贈与
たとえばオー美さんが将来、夫から受け取った財産をお子様へ移転したいなら、上記のような制度を上手に利用するとよいでしょう。
離婚後、夫から子どもへ贈与してもらうことももちろん可能です。
親や祖父母から、子どもや孫へ贈与するときにも上記の節税対策は有効なので活用しましょう。
まとめ
熟年離婚では、財産分与が非常に重要なポイントです。
失敗すると離婚後の生活が苦しくなり、後悔してしまうケースも少なくありません。
財産分与では税金がかかるケースとかからないケースがあるので、事前にしっかりシミュレーションしておくべきといえます。
オーセンスでは他士業とも連携し、離婚の法的手続きや税金対策、不動産登記を含めてトータルでサポートを提供しております。
熟年離婚や財産分与、生前贈与にお悩みの方がおられましたら、お気軽にご相談ください。
オーセンスの弁護士が、お役に立てること
財産分与を受けても多くの場合で税金は発生しませんが、分与の額や名目によっては課税対象となることがあります。また、税制は頻繁に改正されますので、常に最新の状況を確認する必要があります。
想定外の納税が発生するということのないよう、離婚条件を協議する際には弁護士に相談することをお勧めします。
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