親権争いでは、母親が有利と言われることが少なくありません。
では、これは真実なのでしょうか?
また、父親が親権を獲得できるのは、どのようなケースなのでしょうか?
今回は、親権者を決めるにあたって重視されやすい事項や父親が親権を獲得しやすいケース、父親が親権を獲得するポイントなどについて、弁護士が詳しく解説します。
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親権とは
親権とは、未成年の子どもの利益のために監護や教育を行ったり、子どもの財産を管理したりする権利であり、義務でもあります。
子どもの親である夫婦の婚姻中は、夫婦が共同して親権を行使します(民法818条3項)。
一方で、子どもの両親の離婚後は、夫婦が共同して親権を行使することはできません。
執筆現在(2023年12月)、日本では離婚後の共同親権制度は導入されていないためです。
そのため、離婚後は原則として、父親か母親のどちらか一人のみが子どもの親権者となります(同819条)。
離婚後の親権者は、原則として離婚する夫婦間の話し合いによって定めます。
離婚届には未成年の子どもの親権者を記載する欄があり、この欄が未記入の場合は離婚を成立させることができません。
つまり、未成年の子どもがいる場合は、子どもの親権者を決めなければ離婚ができないということです。
しかし、夫婦がいずれも親権獲得を希望する場合など、夫婦間の話し合いでは親権者が決まらないこともあるでしょう。
その場合は、家庭裁判所の調停で親権者を決めることとなります。
調停とは、2名の調停委員の立ち合いのもと、夫婦間の話し合いで解決を図る手続きです。
話し合いといっても夫婦が向かい合って話すのではなく、調停委員が夫婦の双方から交互に意見を聞く形で話し合いが進行します。
調停でも意見がまとまらず調停が不成立となった場合は、裁判へと移行することが一般的です。
裁判では諸般の事情を考慮したうえで、どちらが親権者としてふさわしいかを裁判所が決定します。
裁判所の決定には夫婦がともに従わなければならず、仮に不服がある場合は判決文の送達から14日以内に控訴の手続きをとらなければなりません。
期限内に控訴の手続きを取らない場合、この控訴期間の経過をもって判決が確定します。
親権の獲得で一般的に重視される事項
裁判で親権者を決める場合、どのような事項が重視されるのでしょうか?
ここでは、親権者を決めるにあたって重視されやすい主な項目を5つ紹介します。
これまでの生活状況
親権者を決める際にもっとも重視されるのは、これまでの生活や監護の状況です。
裁判所が親権者を決める際は、子どもの生活環境がこれまでとできるだけ変わらないことを重視するといわれています。
そのため、一般的には、夫婦のうちこれまで育児を主に担ってきた側が親権者とされやすい傾向にあります。
今後子どもと過ごす時間がとれるかどうか
親権者を決めるにあたっては、今度子どもと過ごす時間がどの程度取れるのかも重視されます。
この判断にあたっては周囲のサポート環境も加味され、たとえば子どもの祖父母と同居したり近くに住んだりして子育てに協力してくれる場合は、プラスの要素として判断されます。
子どもが幼い場合は母親優先
親権獲得においては原則として男女の差はないとされているものの、子どもが幼いうちは母親が優先される傾向にあります。
生物学的に母乳を出すことができるのは母親のみであることから、子どもが乳児である場合は母親が優先される傾向にあります。
また、幼児期も引き続き母親との結びつきが強いことから、親権者として母親が選ばれやすいといえます。
きょうだい不分離の原則
夫婦間の話し合いにより親権者を決める場合は、子どもによって親権者を分けることも可能です。
たとえば、長男の親権は父親が獲得し、長女の親権は母親が獲得することなどもできるということです。
一方で、裁判所は原則として、きょうだい不分離の原則をとっています。
そのため、裁判で親権者を決める場合は、複数の子どもの親権者は、原則として同一となります。
面会交流への柔軟性
親権者を決める際は、面会交流への柔軟性も考慮されます。
裁判所は原則として未成年の子どもには両親それぞれと関りを持てる環境が望ましいと考えていることから、面会交流に柔軟な姿勢である方が、親権獲得において有利となる傾向にあります。
子どもの意思
子どもが15歳以上である場合親権者を決めるにあたっては裁判所が子ども本人から意見を聞かなければならないこととされています(家事事件手続法152条2項)。
そして、よほどその他の事情がない限り、子どもの意見がそのまま通ることが一般的です。
また、15歳未満であってもおおむね10歳以上くらいであれば子ども自身の意見が聞かれ、親権者の決定にあたってはこれが斟酌されることが多いといえます。
一般的に親権獲得で父親が不利と言われる理由
親権争いでは、一般的に母親が有利であると言われています。
これは、なぜなのでしょうか?
まず、母親の母乳を飲んでいる乳児期を除き、男女による差が設けられているわけではありません。
しかし、実際には母親が親権を担うケースが大変を占めています。
その理由は、日本では父親がメインで育児を担うケースも増えているとはいえ、未だ母親がメインで育児を担っている家庭は少なくないからです。
先ほど解説したとおり、親権争いではこれまでの生活状況が重視されます。
そのため、それまでメインで育児を担ってきた母親が、親権獲得で有利になっているということです。
親権を父親が獲得しやすいケース
母親が親権を獲得していることが多いとはいえ、父親が親権を獲得できないわけではありません。
では、父親が親権を獲得しやすいのは、どのようなケースなのでしょうか?
主なケースを3つ解説します。
子どもが父親と暮らすことを望んでいる場合
1つ目は、子どもが15歳以上であり、子ども自身が父親と暮らすことを望んでいる場合です。
先ほど解説したように、子どもが15歳以上の場合は、原則として子ども自身の希望が重視されます。
そのため、15歳以上の子どもが父親との暮らしを望んでいる場合は、原則として父親が親権者となります。
また、子どもがおおむね10歳以上であり父親との暮らしを強く望んでいる場合も、父親が親権者となれる可能性が高くなります。
これまで父親がメインで育児を担ってきた場合
2つ目は、これまで父親がメインで育児を担ってきた場合です。
先ほど解説したように、乳幼児期を除けば、原則として性別で親権者が決まるわけではありません。
そのため、これまでの主な養育者が母親ではなく父親であった場合は、父親が親権者として選ばれる可能性が高くなります。
母親が親権者として不適格な事情がある場合
3つ目は、母親に親権者として不適格な事情がある場合です。
たとえば、次の場合などは母親が不適格とされ、父親が親権者として選ばれやすくなります。
- 母親が子どもを虐待(身体的虐待、精神的虐待、性的虐待、ネグレクトなど)していた場合
- 母親の心身の健康状態が相当程度悪く育児に堪え得る状態ではない場合
- 母親が、父親(夫)と子どもを置いて家出した場合
一方で、母親が不倫をしており、これが離婚原因であったとしても、これだけを理由に親権者として不適格とは判断されることはほとんどありません。
ただし、次の場合には、親権者として不適格と判断される可能性があります。
- 幼い子どもを放置して不倫相手と頻繁に会っていた場合(ネグレクト)
- 不倫相手と同棲するために、家を出た場合
- 離婚が正式に成立する前に、不倫相手に子どもを頻繁に会わせている場合
父親が親権を獲得できるかどうかは具体的な状況によって異なるため、親権獲得を目指す場合はあらかじめ弁護士へご相談ください。
親権を父親が獲得するためのポイント
父親が親権を獲得するためには、どのようなポイントを踏まえればよいのでしょうか?
最後に、父親が子どもの親権を獲得するための主なポイントを5つ紹介します。
養育の実績を積み重ねる
父親が子どもの親権を獲得するには、子どもの養育実績を積み重ねることが不可欠です。
親権者を決める際は、これまでの養育環境が重視される傾向にあるためです。
子どもと積極的に関わり、子どもとの信頼関係を積み重ね、また子どもの状態(予防接種の記録、病歴、食べ物の好き嫌いなど)を把握しましょう。
親権の獲得においては、養育実績の積み上げが特に重要となります。
なお、親権を獲得したいとの思いがあるあまり、自身とは別居し母親と暮らしている子どもを待ち伏せして連れ去ったり家に侵入して連れ去ったりすることは絶対に行わないでください。
このようなことをすると、親権獲得で不利となるばかりか、未成年者略取等罪などの罪に問われる可能性もあります。
子どもがある程度大きくなるまで離婚を待つ
子どもが幼いうち(小学校入学までくらい)は、親権者として母親が優先される傾向にあります。
もちろん、子どもが幼くても母親が育児放棄をしたり虐待したりしているなど母親に親権者として不適格な事情がある場合は、父親が親権を獲得できる可能性はあります。
しかし、そのような極端な事情がある場合を除き、裁判で父親が幼い子どもの親権を獲得することは難しいと言わざるを得ません。
そのため、場合によっては、子どもがある程度大きくなるまで離婚を待つことも選択肢の一つとなります。
離婚を待つことが得策であるかどうかは状況によって異なるため、あらかじめ弁護士へご相談ください。
自身のほうが親権者としてふさわしいという証拠を揃える
裁判では、証拠が重視されます。
そのため、子育てに関する日記を付けたり日々の写真を残したりすることのほか、幼稚園や習いごとの送り迎えを行い周囲へも父親が主に養育していたとの印象を残すなど、自身が日ごろから養育をしていたことの証拠を残す工夫が必要です。
また、母親に親権者としてふさわしくない事情がある場合は、これについても証拠を残しましょう。
母親が子どもを虐待している場合は、その記録を詳細に残したり病院の診断書をとったりすることなどが挙げられます。
必要となる具体的な証拠は状況によって異なるため、親権獲得に強い弁護士へご相談ください。
育児の協力者をリストアップしておく
親権者を決める際は、離婚後に子どもとの時間が取れるかどうかも重視されます。
とはいえ、未成年の子どもがいる世代では仕事をしている人も多く、自分が四六時中子どもとともに過ごすことは現実的ではありません。
そのため、周囲で育児に教育してくれる人を、リストアップしておきましょう。
たとえば、子どもの祖父母と同居できる場合や近くに住んで育児に教育してもらえる場合は、親権獲得においてプラスの要素となり得ます。
弁護士へ相談する
ここまで父親が親権を獲得するためのポイントを解説しましたが、母親側に親権者としてふさわしくない事情のあることが明白である場合や、子どもが10歳以上で父親との生活を強く希望している場合でない限り、子どもの親権を父親が獲得するのは容易なことではありません。
父親が親権を獲得したい場合は、より入念な準備が必要となります。
そのため、父親が親権の獲得を目指す場合は、親権獲得に関する実績が豊富な弁護士へ相談することが近道です。
弁護士へ相談することでそのケースにおいて準備すべきことや集めるべき証拠が明確となるほか、裁判に至る前に解決する方法はないかアドバイスを受けることも可能となります。
まとめ
親権は母親が有利と言われることがありますが、これは家庭内での役割として母親が主に子どもの養育を担っている家庭が多いためです。
親権争いではこれまでの養育状況が重視されるため、結果的に母親が選ばれやすくなっている現状があります。
しかし、父親が親権者となれないわけではありません。
母親が親権者として不適格な事情がある場合のほか、父親が主に養育を担い証拠を集めることで、父親が親権を得られる可能性が高くなります。
とはいえ、父親が子どもの親権を獲得するハードルは低いものではありません。
そのため、親権問題に詳しい弁護士に相談し、具体的な状況に応じた対策を練ることが必要です。
Authense法律事務所には離婚や親権問題に強い弁護士が多数在籍しており、父親が親権を獲得できた事例の蓄積もあります。
父親が親権を獲得したいとお悩みの場合や離婚を有利に進めたい場合は、Authense法律事務所までまずはお気軽にご相談ください。
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