コラム
公開 2019.09.03 更新 2021.10.04

離婚後、子どもとの面会がスムーズに行われるためには?

離婚して一番気がかりなのは、子どもの気持ち、そして子どもとの関係でしょう。特に、離れて暮らす親にとっては、子どもとの面会交流が、子どもとの接点が確保できる唯一の機会となります。ただ、離婚後において、実際に面会交流が行われているのは、ほんの一部に過ぎないというデータがあります。
平成29年に厚生労働省が発表した「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果の概要」では、離婚した親と「現在も面会交流を行っている」のは、母子世帯で29.8%、父子世帯で45.5%との状況です。
そこで今回は、離婚後の子どもとの面会交流について、スムーズに行われるためのポイントをご紹介します。

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離婚前に、子どもとの面会ルールを決めておく

離婚後に、子どもとの面会がスムーズに行われるための秘訣は、子どもとの面会ルールを、離婚前にできる限り具体的に決めておくことです。ここでは、面会交流の内容からご説明します。

・子どもとの面会交流は、正当な理由がなければ拒めない?

面会交流とは、子どもと離れて暮らす親が、子どもと定期的に合うなどの交流を持つことを意味します。平成23年の民法の一部改正でも、協議離婚の際に父母が協議する事項として面会交流を明記しています。

面会交流は、子どもの利益のために認められていることがポイントです。夫婦は離婚すれば他人となりますが、親子はそうではありません。ただ、離婚という状況では、どちらかの親と離れて暮らす可能性が高くなります。そのため、面会交流を通じて、子どもが親の愛情を感じ、大切にされていることを実感できるようにと交流の機会が認められているのです。そのため、親の都合で面会交流を拒否することはできません。
例えば、不貞行為が理由で離婚に至るケースであっても、自分との信頼関係が裏切られたからといって、子どもの利益を害して面会交流を拒むことはできないのです。

・スムーズに子どもと面会する秘訣は、具体的なルールを決めること

それでは、離婚後も子どもとの面会がスムーズに行われるためには、どうすればいいのでしょうか。それは、離婚前に、具体的な面会のルールを細かく決めておくことです。予め問題となる事項を洗い出し、事前に協議して解決方法も決めておけば、離婚後も安心です。
一例として、以下のような事項の協議をお勧めします。

  • ・面会交流の頻度(面会日数や面会の時間数)
  • ・面会の場所
  • ・面会方法(子どもの送り迎え方法や第三者に委託する場合など)
  • ・禁止事項(宿泊やプレゼントの取り扱いなど)
  • ・学校行事への参加について
  • ・面会以外の子どもとのやり取りについて(電話やメール、SNSなど)
  • ・面会の約束の変更方法(連絡方法など)
  • ・子どもが拒否した場合の対応
  • ・子どもから相談された場合の情報共有について

なお、離婚後に、子どもとの面会について揉めないためにも、蒸し返すことがないような対策を講じておくと安心です。当事者双方で話し合って合意に至った場合は、離婚協議書として書面に残すことをお勧めします。

・子どもの成長に応じて柔軟な対応も必要

面会交流は、継続的に行われることを前提にしています。面会交流のルールを決定した時点から子どもも成長します。そのため、時間の経過とともに、面会交流の取り決め内容がそぐわない場合も出てくるでしょう。よって、子どもが成長する節目で、面会交流の取り決め内容を見直すことも必要です。

離婚後の子どもとの面会におけるトラブル事例

実際に、離婚後に子どもとの面会で相手と揉めるケースもあります。ここでは、具体的な事例を交えて、その対処法をご説明します。

・「子どもが会いたがらない」と拒否されるAさんの場合

離婚後の子どもとの面会で揉めるパターンの一つが、「子どもが会いたがらない」として拒否される場合です。
Aさんの場合、3年前に離婚し、当時9歳の子どもは夫が引き取って一緒に暮らしています。Aさんとは離れて暮らしており、月1回の面会を行ってきました。しかし、Aさんの再婚が決まり、子どもも中学生になった時点で、「子どもが会いたがらない」と相手が拒否し、既に2ヵ月連続で子どもと会うことができていません。Aさんとしては、本当に子どもが会いたがらないのか、それとも再婚が決まったから元夫に嫌がらせをされているのか、判別がつきません。

さてAさんのようなケースでは、まず、一緒に暮らしている親に、子どもが会いたがらない理由を聞いてもらいましょう。優先すべきは子どもの利益です。どうして会いたくないのか、そう思うに至った理由を確認して、面会交流の方法などを見直す必要があれば、改めることで状況は改善するかもしれません。子どもの年齢や状況次第では、子どもが本音を話している場合もあります。ただ、その場合でも、一方的に面会交流をやめるのではなく、電話やメール、手紙など間接的な方法を試してみるのも一つです。一緒に暮らしている親が、「子どもが会いたくない」という口実で、協議にも応じない場合は、家庭裁判所の「面会交流の調停」の利用が考えられます。調停でも合意できなければ、裁判所の審判により決することができます。

・子どもへの暴力などの事情があるBさんの場合

Bさんの場合は、夫の暴力により離婚し、面会交流でも子どもへの暴力が行われないか、面会交流を決めたあとも、心配でなりません。このような場合、面会交流を取り消すことはできるのでしょうか。

さて、Bさんのようなケースでは、場合によっては面会交流を制限できる可能性があります。具体的には、過去に行われた暴力の状況や、子どもに対する暴力の危険などの事情を総合的に考慮して、正当な理由と判断できれば、面会交流を決めたあとでも拒否が可能です。相手が面会交流の制限に応じない場合は、家庭裁判所に「面会の制限や拒否を求める調停」を申し立てることをお勧めします。調停でも合意できなければ、裁判所の審判で決することになります。

離婚後の子どもとの面会は、双方の親の協力が必要

離婚後に子どもとの面会が認められている最大の理由は、それが子どもの利益となるからです。子どもからすれば、面会交流は、双方の親から愛されていることが確認できる貴重な機会といえます。そのため、双方の親が協力して行うことが必要となります。ここでは、面会交流に対する親の心構えをご説明します。

・子どもと同居している親は、笑顔で送り出そう

子どもと同居している親は、面会交流の前後で、必ず笑顔で子どもと接することを心がけましょう。子どもは、親の様子を非常によく観察しています。少しでも不機嫌な様子を出せば、子どもは、離れている親との面会交流が悪いものと思ってしまいます。どのような経緯で離婚したにせよ、離婚相手は、子どもからすれば大事な親なのです。自分が離婚相手をどのように思っていようとも、子どもの前では抑えることが必要です。ましてや、悪口などもってのほかです。笑顔で送り出し、迎え入れることを意識しましょう。

・子どもと離れて暮らす親は、子ども目線を忘れない

子どもとの面会交流を行う際には、子どもの目線を忘れないことが重要です。例えば、面会交流の日時や場所などを決める際にも、子どもの意見を尊重して、無理なく子どもが会える環境を作ることを優先的に考えねばなりません。仕事の都合で面会交流の約束が果たせないなど、想定外の事情がなるべくないように調整することも忘れないようにしましょう。

また、子どもを通じて相手の親のことを聞き出したりすることもご法度です。子どもは敏感です。自分のことよりも、一緒に暮らしている親に関心があると分かれば、子どもの気持ちは重くなるかもしれません。子どもの生活を中心に、学校行事や友人、将来の夢などの話題で、子どもの気持ちをしっかりと受け止めることが重要です。

さらに、子どもを困らせるようなことも控えましょう。例えば高価なプレゼントや、子どもと旅行を約束するなど、同居している親の了解なしに行えば、責められるのは子どもの可能性があります。双方の親の板挟みになるような状況だけは避けるように心がけましょう。

・子どもに関する情報の共有が重要

面会前に、子どもに関する最近の情報を共有しておくことをお勧めします。子どもも、離れて暮らす親が自分のことを知っていると分かれば、気にかけてもらっていることが感じられます。実際に会って話す場合に、会話も弾むでしょう。

ただ、離婚に至るまでの経緯によっては、相手と連絡を取りたくないなどの事情が考えられます。このような場合は、離婚相手と直接話すような方法を取らなければいいわけです。メールやSNSなどの手段で、定期的に子どもの健康状態や生活の様子を伝えることもできます。もしくは、祖父母のような第三者を介して、情報共有することも可能です。

まとめ

子どもとの面会交流で一番大事なことは、子どもの気持ちです。子どもが、いかに双方の親の愛情を感じることができるか、この観点から面会交流を考えなくてはなりません。互いが子どもの利益を優先的に考えることができれば、子どもが面会交流を拒否する場合や、面会交流の約束を変更したい場合など、様々なトラブルが出てきても、協力して解決できるのではないのでしょうか。
もし、両者で意見がまとまらない場合は、第三者的な立場として、弁護士などの専門家のアドバイスを聞くことも検討してみてはいかがでしょうか。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
京都大学総合人間学部卒業、立教大学大学院法務研究科修了。一般民事(主に離婚事件)に関する解決実績を数多く有する。また、企業法務についても幅広い業務実績を持つ。
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