現行民法下では、女性は原則的に離婚後100日間、再婚できません。
ただし一定の条件を満たす場合には例外的にその期間も再婚可能です。
また今後、女性の再婚禁止期間が廃止される可能性が高くなっています。
この記事では離婚後の再婚禁止期間や再婚後の子どもの父親、戸籍について、解説します。
目次
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女性は離婚後100日間、再婚できない
民法は、「女性が離婚すると、離婚後100日間は原則として再婚できない」と定めています。
民法733条(再婚禁止期間)
女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合
二 女が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合
男性には再婚禁止期間がありません。
女性にだけ再婚禁止期間がある理由
女性にのみ再婚禁止期間があるのは、離婚後に生まれた子どもの父親が重複して混乱する可能性があるからです。
現在の民法では、離婚後300日以内に生まれた子どもは「離婚前の夫の子ども」と推定されます。
一方、婚姻後200日が経過してから生まれた子どもは「現在の夫の子ども」と推定されます。
女性が離婚後100日以内に再婚してしまったら、父親の推定規定が重複する可能性があり、どちらを父親と推定すべきか決められません。
こういった混乱を避けるため、女性についてのみ100日間の再婚禁止期間が定められているのです。
例外的に100日以内に再婚できる場合
ただし以下のような場合には、女性も離婚後100日以内に再婚できます。
離婚したときに妊娠していなかったことが明らか
証拠によって離婚時に妊娠していなかったことを証明できるなら、再婚禁止期間が適用されません。
離婚前に妊娠して離婚後に出産した場合
離婚前から妊娠していて離婚後に出産した場合、その後は再婚可能です。
前夫と再婚する場合
前夫と再婚するなら推定規定は重複しないので再婚できます。
高齢で妊娠の可能性がない場合
妊娠可能性がなければ父親の推定規定の重複が起こらないので再婚できます。
前夫が失踪宣言を受けた場合
前夫が失踪宣告を受けた場合、前夫の子どもが生まれる可能性はないので再婚禁止期間は適用されません。
前夫が3年以上不明となったために離婚した場合
前夫が3年以上生死不明の場合、前夫の子どもが生まれる可能性はないので再婚禁止期間は適用されません。
離婚後に避妊手術を受けており、妊娠不能な場合
妊娠できない場合、医師の診断書を添えて届け出れば再婚が可能です。
離婚後に生まれた子どもの父親や戸籍
離婚後300日以内に子どもが生まれると、その子の父親は「前夫」と推定されてしまいます。
出生届を提出すると、子どもの戸籍上の父親は前夫となります。
本当は前夫とは異なる交際相手や再婚相手の子どもであっても父親が前夫となってしまうので、放置しないように注意しなければなりません。
正しい父親を戸籍に反映してもらうには、前夫の方から「嫡出否認の訴え」を起こしてもらうか、子どもの方から「親子関係不存在確認」の調停や訴訟を起こす必要があります。
出生届を提出しない子どもが社会問題に
離婚後300日以内に子どもが生まれると、父親が前夫と推定されてしまうので、「出生届を提出しないでおこう」と考える方も少なくありません。
しかし出生届を提出しないと、子どもが「無戸籍」の状態になってしまいます。
無戸籍だと、子どもにとって重要な医療や保育、教育などの各種の行政サービスを受けられなくなってしまうリスクが発生します。
また無戸籍のまま長年放置すると、子どもが身元を証明できなくなって誰の戸籍にも入れなくなる深刻な事態に陥るケースもあります。
前夫の戸籍に入れるのが嫌だとしても、出生届を提出せずに放置してはなりません。
再婚禁止期間が廃止される可能性が高い
近い将来、女性の再婚禁止期間が廃止される見込みが高くなっています。
2022年2月1日、法制審議会において民法の改正要綱案が了承されました。
概要は以下のとおりです。
- 離婚後300日以内に生まれた子どもについて、母親が再婚していれば再婚相手の子どもと推定する(出生直近に婚姻した夫の子どもと推定する)
- 女性の再婚禁止期間を離婚後100日間とする規定を撤廃する
再婚禁止規定が廃止される理由、背景
現在の民法では、婚姻後300日以内に生まれた子どもは前夫の子どもと推定されてしまいます。
ただ、現実的に離婚間近の状態で夫との子どもを作る人は少ないでしょう。
女性が300日以内に子どもを産む場合、多くは前夫以外の男性の子どもです。
たとえば夫のDVから逃れるために別居しているときに交際した男性と子どもができるケースもあります。
こういった事案で子どもの出生届を提出すると、子どもの父親が前夫と推定されてしまい、DVトラブルの蒸し返しになる可能性があります。
女性としては出生届をためらわざるを得ず、結果的に無戸籍の子どもが生じる要因となるのです。
法務省が2022年1月時点において把握している無戸籍者は825人でしたが、うち591人は「嫡出推定(子どもの父親が全夫と推定される)」を理由としていたと発表されています。
改正法の趣旨
今回の法改正は、上記のような無戸籍の子どもの問題を発生させないために行うものです。
要綱案では「妊娠から出産までの期間に数回の婚姻がある場合、出生直近に婚姻した夫の子どもと推定すべき」と定められています。
この規定が有効となれば離婚後300日以内に生まれた子どもであっても、再婚すれば再婚相手が父親と推定されるので、父親の推定規定が重複して混乱が生じるリスクがなくなるでしょう。
女性に再婚禁止期間を設ける必要がないので、100日間の再婚禁止規定が撤廃されるのです。
嫡出否認の訴えについての改正
子どもの父親が誤って前夫と推定されてしまった場合、覆すには「嫡出否認」の訴えを提起する方法が有効です。現在の民法において、嫡出否認の訴えを起こせるのは「(推定された)父親」のみとされています。
しかし現実には、母親の方が嫡出否認の訴えを提起したいニーズが高いのが実情です。
そこで改正要綱案では、母親や子どもも嫡出否認の訴えを提起できる内容としました。
今後は離婚後に子どもが生まれて前夫の子どもと推定されてしまった場合でも、母親が嫡出否認の訴えを提起して子どもの父親の推定を崩せるようになる見込みです。
まとめ
現在の法制度では、女性は離婚後100日間、再婚できません。
ただし妊娠の可能性がない場合など、一定の要件を満たせば例外的に再婚可能です。
離婚後300日以内に子どもが生まれた場合、前夫が父親と推定されてしまうので、正しく戸籍が反映される手続きを行いましょう。
今後は民法が改正されて、女性の再婚禁止期間が撤廃される見込みです。
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・離婚後の再婚について、すぐに可能か否か、どのような手続きが必要か等、ご相談者様の事情に基づいて適切にアドバイス致します。
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