コラム
公開 2021.02.16 更新 2021.10.04

離婚の際に養育費を決めるために必要な7つの知識

離婚の際、養育費を取り決めるなら最低限押さえておくべきことがいくつかあります。養育費の金額や支払始期、終期、養育費の放棄ができるのかなどの問題です。
離婚後に困らないように正しい知識を持っておきましょう。

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1.養育費は父母間で分担する子どもの成長のためのお金

養育費は、別居している親が子どもを育てるために分担するお金です。
子どもを育てるには、いろいろな費用がかかります。

  • ・食費
  • ・被服費
  • ・住居費
  • ・学費
  • ・塾、習い事の費用
  • ・交通費

こうした費用は、親権者だけが負担すべきものではありません。親権者にならなくても、親には子どもへの「生活保持義務」があります(民法820条)。これは「自分と同等の生活をさせなければならない」という高いレベルの義務です。
よって離婚して親権者や監護者とならなくても、親は子どもへ養育費として生活費を支払わなくてはなりません。

養育費は、基本的に「月額」を定めて毎月支払います。子どもが成人するまでの間にさまざまな状況変化が起こる可能性があるので、基本的には「離婚時の一括払い」は認められません。

2.養育費の金額は「父母の年収」によって決まる

養育費の金額は「父母の年収」によって決まる

離婚後の養育費の相場は、どのくらいなのでしょうか?
養育費の金額は、基本的に「父母の年収のバランス」によって決まります。
支払う親の収入が高ければ養育費の金額が上がり、受け取る親の収入が高ければ養育費の金額が下がります。

また子どもの人数が増えると養育費の金額が上がり、子どもが15歳以上となった場合にも金額が上がります。
裁判所が決める場合にはこちらの養育費算定表にあてはめて個々の状況に応じた金額を算定します。

裁判所:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

養育費の金額を父母間で取り決める方法

父母が自分たちで話し合って養育費の金額を決める場合には、自由に金額を設定できます。相場の金額を参考にしつつ、調整しながら納得できる金額を定めましょう。

家庭裁判所で養育費の金額を定める場合には、上記で紹介した裁判所の「養育費算定基準」にあてはめて相場の金額を計算します。

なお、2019年末に裁判所における養育費の相場が全体的に押し上げられたため、従前より養育費の金額が上がっています。

3.養育費を払ってもらえる期間

養育費の取り決めをするとき「支払い期間」も意識しましょう。基本的に「離婚後子どもが成人する月まで」の分を請求できます。

3-1.支払始期について

養育費は、子どもと別居したらすぐに払わなければならないものなので、本来は「離婚時から」支払われるべきです。しかし離婚時に養育費の取り決めをしなかった場合には「請求時」からの分しか払われません。養育費調停を申し立てるケースでは、たいてい「調停申立時」からの分となります。
離婚後に相手から養育費を支払ってもらえないなら、早めに養育費調停などの方法で請求しましょう。

一方、離婚時にきちんと養育費の取り決めを書面で行ったにもかかわらず未払いとなった場合には、訴訟で「離婚時から」の未払い分を請求できます。養育費の書面を「公正証書」にした場合には、裁判をせずにすぐに公正証書を使って離婚時からの未払い分を差し押さえて回収できます。このことを考えると、養育費の取り決めは必ず公正証書にしておくのが良いでしょう。なお、離婚の調停や裁判で養育費を決めた場合は、裁判所が作成する書面をもって上記の未払い分の差し押さえが可能です。

3-2.支払い終期について

養育費は、基本的に「子どもが成人するまで」支払われるべきものです。
ただし父母間で約束をすれば、別の時期を定めてもかまいません。たとえば以下のような取り決め方法があります。

  • ・子どもが大学を卒業するまで(22歳になった月の次に来る3月まで)
  • ・子どもが大学院を卒業するまで
  • ・子どもが高校を卒業するまで

また子どもが未成年の間に結婚すると、成人擬制されて成人と同じ扱いになるので養育費の支払義務がなくなります。子どもが就職した場合にも、同様です。
ただし、すでに養育費の合意をして支払いをしている場合には、一方的に支払いを打ち切ると、相手方とのトラブルに発展する可能性もありますので、まずは相手方に理由を告げて通知を行うのが望ましいでしょう。

養育費の支払い終期については、個別の状況に応じて変化する可能性があるので、離婚時に定めた期間が絶対的になるとは限りません。

4.入学金や大学の学費について

入学金や大学の学費について

養育費は基本的には「毎月払い」としますが、別途「学費」や「入学金」を定めることも可能です。たとえば「中学校への入学時に10万円、高校入学時に30万円、大学の学費は父母で折半」などと定めるケースもあります。
具体的な金額や負担割合は、夫婦の収入や子どもの進学先などによっても異なってくるでしょう。当初の取り決め時に具体的に決められないケースも多くあります。

5.養育費の「一括払い」について

離婚するとき、養育費の「一括払い」を求める方もおられます。毎月払いでは滞納されるおそれがありますし、最後まで払ってもらえる保障もないからです。

養育費の一括払いは基本的にはできません。なぜなら養育費は子どもが育っていく間かかり続けるお金であり、父母の収入も変動しますし、途中で子どもが結婚したり死亡したりする可能性もあるからです。離婚時の状況がずっと続くわけではないので、その状況を前提として一括払いするのは妥当ではないと考えられます。

ただし離婚の際、「解決金」というかたちで一定のまとまった金額を払ってもらう方法はあります。毎月払いが不安な方は、離婚時に養育費代わりに解決金を請求するという方法を検討すると良いでしょう。

6.父母間で「養育費を払わない」と約束した場合の効力

父母間で「養育費を払わない」と約束した場合の効力

父母の仲が悪化して離婚する場合、離婚後にお互いに連絡をとりたくないので「養育費を払わない」「請求しない」と約束するケースがあります。
このように「養育費を払わない」という約束は、法律的に有効なのでしょうか?

確かに「父母間における約束」としては有効とも考えられます。ただし父母が約束をしたからといって、親の子どもに対する「生活保持義務」がなくなるわけではありません。子どもは親に対し、民法820条にもとづいて「扶養料」を請求できます。

そこで父母間で「養育費を払わない」と約束しても、父母間では請求ができなくなる可能性がありますが、子どもは、親とは異なり、相手親に扶養料としての養育費を請求できると考えられます。

7.養育費と面会交流の関係

同居親が別居親に養育費を求めると、別居親が「面会交流させてもらっていないから養育費を払わない」と主張するケースがよくあります。

しかし養育費と面会交流は引換ではありません。面会交流できていなくても、養育費の支払い義務があるので、相手が「面会交流できていないから支払いたくない」と言ってもきちんと払ってもらいましょう。

とはいえ面会交流ができていると養育費の支払いがスムーズになるのが通常なので、その意味も含めて面会交流は積極的に実施していくようお勧めします。

まとめ

父母間で養育費を取り決める際には、始期と終期を定めてきちんと公正証書で書面化しましょう。学費や条件変更などで迷いが生じましたら、お気軽に弁護士までご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
中央大学法学部法律学科卒業、中央大学大学院法務研究科修了。離婚、交通事故、相続問題などの一般民事事件を中心に、幅広い分野に積極的に取り組む。
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