コラム
公開 2020.10.05 更新 2021.10.04

2019年 算定表改定後の養育費の金額相場と支払い始期・終期について

最近「養育費の不払い」問題がテレビの特集で取り上げられるなど社会的な関心が高まっています。
また2019年12月には、家庭裁判所において参照されている養育費の算定表の金額が、社会の実情に合致するように全面的に改定され、全体的に以前より高額化されました。

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1.養育費の金額は、両親の収入に応じて決まる

養育費は、子どもを育てるために支払われるお金です。

子どもを養育していると、食費や衣服費などの生活費、学費、医療費や交通費などさまざまなお金が必要です。離婚後親権者にならず子どもと同居していなくても、子どもの親である以上、子どもに対する責任を負うので、養育費を支払わねばなりません。

裁判所における養育費の算定については、標準的な養育費を簡易迅速に算定するために算定表というものが活用されており、以下のような要素に従い金額が算定されます。もっとも、様々な事情を考慮して最終的な金額が決まることから、裁判所の最終的な判断が算定表の金額と常に一致するとは限りません。

  • ・両親それぞれの収入
    支払う側の親の収入が高ければ高額になり、受け取る側の親の収入が高ければ低額になります。
  • ・子どもの年齢
    子どもの年齢が15歳以上になると学費が上がったり食費が増える等、更に費用がかかるようになるので、養育費の金額が上がります。
  • ・子どもの人数
    子どもの人数が増えるとその分お金がかかるので養育費は高額になります。

自分たちで養育費の金額を話し合って決める際には、こちらの養育費算定表を参考にすると良いでしょう。

裁判所「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」
http://www.courts.go.jp/about/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

2.新しくなった養育費の算定表とは

家庭裁判所では、以前から養育費の算定表を使って養育費を算定してきました。
ただその内容が2019年12月から変更されているので注意が必要です。
以前の養育費算定表は地域の実情やその他の個別具体的な事情を十分に踏まえているとはいえなかったことから、全体的に金額が低額になっていました。
「養育費をもらっても子どもを育てられない」という声も多かったことから、生活保持義務(親が自分の生活を保持するのと同程度の生活を、子どもにも保持させる義務)の理念を徹底し、子どもにとって最善の利益を考慮するべきであるという考えが強くなりました。

そこで家庭裁判所所属の裁判官を中心として研究が重ねられた結果、2019年12月に養育費の算定表が改定されて、以前より全体的に金額がアップしました。

そのため、以前の相場で養育費の取り決めをしていると、新しい相場より低くなっている可能性があります。現在、相手方と養育費の金額について話し合いをしている場合には、新しい算定表をもとに交渉するのが良いでしょう。

3.養育費の支払い期間について

養育費の取り決めをするとき「いつからいつまで支払うべきか」も重要な問題となります。
養育費の支払い期間について、正しく理解しておきましょう。

3-1.養育費の支払いが始まるタイミング

養育費の支払い義務は、子どもの面倒をみていない親からの金銭的な補充が必要になったときから発生します。よって、一般的には養育費の請求をした時や調停の申し立て等の請求をした時を基準として養育費の支払い始期が決められます。実際は、離婚した月から養育費の支払いが始まることも多いです。
ただし以下のような注意点があります。

離婚後に養育費を請求しなかったら過去分を請求できない可能性がある

離婚後も養育費の請求をしなかった場合には、過去に遡ってすべての分を支払わせることができない可能性が高いです。そのため、過去の養育費を請求したとしても、養育費の支払い始期は「支払いを請求したときから」とされることが多いです。

相手と話し合いをしても養育費の合意ができない場合、通常は家庭裁判所で「養育費請求調停」を申し立てて、調停における話し合いの中で決定しますが、場合によっては「審判」によって決定します。審判になると裁判所が養育費の金額等を判断し、相手方が支払うべき金額や支払い時期等が決定されます。
このように養育費請求調停や審判で養育費の支払い時期等が決まる場合には、「調停申立時」や「実際に養育費を請求した時」からの養育費の請求が認められることが多いです。そのため、養育費を支払ってもらう必要性を感じたら、早めに調停を申し立てるか、内容証明郵便による通知等により養育費の請求をするとよいでしょう。

もっとも、養育費の支払いの開始時点をいつにするのかについては見解が分かれているところであり、事案によっても異なってきます。
そのため、まだ養育費の支払いをしてもらっていない場合や、支払いの開始時期等でお悩みの場合には、お近くの弁護士に相談することをお勧めします。

3-2.養育費の支払いが終わるタイミング

次に養育費を「いつまで支払ってもらえるのか」についてみていきましょう。

基本的には「子どもが成人する月まで」

養育費は「未成熟の子どもを扶養する義務」に基づいて生じる費用なので、基本的には「子どもが成人するまで」支払われます。そこで「子どもが成人する月まで」の分を請求できます。

ただ、実際には子どもの状況に応じて以下のように終期が変動する可能性があります。

子どもが大学や大学院、専門学校に進学するケース

最近では、多くの方が大学や大学院、専門学校に進学するので、20歳の時点でまだ社会に出ていないケースが珍しくありません。
このような場合に、学生の間に養育費の支払いが打ち切られてしまうと、学費などが足りなくなる等の不都合があるため、養育費支払期間を延長するケースが多くなっています。
夫婦間で話し合って毎月の養育費を「大学卒業時」までと定めたり、「22歳になった次の3月まで」と定めることにより支払い期間を延長することもよくあります。また、「学費は別居親が負担する」「学費を両親が半額ずつ負担する」などと学費の分担方法について取り決めをするケースもあります。

子どもが結婚するケース

民法では、未成年者であっても結婚したら大人と同様の取扱いを受けます。これを「成年擬制」と言います。
よって子どもが20歳以下の年齢で結婚すると、その時点から養育費の支払い義務はなくなると判断されるのが通常です。

子どもが高卒で就職するケース

現在でも、子どもが大学などに行かず高校を卒業してすぐに就職して自活するケースはあります。
就職すると子どもは経済的に自立したといえるので、養育費の支払い義務がなくなるのが通常です。

4.養育費の金額や支払い期間は変更できる

子どもが大学などに進学するのか高卒で就職するのか、あるいは結婚するのかなど、離婚時には予測できない事情も多々あります。子どもが幼くて「とりあえず養育費は20歳まで」と定めていても、成長すると大学や大学院に進学し、予想に反して学費等がかかるケースは少なくありません。
このように、いったん養育費の取り決めをしたけれども、現状に合致しなくなったというような場合には、養育費の金額等を変更することが可能です。
たとえば養育費の金額を現在の状況に応じて増額するという合意ができれば、合意後は新たな金額による支払いを受けられます。

また、養育費の支払い終期についても、養育費について合意をした時と事情が変わった場合には、話し合いによって延長したり短縮したりできます。
もっとも、変更について当事者間で話し合いによる合意ができない場合には、家庭裁判所に対して改めて養育費分担の調停又は審判の申立てをする必要があります。

5.養育費の金額や期間を変更する手順

5-1.まずは話し合う

養育費の金額や支払い期間等を変更したい場合には、まずは相手に現状を丁寧に伝えて養育費の増額や支払い延長を申し出てみましょう。相手が話し合いに応じるなら新しく取り決めをして合意書を作成します。口頭の約束だけでは守られない可能性が高いので、必ず書面化しましょう。また、約束どおりに支払いがなされない場合に備えて、合意書は公正証書で残しておくとよいでしょう。

5-2.調停・審判を申し立てる

相手方が話し合いを拒絶する場合や当事者間で話し合っても合意できない場合には、早めに家庭裁判所で養育費の支払い内容の変更を求める調停や審判を申し立てましょう。調停の話し合いの中で新たな金額で合意ができた場合には増額した養育費を受け取ることができますし、相手方が応じない場合には裁判官が一切の事情を考慮して適切な金額を決めてくれます。
また、養育費の支払い終期や学費等の分担方法についても裁判所で話し合って決めることが可能です。

離婚して子どもを引き取るときには、子どもを育てていく上で経済的に困らないように、養育費の適切な金額や支払期間等をしっかり取り決めておくことが重要です。今後の参考にしてみて下さい。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(大阪弁護士会)
京都大学法学部卒業、神戸大学法科大学院修了。不動産法務、離婚、相続、刑事事件を中心とした法律問題を取り扱う。不法行為に基づく慰謝料請求事件や刑事事件の示談交渉などの解決実績を有する。
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