コラム
公開 2020.03.10 更新 2022.08.25

別居したい場合離婚前にしてもよい?離婚前別居のメリット・注意点を弁護士が解説

離婚が成立する前に、別居したい場合は別居しても大丈夫なのでしょうか?
離婚成立前に別居した方がよいケースや、離婚成立前に別居するメリット・デメリット、注意点、準備しておいた方がよいものを弁護士がわかりやすく解説します。

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離婚の前に別居を検討すべきケース

離婚が成立する前に特に別居を検討すべき主なケースは次のとおりです。

相手が離婚に応じてくれない場合

離婚を切り出しても相手が応じてくれない場合や、相手が真剣に受け取ってくれない場合などには、離婚の前に別居をすることを検討してもとよいでしょう。

後ほど解説するように、離婚前に一定の別居期間がある方が、仮に調停や裁判などとなった際に離婚が成立しやすくなるためです。
また、相手や調停委員に離婚への真剣さを伝えることができるでしょう。

DVなどの被害を受けている場合

DVやひどいモラハラの被害を受けている場合などには、離婚を待たずに別居を検討すべきです。
同居をした状態のままで離婚を切り出せば、激高をした相手からさらにひどい暴力などを受ける可能性があるかもしれません。
また、逃げ出すことができないように財産をすべて隠すなど、別居や離婚をさせないためにさまざまな手段を講じてくるリスクもあります。

この場合には特に慎重に別居の準備を進め、別居後に弁護士を通して離婚の交渉を進めることをおすすめします。

子どもに虐待などの被害が及んでいる場合

相手が子どもを虐待しているなど、子どもに被害が及んでいる場合には、早急に別居を検討し、早めに自治体の窓口や支援団体に相談しましょう。

同居をしている限り、子どもへの被害が拡大するおそれがあり、別居が遅れれば取り返しのつかない事態となる可能性もあるためです。

先に別居をしてから離婚をする主なメリット

先に別居をしてから離婚についての協議を進める主なメリットには次のものが挙げられます。

裁判で離婚が認められやすくなる

離婚の原因や個別事情にもよりますが、おおむね3年から5年程度の別居生活をすることで、裁判での離婚が認められやすくなる傾向にあります。
そのため、相手が離婚に応じてくれない場合などには、離婚の話し合いに先立って相当な別居期間を設けておくとよいでしょう。

ただし、事情によって異なる場合があるうえ、後ほど解説する「悪意の遺棄」に該当する可能性もありますので、あらかじめ離婚問題に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。

離婚協議中に生活空間内で顔を合わせずに済む

離婚協議中において相手と同じ生活空間で過ごすことに精神的なストレスを感じるケースは少なくないことでしょう。

あらかじめ別居しておくことで、協議中に同じ家に帰るストレスから解放されます。

離婚に向けての真剣さが伝わる

離婚したいと相手に伝えても、相手が真剣に取り合ってくれない場合もあることでしょう。
この場合には、あらかじめ別居することで、相手に対して離婚への真剣さを伝えることが可能となります。

また、調停委員の立ち合いのもとで双方が離婚について話し合う「離婚調停」などへ移行した場合においては、調停委員に対しても離婚へ向けた真剣さが伝わりやすくなるでしょう。

DVなどの被害がある場合、被害から早期に逃れられる

DVなどの被害を受けている場合には、あらかじめ別居することで、早期に被害から逃れることが可能となります。
この場合には弁護士などと相談をしつつ、特に慎重に別居を進めるようにしましょう。

子どものストレスが軽減できる可能性がある

子どもは、家の中の雰囲気の変化を敏感に察することが少なくありません。
家の中で離婚について話し合ったり頻繁に夫婦喧嘩をしたりしていている環境は、子どもにとって決して心地よい環境ではないことでしょう。

早期に別居をすることで、子どものストレスが軽減される可能性があります。

先に別居をしてから離婚をする主なデメリット

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離婚に先立って別居をすることには、デメリットや注意点も存在します。
離婚成立前に別居をする際には、次の点に注意しましょう。

不貞行為の証拠が集めづらくなる

相手の不貞行為が原因で離婚を検討している場合、先に別居をしてしまうと、不貞行為についての証拠が集めづらくなる可能性があります。

不貞行為をした相手と同じ空間で生活をしたくないと考える場合もあるかと思いますが,少なくとも不貞の証拠だけはしっかりと押さえてから別居をした方がよいでしょう。

財産分与についての資料が集めづらくなる

財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で築いた財産を離婚に伴って分ける手続きです。
財産分与の割合は、たとえ外部からの収入を得ていたのが夫婦の一方のみで、もう一方が専業主婦(夫)などであったとしても、原則として2分の1ずつとなります。

しかし、財産分与として相手に渡す額をできるだけ少なくするために、財産を隠すなどの行為がなされる場合も少なくありません。
このような場合、先に別居してしまっていては、相手の財産の調査をすることが困難となります。

生活が厳しくなる可能性がある

これまで主に相手の収入で生活をしていた場合、別居をすることで生活が苦しくなる可能性があります。
後ほど解説するように、婚姻費用の支払いは受けられることが多いですが、相手が任意に支払ってくれるとは限らないうえ、調停・審判で請求をしようにも時間がかかってしまうでしょう。

「悪意の遺棄」にあたれば裁判で不利になるおそれがある

相手の生活を顧みず離婚成立前に一方的に家を出てしまうと、「悪意の遺棄」に該当する可能性がある点に注意が必要です。

悪意の遺棄に該当すると判断されれば、相手から慰謝料の請求がなされるリスクが生じます。

離婚前に別居が「悪意の遺棄」とされないための条件

離婚前の別居が「悪意の遺棄」に該当すると判断されると、相手から慰謝料請求をされる可能性がある点は、先ほどもお伝えしたとおりです。

では、別居が悪意の遺棄と判断されないためには、どのような点に注意すればよいのでしょうか?

別居に正当な理由があること

相手のDVから早期に逃れるためなど、別居に正当な理由があれば「悪意の遺棄」と判断される可能性は低いでしょう。

正当な理由かどうか迷う場合には、あらかじめ弁護士に相談するようにしましょう。

別居について相手の同意を得ておくこと

DVなどではない限り、離婚前に別居をする際には、相手の同意を得ておきましょう。
同意は、可能な限り書面で得ておくと安心です。

相手の同意を得ることで、一方的に家を出て相手を遺棄しているとの判断はされづらくなります。

家を出る側が主に収入を得ていた場合には婚姻費用や養育費を支払うこと

家を出る側が主に家族の生活費を稼いでいた場合には、別居後も婚姻費用(相手の生活費)や子どもの養育費をきちんと支払っておきましょう。

これらの支払いもないまま、収入のない配偶者や子どもを放置して家を出てしまうと、悪意の遺棄であると判断される可能性が高くなります。

相手が寝たきりなど一人で生活できない状況ではないこと

相手が寝たきりであったり認知症を患っていたりするなど、一人で生活をすることが困難である場合に、相手を放置して家を出てしまうと悪意の遺棄に該当する可能性があります。

それどころか、相手の病状などによっては保護責任者遺棄罪など刑法上の罪に問われる可能性もあるでしょう。

別居期間中の生活費や養育費は離婚前でも請求できる?

離婚が成立する前の別居期間中の生活費や子どもの養育費は、相手に対して請求することができるのでしょうか?

生活費(婚姻費用)

夫婦には相互扶助義務があり、相手に対して自分と同程度の生活を送らせる義務があります。
そのため、別居期間中の生活費(婚姻費用)の請求は、認められることが原則です。

ただし、婚姻費用を請求する側が不貞行為をしたなど、請求者側に別居原因がある場合には認められない可能性(婚姻費用の減額又は免除)があります。

養育費

離婚成立前の別居期間中であっても、原則として、養育費(子の監護に要する費用。離婚前は「婚姻費用」に含まれる。)の請求は認められます。

そもそも、養育費とは子どもの監護や教育にかかる費用を夫婦で負担しあう性質のものです。
子と一緒に暮らしている側の親のみが養育費の負担を負わずに済むよう、別居中や離婚後においても収入額に応じた負担が求められます。

なお、養育費を受け取ることは、子どもとしての正当な権利です。
離婚前の別居期間も、離婚が正式に成立した後も、相手が引き続き子どもの親であることに変わりはありません。

相手との話し合いを避けたいことや相手が任意には支払ってくれないであろうことなどを理由に養育費の請求をあきらめる場合も少なくありません。しかし今後、子どもが適切な監護や教育を受ける権利を守るためには、養育費は必ず請求して受け取るようにしましょう。

自分で話し合いをすることに不安がある場合には、弁護士に依頼した方がいいでしょう。

離婚前に別居したい場合にすべき準備

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離婚前に別居をしたいと考えた場合、勢いですぐに別居をしてしまうことはおすすめできません。
別居をする前に、次の準備を整えておきましょう。

住まいを探す

勢いで家を出てしまっても、すぐに条件に合った引っ越し先が見つかるとは限りません。
あらかじめ不動産屋などへ相談し、転居先の目途をつけておくとよいでしょう。

仕事を探す

これまで仕事をしていなかった場合や、これまでの仕事では別居後の生活スタイルに合わない場合などには、あらかじめ仕事を探しておきましょう。

ある程度の貯蓄がある場合には別居をしてから仕事を探すという手もありますが、探し始めてすぐに条件に合う仕事が見つかる保証はありません。
また、定期的な収入があることは精神衛生上もプラスとなりますので、できれば別居前に探しておくことをおすすめします。

ただし、DV被害などを受けている場合には、別居に先立ってじっくりと仕事を探している時間はないでしょう。
この場合には市役所などへ相談し、一時的に生活保護を受けることなども検討してください。

相手の財産を把握する

別居してしまってからでは、相手の財産を把握することは困難です。
離婚時の財産分与へ備えるため、別居をする前に相手の財産を可能な限り把握しておきましょう。

財産の把握方法がわからない場合には、弁護士へ相談してみましょう。

離婚原因についての証拠を固める

別居する前に、可能な限り離婚原因の証拠を固めておきましょう。
たとえば、離婚したい理由が相手の不貞行為であるのであれば、相手が不貞をしている証拠などです。

こちらも、どのような証拠が必要となるのかわからない場合には、あらかじめ弁護士へ相談することをおすすめします。

子の転校が必要なら転校の準備をする

別居に伴い子どもの転校が必要となる場合には、あらかじめ転校の準備を進めましょう。

なお、子どもにとって転校は非常に大きな出来事であり、相当なストレスがかかることが少なくありません。
そのため、可能な限り転校が不要な場所への転居を検討するとよいでしょう。

ただし、配偶者が子どもへ危害を加える可能性があるなど、あえて転校をさせた方がよい場合もあります。
一概に判断できるものではありませんので、弁護士や市役所、学校などとあらかじめよく相談することをおすすめします。

別居時に持ち出すものをリスト化する

慌てて家を出ると、持ち出し忘れてしまうものが生じる可能性があります。
別居に備えて、別居時に持ち出すものをあらかじめリスト化しておきましょう。

別居について相手の同意が得られる場合には、持ち出すものについてあらかじめ話し合っておくことをおすすめします。

まとめ

離婚前の別居にはメリットがある一方で、デメリットや注意点も少なくありません。
その場の勢いで別居を急いで不利な状況に陥ってしまわないために、離婚前に別居をする際には、あらかじめ弁護士へ相談しましょう。

Authense法律事務所には、離婚問題に詳しい弁護士が多数在籍しており、これまでの多くの事例を蓄積しております。
離婚や別居についてお困りの際には、ぜひAuthense法律事務所までお気軽にご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(神奈川県弁護士会)
神奈川県弁護士会所属。中央大学法学部法律学科卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了。離婚、相続を中心に家事事件を数多く取り扱う。交渉や調停、訴訟といった複数の選択肢から第三者的な目線でベストな解決への道筋を立てることを得意とし、子の連れ去りや面会交流が関わる複雑な離婚案件の解決など、豊富な取り扱い実績を有する。
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