コラム
公開 2021.02.09 更新 2021.10.04

妻から離婚・慰謝料を請求されたときの対処方法

結婚生活に問題を感じていなくても、ある日、突然妻から離婚を突きつけられ、同時に慰謝料も要求されるケースがあります。妻に慰謝料を払わないといけないのでしょうか?

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1.離婚に応じるどうかを判断する

妻から離婚や慰謝料を請求されたら、まずは離婚を受け入れるかどうかを検討しましょう。そもそも、離婚しなければ、慰謝料を払う必要は基本的にありません。

妻が離婚を望んでいても、夫が承諾しなければ協議離婚は成立しません。どうしても離婚したければ、妻は、まず離婚調停を申し立てる必要があります。調停でも離婚が成立しなければ、妻は離婚訴訟をして裁判所に離婚を認めてもらわねばなりません。
訴訟では「法律上の離婚原因」があれば離婚が認められますが、「法律上の離婚原因」がなければ離婚請求が棄却されます。

このように離婚の手続きは、ステップを踏んで進んで行くので、夫の立場としては、協議の段階で、離婚に応じるかどうか、よく考えましょう。

2.法律上の離婚原因と慰謝料

法律上の離婚原因と慰謝料

離婚訴訟において、離婚が認められるのは「法律上の離婚原因」がある場合のみです。以下で法律上の離婚原因と、その場合に慰謝料が発生するのか、みてみましょう。

不貞

夫が不貞していると、妻からの離婚請求が認められます。この場合、夫は、妻に対し、慰謝料を払わなければなりません。

悪意の遺棄

夫が十分な収入があるにもかかわらず、生活費を払わないまま、家出をしたりすると離婚請求が認められます。この場合にも、夫は慰謝料を払わなければなりません。

3年以上の生死不明

夫が3年以上生死不明な状態が続いていたら妻は裁判で離婚できます。

強度の精神病

夫が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合も、裁判で離婚できる可能性があります。この場合、夫が慰謝料を払う必要はありません。

その他婚姻関係を継続し難い重大な事由

上記に該当しなくても、長期間の別居やDVなどの事情があれば離婚が認められます。DVの場合には慰謝料を払わなければなりませんが、長期間別居し、離婚に至るケースでは、慰謝料を支払う必要はありません。

上記に該当しない「単なる性格の不一致」「思想や宗教観の相違」「相手の実家との不和」などは、基本的に離婚原因になりません。

3.慰謝料が発生するケースについて

離婚する際、すべてのケースで慰謝料が発生するのではなく、離婚の慰謝料が発生するのは、配偶者のどちらかに「有責性」がある場合に限定されます。
有責性とは、婚姻関係を破綻させた責任です。たとえば、以下のような場合に有責性が認められます。

  • ・不倫した
  • ・暴力を振るった
  • ・モラハラ行為を行った
  • ・「悪意の遺棄」を行った

妻が不倫したケースでは、夫は妻に対し慰謝料を請求できます。
また、性格の不一致などの事情で離婚する場合、どちらにも有責性がないので、互いに慰謝料を請求できません。夫に有責性がないのに、妻が「慰謝料を払ってほしい」と要求してきても、受け入れる必要はありません。

4.慰謝料の金額について

慰謝料の金額について

慰謝料を払う場合や請求する場合、金額も取り決めねばなりません。慰謝料の相場としては、だいたい50~300万円程度となるケースが多数です。婚姻期間が長い場合、有責性の程度が大きい場合などに、慰謝料が増額されます。
具体的な金額は、ケースによって大きく異なるので、適正な金額を知りたい場合には、弁護士に相談してみましょう。

5.慰謝料以外に取り決めておくべきこと

離婚するなら、慰謝料以外に以下のような事項についても、検討して取り決めをしましょう。

5-1.財産分与について

財産分与とは、夫婦が婚姻中に形成した資産を離婚時に分け合うことです。慰謝料とは異なり、お互いに有責性がなくても財産分与を行います。

財産分与の対象になるのは、以下のような財産です。

  • ・預貯金
  • ・保険
  • ・株式、投資信託、債券
  • ・不動産
  • ・車
  • ・退職金

退職金については、退職金を受け取る時期によって対象にならない可能性があります。退職までの期間が、10年以上ある場合には、財産分与が認められにくくなる傾向にあります。

5-2.親権について

親権について、協議離婚でまとまらなかった場合、調停や訴訟で争うことになりますが、男性が親権を主張しても、獲得することは、厳しい傾向があります。親権を取得したい場合は、早めに弁護士に相談しましょう。

6.公正証書の作成について

離婚する場合は、離婚条件を書面にまとめることをおすすめします。離婚条件についてまとめた書面を「離婚協議書」といいます。
離婚協議書を公正証書にすると、仮に、養育費や財産分与、慰謝料などの支払いがなされなかったときに、権利者は、裁判所を通じて、すぐに「強制執行(差押え)」ができるようになります。
そのため、夫が妻に養育費や慰謝料などを支払う約束をするときに、公正証書を作成すると、支払いをしなければ、給料や預貯金を差し押さえられるリスクが発生します。

一方で、離婚公正証書を作成しておくと、離婚条件を明確にでき、改ざんも防げるため、のちのトラブルを避けることができるというメリットもあります。

まとめ

妻から離婚や慰謝料を請求されても、応じる必要がないケースもあります。また、離婚するとしても、慰謝料のほか、財産分与、親権などの離婚条件について、検討していかなければなりません。離婚の話し合いの進め方について、分からないことがあれば、弁護士までご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
早稲田大学法学部卒業(3年次卒業)、東京大学大学院法学政治学研究科修了。離婚、相続問題を中心に、一般民事事件や刑事事件など幅広く取り扱う。
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