最近「夫源病(ふげんびょう)」という言葉を耳にする機会が増えており、聞いたことのある方もいらっしゃるでしょう。
夫源病とは「夫が近くにいると具合が悪くなる」症状です。正式な「病気」ではありませんが、医師が多くの患者にみられることに気づき名付けました。
反対に「妻が近くにいると具合が悪くなる」「妻源病(さいげんびょう)」もあるといわれています。
「夫源病」や「妻源病」になったとき、離婚は可能なのでしょうか?
今回は、夫源病や妻源病の典型的な症状や配偶者を夫源病・妻源病にしてしまいやすい人の行動パターンなどをご紹介し、夫源病が離婚原因になるか考えてみましょう。
目次
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1.夫源病とは
夫源病とは、夫が近くにいるときに妻に現れるさまざまな症状です。
日中、家などにおいて一人で過ごしているときには何の症状もないのに、夫が帰宅したときや休日夫が家にいるときに以下のような症状が現れます。
- ・頭痛
- ・動悸、息切れ
- ・腹痛
- ・めまい
- ・食欲不振
- ・不眠
- ・不安になる
- ・憂うつな気分になる
夫源病は、医学的な診断名ではありません。大阪大学人間科学研究科未来共創センターの「石蔵文信」というドクターが患者に向き合う中で「夫が帰宅すると具合が悪くなる女性」が多いことに気づき、つけた名称です。
「病気」ではありませんが、ドクターが患者をみるなかで気づいた典型的な症状なので、実際に夫源病に苦しむ女性はたくさんいるものと考えられます。
特に夫源病の症状が出やすいのは、中高年の夫婦です。50代~60代にかけて夫が更年期にさしかかり、体力が低下して以前のように身体を動かせなくなったり仕事でストレスを抱えたりして家庭内で身勝手な行動をとり始めます。中には女性関係で遊び始めたり自分のためにだけ散財して家族には一切お金を渡さなかったりする人もいます。
夫源病となって耐えられなくなった妻が、夫の定年退職と同時に離婚を突きつける事例も少なくありません。
2.妻源病について
夫が近くにいると妻に症状が現れるのが「夫源病」ですが、反対に「妻源病」はあるのでしょうか?
こちらも同じように最近増えているといわれており、テレビなどでも取り上げられて話題になっています。ただし妻源病も正式な医学的な「病気」ではなくあくまで一般的な呼称です。
妻源病になると、夫は妻が近くにいるときに具合が悪くなり、以下のような症状が出ます。
- ・めまい
- ・動悸、息切れ
- ・頭痛
- ・不眠
- ・性欲減退
- ・うつ状態
3.配偶者を夫源病にしやすい夫のパターン
妻を夫源病にしてしまいやすい夫には以下のような特徴があります。
- ・妻に暴言を浴びせる
- ・家事育児に非協力的、理解がない
- ・お金に細かい、生活費を渡さない
- ・自分のためにだけ散在する
- ・妻を下に見る、支配しようとする
- ・妻を束縛する
妻が、きまじめな性格でストレスを発散するのが苦手な場合や周囲に相談できる環境がない場合、妻に経済力がない場合などは特に、夫源病の症状が悪化しやすい傾向があります。
4.配偶者を妻源病にしやすい妻のパターン
夫を妻源病にしてしまいやすい妻には以下のような特徴があります。
- ・常に自分が正しいと考えている
- ・子どもに夫の悪口を吹き込む
- ・常に夫の行動を監視する
- ・友人や親戚の夫と比較して自分の夫を貶める
- ・夫の収入が少ないと文句を言う
- ・問題が起きたらすべて夫のせいにして責める
5.夫源病、妻源病で離婚できるのか
では夫源病や妻源病にかかったとき、離婚できるのでしょうか?
5-1.協議離婚、調停離婚なら可能
日本で離婚する方法は、大きく分けて以下の3つです。
協議離婚
夫婦で話し合いをして離婚に合意し、離婚届を提出して離婚を成立させる方法です。
調停離婚
家庭裁判所の「離婚調停」を利用して夫婦が話し合い、離婚を成立させる方法です。調停委員に間に入ってもらい離婚の条件などを取り決め、合意できたら調停離婚が成立します。
裁判離婚
離婚訴訟を起こして裁判所に離婚を認めてもらう離婚方法です。「法律上の離婚理由」がないと判決で離婚を認めてもらうことはできません。
上記のうち「協議離婚」や「調停離婚」であれば離婚理由はどのようなものであっても問題はなく、「夫源病」や「妻源病」が原因でも離婚ができます。ただし協議離婚や調停離婚では「夫婦の双方が離婚に納得していること」が必要条件となります。夫源病の妻や妻源病の夫が「離婚したい」と希望しても、相手が合意しなければ離婚は成立しません。
5-2.離婚訴訟では法律上の離婚原因にはならないことも多い
夫源病や妻源病は「法律上の離婚原因」となって訴訟で離婚を認めてもらえるのでしょうか?
訴訟で離婚が認められるのに必要な「法律上の離婚原因」は以下の5つです。
- ・不貞
- ・悪意の遺棄
- ・3年以上の生死不明
- ・回復しがたい精神病
- ・その他婚姻関係を継続し難い重大な事由
「配偶者が近くにいると具合が悪くなる」という「夫源病」や「妻源病」は、基本的に法律上の離婚原因になりません。
6.夫源病、妻源病でも裁判で離婚できるケース
以下のような状況であれば夫源病や妻源病が理由でも法律上の離婚原因が認められる可能性があります。
6-1.夫や妻が不倫している
配偶者の「不貞」は法律上の離婚理由になります。夫や妻が別の異性と不倫して「肉体関係」をもっていたら不貞を理由に離婚が認められます。
6-2.夫や妻が生活費を渡さず、生活を支えない
専業主婦なのに夫が生活費を渡さず、生活の面倒を見ないような場合には「悪意の遺棄」が成立して法律上の離婚原因が認められる可能性があります。
6-3.夫や妻から暴力を振るわれている
暴力は相手の人格を否定する違法行為であり、夫婦関係を破綻させるものです。相手からDVを受けている場合には離婚原因として認められます。
6-4.夫や妻からのモラハラ
相手から常に暴言を吐かれる、異常なまでの束縛を受ける、蔑まれるなどのモラハラのケースでも「婚姻関係を継続し難い重大な事由」が認められ法律上の離婚原因となります。
6-5.長期間の別居が継続している
夫源病、妻源病が理由で夫婦仲が悪化し別居して長期間が経過していれば、「婚姻関係を継続し難い重大な事由」が認められて裁判離婚できる可能性があります。
6-6.夫婦仲が極度に悪化してお互いに修復する意思がない
夫源病、妻源病が原因で夫婦仲が悪化しほとんどコミュニケーションもとっておらず、お互いに夫婦としてやり直す意思を失っていたら離婚が認められる可能性があります。
7.夫源病、妻源病の方が有利な条件で離婚するために
夫源病・妻源病を理由に離婚するのは、相手が離婚を拒絶する可能性が高く簡単ではありません。また中高年の夫婦の場合には財産分与も高額になるでしょうし、子どもの親権問題も起こるケースがあります。
自分一人で相手と交渉すると不利になる可能性が高くなるので、行動を起こす前に弁護士に相談するようおすすめします。相手が離婚を拒絶していても、弁護士が代理で交渉をすれば離婚を了承してもらい、協議離婚ができるケースは少なくありません。
また弁護士から法的観点を交えたアドバイスを受けて離婚交渉を進めると、一人で対応するより財産分与や慰謝料、親権などの離婚条件において有利に進められます。離婚調停でも弁護士がついている方が有利に進めやすいものです。
当事務所では夫源病や妻源病に悩む方からのご相談もお受けしていますので、お困りの方はぜひ一度、お気軽にご相談ください。
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