コラム
公開 2020.06.18 更新 2023.07.21

不倫相手から慰謝料請求されたときの支払い義務

不倫相手から慰謝料を請求されたら、支払わなければならないのでしょうか?

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1.「不倫した」だけでは不倫相手は慰謝料請求できない

不倫関係がうまくいっているときはよくても、関係がこじれてくるとさまざまな問題が発生します。
たとえば不倫相手と「将来は結婚しよう」などと言い合っていても実現しないケースが多いでしょう。不倫相手から「慰謝料を払わないなら奧さんに言います」などと脅されて困ってしまう方もたくさんおられます。
相手から慰謝料を求められたら払わないといけないのでしょうか?

多くの場合、不倫相手から慰謝料請求されても支払う義務はありません。不倫は確かに違法行為ですが、それは「配偶者に対する違法行為」であり「不倫相手に向けての違法行為」ではないからです。不倫(法律上は「不貞」といいます)は配偶者に対する重大な裏切り行為なので、不倫したら被害者である配偶者には慰謝料を払わねばなりません。
一方で、不倫相手は共同で不法行為を行った加害者側の立場です。不倫によって精神的苦痛を受けた被害者とは違うので、慰謝料を払う必要はありません。

不倫相手から慰謝料請求されても、拒絶できるケースが多数です。

2.不倫相手からの慰謝料請求が認められるケース

ただし以下のような場合では、不倫相手からの慰謝料請求が認められる可能性があります。

2-1.相手に「未婚」と告げてだましていた

既婚男性が婚活アプリや結婚相談所などを使って未婚女性と知り合い、「独身です」などと偽って結婚を前提に交際するケースがあります。
この場合、相手はあなたが未婚と信じているのであり「不倫」している認識がありません。また「結婚できる」と信じて性関係をもっていますが、真実を知っていれば性関係にはならなかったといえるので「貞操権」を侵害されたと評価されます。貞操権とは「性的な自由を決定する権利」です。
「未婚です」などと言って相手を騙して交際していると、相手から「貞操権侵害」を理由に慰謝料請求される可能性があり、請求されたら30~100万円程度の慰謝料を払わねばならないでしょう。

2-2.相手に性行為を強要した

自分では不倫のつもりであっても、相手に性行為を強要した場合には不法行為が成立します。「強要」は、暴行脅迫をして強姦(強制性交)した場合に限りません。
たとえば会社の上下関係や大学の教授とゼミ生などの立場を利用して相手に圧力をかけ、半ば無理矢理に性行為をした場合にも、あなたから相手に対する不法行為が成立する可能性があります。
あなたが「正常な男女交際である」と主張しても通らず、慰謝料請求をされるでしょうし、請求されたら支払いに応じなければなりません。

2-3.相手が妊娠したとき、不誠実な態度をとった

不倫相手が妊娠した場合にも要注意です。
相手が避妊を望んでいるのにあなたの方が応じず、無理に避妊せずに性行為に及んでいた場合には慰謝料支払い義務が発生する可能性があります。

また相手の妊娠が発覚したときに不誠実な態度を取った場合にも不法行為と評価されやすいです。たとえば以下のような言動があった場合です。

  • ・妊娠したことを知ったとたんに音信不通
  • ・相手に暴力を振るったり暴言をはいたり脅したりして無理に中絶させた

不倫相手が妊娠したときには、不法行為と評価されるような行動をとらないよう慎重な対応を要求されます。

3.不倫相手からの慰謝料請求を拒絶できるケース

以下のような場合には不倫相手からの慰謝料請求を拒絶できます。

3-1.関係がこじれて別れ話が出た

不倫関係がうまくいかなくなって別れ話が出ると、相手から「無駄になった時間を返してほしい」「あなたに騙されたようなものだ」などと言われて慰謝料請求されるケースがあります。しかし不倫相手もあなたが既婚であることを知っていた以上「お互い様」であり、相手に慰謝料を払う必要はありません。

3-2.「慰謝料を払わないと奧さんに告げる」と脅されている

不倫関係がこじれると、「慰謝料を払ってほしい。払わないなら不倫していたことを奧さんに告げる」と脅されるケースがあります。しかしこのような脅しに屈する必要はありません。不倫相手に慰謝料を払う義務はありませんし、脅迫は違法行為です。
相手による悪質な脅迫が続くようであれば、やめさせる必要があります。このような場合には、早期に弁護士に相談することをおすすめします。

3-3.「結婚の約束をしていたのにできなくなった、だまされた」と言われた

「将来妻と別れて結婚しよう」などと言い合っていた場合、結局妻との離婚が成立しなかったら不倫相手が怒って「騙された、慰謝料を払ってほしい」と言ってくるケースがあります。
しかし「未婚」と言って騙していた事情がないなら、貞操権侵害にはなりません。相手はあなたを既婚と知り、自ら希望して不倫関係となっているからです。「将来妻と別れて不倫相手と結婚する」という不法な契約に拘束力はないので婚約破棄にもなりません。
慰謝料請求をされても拒絶しましょう。

4.不倫相手から慰謝料請求された場合の対処方法

不倫相手から慰謝料請求されたら、以下のように対応しましょう。

4-1.支払い義務があるかどうかを見極める

まずは法的に慰謝料の支払い義務があるのかどうか、確認が必要です。不倫相手から慰謝料請求されたとき、応じる必要のあるケースは少数です。多くの場合には断れるので法律の専門家の意見も聞いて態度を決定しましょう。

4-2.支払い義務がない場合

検討の結果、慰謝料支払い義務がないと判断されるなら、はっきり相手に「慰謝料は支払えない」と伝えましょう。あいまいな態度をとると相手が嫌がらせをし始めたりしつこく連絡してきたりと、トラブルが拡大するおそれがあります。
「なぜ慰謝料が発生しないのか」を説明するとともに「慰謝料を支払うつもりは一切ない」とはっきり伝えて納得させましょう。

4-3.支払い義務がある場合

貞操権侵害や妊娠中絶、性行為の強要などで慰謝料の支払い義務がある場合には、慰謝料の金額や支払い方法について定めなければなりません。

慰謝料を払うとしても「いくら支払うべきか」はケースによって大きく異なります。相手に対する不法行為の内容だけではなく、あなたの社会的地位、収入や立場、相手の年齢や過失の程度によっても慰謝料の金額が変わります。
相手が過大な支払いを求めているなら減額させるべきです。ご自身で交渉されると不利になる可能性も高まりますし、交渉が長引くと配偶者にトラブルを知られるおそれもあります。相手との慰謝料交渉は、早めに弁護士に任せるようおすすめします。

当事務所では不倫をはじめとした男女トラブルの解決へ力を入れております。不倫相手との関係がこじれて慰謝料請求を受けているなら、お早めにご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
京都大学総合人間学部卒業、立教大学大学院法務研究科修了。一般民事(主に離婚事件)に関する解決実績を数多く有する。また、企業法務についても幅広い業務実績を持つ。
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