コラム
公開 2019.06.13 更新 2021.10.04

教えて!離婚の慰謝料の相場はどれくらい?

離婚をする際に、自分が傷ついた分の慰謝料を相手に請求したいと考える方もいるでしょう。しかし、実際にどれくらいの慰謝料の金額を請求すべきか、金額の設定について大いに迷うところです。
あまりにも高額の慰謝料だと、周囲に「お金目当て」と思われるかもしれないと心配になります。一方で、低額の慰謝料だと、「自分の傷はこのようなものではない」と、慰謝料を受領しても癒されないかもしれません。ちょうどいい塩梅の金額、つまり、「慰謝料の相場」はどれくらいの金額なのか、事前に把握をしておけば安心です。
そこで今回は、慰謝料の相場について、慰謝料の請求の原因ごとに分けてご説明し、慰謝料の金額の判断要素なるポイントにも触れて解説します。

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離婚の慰謝料請求は必ず認められるものではない

まず、前提として、離婚の慰謝料請求は、離婚に伴って当然に認められるものではありません。
以下の3つの要件が必要となります。

  • ・相手方に不法行為がある
    故意または過失によって不法な行為がなされたことが必要となります。
    具体的には、不貞行為(浮気や不倫)、暴力、生活費の不払いなどの夫婦の協力・扶助義務違反などが該当します。
  • ・損害がある
    損害は以下の2つに分けることができますが、実務では区別せずに請求されることがあります。
    離婚原因となる事実により、精神的・肉体的に傷つき損害が認められる
    離婚原因によって離婚することで、精神的・肉体的に傷つき損害が認められる
  • ・不法行為により損害が発生したという関係性がある

これらの3つの要件があって、初めて「不法行為による損害賠償」請求として、慰謝料請求が認められるのです。

離婚の慰謝料請求の相場とは?

それでは、実際に離婚の慰謝料を請求する場合に、慰謝料が認められる相場はどれくらいの金額なのでしょうか。

・慰謝料の金額は個別事情により異なる

離婚慰謝料の金額の算定につき難しいところは、夫婦それぞれの背景が異なるということです。
離婚原因はもちろんのこと、これまでの結婚生活の実情など、様々な要素が全く同じというケースはありません。同じ離婚原因でも、慰謝料の金額が異なるのはそのためです。
また、慰謝料は損害を償い慰めるためのものです。特に精神的な損害は、同じ事実であっても個人により傷つく度合いは変わります。そのため、損害をお金に換算することも、証拠を確認しながら、様々な事情より裁判官が推測するしかありません。よって、慰謝料の金額は一概に定まらず、個別事情により異なるのです。

ただ、一般的に、これまでの判例の傾向では、離婚の慰謝料の金額は平均200万円前後といわれています。平均ですから、実際は特別な事情がない限り、50万円~300万円のゾーンで変わるようです。また、これらの慰謝料の相場の金額も、離婚原因により変わってきます。

・不貞行為

一般的に不貞行為とは、浮気や不倫など、配偶者以外の異性と自由意思で肉体関係を持った場合をいいます。これまでの判例からみれば、不貞行為に対する慰謝料は、大体300万円前後といわれています。ただ、同じ不貞行為でも相手側の有責性で慰謝料の金額は異なります(後述します)。
例えば、妻が不貞行為を行ったケースでは、夫も風俗店などで不特定多数との肉体関係があることが考慮され、慰謝料が150万円と認められたケースがあります(東京地裁平成25年3月22日)。

・暴力

暴力に対する慰謝料では、暴力の頻度や内容、傷害の程度で金額が異なります。重い傷害であれば、慰謝料の金額は200万円~300万円が相場だといわれています。
ただ、暴力の場合も同様に様々な事情が考慮されます。例えば、日頃から夫が些細なことで、殴る蹴るの重い暴力をふるっていた場合には、慰謝料が400万円と認められたケースがあります(横浜地裁平成9年4月14日)。

・悪意の遺棄

悪意の遺棄とは、正当な理由がないにもかかわらず、同居しない、生活費を渡さないなど、夫婦の同居義務、協力義務、扶助義務に反する行為を行うことです。
悪意の遺棄に関しては、平均して200万円前後といわれています。悪意の遺棄として認められる場合には、倫理的な非難を受けて当然といった行為が認定されるようです。

離婚の慰謝料請求の判断ポイントとは?

これまで離婚の慰謝料についてご説明してきましたが、相場は大体50万円~300万円の間で判断されるようです。しかし、夫婦の個別事情を考慮した結果、特別な事情があれば、慰謝料の金額が高額になる場合も、はたまた慰謝料を認めないという場合もあります。

人間の心情からすれば、離婚の慰謝料を請求するからには、やはり、少しでも多くの金額を認めてほしいと思うものです。それでは、実際に、どのような事柄が慰謝料の金額の判断ポイントとなるのでしょうか。様々な要素がありますが、中でも大きく関係するのが以下の3つの事項です。

ここでは、この3つの事項を中心にご説明します。

・離婚原因についての責任の度合い

離婚原因となる事実につき、慰謝料を請求された側に責められるべき事情があるかどうか、その度合いが判断のポイントとなります。
例えば、離婚原因が夫の不貞行為(浮気や不倫)だとします。もちろん、不貞行為を行った側は責められるべき事情があります。ただ、妻側の事情いかんでは、その責任の度合いが変わってくることもあるのです。
具体的には、妻が家庭生活に何の不満もなく、家事をしながら子育てを行い、夫にも愛情を示した行動を行っていた場合ではどうでしょう。妻には落ち度はなく夫の責任の度合いは非常に大きいといえるでしょう。
逆に、妻が家庭生活に不満を持ち続け、夜中でも男友達と出歩き、夫に対して関心がないなどの事情があったとすれば、妻の方にも家庭生活を破綻させた責任が少しはあると認定される可能性があります。このように、離婚原因についての責任の度合いで、過失が相殺され、認められる慰謝料の金額も異なることになります。

・婚姻期間の長さ

これまでの判例から、婚姻期間が長いほど、慰謝料請求の金額は高くなるようです。婚姻期間が1年の場合と、30年、40年の長期間の場合とでは、離婚により失うものの大きさが変わってきます。このような事情を考慮して、慰謝料の金額も判断されます。

・相手の経済状況

慰謝料を請求された側の経済状況も、慰謝料の金額に関わってきます。というのも、全く支払い能力がないにもかかわらず、裁判所が高額の慰謝料の支払いを認めても、現実的とはいえないからです。離婚原因を作った相手の資力が十分な場合や、社会的地位が高いなどの事情があれば、比較的、慰謝料の金額が高くなるようです。
一方で、慰謝料を受け取る側に、経済力がない場合も、慰謝料の金額は高くなるといえます。

・考慮すべきその他の事情

上記の3つの事項以外にも、慰謝料の金額を確定する上で、考慮される事情はあります。
例えば、以下のような事情です。

  • ・未成年の子どもがいるかどうか
  • ・精神的苦痛や肉体的苦痛の大きさ
  • ・財産分与の状況など

特に、慰謝料と財産分与の関係は重要です。財産分与とは、結婚生活において夫婦で協力して得た財産を、離婚時に分割するというものです。
基本的に分割の割合は夫、妻、それぞれ平等に1/2となる場合が多いですが、慰謝料の意味も込めて、多めに財産を分割する場合も見受けられます。
例えば財産分与を1/2ではなく、2/3の割合で多めに分割がなされ、財産分与に慰謝料の意味合いも含まれていると両者が認識している場合などは、この事実が考慮されます。つまり、このようなケースにおいて、別途、慰謝料請求を認めると、結果的には慰謝料の二重取りとなってしまいます。そのため、財産分与の状況も踏まえて判断され、慰謝料請求を認めるか、認めるにしてもどれくらいの金額かを最終的に決定します。

また、不貞行為の慰謝料の場合は、不貞行為の相手方に請求してその慰謝料が認められている場合は、配偶者への慰謝料は認められないでしょう。これも同じく、慰謝料の二重取りとなるからです。このように、離婚慰謝料の金額は、様々な要素を考慮して決められるといえます。

まとめ

離婚の慰謝料の金額は、相手と直接交渉して合意に至れば、相場など関係なく、両者が合意した金額で確定となります。一方、裁判で慰謝料の金額が判断される場合は、何より証拠が重要となります。いかに事実があったとしても、裁判官が証拠により、その事実があったと認めない限り、慰謝料の請求を認めてもらうのは難しくなるでしょう。
そのため、法律の専門家である弁護士に早期にご相談されることをお勧めします。特に、離婚の慰謝料を請求する前、もっといえば、離婚を考えていてまだ何も行動に移していない状態が、望ましいといえます。この状態であれば、相手が警戒しておらず、一番証拠を確保しやすいからです。早期の相談、事前準備を十分に行うことこそ、慰謝料を確実に勝ち取る一歩といえるのではないのでしょうか。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
京都大学総合人間学部卒業、立教大学大学院法務研究科修了。一般民事(主に離婚事件)に関する解決実績を数多く有する。また、企業法務についても幅広い業務実績を持つ。
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