コラム
公開 2019.04.23 更新 2021.10.04

離婚をして、確実に子どもの養育費をもらう方法とは

厚生労働省の「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果」によれば、離婚した父親からの養育費の平均月額(養育費の額が決まっている世帯)は 43,707円、離婚した母親からの養育費の平均月額(同)は 32,550 円と発表されています。

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養育費は離婚後の子どもの生活費として重要

養育費とは、子どもの生活にかかるお金(生活費)全般を指します。一般的に衣食住に必要な費用、教育費や医療費、子どもの娯楽費などが含まれます。
この養育費は、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」(民法877条1項)を根拠に、親が支払うべきお金といえます。離婚しても変わらずに、親は扶養義務を負い、養育費を支払わねばならないのです。
なお、親権や・監護権を得ておらず、子どもと同居していなくても、親である以上、子どもの生活費である養育費を支払う必要があります。

離婚後に子どもの養育費を確実に支払ってもらう3つの方法

確実に養育費の支払いを受ける上で、難しいところは、相手と同居していない点です。別居している以上、相手から直接、養育費をもらえる場合は少ないでしょう。相手の誠意ある態度を前提に、毎月の振り込みなどで、養育費をもらうわけです。ただ、現実には、養育費の支払いが滞る可能性もあります。ここでは、確実に養育費をもらうための3つの方法を解説します。

・養育費の取り決めの内容を具体的に詰めておく

まず、1つ目の方法は、養育費の取り決めの際に、予め様々な事態を予測して決めておくということです。

Aさんの場合、相手が養育費を支払ってくれないので、催促の電話をしたところ、使われていない番号とのこと。住所も転居したせいで分からず、仕事も転職し、居所がつかめない状態です。連絡の取りようがなく、困っている状況です。

このようなケースでは、誰にどこに養育費の支払いの催促をしていいか途方に暮れることとなります。
まずは、養育費の取り決めの段階で、確実な情報を把握する仕組みを構築することです。
仮に電話番号の変更、転職、転居など、状況に変化があった場合は、こちらに知らせるなどの取り決めを事前に行い、確実に共有できる仕組みを作っておくべきです。
また、相手の親、兄弟、友人など、確実に連絡が取れる相手を把握することも重要です。いざとなれば、どのような伝手を使っても、相手と連絡を取る手段の確保を優先的に決めておきましょう。
さらに、支払いが滞った場合の対処法なども、予め決めておくとスムーズです。

・「強制執行認諾付き文言」の公正証書を作成する

次に2つ目の方法は、支払いが滞った場合に備えて準備をしておくということです。

Bさんの場合、相手の養育費の支払いが滞ったため、学費の期限もあり、強制的に裁判所に給与を差し押さえてもらおうと、強制執行の申し立てを行いました。しかし、養育費の取り決めの文書に信頼性がないと相手が争ったため、手続きが長引き、未だに学費が足りず、親戚からお金を借りて厳しい生活を余儀なくされています。

相手に催促しても支払ってもらえない場合には、実際に相手の給与などを差し押さえ、そこから強制的に支払いを受けることのできる強制執行を行うことになります。
しかし、Bさんのケースのように、強制執行に手間取れば、結果的に支払い期限のある学費などが納入できなくなる恐れもあるといえます。
そのため、確実に強制執行できるように、養育費の取り決めを文書にする場合は、信頼性の高い公正証書を作成することをお勧めします。さらに予め強制執行を承諾する強制執行認諾文言付の公正証書にしておけば安心です。養育費の支払いがなされない場合は、裁判をせずとも、この公正証書により、すぐに強制執行が可能となります。

・連帯保証人をつけてもらう

実際に、支払いが滞れば、子どもの生活に多大な影響が出ます。そういう意味でも、支払いが滞れば、他の人が代わりに払ってくるシステムがあれば、心強いでしょう。それが3つ目の方法になります。

Cさんの場合、相手が働いておらず、差し押さえる給与もありません。養育費を支払ってほしくても、実質的に、相手に支払いの能力がなければ、泣き寝入りするしかないのでしょうか。

養育費という言葉は、極端な言い方をすれば、債務を負っていることになります。
養育費の取り決めで、「毎月○○円支払う」との内容は、ローンと同じように一定期日に一定金額を支払う約束を交わしているのです。
そこで、養育費の債務につき、祖父母や兄弟を連帯保証人にするという方法があります。
いざ相手が支払わない場合は、相手の養育費の債務を保証しているという名目で、養育費の金額を請求することができます。
ただ、連帯保証人となるには、保証債務を負う人が同意しなければなりません。その意味で、現実的に難しいハードルといえるかもしれません。説得の際に、相手に協力してもらう必要もあり、注意が必要です。

子どもの養育費を請求する相手は元夫だけではない?

相手が養育費を支払う能力がないなどの事情で、現実的に養育費をもらえない場合はどうすればいいのでしょうか。連帯保証人などもいないような場合、養育費をもらう手立てはないのでしょうか。

・父方の祖父母に扶養義務はある?

じつは民法には、扶養義務についての別の規定があるのです。
「家庭裁判所は、特別の事情があるときは…三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる」(民法887条2項)
祖父母は孫からみて二親等内の親族といえます。つまり、特別な事情があるときは、相手の祖父母も孫に対する扶養義務があるといえます。

ただ、注意すべきは、扶養義務の程度です。
夫婦間や親子間では、自分と同じ水準の生活を保障するという生活保持義務と解されています。しかし、それ以外の親族間での扶養義務は、自分の生活を犠牲にしない限度で、被扶養者の最低限の生活扶助を行う生活扶助義務と解されています。
つまり、扶養義務はあるものの、自分の生活が最優先で、それでも余裕がある場合などには、扶養請求が認められる可能性があります。

・扶養請求調停を利用する

実際に請求する手続きとしては、家庭裁判所の「扶養料の支払いを求める調停や審判」の申し立てを行い、話し合いを進めていきます。この場合、親は、扶養権利者(子ども)の法定代理人として申し立てを行うことになります。
調停の流れとしては、調停委員が当事者双方から事情や希望を聴取します。
実際の扶養義務者(祖父母など)の経済状況や生活状況、現在同居している親の経済状況や、その他考慮しなければならない一切の事情を把握していきます。
最終的には、調停委員会から双方に助言や解決案を提示し、合意に至れば、その内容で調停が成立します。
他方、合意に至らない場合は、自動的に審判が開始され、裁判官が決することになります。

ただ、調停や審判は最終段階です。やはり穏便にことを進めるためには、まずは、相手の祖父母と、子どもを育てる環境について、話し合いを持つことが優先です。
話し合いにおいては、包み隠さず、現在の状況を落ち着いて話すことを心がけることをお勧めします。
ポイントは感情的にならないことです。相手を責めても解決にはなりません。いかに現在の状況が辛くて苦しいのか、これまでの経緯も含めて、事実を整理しながら伝えましょう。
例えば、「約束通りに支払われていない」「転居していて連絡先が分からず相手に催促できない」「相手が調停に欠席して請求できない」「生活費に困窮していて食事もままならない」など、今の状況を相手に分かってもらうことが必要です。
そして、以下のことを確認します。

  • ・養育費の金額を代わりに扶養料として支払いが可能か
  • ・一部の支払いが可能であれば、どれくらいの金額か

祖父母の生活状況や資力も考慮して、両者で話し合い進め、合意に至れば、公正証書にて書類を作成して実行に移します。

まとめ

養育費を確実にもらうためには、まずは、相手との関係を友好的に保つことが重要だといえます。
離婚原因によっては、相手との関係を維持することが難しいかもしれませんが、養育費は、自分の子どものためのものです。
状況の許す限りにおいてですが、日頃から子どもとの面会交流を行うなど、子どもとの繋がりを大事にしていれば、相手も支払う気持ちが強くなるかもしれません。
そうはいっても、すんなりと支払ってもらえないこともあるでしょう。養育費を支払ってもらえずに困ったときには、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
京都大学総合人間学部卒業、立教大学大学院法務研究科修了。一般民事(主に離婚事件)に関する解決実績を数多く有する。また、企業法務についても幅広い業務実績を持つ。
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