離婚の際の条件や親権の問題などをクリアし、いざ離婚となった時に必要となるのが離婚届の提出です。離婚に至る道筋は協議離婚、調停離婚、そして裁判離婚と夫婦によって異なりますが、離婚届は必ず提出しなければなりません。
この記事では、離婚届の入手方法から書き方、そして提出方法について具体的に説明していきます。
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離婚届の入手方法とタイミング
離婚届は婚姻届と同様に、市区町村役所の戸籍を扱っている係で入手することができます。婚姻届は全国どこでも同じフォーマットですので、自分が住んでいる市区町村役所で受け取ったものでなくても大丈夫です。
また、最近では市区町村役所のホームページで離婚届のPDFファイルが公開されているところもあり、ダウンロードができますので、それを印刷すれば市区町村役場まで足を運ぶ必要はありません。ただし、離婚届はA3サイズでないと受理されませんので、印刷用紙は必ずA3を選択しましょう。
離婚届を出すタイミング
離婚届の入手自体はいつでもできますが、実際に提出するタイミングはいつでもいいわけではありません。少なくとも下記の条件が整っていないことには、離婚届は受理されない、もしくは提出時には受理されたとしても法的には無効となります。
離婚の合意が得られている
裁判離婚の場合を除き、夫婦のどちらか一方が離婚に合意していなければ、離婚は成立しません。
例えば、夫は離婚を強く望んでいるけれども妻は離婚に反対している場合、夫が勝手に離婚届を記入して提出してしまうようなケースがあります。こういった場合、妻が事前に「離婚届不受理申出」を提出していれば、そもそも離婚届は受理されませんし、もし受理されたとしても裁判で妻に離婚の意思がないことが証明されれば、その離婚は無効となります。
子どもの親権者が決まっている
離婚届には、未成年の子どもがいる場合、その子どもの親権をどちらが持つかを記入する欄があります。この項目が空白ですと当然離婚届は受理されませんので、事前に決めておく必要があります。
また上記の他にも、離婚届が受理されるために必須ではありませんが、財産分与や慰謝料の請求なども、離婚届を提出する前にしっかりと決めておくことが大切です。
子どもがいる場合には、養育費や面会交流などの条件も事前に話し合って決めておきましょう。
離婚届の書き方
離婚届は、あらかじめ間違いなく記載したうえで、役所へ持っていきましょう。
記載例とそれぞれの項目の書き方は、次のとおりです。
【引用元】法務省:離婚届の「記載要領・記載例」
日付を記載する
離婚届の用紙左上の欄外にある日付の欄には、提出日を記載します。
そのため、事前には空欄としておき、提出時に役所の窓口で埋めるとよいでしょう。
なお、日付の下にある「長 殿」の前には、提出先の市区町村名を記載します。
それぞれの氏名と生年月日を記載する
「氏名」の欄には、離婚をする夫と妻それぞれの氏名とふりがな、生年月日を記載します。
ここは現在の戸籍上の氏名を書く欄ですので、氏名の欄に書く名字は、離婚をする前のものを記載してください。
つまり、ここに記載する夫の名字と妻の名字は、原則として同じになるはずです。
住所を記載する
「住所」の欄には、離婚届を提出する時点での住民票上の住所を記載します。
離婚届を出す時点でまだ住民票上の住所が同じなのであれば、夫の住所と妻の住所は同じになります。
一方、離婚届を出す前にすでに別居して住民票も移している場合には移転先の住所を記載することになるため、夫の住所と妻の住所は違う住所になるでしょう。
住所は「1-1-1」など略さず、「1丁目1番1号」など正確に記載してください。
また、マンションやアパートの場合には、部屋番号まで正確に記載しましょう。
世帯主を記載する
住所の欄のすぐ下にある「世帯主の氏名」の欄には、現在の住民票上の世帯主の氏名を記載します。
本籍と筆頭者を記載する
「本籍」の欄には、現在の本籍地を記載します。
離婚届を出す時点では夫と妻は必ず同じ戸籍に入っていますので、離婚をする夫と妻の本籍地は同じであるはずです。
なお、住所と本籍は同じ場合もありますが、必ずしも同じとは限りません。
住所地と本籍地がまったく別の場所である可能性もありますし、同じ場所でも表記が異なる場合もあります。
表記に迷う場合には、あらかじめ戸籍謄本を取得し、戸籍謄本を確認しながら記載するとよいでしょう。
「筆頭者の氏名」の欄には、戸籍の一番上に書かれている人の氏名を記載しましょう。
通常は、夫婦のうち、婚姻時に姓を変えなかった側が筆頭者です。
それぞれの父母の氏名を記載する
「父母及び養父母の氏名」の欄には、夫と妻それぞれの父母の氏名を記載します。
父母の中にすでに他界している人がいる場合でも、記載が必要です。
また、父母が離婚をしている場合であっても、父母ともに記載してください。
父母の氏名の右にある「続き柄」欄には、父母から見た続き柄を記載します。
男性は「長男、二男、三男」などで、女性は「長女、二女、三女」などです。
誰かの養子に入っている場合には、「養父・養母」の欄に養父と養母の氏名を記載しましょう。
養子に入っていない場合には、「養父・養母」の欄は空欄のままとします。
離婚の種別にチェックを入れる
「離婚の種別」欄は、離婚をした方法にチェックを入れます。
裁判所を介さずに離婚をした場合には、一番上の「協議離婚」の欄にチェックを入れましょう。
調停や審判など裁判所を介して離婚をした場合には、それぞれ該当する項目にチェックをいれたうえで、成立日や確定日を記載してください。
裁判所を介して離婚をする場合には調停調書などが添付書類となりますので、これを確認しながら日付を記載するとよいでしょう。
婚姻前の氏にもどる者の本籍を記載する
「婚姻前の氏にもどる者」とは、現在夫婦で入っている戸籍から抜ける側の人のことです。
この人が、新たに入る戸籍について、本籍地と筆頭者を記載しましょう。
いまの戸籍から抜ける側の人の選択肢は次の2つであり、それぞれ次の内容を記載します。
- 婚姻前の戸籍(父母などの戸籍)に戻る場合:婚姻前に入っていた戸籍の本籍地と筆頭者(父か母)を記載する。
- 父母の戸籍には戻らず新たに自分の戸籍を作る場合:本籍地欄には新たに本籍地として定めたい場所を書き、筆頭者の氏名欄には自分の氏名を記載する。
未成年の子の氏名を記載する
離婚をする夫婦の間に未成年の子がいる場合には、親権者を決めたうえで、「未成年の子の氏名」欄に氏名を記載します。
夫が親権者となる子は「夫が親権を行う子」の欄に、妻が親権者となるについては「妻が親権を行う子」欄に記載しましょう。
同居の期間を記載する
「同居の期間」欄は、同居を始めた年月と別居をした年月をそれぞれ記載します。
「同居を始めたとき」の欄は、婚姻をした日と同居を始めた日のいずれか早い日を記載しましょう。
また、「別居したとき」の欄は、離婚届を出す時点でまだ別居をしていないのであれば、記載する必要はありません。
別居する前の住所を記載する
「別居する前の住所」欄は、離婚届の提出時点で夫婦が別居している場合にのみ記載します。
ここに書くべき住所は、以前夫婦が同居をしていた場所の住所です。
それぞれの職業を記載する
離婚届を出す年が国勢調査の年に当たる場合には、「別居する前の世帯のおもな仕事と夫妻の職業」欄を記載します。
ここはいわゆるアンケートのようなものですので、難しく考える必要はありません。
届出人がそれぞれ署名する
離婚届には、夫婦がそれぞれ署名するのが原則です。
なお、以前は押印が必須とされていましたが、現在は押印をしてもしなくても構わないとされています。
ただし、後から「署名などしていない」などと主張されないよう、可能であればお互いに押印をしておく方がよいでしょう。
証人2名の住所などを記載して署名をもらう
協議離婚の場合(裁判所を介さずに離婚をする場合)には、証人2名の署名と、生年月日や住所、本籍の記載が必要です。
証人は他人であっても構いませんし、夫や妻の父母などであっても構いません。
離婚に関する必要書類
離婚に関する手続きで必要となる書類は、それぞれ次のとおりです。
離婚届の提出に必要な書類
離婚届の提出に必要なものは、記入済みの離婚届の他、次のとおりです。
- 届出人の身分証明書:運転免許証やマイナンバーカードなど
- 届出人の印鑑:離婚届に押印をした場合には、その印鑑
また、離婚届を本籍地以外の市区町村役場に出す場合には、これに加えて戸籍謄本も必要です。
その他、裁判所を介して離婚をした場合には、次の書類を持参しましょう。
- 調停離婚の場合:調停調書の謄本
- 裁判離婚の場合:判決の謄本と確定証明書
法務省:離婚届
婚姻中の氏を今後も名乗る場合の必要書類
現在の戸籍から抜ける側は、原則として婚姻前の氏に戻ることとなりますが、手続きをすることで婚姻期間中の氏を名乗り続けることが可能となります。
今後も婚姻期間中の氏を名乗る場合の手続きに必要な書類は、次のとおりです。
- 「離婚の際に称していた氏を称する届」:市区町村役場の窓口やホームページからの印刷などで入手できます
本籍地以外の役所に提出する場合には、戸籍謄本も必要です。
子を自分の戸籍に入れる場合の必要書類
たとえば、離婚届で親権者を妻とした場合であっても、妻が戸籍から抜ける際、自動的に子も妻の戸籍に移るわけではありません。
婚姻中の戸籍から抜ける側が子を自分の戸籍に入れたい場合には、子の戸籍を移す手続きが別途必要になります。
この際の必要書類は、次のとおりです。
- 「入籍届」:市区町村役場の窓口やホームページからの印刷などで入手できます。
- 家庭裁判所による子の氏の変更許可審判書:子を同じ戸籍に入れるためには、自分と同じ氏である必要があるところ、離婚しても、子どもの氏は当然には変更されず、家庭裁判所の許可を得る必要があります。
新たに子が入ることになる戸籍がある地の市区町村役場以外に提出する場合には、これらに加えて入籍先の戸籍謄本が必要です。
新たに国民健康保険に加入する場合の必要書類
夫婦の一方が専業主婦(夫)やパートなどであり、もう一方が会社員などであった場合には、会社員などであった側の健康保険の扶養に入っていることが一般的です。
離婚をした以上は引き続き扶養に入ることはできないため、自分で国民健康保険などに加入しなければなりません。
この手続きをするためには、次の書類が必要です。
- 資格喪失証明書:会社員であった元配偶者の勤務先から入手します
なお、離婚後新たに仕事を始めた場合などには、国民健康保険ではなく、健康保険(被用者保険)に入ることになります。
この場合には、勤務先へ確認するとよいでしょう。
離婚届の提出方法
離婚届の提出先は、各市区町村の役場の戸籍を扱う窓口になります。
郵送でも提出することはできますが、もし書類に不備があった場合には離婚届が不受理となってしまうため、郵送前に不備がないかしっかり確認する必要があります。
もし不備があった場合には後日役所に出向いて、訂正しなければならないので、時間も手間もかかってしまいます。
特に協議離婚以外の場合は調停あるいは判決の確定後10日以内に提出しなければならないという期限がありますので、特別な事情がない場合は窓口での提出の方が安心でしょう。
また、市区町村役所が閉まっている時間でも、休日夜間受付窓口で離婚届を提出することができます。
しかしこの場合、その場で内容を確認せずに受け取るだけで、後日担当者が確認するという役所が多いので、郵送の場合と同様に注意が必要です。
もし不備があれば再度役所に出向いて修正することになりますので、やはり受付時間内に窓口に出向くことが一番確実です。
なお、離婚届の提出は代理人に依頼することもできますが、その場合は不備があっても代理人は修正できないので注意が必要です。
婚姻届と違って、離婚届の提出となると二人揃って役所へということにはなりにくいのが現実です。
その場合には、離婚届を受理したことを証明する受理通知が、提出に行かなかった側に郵送されます。
受理通知は、代理人が提出した場合には夫婦二人に送られます。
以上のように、離婚届の取得方法、書き方、提出方法はそれほど複雑ではありませんが、離婚の方法によって必要となる書類が異なったり、記入方法の細かな点など、気をつけるべき点があったりします。
これらを事前に確認して、スムーズに離婚届が受理されるようにスケジュールに余裕を持って準備を進めるとよいでしょう。
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