養子縁組は、相続対策などの一環として用いられることも少なくありません。
また、再婚の場面では配偶者の連れ子を養子とすることもあるでしょう。
では、未成年の子どもを養子とした場合、子どもの親権はどうなるのでしょうか?
今回は、養子縁組と親権について弁護士が詳しく解説します。
目次
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養子縁組とは
養子縁組とは、一定の要件を満たしたうえで所定の手続きを踏むことで、養親と養子との間に法律上の親子関係を有する制度です。
養子になることで養子は養親の相続人となるなど、多くの場面で実の親子と同等の取り扱いがなされることとなります。
養子には、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2つがあります。
ここでは、それぞれの養子縁組制度の概要について解説します。
普通養子縁組
普通養子縁組とは、実親との親子関係を維持したまま、新たに養親との間に法律上の親子関係を形成する養子縁組制度です。
普通養子縁組では、たとえ子供が他者の養子になっても、実親との親子関係が残ります。
たとえば、A氏とB氏の実子であるC氏が普通養子縁組によってX氏とY氏の養子になった場合、C氏には法律上、A、B、X、Yの4名の親がいることとなります。
相続の場面において、C氏はA、B、X、Yの4名から相続を受けることが可能です。
次の場面などでは、この普通養子縁組が活用されることが一般的です。
- 相続対策の一環で、子どもを実父や実母の親(子どもの祖父母)の養子とする場合
- 連れ子を再婚相手の養子とする場合
- 婚姻に伴い、婚姻相手の親の養子となる場合
単に「養子」という場合は、この「普通養子縁組」を指すことが多いでしょう。
この記事においても、この普通養子縁組を前提として解説を行います。
特別養子縁組
特別養子縁組とは、実親との親子関係を解消し、養親との間に実親と同様の親子関係を生じさせる養子縁組制度です。
相続対策の目的などから行うようなものではなく、実親が何らかの事情で子どもを養育することができない場合において、子どもの福祉を目的として行われます。
従来、特別養子縁組はおおむね6歳未満の子どもを対象としていました。
2020年の民法改正によって、対象年齢が15歳未満へと引き上げられています。
特別養子縁組では戸籍に「養子」である旨の直接的な記載はされません。
また、実親との親子関係は終了するため、実親の相続人ともならないことが特徴です。
養子縁組をすると親権者は誰になる?
養子縁組をする際は、その効果として子どもの親権者が誰になるのかについて理解しておかなければなりません。
未成年者が養子となると、親権者は養親へと移ります。
たとえば、相続対策の一環として子どもを祖父母の養子にした場合、特に意図していなくても親権者は祖父母となります。
つまり、子どもを祖父母の養子とした場合、さまざまな届出や契約締結などの際に親権者欄に署名をするのは、実親ではなく祖父母になるということです。
養子縁組をした子どもの親権を取り戻すことはできる?
養親の養子となった子どもの親権を、実親が取り戻すことはできるのでしょうか?
結論をお伝えすると、祖父母と養子縁組をしたことや親権者の再婚相手と養子縁組したことなどによって養親の親権に服すこととなった子どもの親権を実親が取り戻すことは困難です。
相手が親権者として不適格である事情がある場合などに、調停や審判によって親権者の変更をする制度はあります。
ただし、これも子どもが単独親権に服している(離婚後に父母のどちらかが親権者となっている場合のように、親権者が1人だけである)ことが前提であり、養親の共同親権に服している場合は原則として親権者の変更はできません。
子どもが親権者の再婚相手と養子縁組したら養育費はどうなる?
子どもが親権者の再婚相手の養子となった場合、養育費はどうなるのでしょうか?
ここでは、子どもの養子縁組と養育費について解説します。
養育費とは
養育費とは、子どもの監護や教育のためにかかる費用です。
子どもの父母である夫婦の婚姻中は夫婦の「財布」を同じとしたうえで、あえて「養育費」として区分することなく家計費の中から費用を捻出していることが多いでしょう。
しかし、子どもの父母である夫婦の離婚後は、夫婦の財布は別となります。
そこで、子どもの親権を持たなかった側が子どもの親権を持った側に対し、毎月など定期的に一定の養育費を支払うこととすることが一般的です。
なお、勘違いしている人も多いものの、養育費は親権を持たなかった側の親のだけでなく、原則として親権者も負担します。
子どもの監護や教育のためにかかる費用を、親権者と非親権者とで分け合って負担しているイメージです。
ただし、親権者が負担する養育費は、自身の生活費などと明確に区分できないことが一般的であり、また誰かに「養育費」として一定額をまとめて渡すわけではありません。
そのため、養育費を負担しているという意識がないことも多いでしょう。
養育費は減額されたり負担義務がなくなったりすることが多い
子どもが親権者の再婚相手の養子となった場合、非親権者である親が負担していた養育費は減額や免除となることが一般的です。
なぜなら、子どもが再婚相手の養子に入ることで一次的な扶養義務者が親権者と養親となり、非親権者である親の扶養順位が下がることとなるためです。
一方的に養育費の支払いを止めることはおすすめしない
養育費を負担している場合、子どもが親権者の再婚相手の養子となったことを理由に、支払う養育費の額を一方的に減らしたり養育費の支払いを止めたりすることはおすすめできません。
なぜなら、一方的に養育費を減らしたり滞納したりすると、相手から差押えの手続きをとられるおそれがあるためです。
差押えは給与などにも及ぶため、勤務先にトラブルを知られる事態となるおそれがあります。
そのため、子どもが元配偶者の再婚相手の養子になったからといって相手に無断で養育費を減らすことは避け、親権者である元配偶者と養育費の減額や免除について協議するステップを踏んでください。
そのうえで、協議がまとまらない場合は、養育費を減免するための調停や裁判を申し立てることとなります。
再婚相手にまったく収入がないなど特殊なケースを除いて、調停や裁判となれば養育費の減額や免除が認められる可能性が高いでしょう。
ただし、状況によって異なる可能性があるため、弁護士へご相談ください。
子どもの養親が死亡したら親権はどうなる?
子どもが養子縁組をした後で養親が死亡したら、親権はどうなるのでしょうか?
ここでは、相続対策の一環として子どもの養親となった祖父母がともに亡くなった場合を前提として解説します。
親権が自動的に実親に戻るわけではない
注意すべきことは、養親である親権者が亡くなっても、自動的に元の親権者に親権が戻ってくるわけではないということです。
たとえば、養親となった祖父母が亡くなったからといって、自動的に実親の親権が復活するわけではありません。
養親が死亡したら未成年後見人の選任が必要となるのが原則
養親が死亡したことに伴って自動的に実親に親権が戻るわけではないということは、養親が亡くなると、この時点で子どもの親権者がいなくなってしまうということです。
未成年者の親権者がいない事態は望ましいことではありません。
また、亡くなった養親の相続手続きも停滞する可能性があります。
そのため、養親が亡くなった場合は、原則として未成年後見人の選任申立てが必要となります。
未成年後見人とは未成年者の監護養育や財産管理、契約などの法律行為などを行う法定代理人であり、家庭裁判所に選んでもらうことが原則です。
また、親権者が生前に遺言書を作成することで、未成年後見人を指定することもできます。
親権者の作成した遺言書で指定された場合や裁判所によって適任であると判断されれば、実親が未成年後見人となることは可能です。
ただし、たとえ実親であっても親権者ではなく未成年後見人である以上は、財産目録の作成や毎年支出すべき金額の予定をたてることなどが求められます。
また、親権者よりも一段重い「善管注意義務」が課される点にも注意しなければなりません。
裁判所の許可を得て養親と死後離縁すれば実親の親権が回復する
非常に端的に言うと、未成年後見人と親権者の役割はほとんど同じである一方で、未成年後見人の場合は手続きの手間が増えるうえ、責任も重くなります。
そのため、実親としては未成年後見人となることを目指すより、親権の回復を目指したいことでしょう。
この場合、家庭裁判所の許可を得て養子と養親が死後離縁をすることで、実親の親権を回復させることが可能です。
実親が親権を回復したい場合は、養親の死亡後すみやかに弁護士へご相談ください。
なお、死後離縁をしても相続権には影響がなく、子どもは養親の相続人として取り扱われます。
養子縁組と親権に関するその他のよくある疑問
養子縁組と親権については、注意点や疑問が少なくありません。
最後に、養子縁組と親権に関するよくある疑問とその回答を紹介します。
養子に入った子どもと面会交流できる?
たとえ子どもが他者の養子となり自身の扶養義務者としての順位が下がっても、面会交流の権利は変動しません。
なぜなら、子どもが他者の養子となっても、自身がその子どもの親であることに変わりはないためです。
面会交流は、養育費の支払いと引き換えとされる権利ではありません。
そのため、たとえば子どもが元配偶者の養子となったことで養育費の支払い義務がなくなった場合であっても、面会交流の権利は残ります。
養子縁組すると相続権はどうなる?
普通養子である場合、子どもは実親と養親の双方から相続を受ける権利を持ちます。
また、親が離婚をしたことで、子どもの相続権がなくなるわけでもありません。
たとえば、実親であるA氏とB氏が離婚し、A氏が子どもであるCの親権者となった場合において、その後B氏が亡くなった際は、離婚した元配偶者であるA氏に相続権はない一方で、子どもであるCは相続人となります。
これは、離婚後にA氏がX氏と再婚し、CがX氏の養子となった場合であっても同様です。
この場合でも、その後B氏が亡くなった際は、C氏は相続人となります。
これを子どもであるCの視点で見ると、CはA氏、B氏、C氏の3人の親から相続を受ける権利を有するということです。
離婚や再婚の経験がある場合、相続の場面でトラブルとなることが少なくありません。
そのため、離婚経験があり離婚した相手との間に子どもがいる場合は、遺言書の作成など相続対策についても弁護士へご相談ください。
まとめ
養子縁組をすると、子どもの親権者は実親から養親へと変わります。
特に相続対策の一環で子どもと祖父母が養子縁組をする場合は新権についてまで考慮が及んでいないことも少なくないため、注意が必要です。
その後親権者である養親が死亡したからといって、自動的に実親に親権が戻ってくるわけでもありません。
養親の死亡にともなって実親が親権を回復するには、家庭裁判所の許可を受けて死後離縁をすることが必要です。
また、親権者に遺言書を作成してもらい未成年後見人に就任する方法もあるものの、未成年後見人の場合は親権者よりも注意義務が重く、手間もかかる傾向にあります。
このように、未成年の子どもの養子縁組では、親権の面での注意点が少なくありません。
そのため、未成年の子どもの養子縁組をご検討の際は弁護士へ相談し、デメリットや注意点をよく理解しておくことが必要です。
Authense法律事務所には親権や離婚、養子縁組になどに強い弁護士が多数在籍しており、多くの解決事例の蓄積があります。
養子縁組や親権などについてお困りの際は、Authense法律事務所までまずはお気軽にご相談ください。
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