親権では、母親が有利であるといわれることもあります。
しかし、必ずしも母親が親権を獲得するケースばかりではありません。
では、母親が親権争いで負けるのはどのような場合なのでしょうか?
今回は、親権者を決める際に考慮されるポイントや母親が親権争いで負けやすいケースなどについて弁護士が詳しく解説します。
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親権とは
親権とは、子どもの利益のために監護や教育を行ったり子どもの財産を管理したりする権限であり、義務でもあります。
子どもの父母の婚姻中は、父母が共同して親権を行使するのが原則です。
一方で、父母の離婚後は、父母のどちらか一方のみが親権を行使することとなります。
なお、離婚後も父母がともに親権を行使する「共同親権」が議論の俎上にあるものの、2023年11月現在では実現していません。
そのため、離婚後は父母がともに親権者となることはできず、どちらが親権者となるかを決める必要があります。
離婚時の親権の決まり方
離婚後に父親と母親のどちらが親権を持つのかは、どのように決まるのでしょうか?
ここでは、離婚時における親権者の決まり方について解説します。
未成年の子どもがいる夫婦が離婚するにあたっては、必ず親権者を決める必要があり、親権者の決定を保留としたままで離婚することはできません。
夫婦間の話し合いで決める
離婚後の親権者を父母のどちらとするのかは、夫婦間の話し合いで決めることが原則です。
離婚届には、「夫が親権を行う子」と「妻が親権を行う子」の記載欄があります。
夫婦で合意したうえでこの欄に未成年の子どもの氏名を記載し、離婚届が受理されることで、親権者が決まります。
親権について夫婦間に争いがない場合は、この手続きだけで構いません。
なお、いったん決まった親権者を変更するためには夫婦間の合意のみでは足りず、原則としての調停を経る必要があります。
調停で決める
どちらが親権者となるかについて夫婦間の意見がまとまらない場合は、調停へと移行します。
調停とは、家庭裁判所で行う話し合いの手続きです。
話し合いとはいえ、夫婦が直接対峙するのではなく、裁判所の2名の調停委員が夫婦から交互に意見を聞く形で話し合いが進行します。
調停委員が話し合いを調整することで冷静な話し合いがしやすくなり、合意ができる可能性が高くなります。
調停は1度で終わることは稀であり、1か月に1度程度の期日が複数回(回数に制限はないものの、一般的には3回から6回程度)繰り返されることが一般的です。
そのため、調停となった場合は、解決までに半年程度を要する可能性が高くなります。
調停はあくまでも話し合いの手続きであることから、調停を成立させるにはどちらが親権者となるかについて両者が合意しなければなりません。
無事に調停が成立すると裁判所から調停調書の謄本が発行され、これを添付して離婚届を提出することで親権者が確定します。
訴訟で決めてもらう
調停が不成立となった場合は、訴訟(裁判)を申し立てます。
訴訟では、諸般の事情を踏まえたうえで、どちらが親権者となるのかについて裁判所が決定します。
裁判所が下した結論に納得がいかない場合は、判決文の送達から2週間以内の控訴が必要です。
控訴をしない場合はたとえ不服があったとしても、裁判所の決定を覆すことはできません。
親権者を決める際に考慮されるポイント
裁判所が親権者を決める場合、どのような点が考慮されるのでしょうか?
ここでは、親権者を決めるにあたって考慮される主なポイントを6つ解説します。
これまでの監護の実績
最も重視されるポイントの一つは、これまでの監護実績です。
栽培所は、離婚によってできるだけ子どもにとっての環境が変わらない点を重視する傾向にあります。
そのため、親権争いにおいては、これまで主に育児を担ってきた側が有利になりやすいといえます。
この点から、親権獲得では母親が有利といわれることが少なくありません。
家族の形が多様化しているとはいえ、今でも「父親は主に外で働き、家事や育児は母親が主に担う」という家庭が少なくないためです。
もちろん父親が育児などをメインで担っている家庭もあり、その場合は父親が有利になりやすいといえます。
子どもの意思
親権者を決める際は、子どもの意思も重視されます。
特に、子どもが15歳以上であれば子どもの意思が優先され、子どもが希望した側の親が親権者となることが原則です。
なお、家事事件手続法の規定により、親権者を決める裁判では子ども本人の陳述を聴かなければならないとされています(家事事件手続法152条2項)。
また、子どもが10歳から14歳である場合は必ずしも子どもの希望どおりとなるわけではないものの、子どもの希望も参考とされます。
きょうだい不分離
親権者を決めるにあたって、裁判所はきょうだい不分離を原則としています。
未成年の子どもが複数いる場合、夫婦間の話し合いで親権者を決めるのであれば、子どもごとに親権者を分けることも可能です。
たとえば、長男の親権者は父とする一方で、二男の親権者を母とすることもできるということです。
一方で、裁判で親権を決める場合は、複数の子どもの親権者は原則として同一となります。
母性優先の原則
先ほど解説したように、親権者は親の性別だけで決まるわけではありません。
しかし、子どもが幼いうち(0歳から5歳程度の場合)は、親権者として母親が優先される傾向にあります。
中でも、子どもが母乳を必要とする乳児であるうちは、特に母親が優先されやすいでしょう。
ただし、母親優先の原則は絶対ではなく、これまでの監護状況が優先されます。
そのため、子どもが幼くても父親が主に育児を担ってきた場合は、父親が親権を獲得する可能性もあります。
面会交流の柔軟性
親権者を決める際は、面会交流の柔軟性も判断要素の一つとなります。
裁判所は、原則として子どもの養育には父母がいずれも揃っていることが望ましいと考えるためです。
そのため、面会交流に柔軟な考えを持つ方が、親権者として選ばれやすいといえます。
育児のサポート体制
親権者の決定では、子どもと過ごす時間や育児のサポート体制についても考慮されます。
特に子どもが幼いうちは、子どもと過ごす時間が取りやすい方が親権獲得において有利となる傾向にあります。
また、これは親権者本人のみならず、子どもの祖父母など周囲のサポート体制も踏まえて判断されることが原則です。
そのため、離婚後に両親(子どもの祖父母)と同居する場合や近隣で生活する場合などは、親権獲得においてプラスとなりやすいでしょう。
親権争いで母親が負ける場合
親権争いでは、必ずしも母親が親権者となれるわけではありません。
では、母親が親権者となれないケースにはどのような場合が挙げられるのでしょうか?
ここでは、母親が親権者となれない可能性が高いケースを4つ紹介します。
親権の獲得についてお悩みの際は、あらかじめ弁護士へご相談ください。
自分で調べた結果、親権の獲得が難しそうだと考えていても、弁護士へ相談することで親権を獲得する道が開けるかもしれません。
母親が子どもを虐待している場合
母親が子どもを虐待している場合は、母親が親権争いで負ける可能性が高くなります。
虐待には、殴る蹴るなどの身体的なもののほか、暴言など心理的なものやネグレクトなども該当します。
母親が重度の精神疾患である場合
母親が重度の精神疾患であり子どもを適切に監護養育できない可能性がある場合は、親権争いで負ける可能性があります。
ただし、精神疾患であるからといって、必ずしも親権者となれないわけではありません。
たとえうつ病などの精神疾患を患っていても、子どもを養育する意欲があり実際に育児ができると判断されれば親権者として選ばれる可能性があります。
離婚前の主な監護者が父親であった場合
離婚前の主な監護者が母親ではなく父親であった場合は、母親が親権争いで負ける可能性があります。
親権獲得で一般的に母親が有利とされるのは、それまで主に育児を担ってきたのが母親であるケースが多いためです。
つまり、性別で区別されているのではなく、家庭内における役割から結果的に母親が選ばれることが大いに過ぎません。
これまで父親が主に育児を担っていた場合は、父親が親権者となる可能性が高くなります。
子どもが父親と暮らすことを希望している場合
子どもが父親との暮らしを希望している場合は、親権争いで母親が負ける可能性があります。
特に、先ほど解説したように、子供の年齢が15歳以上である場合は、原則として子どもの意思が尊重されます。
そのため、15歳以上の子どもが親権者として父親を希望している場合は、母親が親権争いで負ける可能性が高いでしょう。
また、子どもが10歳から14歳である場合において子どもが親権者として父親を希望している場合は、その他の事情も考慮されたうえで父親が親権者とされる可能性があります。
親権で母親が負けるかどうかのよくある疑問
最後に、親権争いで母親が負けるかどうかに関するよくある疑問とその回答を紹介します。
母親の不倫で離婚に至った場合は親権争いで不利となる?
結論としては、母親の不倫自体は親権争いにはさほど関係ありません。
ただし、不倫相手と会うために育児放棄をしていた場合には、親権獲得において不利となる可能性があります。
また、不貞行為に及んでいた場合は、慰謝料請求の原因となります。
母親の収入が少ない場合は親権争いで不利となる?
母親の経済力と親権の獲得とは、ほとんど関係ありません。
たとえ母親の収入が少なかったとしても、父親から養育費を受け取ることで、経済力については補完されることとなるためです。
ただし、単に収入が少ないのではなく、母親がギャンブルに依存していたり過度な浪費壁があったりする場合は、親権者として不適格であると判断される可能性があります。
母親が子どもを無断で連れ去った場合は親権争いで不利となる?
母親が子供を連れ去った場合に親権争いで不利となるかどうかは、ケースバイケースです。
たとえば、次のような違法な連れ去りをした場合は、親権争いにおいて不利となる可能性があります。
- 別居している夫の居宅に侵入し、夫とともに住んでいた子どもを強引に連れ去る
- 保育園などで待ち伏せして連れ去る
一方、自分が配偶者からDVを受けている場合や子どもが配偶者から虐待されている場合などに、子どもの身を守るために子どもを出した場合は、不利となる可能性は低いといえます。
ただし、DVや虐待の証拠がない場合は違法な連れ去りであると相手方から主張されるリスクがあります。
そのため、可能な限りDVや虐待などの証拠を残しておく必要があります。
親権争いで不利とならないため、子どもの連れ去りなどについてお困りの際は自分で不用意な判断をするのではなく、あらかじめ弁護士へご相談ください。
まとめ
親権争いでは、母親が有利といわれることがあります。
これは必ずしも正確ではなく、それまで育児を主に担ってきたのが母親であることが多いことから、結果的に母親が親権者に選ばれやすいにすぎません。
そのため、それまでの主な監護者が父親であった場合は母親が親権争いで負け、父親が親権者となる可能性があります。
また、母親が子どもを虐待していた場合や重度の精神疾患である場合、一定以上の年齢の子どもが父親を親権者として希望している場合などにも、親権争いで母親が負ける可能性があります。
一方で、母親の不倫や経済力などは、親権獲得に直接影響しない可能性が高いでしょう。
親権を獲得できそうかどうか自分で見通しを立てることは容易ではありません。
裁判では証拠が重視されるため、たとえ自分が親権者となれそうな事情があったとしても、証拠がないと不利となるおそれがあります。
そのため、親権争いを有利に進めたい場合は、あらかじめ弁護士へご相談ください。
Authense法律事務所には親権や離婚問題に強い弁護士が多数在籍しており、親権獲得に関する解決事例も多く蓄積しています。
母親が親権争いで負けるかどうか知りたい場合や親権争いを有利に進めたい場合は、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。
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