コラム

複数1205_テコ入れ_養育費はいくらかかる?相場の計算方法を弁護士がわかりやすく解説

養育費は、いくらが妥当なのでしょうか?

養育費の額は、双方が合意すればいくらであっても構いません。
ただし、裁判所が公表している「養育費算定表」が1つの目安となるでしょう。

今回は、養育費の計算方法や年収ごとの適性額、養育費の支払いが生じる期間などについて弁護士が詳しく解説します。

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養育費とは

養育費とは、子どもの監護や教育のために必要な費用のことです。

そもそも、たとえ親が離婚をした場合でも、子にとってはどちらも親であることに変わりありません。
そのため、親権を持った側の親も、持たなかった側の親も、引き続き子の扶養義務を負い必要な養育費を支払う義務を負います。

子がいる以上、婚姻関係にある夫婦も養育費は負担していますが、家計費から必要な金額をその都度拠出していくことが一般的であるため、負担割合などについて夫婦間で問題となることは多くありません。

一方、養育対象である子の親が離婚した場合は、養育費の問題が生じます。
婚姻期間中とは異なり、離婚後は夫婦の家計が別になっているためです。

一般的に、離婚後の養育費はあらかじめ夫婦間で取り決めた金額を、親権を持たなかった側の親から親権を持った側の親に対して毎月支払うことで負担します。
ただし、養育費を支払う親だけが養育費を負担しているわけではありません。
実際は、かかる養育費を双方の収入に応じて按分して負担しています。

養育費の相場の目安

素材_電卓

養育費の一般的な金額はどの程度でしょうか?

養育費は子の人数や離婚をした夫婦それぞれの収入などによって異なるため、一般的な金額があるわけではありません。
ここでは、養育費の一般的な金額を知る方法を紹介します。

養育費算定表を参考にする

養育費の金額の目安を知るためにもっとも参考となるのは、裁判所が公表している「養育費算定表」です。※1
この算定表は離婚調停などでも参考とされるため、当事者間で話し合いがまとまらない場合は最終的にこの算定表の金額を基準に決定されることが多いです。

養育費算定表は、子どもの数と子どもの年齢によって9つの表に分けられています。
それぞれの表で、養育費を支払う側(「義務者」といいます)と、養育費を受けとる側(「権利者」といいます)の年収をあてはめると養育費の額の目安がわかります。

たとえば、子どもが2人でともに「0~14歳」である場合の算定表は次のとおりです。※2
(表3)養育費・子2人表(第1子及び第2子0~14歳)

これによると、義務者と権利者がともに給与所得者であり、義務者の年収が700万円、権利者の年収が300万円の場合の養育費月額の一般的な金額は「8~10万円」となります。

年収と養育費の関係

養育費の金額は、支払い義務者の年収が高いほど高くなる傾向にあります。
ここでは、先ほど紹介した裁判所による「養育費算定表」に当てはめて、義務者の年収別の養育費の一般的な金額について解説します。
いずれも次の条件とします。

  • 子ども:2人(ともに「0~14歳」)
  • 収入形態:義務者も権利者もともに給与所得者
  • 権利者の年収:200万円の場合と600万円の場合で解説

なお、義務者の年収が同じでも、養育費を受けとる権利者の年収が高ければ高いほど、養育費の額は少なくなる傾向があります。

義務者の年収が300万円である場合

権利者の年収 養育費の目安
200万円 2~4万円
600万円

義務者の年収が500万円である場合

権利者の年収 養育費の目安
200万円 6~8万円
600万円 4~6万円

義務者の年収が800万円である場合

権利者の年収 養育費の目安
200万円 10~12万円
600万円 8~10万円

義務者の年収が1,000万円である場合

権利者の年収 養育費の目安
200万円 14~16万円
600万円 10~12万円

義務者の年収が2,000万円である場合

権利者の年収 養育費の目安
200万円 30~32万円
600万円 26~28万円

養育費は何歳まで受け取れる?支払期間はいつまで?

養育費は、子どもが何歳になるまで受け取ることができるのでしょうか?
ここでは、養育費の支払い開始時期と終期について解説します。

養育費の支払い始期

本来、離婚後すぐに養育費の支払いは開始されるべきです。
ただし、離婚時に養育費の取り決めをしていない場合、実務の多くでは「権利者が請求したとき」からの分しか請求できないと考えられています。

そのため、たとえば養育費請求調停を申し立てたときからの分しか養育費が認められない可能性があります。
空白期間を作らないためにも、離婚時に養育費の取り決めをして継続的に支払いを受けるべきです。

離婚時に取り決めをしなかった場合は、早めに養育費請求調停を申し立てて支払いを開始してもらってください。

養育費の支払い終期

養育費の支払い終期は、「20歳まで」とすることが多いです。
ただし、両親の話し合いにより延ばすことも可能です。

たとえば、子どもが大学に進学する場合は、22歳に達した後の最初の3月まで(大学卒業時)としてもかまいませんし、留学や専門学校、大学院への進学を考慮して終期を定めてもかまいません。

状況に応じて柔軟に終期を決定してください。

養育費が相場より高くなる要素

先ほど解説したように、養育費算定表が養育費の目安を知るための参考になります。
しかし、すべてのケースでこの算定表どおりの金額となるわけではありません。

次のようなケースでは、一般的な金額よりも高い養育費が認められる可能性が高いといえます。

義務者の学歴が高いこと

原則として、親には子どもに自分と同程度の教育をさせる義務があると考えられます。
そのため、養育費支払い義務者側の学歴が高い場合は、子どもが同様の教育をするのにかかる費用を負担すべきとされる可能性が高いでしょう。

養育費を支払う終期は、原則として子どもが成人するまでです。
ただし、養育費支払い義務者が大学を卒業している場合は、大学卒業までの養育費請求が認められやすくなります。

医療費など特別な費用がかかる事情があること

子どもが重い病気を患っている場合や特別な習いごとをしている場合などは、養育にかかる費用がかさんでしまいがちです。
その場合は、実際に要する費用を加味して養育費が上乗せされる可能性があります。

養育費が相場より低くなる要素

義務者の収入が相当低く、自分の生活もままならない場合などは、養育費が一般的な金額よりも低くなる可能性があります。
養育費の考え方は、あくまでも子どもに自分と同程度の生活を送らせる必要があるというものであるためです。

ただし、生活に困窮している原因が収入の低いことではなく、ギャンブルなどによる浪費である場合などでは、一般的な金額どおりの価格とされる可能性が高いといえます。

養育費の金額を変更する方法

いったん取り決めた養育費の金額を変更する際は、次の手順で進めてください。

相手と話し合って決め直す

まずは相手と話し合い、養育費の金額を決め直すことが最もスムーズです。
相手の収入が上がった場合やこちらの収入が低下した場合などは、相手にメールや電話で連絡してみるとよいでしょう。

合意ができたら、あらためて合意内容を公正証書にまとめてください。
すると、新しい養育費の金額をもとに、相手が支払わないときにはすぐに強制執行をすることができるようになります。

養育費の増額(減額)調停を申し立てる

話し合いが難しい場合は、家庭裁判所で養育費増額(減額)調停を申し立ててください。
裁判所で調停委員を介して話し合い、適正な養育費の金額を決めていきます。

合意できない場合は、審判という手続きに移行します。
この場合、裁判官が養育費を変更する事情があるか判断し、妥当な養育費の金額を決めます。

養育費が支払われないときの対処方法

素材_弁護士相談

離婚後に養育費が払われない場合は、次のように対応します。

公正証書や調停調書などがある場合

公正証書で養育費の約束をした場合や調停調書、判決書などの裁判所の書類がある場合、すぐに相手の資産を差し押さえることができます。
ただし、どういった資産があるのかは、債権者(請求する側)が特定しなければなりません。

調べることが難しい場合は、弁護士照会などを利用できる可能性もあるため、弁護士にご相談ください。
給料や預金などを差し押さえ、不払い分を回収しましょう。

公正証書や調停調書などがない場合

公正証書や調停調書、判決書などの書類がない場合、家庭裁判所で養育費請求調停をすることになります。
調停や審判で養育費の金額を決め、それでも相手が支払わなければ、差し押さえに進むことができます。

養育費に関するよくある質問

最後に、養育費に関するよくある質問とその回答を紹介します。

養育費を受け取ったら税金がかかる?

原則として、養育費の受け取りは非課税です。
家庭内で主に外部から収入を得ている者から、もう一方に対して「今月分の生活費」などとしてお金を渡しても税金がかからないことと同様です。

なお、所得税法には所得税を課さないものとして「学資に充てるため給付される金品及び扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品」が明記されているほか、贈与税について定めている相続税法でも贈与税の課税価格に算入しないものとして「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」が明記されています(所得税法9条1項15号、相続税法21条の3 1条2項)。
そのため、原則として養育費を受け取っても、贈与税や所得税などの課税対象とはなりません。

ただし、養育費を貯めてそのお金で不動産や株式を買った場合などは、例外的に贈与税の課税対象となります。
なぜなら、これは生活や教育に「通常必要と認められるもの」の範囲を超えているためです。

なお、離婚していない家族であっても、親が子どもにマンションを買ってあげたり子どもにお金を渡して子どもが株式投資をしたりすると贈与税の課税対象となります。
また、養育費を月々授受するのではなく、一括で受け取った場合にも贈与税の課税対象となる可能性があります。

養育費は遡って請求できる?

養育費に関する取り決めは、離婚の時点で行うことが望ましいといえます。
しかし、実際には養育費を取り決めないまま離婚をするケースも少なくありません。
その場合、後から離婚時点まで遡って養育費の請求をすることができるのでしょうか?

原則として、養育費は遡って請求することはできません。
養育費を相手に請求をした時点から、相手方に養育費の支払い義務が生じます。
そのため、養育費の取り決めをせずに離婚をした場合は、できるだけ早く養育費の請求をすることをおすすめします。

なお、離婚時に養育費についての取り決めをしたものの、その後支払いが滞納されている場合は、取り決め以後の分を遡って請求することが可能です。
ただし、未払いとなっている養育費の請求には5年(調停や審判で養育費を取り決めた場合には10年)の時効があるため、早めに請求したほうがよいでしょう。
滞納が続くと滞納額もかさむため、請求しても相手に資産がなく回収できないリスクも高くなります。

養育費を一括で受け取ることは可能?

養育費は、原則として月々など一定期間ごとに授受します。
では、養育費をまとめて一括で受け取ることはできるのでしょうか?

養育費の支払い義務者と権利者が合意した場合は、養育費を一括でやり取りすることも可能です。
相手が継続的に養育費を負担するかどうか不安が大きい場合や、今後いずれかが海外に移住する予定がある場合などは、一括での授受も選択肢となります。

一方、裁判や審判で養育費を取り決める場合、裁判所が一括払いを命じることはほとんどありません。

なお、養育費を一括で受け取る場合、贈与税の課税対象となる可能性があります。
あらかじめ税理士などにも相談しておくとよいでしょう。

まとめ

養育費の目安となる額は、支払い義務者と権利者それぞれの年収などによって異なり、一律いくらと決まっているわけではありません。
ただし、裁判所が公表している「養育費算定表」を確認することで、目安となる金額を知ることが可能です。

これを知らずに交渉を進めると、自分にとって不利な金額で合意してしまうかもしれません。
そのため、養育費の額について相手方と交渉をする前に、目安となる金額を把握しておくとよいでしょう。

また、離婚後にできるだけ確実に養育費の支払いを受けるには、離婚時に公正証書で養育費の取り決めをしておくべきです。
養育費など離婚条件の話し合いを自分たちで進めることが難しい場合や、相手が養育費を支払わないことを理由に強制執行をしたい場合は、できるだけ早期に弁護士へご相談ください。

弁護士には代理交渉や調停、強制執行手続きを依頼することができ、解決するにあたって有利となる可能性が高くなります。

Authense法律事務所の弁護士がお役に立てること

養育費に関する取り決めや養育費の不払いでお困りの際には、Authense法律事務所までご相談ください。
Authense法律事務所は養育費交渉の進め方や金額などについて、具体的にアドバイスをいたします。

ご依頼いただいた場合は、代理人として弁護士が直接相手と交渉をするため、ストレスの軽減にもつながるでしょう。

ほかにも、取り決めた養育費について増額(減額)したいケースや強制執行手続きを進めたいケースもAuthense法律事務所が解決へ向けてサポートいたします。

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お困りの際は、まずはお気軽にご相談ください。

記事を監修した弁護士
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