養育費を請求するときには、算定表の見方を正しく知っておく必要があります。
算定表とは、裁判所が定める養育費相場の基準を示した表です。
ただし算定表は絶対的なものではなく、ケースによって増額されたり減額されたりする可能性もあります。
この記事では養育費の算定表の読み方や支払う期間など、必要な知識を解説します。
目次
ささいなお悩みもお気軽に
お問合せください初回相談45分無料※一部例外がございます。 詳しくはこちら
オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。
- 24時間受付、通話無料
- 24時間受付、簡単入力
養育費とは
養育費とは、子どもと別居している親が子どもの養育のために負担する費用のことです。
離婚すると、子どもはどちらかの親と同居をすることとなり、子どもと同居する親が子どもを監護することとなります。
子どもと同居していない親も、親である以上は子どもの養育に責任があり、別居親は子どもが成人するまであるいは大学を卒業するまで養育費を負担しなければなりません。
支払いは「義務」か?
別居親にとって、養育費の支払いは法的義務です。
親は子どもに対し「生活保持義務」を負っているからです。
生活保持義務とは、相手の生活を維持するための義務であり、自分と同レベルの生活をさせなければなりません。
自分の現在の生活レベルを落としてでも、相手の生活を支えなければならないという高いレベルの義務といえるでしょう。
相手に収入があるにもかかわらず、養育費を支払ってもらえなかったら、養育費調停を申し立てましょう。
養育費調停で金額が決まれば、相手の給料や預貯金などを差し押さえることもできます。
支払い対象者
養育費を支払わなければならないのは、「別居親」です。
ここでは、父親か母親かによる違いは当然ありません。
親は、子どもに対して生活保持義務を負うためです。
現実には、夫側が養育費を負担して母親は支払わないケースもありますが、単に当事者が合意をしているに過ぎません。
別居している母親に十分な収入があり、同居している父親に収入が少なければ、父親の方から養育費を請求することももちろん可能です。
支払い期間
養育費は、基本的に「子どもが成人するまで」支払わねばなりません。
現行民法において、成人年齢は18歳です。
もっとも、養育費は子が経済的に未成熟であって自立することが期待できない場合に支払われるという性質から、実務上は民法が改正される前の成人年齢であった20歳までと合意されるケースが多いといえるでしょう。
また、実際には大学に進学する子どもも多く、大学等の高等教育機関を卒業するまで養育費を負担すべきケースが多々あります。
養育費の支払い終期については、子どもの希望や状況、親の経済状況に応じて柔軟に話し合って決めましょう。
なお、養育費には、「5年」の時効もあります(調停や審判で確定した場合は10年)。
相手が支払ってくれなくなったら、放置せずに早めに滞納分を請求しましょう。
金額の相場
養育費の金額については、「裁判所」が公表している「算定表」という標準的な養育費についての資料があり、これが広く参照されています。
基本的に「子供と同居している親と別居している親双方の年収」によって決まります。
支払う側の年収が高くなれば相場の金額は上がり、受け取る側の年収が高くなれば相場の金額が下がります。
また、子どもが成長すると、食費や教育費、被服費などさまざまな費用がかかります。
そのため、「算定表」では15歳未満と15歳以上で表が分けられており、15歳以上の表の方が養育費の金額は高くなります。
子どもの人数が多い場合、その分多くの費用がかかるため、養育費の金額は上がります。
ただし、子どもが2人になったら単純に2倍になるというわけではなく、専門的な計算方法によって算定されます。
養育費を決める際に考慮した方が良いこと
養育費を決める際には、次の点も考慮したうえで決めることをおすすめします。
考慮すべき事項は次の2点です。
後からの増額や減額は困難であること
養育費についていったん取り決めを行うと、後から増額をしたり減額をしたりすることは困難です。
取り決めた金額の変更をするためには、まず相手と交渉を行い、交渉がまとまらなければ調停や審判などに移行することとなります。
また、たとえ審判にまでもつれ込んだとしても、主張が通るとは限りません。
たとえば、「相場より金額が低いことを知らずに合意してしまったので、増額したい」という主張や、「相手が面会交流に応じないので養育費を減額したい」などの主張は通らない可能性が高いでしょう。
そのため、養育費を取り決める際には後からの変更はできないものと考え、その金額で合意するかどうか慎重に検討することをおすすめします。
公正証書にしておくこと
養育費を受け取る側は、養育費を公正証書にしておいた方がよいでしょう。
公正証書とは、個人などからの嘱託により、公証人がその権限に基づいて作成する文書のことです。
公証役場へ出向いて所定の手続きを踏むことで、養育費についての合意を公正証書とすることができます。
養育費についての取り決めを公正証書としておくことで、万が一滞納が生じた際に養育費を強制的に取り立てる強制執行が、スムーズとなります。
また、強制執行によって給与が差し押さえられると勤務先にトラブルが知られてしまうことから、これを避けるためにそもそも滞納が生じにくくなるという効果も期待できるでしょう。
一方、せっかく養育費について取り決めをしても公正証書としていなければ、滞納時に強制執行手続きをする前に、調停や裁判を申し立てる必要が生じます。
そのため、養育費について取り決めをする際には、多少費用をかけてでも、取り決めた内容を公正証書にしておくとよいでしょう。
養育費算定表の改定のポイント
「算定表」は平成30年度(2018年度)に改定され、一般的には「増額」される傾向となりました。
近年、昔と比べて物価が上昇し、生活にお金がかかるようになっています。
それにもかかわらず、養育費の金額は昔と変わらず低額で、現実に子どもにかかる費用をまかなうのは難しくなっていました。
そこで、現状に合わせるため、裁判所が全体的に金額を引き上げたのです。
養育費算定表が該当しないケースもある?
養育費算定表は、すべてのケースであてはまるわけではありません。
たとえば、次の場合に算定表は使えません。
子どもが4人以上いる場合
養育費算定表では、子どもが3人までの事案しかカバーされていません。
4人以上の子どもがいる場合には、算定表をそのまま当てはめることができません。
母親と父親の両方が子どもを育てている場合
養育費算定表では、母親と父親の「どちらか一方」が子どもを育てている前提となっています。
母親と父親がそれぞれ子どもを引き取って育てている場合、算定表を当てはめることができません。
たとえば、長男を父親が引き取り母親は長女を引き取っている場合などが挙げられます。
親の収入が2,000万円(自営業なら1,567万円)を超える場合
養育費算定表では、親の収入について2,000万円(自営の場合には1,567万円)が頭打ちとなっています。
この金額を超える場合の計算方法が明らかにされていません。
そのため、高額所得者の場合にも算定表を用いた計算ができません。
養育費の計算方法
算定表を使えない場合には、養育費の個別計算をしなければなりません。
その際には、両親の基礎収入や生活指数などを用いた複雑な計算が必要です。
また、親の収入が2,000万円を超える場合にもいくつかの考え方があり、一律ではありません。
算定表を当てはめられない場合には個別対応が必要となるため、迷ったときには弁護士へご相談ください。
養育費を算定表より増額できるケースは?
養育費の算定表は絶対的なものではありません。
状況により、算定表より増額できる場合もあります。
子どもが私学へ進学する場合
算定表では、子どもが一般的な公立の学校へ進学することが前提とされています。
子どもが高額な私立の学校へ進学している場合などには、私立の学費を考慮して増額される可能性があります。
子どもに特別な医療費がかかる場合
子どもに持病や障害などがあって特別に医療費がかかる場合にも、養育費を増額してもらえる可能性があります。
両親が合意した場合
養育費の算定表はあくまで目安であり、従わねばならない義務はありません。
両親が合意すれば算定表よりも高額な金額を定められます。
養育費を算定表より減額できるケース
反対に、養育費を算定表より減額できるケースについても解説しましょう。
請求者が合意した
養育費算定表は絶対的なものではありません。
養育費の請求者がより少ない金額で良いと納得すれば、算定表よりも低い金額を定められます。
いったん取り決めた養育費を減額できる場合
養育費算定表より減額できるわけではありませんが、次のような事情があると、いったん取り決めた額よりも減額される可能性があります。
- 支払い側が再婚した
- 支払い側と再婚相手との間に子どもができた
- 受け取る側が再婚して再婚相手と子どもが養子縁組した
- 支払う側の収入が減った
- 受け取る側の収入が増えた
ただし、実際に養育費が減額されるのか、どの程度減額されるのかはケースバイケースです。
迷ったときには自己判断せず、まずは子どもの問題に詳しい弁護士にアドバイスを求めましょう。
養育費を払ってくれないときの対処法
相手が養育費を払ってくれない場合、以下のように対応しましょう。
請求する
まずは養育費算定表をみて適正な養育費の金額を計算し、相手に請求しましょう。
電話やメール、LINEなど連絡を取れる方法を利用してみてください。
相手が無視するようであれば、内容証明郵便を使うと、請求の意思や、いつ請求したかということが明確になります。
話し合う
請求したら、相手と話し合いましょう。
お互いに養育費について合意ができれば、支払いを受けられるようになります。
公正証書を作成する
養育費支払いについて合意ができたら、公正証書で合意書を作成しましょう。
公正証書にしておくと、相手が払わなくなったときに調停や訴訟を経ずに強制執行ができます。
養育費調停を申し立てる
話し合いができない場合や話し合っても合意できない場合、家庭裁判所で養育費調停を申し立てましょう。
調停が不成立になったとしても、審判で裁判所が適切な養育費の金額を定めて相手へ支払い命令を出してくれます。
差し押さえをする
調停や審判で決まっても相手が支払いをしないとき、相手が公正証書を無視する場合などには相手の給料や預貯金を差し押さえて養育費を回収しましょう。
弁護士に相談する
調停や審判、差し押さえなどを自分で行うのはハードルが高いものです。
弁護士に任せるとスムーズに解決できるので、困ったときには弁護士へ相談してみてください。
養育費は過去に遡って請求することはできる?
養育費は、過去分を遡って請求することはできるのでしょうか。
これは、それぞれ次のとおりです。
取り決めをしたものの滞納をされていたケース
養育費についてきちんと取り決めをしたものの滞納されてしまっていた場合には、滞納分の請求が可能です。
ただし、養育費は原則として5年(裁判や調停で養育費の取り決めをした場合には10年)で時効にかかってしまいますので、これ以前の分を請求することはできません。
また、たとえ時効にはかかっていない場合であっても、養育費を滞納するような相手であれば数年分の養育費をまとめて支払うだけの資力を持っていないことも多く、この場合には現実的に取り立てることは困難でしょう。
そのため、取り決めをした養育費に滞納が生じたら、できるだけ早期に弁護士へ相談するなど対応することをおすすめします。
養育費の取り決めをしていなかったケース
養育費について取り決めをしないまま離婚をしてしまった場合など、後から養育費を請求したい場合もあるでしょう。
養育費は、離婚後であっても請求することができますので、早期に弁護士へご相談ください。
ただし、請求することができるのは、原則として請求をした時点以後の養育費のみです。
養育費の請求をする以前の期間分にあたる養育費についてまで、遡って請求することは困難でしょう。
養育費の問題を弁護士に相談するメリット
養育費について取り決めをしたいときや養育費について問題が生じたときには、弁護士へ相談するとよいでしょう。
養育費の問題を弁護士に相談する主なメリットは、次のとおりです。
適正額の養育費を請求しやすくなる
離婚問題にくわしい弁護士は、そのケースに応じた養育費の適性額を把握しています。
また、相手に丸め込まれてしまう可能性も低いでしょう。
そのため、弁護士へ依頼することで、適正な養育費を相手に請求しやすくなります。
相手と直接交渉しなくて済む
養育費の交渉を相手と直接行うことに、大きなストレスを感じてしまう場合もあるでしょう。
また、相手からDVなどの被害を受けている場合には、養育費の交渉をすることに恐怖を覚える場合もあると思います。
弁護士へ依頼すれば弁護士が交渉を代理してくれるため、自分で相手と交渉をする必要がなくなります。
労力や時間を節約できる
養育費の交渉には、時間や労力がかかります。
また、相手とこれ以上交渉を続けたくないとの思いから、相手の言い値で飲んでしまうリスクも考えられるでしょう。
弁護士へ依頼すれば、自分でかける労力や時間を大きく節約することが可能となります。
難しい裁判手続を任せられる
養育費の交渉がまとまらない場合には、家庭裁判所での調停や裁判などに舞台が移ることとなります。
しかし、裁判所の手続きは複雑であり、慣れていない人が行うことは容易ではないでしょう。
また、調停などに臨む際にもどのように進行するのか、何を主張すべきなのかなどが分からず、不利となってしまうおそれがあります。
弁護士へ依頼すれば裁判手続きを任せることができるほか、調停に同席などをしてもらえるため、安心です。
滞納時の対応がスムーズとなる
弁護士は、後のトラブルも見据えた対応を行います。
そのため、弁護士へ依頼して養育費の取り決めをした場合には、仮に滞納が生じたとしても、対応がスムーズとなるでしょう。
まとめ
養育費の金額を定める際には、「養育費算定表」を参考にしましょう。
算定表はいくつかに分かれているので、自分たちの状況に合ったものを選んで参照する必要があります。
ただし養育費算定表があてはまらないケースもあるので、そういった個別計算が必要な場合には弁護士へご相談ください。
また養育費を標準的な金額より増減額できる可能性もあります。
弁護士に養育費についての手続きを依頼した場合、適正な金額を決めやすくなる、労力やストレスが軽減される、難しい裁判手続を任せられるなど、さまざまなメリットがあります。
養育費について疑問や不安がある場合、相手と揉めてしまった場合などには早めに子どもの問題に積極的に取り組んでいる弁護士へ相談してみてください。
Authense法律事務所には養育費や離婚問題にくわしい弁護士が多数在籍しており、日々問題の解決にあたっております。
離婚に関するご相談は原則として初回無料にてお受けしておりますので、養育費や離婚についてお困りの際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら
ささいなお悩みもお気軽に
お問合せください初回相談45分無料※一部例外がございます。 詳しくはこちら
オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。
- 24時間受付、通話無料
- 24時間受付、簡単入力