DVとは、どのような行為を指すのでしょうか?
DVには身体的な暴力のみならず、精神的なものや経済的なものなども含まれます。
今回は、DVの定義やDVを受けている場合の相談先、弁護士ができるDVへのサポートなどについくわしく解説します。
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DVとは?
DVとは「ドメスティック・バイオレンス」の略称であり、配偶者や恋人など、親密な人から受ける暴力のことです。
英語の「Domestic Violence」の頭文字をとって、「DV」と略されています。
DVに関連した法律に、DV防止法(正式名称は「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」)が存在します。
この法律では、「配偶者からの暴力」を、「配偶者からの身体に対する暴力またはこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動」と定義していますので、DVの定義の参考になるでしょう。
また、ここでいう配偶者には、次の者が含まれます。
- 暴力などの後で離婚などをした相手
- 婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある相手
つまり、婚姻関係の有無を問わず、パートナーや元パートナーからの暴力はDVに該当する可能性が高いでしょう。
DVの種類と例
DVと聞くと、「殴る・蹴る」などの身体的な暴力のみが該当するようにイメージするかもしれません。
しかし、男女共同参画局によれば、DVには次の行為が含まれるとされています。※1
身体的なもの
次の行為は、身体的なDVに該当します。
- 平手でうつ
- 足でける
- 身体を傷つける可能性のある物でなぐる
- げんこつでなぐる
- 刃物などの凶器をからだにつきつける
- 髪をひっぱる
- 首をしめる
- 腕をねじる
- 引きずりまわす
- 物をなげつける
精神的なもの
次の行為は、精神的なDVに該当します。
- 大声でどなる
- 「誰のおかげで生活できるんだ」「かいしょうなし」などと言う
- 実家や友人とつきあうのを制限したり、電話や手紙を細かくチェックしたりする
- 何を言っても無視して口をきかない
- 人の前でバカにしたり、命令するような口調でものを言ったりする
- 大切にしているものをこわしたり、捨てたりする
- 子どもに危害を加えるといっておどす
- なぐるそぶりや、物をなげつけるふりをして、おどかす
これらは、「モラハラ(モラル・ハラスメント)」などと称される場合もあります。
性的なもの
次の行為は、性的なDVに該当します。
- 見たくないのにポルノビデオやポルノ雑誌をみせる
- いやがっているのに性行為を強要する
- 中絶を強要する
- 避妊に協力しない
DV加害者が勘違いをしている場合もありますが、夫婦だからといって、暴行や脅迫を用いた性交や性交の強要などが許されるわけではありません。
経済的なもの
次の行為は、経済的なDVに該当します。
- 生活費を渡さない
- 外で働くなと言ったり、仕事を辞めさせたりする
DV加害者は、自分が稼いでいるのだから自分のお金は自分のものだと思い込んでいる場合もあります。
しかし、夫婦には相互扶助義務があり、相手に自分と同程度の生活水準を保持させなければなりません。
DV被害の現状
配偶者暴力相談支援センターが公表しているデータによると、配偶者暴力相談支援センターとDV相談プラスへ寄せられたDV相談は、2020年度で18万2,188件、2021年度で17万7,110件(暫定値)でした。
また、公表されている最新のデータである2022年6月の1か月間に寄せられた相談件数は、1万4,849件とされています。※2
このように、DVの相談件数は高止まり傾向にあります。
また、データに表れているのはあくまでも対象の機関に相談された件数のみであり、水面下でのDV被害は数え切れないほどでしょう。
長期に渡ってDV被害を受けていると、「この程度は普通だ」「自分に非があるから殴られた」などと思い込んでしまう場合もあるかと思います。
しかし、身近な相手から暴力を振るわれることは決して「普通」のことではなく、被害者に非があるものではありません。
DVの被害を受けたら、早期に適切な機関へ相談しましょう。
DVによる主な被害とは
DVを受けている場合、どのような被害が生じる可能性があるのでしょうか?
生じるおそれのある主な被害は、次のとおりです。
身体的な負傷や精神的な負担
DVにより、身体的な負傷をする可能性があります。
また、精神的に負担を感じ、うつ病などを発症するおそれもあるでしょう。
後の離婚などに備え、万が一このような事態が生じたら、診断書を取っておくことをおすすめします。
PTSDなどの後遺症
DV被害が止んだあとも、長期的にPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する可能性があります。
たとえば、DVを受けている場面がフラッシュバックしたり、過度な緊張から不眠が続いたりするなどです。
子どもへの影響
家庭内でDVが発生している環境では、DV加害者から子どもも直接暴力を受けたり、子どもの面前でDVが行われたりするケースが少なくありません。
このような環境は、子どもの健全な生育を阻害するおそれがあります。
たとえば、暴力で問題を解決する癖がついてしまったり、他者を信頼できなくなってしまったりするなどです。
DVの主な相談先
DVの被害を受けている場合には、早期に適切な機関へ相談することをおすすめします。
DVについての主な相談先は、次のとおりです。※3
緊急の危険がある場合
配偶者などからの暴力で緊急の危険がある場合には、110番へ通報したり最寄りの交番に駆け込んだりして、警察へ相談してください。
たとえ家庭内で起きたことであっても、暴行や傷害などは犯罪に該当します。
相手の行為が刑罰法令に触れる場合には、処罰してもらうことも可能です。
相談がしたい場合
DVについてまず話を聞いてほしい場合や、カウンセリングを受けたい場合、今後の方針を相談したい場合などには、配偶者暴力相談支援センターへ相談しましょう。
配偶者暴力相談支援センターは、都道府県が設置する婦人相談所や女性センター、福祉事務所などに設置されています。
各都道府県内の配偶者暴力支援センターの設置場所はホームページなどで確認できますので、あらかじめ連絡先などを確認しておくとよいでしょう。※4
避難したい場合
DV加害者から一時的に避難をしたい場合には、婦人相談所が運営する婦人保護施設や民間シェルターで保護を受けることが可能です。
安全面への配慮から、保護施設などの所在地は公表されていません。
一時保護を受けたい場合には、配偶者暴力相談支援センターなどへ相談してください。
社会福祉制度の利用がしたい場合
DV加害者から離れ自立して生活をしていくにあたっては、社会福祉制度の利用が必要となる場合もあるでしょう。
たとえば、生活保護の受給や母子生活支援施設への入所などです。
どのような制度があるか知りたい場合や制度の内容を知りたい場合などには、自治体が運営する福祉事務所などへ相談するとよいでしょう。
離婚したい場合
DV加害者と離婚をした場合には、弁護士へ相談するとよいでしょう。
離婚は原則として一方の希望のみではすることができず、夫婦がともに離婚に合意しなければなりません。
ただし、次のいずれかの事由(770条)に該当する場合には、たとえ相手が離婚を拒否したとしても、裁判所の判断で強制的に離婚をする道があります。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復の見込みのない強度の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
このうち、DVは「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性が高いでしょう。
しかし、裁判所に離婚を認めてもらうためには、離婚をするだけの事由があるとの証拠を提示しなければなりません。
必要な証拠を集めるためのアドバイスを受けたい場合や、相手との離婚交渉を代理してもらいたい場合などには、弁護士への相談がおすすめです。
DVの相談で弁護士ができるサポート
DVの相談に対して弁護士ができる主なサポートは、次のとおりです。
保護命令の申立て
保護命令とは、DV被害者がDVにより生命や身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときに、被害者からの申立てにより、裁判所が配偶者に対して発する命令です。
保護命令には、次の5つが存在します。※5
- 被害者への接近禁止命令:被害者へのつきまといや被害者の住居付近などでの徘徊を禁止する命令
- 被害者への電話等禁止命令:被害者へ電話やメールをしたり面会の要求をしたりすることなどを禁止する命令
- 被害者の同居の子への接近禁止命令:被害者と同居する未成年の子へのつきまといや子の学校付近などでの徘徊を禁止する命令
- 被害者の親族等への接近禁止命令:被害者の親族などへのつきまといや住居付近などでの徘徊を禁止する命令
- 被害者と共に生活の本拠としている住居からの退去命令:被害者とともに生活の本拠としている住居からの退去と、住居付近での徘徊の禁止を命ずる命令
弁護士は、これらの保護命令を発してくれるよう裁判所に申し立てる手続きを、代行することができます。
離婚交渉の代行
弁護士は、相手との離婚交渉を代行することが可能です。
DVを理由として、相手と離婚をしたい場合もあるでしょう。
この場合において、DV加害者である相手と直接離婚交渉をすれば、さらなる被害を受けてしまうかもしれません。
弁護士が代理で交渉をすることで、直接相手と会うことなく離婚交渉を進めることが可能となります。
慰謝料・財産分与・養育費の請求
弁護士は、離婚に伴う金銭的な請求を代理することが可能です。
離婚に際しては、相手に対して次の金銭が請求できる可能性があります。
- 慰謝料:相手から精神的な苦痛などをうけたことに対する金銭的な賠償です。DV被害を受けていた場合には、それを理由に慰謝料を請求できる可能性が高いでしょう。
- 財産分与:財産分与とは、婚姻期間中に積みあがった夫婦の財産を清算する制度です。仮に夫婦の一方のみが外からの収入を得ていた場合には、大半の財産が相手の名義となっていることが多いでしょう。しかし、名義はどうあれ婚姻期間中に得た財産は夫婦の共有財産であるため、2分の1ずつの割合で清算することとなります。
- 養育費:養育費とは、未成年の子どもの教育や監護にかかる費用です。離婚後は、親権を持った側が、親権を持たなかった側から相手の負担分を受け取ることとなります。
DV被害を受けている場合には、お金はいらないので一刻も早く離婚したいと考える場合もあるでしょう。
しかし、これらの請求は、正当な権利です。
離婚後は生活を立て直す必要があり、その際にも金銭は必要となるでしょう。
特に、未成年の子どもがいる場合、養育費の有無は子どもの将来の選択肢へも影響するかもしれません。
「お金はいらない」などと早まらず。正統な権利はしっかりと行使してください。
親権の確保
未成年の子どもがおり、DV加害者である相手も子どもの親権を主張している場合には、親権の争奪戦となる可能性があります。
この場合には、親権獲得へ向けての相手との交渉や裁判手続きなどを、弁護士がサポートすることが可能です。
まとめ
DVとは、配偶者などパートナーから受ける、身体的や精神的な暴力です。
長期に渡ってDVの被害を受けていると、「自分に非があるから暴力を受けている」「このくらいの暴力は普通である」などと思い込んでしまうこともあるでしょう。
しかし、暴力をともなう関係は、決して健全とはいえません。
パートナーから日常的にDVを受けている場合には、早期に配偶者暴力相談支援センターなどの公的機関や弁護士などへ相談することをおすすめします。
Authense法律事務所にはDVや離婚問題にくわしい弁護士が多数在籍しており、日々問題の解決に取り組んでいます。
DVやモラハラなどの被害でお困りの際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。
参考文献:
※1 男女共同参画局:ドメスティック・バイオレンス(DV)とは
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/dv/02.html
※2 男女共同参画局:配偶者からの暴力被害者支援情報
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/data/01.html
※3 男女共同参画局:支援の関係機関
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/shien/index.html
※4 男女共同参画局:配偶者暴力相談支援センター
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/soudankikan/01.html
※5 男女共同参画局:保護命令
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/law/12.html
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