コラム

養育費を払わない率は75%?支払義務や未払い時の罰則などを弁護士が解説

養育費を払わない率は75%?支払義務や未払い時の罰則などを弁護士が解説

養育費の不払いへの対応に関して、離婚問題に詳しい弁護士が詳しく解説します。
相手が養育費を支払わない場合、どのような手続きを取れば良いのでしょうか?
また、養育費が減免される場合はあるのでしょうか?

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

養育費が支払われている割合

未成年の子がいる状態で離婚をした場合、夫婦のどちらかが子の親権を持つこととなります。
そのうえで、親権を持たないもう一方の親は、養育費を支払うことによって、親としての責務を果たすこととなるでしょう。

しかし、養育費がきちんと支払われているケースは、さほど多くはないのが現状です。
厚生労働省が公表している「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果」によれば、
母子家庭のうち養育費を受けている世帯の割合は、24.3%にすぎません。
また、父子家庭に至っては、養育費の支払いを受けている世帯はわずか3.2%です

なぜ支払われていないか

本来、養育費の支払いは子を持つ親の義務であるはずです。
そうであるにもかかわらず、養育費を支払っていない人は少なくありません。

では、養育費を支払わない人は、なぜ支払わないのでしょうか?

その理由はそれぞれ異なりますが、自分が親権を持たなかった子は、もはや自分には関係がないという意識を持ってしまう場合もあります。
また、そうではなかったとしても、子のためであるはずの養育費の意味を履き違え、元配偶者にはできるだけ金銭を渡したくないとの考えから養育費を支払わない人もいるものです。

一人の親として、子の養育に対して自らの責任があるとの意識が希薄になってしまう人も多いのが現状です。

そもそも養育費の支払は「義務」

そもそも養育費の支払は「義務」
養育費の支払いは、離婚に伴って夫婦間で取り決めることが一般的です。
しかし、そもそも養育費は、親権を持った親から強く請求されなかったからといって、支払わなくて良いような性質のものではありません。

養育費は、子の親として、子に対する生活保持義務として支払うべきものです。
夫婦が離婚をしても、子は引き続き父母の子であることには変わりはなく、親権を持たなかったからといって親としての責務を放棄することは許されません。

このように、養育費の支払いは本来、親としての義務なのです。

いくら支払う?

養育費の額は、法律で明確な金額が決められているわけではありません。
そのため、まずは夫婦間で話し合って金額を決めることとなります。

夫婦間で合意ができるのであれば、いくらであっても構いません。
相場としては、家庭裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」が参考となるでしょう。

夫婦間で話し合いがまとまらず裁判となった場合には、この算定表の金額あたりに落ち着くことが多いためです。

関連リンク

贈与税がかかる場合もある

本来、養育費には贈与税はかかりません。
ただし、養育費を子の養育のため以外に使用したと税務当局に判断された場合には、例外的に贈与税の対象となる場合があるため注意が必要です。

具体的には、名目は養育費であったとしても、そのお金でマンションや土地を購入した場合などが挙げられます。
また、養育費を一括で受け取り、これを預金したり株式投資の元手にしたりした場合にも贈与税の対象となるリスクがあります。

養育費を受け取る際は、子の養育に充てる資金であることを十分に理解したうえで、他の資産とは分けて管理をしておくと良いでしょう。

いつまで支払う?

養育費の支払い義務は、子が成人するまでが原則です。
子が複数いる場合には、それぞれの子について、その子が成人するまでの間支払い義務があります。

ただし、夫婦間の話し合いで、これとは異なる取り決めをしても構いません。
たとえば、「大学を卒業する月まで」などと定めることも多く、そのように取り決めた場合には、実際に大学を卒業するまでの間、支払い義務が継続されます。

関連リンク

時効について

当初取り決めた養育費を相手が支払わない場合、本来の支払い時期から時間が経つと時効にかかってしまいます。

養育費の消滅時効は、原則として5年です。
ただし、調停や審判において養育費が確定した場合、すでに発生していた過去の分の養育費については、消滅時効は5年ではなく10年に伸長されます。

養育費の支払いは義務であるものの、不払いの状態が長期にわたると、時効によりもはや請求ができなくなってしまうため注意が必要です。

また、時効完成前であっても、あまりに長期間不払いの状態が続けば、相手方に請求をしたとしても不払い分をまとめて支払えるだけの資力がなく、結局は取りそこねてしまう可能性が高まります。

養育費の支払いが滞った際には、早い段階で弁護士へ相談し、早期の解決を図ることが重要です。

関連リンク

改正民事執行法で変わったこと

2020年4月1日、改正民事執行法が施行されました。

民事執行法では、養育費の支払いが滞った際に強制執行をする準備段階の手続きとして、「財産開示手続」を定めています。
これは、裁判所が養育費の支払い義務者に対して、保有する財産の状況を報告させる手続きです。

しかし、従来は養育費の支払い義務者が財産開示手続に協力しなくても30万円以下の過料というペナルティしか適用できず、いわゆる逃げ得を許してしまっていた状況があります。

2020年の改正により、この「財産開示手続」に応じなかったり、嘘の回答をしたりした場合には、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰が科されることとなりました。

これにより、養育費の支払いを逃れたり養育費を不当に減額させたりしようと、嘘の報告をしたり財産開示手続に応じなかったりする「逃げ得」を封じる効果が期待できます。

養育費が支払われない。未払いの場合の罰則

では、養育費を支払わなかった場合、罰則の対象になるのでしょうか?

刑事罰の対象にはならない

養育費の支払いが義務であるとはいえ、不払いをした時点で具体的な刑事罰の対象となることはありません。

財産が差し押さえられる可能性がある

刑事罰ではありませんが、養育費を支払わなかった場合には、相手方から財産を差し押さえられる可能性があります。

また、給与を差し押さえる場合は会社へ裁判所から文書が届くため、勤務先の会社に状況が知られてしまうリスクもあるでしょう。

財産開示手続の陳述拒否には罰則がある

強制執行の前段階の手続きとして、裁判所から財産開示を求められる場合があります。

民事執行法の改正により、これに応じなかったり虚偽の申告をしたりした場合には、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰が科される可能性があります。

養育費を支払わない相手への請求方法

相手が養育費を払わない場合の請求方法は次のとおりです。

公正証書がある場合

養育費の支払いについて、あらかじめ公正証書で取り決めていた場合には、その公正証書をもとに強制執行を行います。
具体的には、地方裁判所へ申し立てを行い、給与や不動産など相手の財産を差し押さえてもらう流れとなります。

ただし、相手の財産が不明である場合には、強制執行に先立って財産開示請求などによる財産の調査が必要です。

関連リンク

離婚協議書がある場合

養育費に関する公正証書はなく、夫婦間で取り決めた離婚協議書のみがある場合には、その書類のみをもって強制執行をすることはできません。
この場合には、改めて養育費調停や審判を申し立てる必要があります。

夫婦間で取り決めた離婚協議書に法的な効力があると認められれば、原則としてその内容を踏まえて調停や審判が進んでいく可能性が高いでしょう。

相手方には、この調停や審判の結果に従って養育費を支払ってもらうこととなります。
それでも支払わない場合には、強制執行をすることが可能です。

口約束の場合

公正証書も離婚協議書もなく、単に口約束のみで養育費を取り決めていた場合には、改めて養育費調停や審判を申し立てる必要があります。

離婚協議書がある場合とは異なり、拠りどころとなる証拠がありませんので、離婚協議書がある場合と比べて解決までにさらに時間がかかる可能性が高いでしょう。
調停や審判で養育費の支払い金額などが決まれば、それに従って支払ってもらうこととなり、支払わない場合には強制執行を行います。

裁判所へ申し立てて養育費を請求する方法

裁判所へ申し立てて養育費を請求する方法
裁判所へ申し立てて養育費を請求する方法には、次の3つが挙げられます。

履行勧告

履行勧告とは、調停や審判で決めた養育費を相手が支払わないような場合に、家庭裁判所から相手に対して養育費支払いの「勧告」をしてもらう制度です。
法的な拘束力はありませんが、裁判所から直接履行を勧告されることで、相手方に心理的プレッシャーを与える効果が期待できます。

ただし、履行勧告は、養育費についての具体的な取り決めが家庭裁判所での調停や審判等で行われた場合にのみ利用できる制度です。
それ以外の場合には、利用することはできません。

履行命令

履行命令とは、調停や審判で決めた養育費を相手が支払わないような場合に、家庭裁判所から相手に対して養育費支払いの「命令」をしてもらう制度です。

従わなくても特に罰則のない履行勧告とは異なり、履行命令に従わない場合は10万円以下の過料が課せられます。

履行命令も、養育費についての具体的な取り決めが家庭裁判所での調停や審判等で行われた場合にのみ利用できる制度です。
それ以外の場合には、利用することはできません。

強制執行

強制執行とは、裁判所が相手方の財産や給与などを差し押さえて、義務を履行させる手続きです。
強制的に差し押さえが行われるため、養育費不払いへの対処方法としては最も強い効果が期待できます。

強制執行を行うことができるのは、養育費についての具体的な取り決めが家庭裁判所での調停や審判で行われた場合と、養育費についてあらかじめ公正証書で取り決めをしていた場合です。
この点から、養育費についての取り決めを公正証書にしておくことは、非常に強い強制力を持つといえます。

関連リンク

養育費の減額・免除が認められるケースは?

一度取り決めた養育費について、減額や免除が認められる場合はあるのでしょうか?
ケースごとに解説しましょう。

再婚した場合は?

養育費を支払っている側が再婚した場合はもちろん、親権を持つ側の親が再婚をしたからといって、それのみをもって養育費の支払い義務が消滅するわけではありません。
相手が再婚をしたとしても、子が自分の子であることには、引き続き変わりはないためです。

ただし、子が親権者の再婚相手の養子となった場合には、養育費の減額や免除が認められる可能性が高くなります。

詳しくは、関連リンクをご確認ください。

関連リンク

義務者が自己破産した場合は?

養育費の支払い義務者が自己破産した場合には、既に支払い義務が発生して滞納している養育費と、今後新たに支払い時期が到来する養育費とに分けて考える必要があります。

まず、すでに義務が発生している金融機関からの借入金などは、自己破産により免除(免責)の対象となります。
しかし、養育費の支払い債権は非免責債権とされており、自己破産をしても免責されません。

また、今後新たに支払い時期が到来する養育費についても、自己破産によって当然に減免されるわけではありません。

義務者死亡の場合は?

養育費の支払い義務は、相続される性質のものではありません。
そのため、養育費の支払い期間中に養育費の支払い義務者が亡くなった場合には、もはや養育費を受け取ることはできないと考えてください。

ただし、子は亡くなった元配偶者の相続人となり、財産を相続する権利があります。

また、養育費を受け取っていた子が遺族年金を受け取ることができる可能性がありますので、こちらも確認しておくと良いでしょう。

養育費の減額・免除の流れ

養育費は、再婚や自己破産などで当然に減免されるわけではありません。
しかし、養育費について取り決めた時点から大きく事情が変わった場合には、養育費の減免が認められる可能性があります。

養育費の減免には、次の3つの方法があります。

  • 当事者同士での話し合い
  • 家庭裁判所での養育費減額請求調停:裁判所で行う話し合いです。
  • 庭裁判所での養育費減額請求審判:裁判所が減免の可否や変更後の金額を決める手続きです。

まずは当事者同士で話し合いをし、合意ができればその合意内容に従います。
当事者同士での話し合いがまとまらない場合には、調停や審判を利用しましょう。

養育費の未払い問題は弁護士に相談すべき理由

養育費の未払い問題は弁護士に相談すべき理由
仮に相手が養育費を支払わない場合には、早期に弁護士へ相談することをおすすめします。

一度や二度のうっかりミスに支払い遅延程度であればまだしも、数ヶ月に渡る滞納や支払遅延の常態化が起きているようであれば、直接本人が交渉したところで改善される可能性は低いためです。

また、自分で無理な請求をしてしまえば、相手方が財産を隠して逃げるなどして余計に取り立てが難しくなってしまうリスクもあるでしょう。
養育費の未払い問題を弁護士に相談することで、その後の強制執行も踏まえた法的な対応が可能となります。

養育費の受け取りは、子の権利です。
必要な養育費をきちんと支払ってもらうため、早期に弁護士へ相談することをおすすめします。

まとめ

養育費の支払いは、親としての責務です。
それでも相手方が養育費を支払わない場合には、早期に弁護士へ相談し、厳正な対処をするようにしましょう。

対応が遅れてしまえば、取り立てが難しくなる可能性が高くなってしまいます。

養育費の不払いでお困りの際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。
Authense法律事務所には、離婚問題や養育費の不払い問題に詳しい弁護士が多数在籍しており、解決に向けてサポートいたします。

関連リンク

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶応義塾大学法学部法律学科卒業、上智大学法科大学院修了。個人法務から企業法務まで多様な案件に従事する。特に、離婚、相続を中心とした個人法務については、請求側・被請求側、裁判手続利用の有無などを問わず、数多くの案件を解決してきた実績を有する。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

こんな記事も読まれています

コンテンツ

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。